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26-4・オーガ戦~魔方陣失敗~セイテンと銀メダル

-正面入口-


 ザムシードが、マスクドウォーリア・オーガのパワーに押されて弾き飛ばされる!やはり、一筋縄で凌げる敵ではない。

 オーガは、大斧にメダルを装填して、武器を巨大化(ポール全長5m・ブレード幅2.5m)させる!立ち上がって体勢を立て直し、振り上げられた巨大斧を警戒するザムシード!


「来たかっ!」


 オーガの背後、真っ直ぐに走ってくる雅仁を、ザムシードが視認!


「幻装っ!!」


 妖幻ファイターガルダ登場!鳥銃・迦楼羅焔に属性メダル『雷』をセットして、オーガの背中に連射を浴びせる!想定外の攻撃を受けて、巨大斧を振り上げたまま唸り声を上げて仰け反るオーガ!


「今だっ!!」


 ザムシードは、オーガが見せた隙を見逃さず、その腹に妖刀の一撃を叩き込んだ!悲鳴を上げて前屈みになるオーガ!側面に廻り込んだザムシードが、脇腹に妖刀の切っ先を打ち込む!


「ぐぅぅ・・・ぐぉぉぉっっ!退治屋ごときが調子に乗るなぁぁっっ!!」


 オーガは苛立ちを募らせ、体を軸にして、ハンマー投げの助走のように巨大斧を全方位に振り回した!

 至近距離にいたザムシードが為す術もなく弾き飛ばされる!接近中のガルダは慌てて足を止めるが、巨大斧は更に数倍に巨大化(ポール全長20m・ブレード幅10m)をして、射程範囲外だったはずのガルダをも弾き飛ばした!


「くそっ・・・なんてタフな奴だ!」

「武器が更に巨大化した?

 あの斧は、使用者の意志に応じてサイズを変えるのか!?」


 剣や槍は、使用者が不規則に動かせる代わりに射程距離が短い。銃や大砲は、射程距離が長い代わりに発射されたあとは一定の方向にしか飛ばない。

 だが、オーガの巨大斧は、不規則な動きと、長距離射程が同時に可能なのだ。これでは、ザムシードの弓銃カサガケや、ガルダの妖砲イシビヤすら、有効な間合いにはならない。


「厄介な武器だな!」

「なぁ、狗塚、空飛んで逃げ回ってもらって良いか!?」

「何か考えがあるのか!?」

「自信があるとは言えないけど、やってみたいことがある!」

「了解だ!だが、無茶はするなよ!」

「無茶なのか、理に適っているのか、俺には解らない!

 それは、俺が試してから、オマエが決めてくれ!」

「りょ、了解・・・なら言い方を変える、無駄死にをするなよ!」

「了解!気を付ける!!」


 ガルダは翼を広げて空を飛び、ザムシードはオーガの周りを動き回る!ガルダから見ても、オーガから見ても、ザムシードはオーガの死角を衝く為に、不規則に走り回っているようにしか見えない!もちろん、空からガルダが狙っていることも、オーガは把握している!ザムシードが囮になって、ガルダが決める・・・解り易すぎるえの作戦だ!


「さ、佐波木・・・君はバカなのか!?

 未熟とは思っていたが、バカとは思っていなかった。

 オーガは、君に死角など見せない・・・君がいくら動き回っても無駄・・・

 それは、前回の闘いで知ったはずだ!!」

「ガッハッハッハッハ!

 オマエが命を盾にして、上の優等生に手柄をくれてやるってか!?

 良いだろう!先ずはオマエから血祭りだ!!

 尤も、優等生に手柄をくれるつもりも無いがな!!」


 巨大斧を振り上げ、縦横無尽に振り回すオーガ!先ほどと同様に、巨大斧は、オーガの意志に応じて、変幻自在に両刃を伸ばし、ザムシードを容赦なく弾き飛ばす!


「うわぁっっっ!!」

「佐波木っ!!」


 続けざまに、上空のガルダ目掛けて、巨大斧を振り上げた!ガルダは、鳥銃・迦楼羅焔を連射してオーガを牽制しながら、巨大斧の両刃を回避!ザムシードが囮になって、ガルダが攻撃をするにしても、準備の時間が無さ過ぎる!妖砲イシビヤを装備する時間も、アカシックアタックの発動のチャージ時間も確保できず、ザムシードはアッサリと囮役を終えてしまった!


「クッ・・・無茶どころか、無策かよっ!!」


 ガルダは翼を広げている為に、射程距離が意味を為さない敵からすれば、凄まじく狙いやすい標的だ!しかも空中では、地上ほど自由には動けない!しばらくは逃げ回っていたが、やがて、30mほど伸びた巨大斧が翼に炸裂し、バランスを崩したガルダは地上に墜落をする!オーガは「トドメ」と言わんばかりに、這いつくばるガルダに撃ち降ろす為に、柄の伸びた巨大斧を振り上げる!


「グッハッハ!潰れろっ!!」


 次の瞬間、オーガの‘伸びる巨大斧の巨大両刃’周りの空間が歪み、マシンOBOROを駆るザムシードが出現!


「ワリィ、狗塚!!囮になってもらった!!」


 巨大斧の柄を走路にして、オーガ目掛けて真っ直ぐに突っ走る!自身の武器に想定外の重みを受けたオーガは、姿勢を崩して、ガルダへのトドメの一撃は不発に終わる!

 ザムシードは属性メダル『炎』をハンドル脇のスロットルに装填!朧ファイヤー発動!マシンOBOROのタイヤから炎が発せられ、巨大火炎弾になって突撃!


「下らん悪あがきをっ!!」


 オーガは、柄の伸びた巨大斧を横に振って、柄を走るマシンOBOROを振り落とそうとする!しかし、マシンOBOROのタイヤは巨大斧の柄をガッシリと掴んでおり、いくら走路(巨大斧の柄)を不規則に揺らしても離れない!


「なにっ!?」


 これが「物理的なただの柄」ならば、マシンOBOROは簡単に振り落とされていただろう。しかし、魔力で編んだ巨大斧ゆえに、魔力を掴んで走るマシンOBOROは決して離れない!


「紅葉が言っていた!

 退治屋は、妖力を見る訓練をした為に、魔力を見るクセが無い!

 だけど、クセが無くても妖力が見える妖怪は、

 自然体のままで魔力を感じることができるはずだってな!

 だから・・・試しに、朧に魔力を覚えさせてみた!!」


 マシンOBOROは、強い妖力溜まりに飛び込んで、別の強い妖力溜まりに出現をすることができる!ザムシードは、自分には解らなくても、マシンOBOROならば、魔力を感じ取り、魔力間の出入りが可能かもしれないと考え、魔力で作られた巨大斧が残した魔力から、巨大斧が発している魔力へと通過をしたのだ!

 成功するか解らない賭だったが、これまで様々な経験を積んでいたザムシードは、「できる」と信じていた!


「ぐぉぉぉぉっっ!!マズイッッ!!」

「おぉぉぉぉっっっっ!!!喰らえっっっ!!!」


 慌てて、巨大斧から手を離して退避をしようとするオーガ!しかし、時、既に遅し!朧ファイヤーがオーガを真正面で捕らえ、衝突して跳ね飛ばした!

 地面への着地と同時に、タイヤスモークを上げながらマシンOBOROを横滑りさせて急停車するザムシード!その背後で、全身から幾つもの火花を上げて、地面に墜落をするオーガ!


「へへっ!手応え有り!」


 オーガは、戦闘継続が不可能なほどのダメージを負った!ザムシードは、追撃をかける為に、バイクから降りて・・・フラフラと明後日の方向に2~3歩あるいて・・・四つん這いになる。


「・・・佐波木?」

「おっ・・・おぇぇぇっっっっっ・・・・・・眼が廻った」


 マシンOBOROは魔力を掴んで走っていた為に、オーガがいくら巨大斧を振り回しても振り落とされる事はない・・・が、乗っていたザムシードは別だ。必死になってマシンOBOROにしがみついていたが、マシンOBOROごと振り回されて、バッチリと乗り物酔いをしてしまった。


「おのれ!おのれ!おのれぇぇっっ!!!

 もう、容赦はせんっ!!アサシン対策に準備した魔方陣だが変更だ!!

 オマエ等ごとき、強大な魔力の渦で一飲みにしてやるっっ!!」


 ザムシードが吐きそうになっている間に、体勢を立て直すオーガ!全身から上がる火花と煙は、オーガが深手を明確に語っているが、彼は退こうとはしない!激高し、ザムシードを睨み付けたあと、文化会館に手を翳して呪文を唱える!


「おぉぉぉっっっ!!!魔法陣発動!!

 中にいるガキ共の魂を根こそぎ奪い取れっ!!」


 オーガの呪文に反応して、文化会館周りに仕掛けられた沢山の小魔法陣が光を上げ、連動をして1つの巨大魔法陣を作ろうとする!しかし・・・幾つかの小魔法陣が起動せず、巨大魔法陣は繋がらない!更に、会館の中心に張られた霊術結界が邪魔をして、不完全な魔法陣では中を浸食出来ない!紅葉が仕掛けた小魔法陣を覆う壁と、雅仁が仕掛けた結界が、‘魂を集める魔法陣’の完成を邪魔をしているのだ!


「バ、バカなっっ!?」


 愕然とするオーガ!次の瞬間には、オーガの懐に飛び込んだガルダが、妖槍の一撃を、斧型のバックルに突き立てた!


「・・・これで、終わりだ!野蛮人めっ!!」

「バカ・・・な・・・・・・信じられん・・・ぐはぁぁっっ!!」


 オーガは、マスクドシステムを破壊され、堀田の姿に戻り、その場に両膝を着いて崩れ落ちる。足下に機能を失った【Aウォッチ】が転がり、堀田は、俯せに倒れて意識を失った。


「見事な気転だったな、佐波木!」


 ガルダは背後を振り向いてザムシードを見て、大きな溜息をつく。ザムシードは、まだ四つん這いになったまま、懸命に嘔吐を堪えていた。


「今回も、鬼討伐も、奴の気転が戦いの流れを変えたのは間違いないのだが・・・

 どうして、こうも締まらないんだ?

 それだから、凡人の枠から出られないんだぞ、未熟者め!」


 ガルダはもう一度大きな溜息をついてから、ザムシードを労う為に近付く。




-会館・裏ゲート-


 駆け付けた粉木の目の前では、信じられないことが起こっていた。妖幻ファイターセイテン(猿飛)は一方的に打ちのめされて地を這い、マスクドウォーリア・スプリガンは、無傷のままセイテンを見下している。

 セイテンは、霊術では名門狗塚には及ばないが、戦闘技術や戦闘経験ならば、ガルダよりも秀でている。ガルダがザムシードの援護に向かった理由は「セイテンは凌げる」「ザムシードと共闘をして離反者最強のオーガを倒す」と考えたからだ。


「魔法陣が発動せず、オーガの反応が消えた?

 ・・・バカな、堀田め、格下相手に不覚を取ったのか?」


 スプリガンは、怪訝そうな仕草で会館上空を眺めたあと、粉木の方に視線を向ける。またしても、作戦は読まれ、逆手に取られて利用され、退治屋の罠に嵌った。


「小細工を労したな、ジジイ。里夢の入れ知恵か?」

「退治屋をバカにしすぎなんや!!」

「確かに、俺達は退治屋を侮りすぎていたようだ。

 だが、その台詞は、ソックリ返そう。

 オマエ等こそ、俺を見くびっていたようだな。

 俺達のリーダー格は堀田だ。確かに力だけならば、オーガが最も強い。

 ・・・だが、イコール、オーガが最強で、俺が弱い事には成らない。」


 スプリガンの指摘通りだ。粉木達は、離反者の中で、リーダー格のオーガが一番強いと考えていた。スプリガンは、ゴブリンと同様にオーガよりも数段弱いと想定していたが見込み違いだった。戦術、魔術、戦闘力、全てを総合すれば、離反者3人で最も強いのは、スプリガンだった。


「・・・潮時だな。

 こうも、作戦を覆されては、もはや、俺達にはリリスを凌げない。

 堀田を連れて、何処か遠い地へ逃げるしかあるまいな。

 ジジイ・・・俺達の負けだ。

 俺達だって命は惜しい。金輪際、オマエ等には手を出さない。」


 踵を返し、その場から立ち去ろうとするスプリガン。その背後で、ダメージを負ったセイテンが立ち上がって構える。


「散々好き放題やって、旗色が悪くなった途端に、何もかも無かった事っすか?

 気に入らないっすね!」

「やるだけ無駄だ!オマエでは俺には及ばない!」

「・・・さぁ、それはどうっすかね!?俺には、切り札ってヤツがあるっすよ!!」


 何かを握り締めた拳を、正面に突き出すセイテン!その手の中にある小さな箱を握り潰す!ケースは砕け散り、中から、黒くくすんだ1枚のメダルが現れた!途端に、セイテンの周囲に、禍々しい妖気が立ち込める!


「・・・ぎ、銀色のメダル!?」


 セイテンが握っている物は、粉木が保管をしていた‘銀色メダル’だ。

 今、YOUKAIミュージアムの事務所では、本棚がずらされ、奧に隠されていた金庫には拳が1つ入るほどの風穴が空いている。猿飛が、無断で悪しき銀色メダルを持ち出したのだ。


「援軍に来て、何も役に立たなかったなんて、そんなワケにはいかないっす!」

「や、やめるんや、猿飛!

 オマンなら、銀色メダルの恐ろしさは、見ておるやろうに!?」


 退治屋の汚点・銀色メダル事件が起きた時、当時7歳の猿飛悟は、既に本社で学んでいた。猿飛少年は、銀色メダルに心を破壊された反逆者達を見ている。


「連続使用をしなければ・・・1回や2回の使用なら・・・心は食われません!

 約束します!コイツを倒す為に・・・1度きりの使用っす!」

「アカン!止めるんや、猿飛っっ!!」


 セイテンは、粉木の制止を聞かずに銀色メダルをYウォッチに装填!


《HYPER!》


 装填確認の電子音声が鳴り、妖幻ファイターセイテンの戦闘力が上昇をする!

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