43-2・本部強襲の回想~封印結界強襲
-回想・昨夜の本部襲撃-
9階役員室の窓ガラスが砕け散り、魍紅葉&茨城童子&天邪鬼が乗り込んできた。
臨戦態勢を整える前だった管理職2人と護衛の妖幻ファイター2人は、茨城童子の発した衝撃波を喰らって、アッサリと戦闘不能状態に追い込まれる。
「姫様、保管庫の暗証番号は、指揮官(管理職)共が持っているようです。」
「どーせ、聞いても教えてくれないんだから、あんしょー番号なんてメンドイよ。
保管庫、ブッ壊しちゃえばイイぢゃん。」
魍紅葉は床に掌を当てて妖気を送り込み、共鳴する場所を探す。そして、最も妖気が干渉をしない場所を感知する。
「んへへっ!見~付けた!超わかりやすすぎっ!」
ビルの中央付近で再び床に掌を当てて、真下で妖気が全く干渉しないことを確認する。
「この下が、一番、清浄化されてる場所ってことは、
結界とかでメダルの存在感を隠しているんだよね?」
管理職2人は簡単に見抜かれたことに驚き、茨城童子は魍紅葉の感知力の高さに感服する。
魍紅葉は、腰に帯刀した短刀=邪今険を抜刀して、刃に妖気を充填!気勢を上げて、足元の床に叩き付けた!床が砕けて、真下(8階)の保管庫が露出!
警報音が鳴り響くがお構い無しに踏み込んで、発する妖気の干渉で金熊童子を封印したメダルを見付ける。
「ねぇねぇ、偉い人達!?金熊ドージゎ見付けたけど、ァタシの残りゎ!?」
獲得できたのは金熊童子の封印メダルだけ。酒呑童子の8割を封じ込めた『酒』メダルは何処にも無い。
「どっか、別の場所に隠したの?ァタシにイジワルしてるの?
ムカ付くぅ~!教えてくれないと殺しちゃうよ!」
怪我をして蹲っている管理職に掌を翳して、発した妖気で締め上げようとする魍紅葉。しかし、魍紅葉の妖気が到達する前に、天邪鬼が割って入って管理職の胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「魍紅葉ちゃんの質問に答えるのじゃ!答えねば、わしがオマエを縊り殺すぞ!」
「ぐわぁっっ・・・し、知らないんだ。本当だ。
『酒』メダルは、何者かによって、数日前に持ち出されて、捜索中だ。」
「フン!役に立たない奴め!」
天邪鬼は、管理職から手を離し、振り返って魍紅葉に跪く。
「魍紅葉ちゃん。この場に留まって『酒』メダルを探しても、無駄なようじゃ。
事態に気付いた退治屋の連中が集まって来る前に、撤退しよう。」
「そっかぁ~・・・無いんぢゃ仕方無いね。
金熊ドージをゲットできたから、まぁ、イイや。」
退治屋達が集まってきても全滅させる自信はある。だが、その他大勢などに興味は無いので、天邪鬼の意見を採用して早急に立ち去ることにした。
結果的に、宿敵のアジトを強襲したにもかかわらず、魍紅葉は誰の命も奪っていない。一連を眺めていた茨城童子は、天邪鬼の‘余計な行動と意見具申’に不満を感じる。
-回想・終わり-
茨城童子は、亜美の命を気遣う魍紅葉の優しさが気に入らなかった。主君は、まだ人間だった頃の感情を残し、完全な鬼には成り切れていないようだ。
「1人でも自らの手で殺害をすれば、人間としての帰る場所を失い、
完全な妖怪になって下さるはず。」
忠臣として、人間らしさを残した魍紅葉を見過ごすことはできない。茨城童子は、誰を生贄にするかを思案しつつ、闇霧化をして主を追う。
「姫様!此処からならば目と鼻の先にある亜弥賀神社に向かいましょう!」
「んぉ!?結界がある場所だね!
いいねっ!おうちの近くにあんなのがあると落ち着かないもんね。
見てるとイライラするから、ブッ壊しちゃおっか!」
結界の下には、「結界破壊の駆け引き」の為に、牛鬼と同等の上位妖怪が待機をしているはず。そしてその周りには、妖怪の駒にされていることに気付かない退治屋達がいるだろう。確実に交戦状態になる。
「私は姫様と共に神社に向かう。
虎熊童子とと金熊童子は、その奥(山頭野川の東側河川敷)にある補助結界を、
熊童子と星熊童子は町の中心(文架駅)にある結界を攻略せよ。」
「んぇ?みんで一緒に行くんぢゃないの?」
「同時襲撃で、防衛の連携を断つのです。」
集中攻撃をした方が楽な反面、3ヶ所を同時に攻めれば、退治屋側は各所の連携ができない。特に、亜弥賀神社と河川敷は近いので、分断の楔を打ち込む価値は大きい。
「先陣は、河川敷の虎熊童子と金熊童子!
戦いが始まり、神社と市街中心部の防衛が浮き足立った直後に、
姫様と私、及び、熊童子と星熊童子が、同時に仕掛ける!」
茨城童子の作戦は理に適っている・・・が、それとは別に、「魍紅葉が護衛されない」状況に追い込んで魍紅葉を戦わせ、その手を血で染めさせる意図があった。
幹部ではないゆえに、頭数に入れられなかった天邪鬼が、不満そうな表情で茨城童子を見詰める。
「わしも、魍紅葉ちゃんと同じ場所を担当させてもらうぞ。」
「お願いね、天野のじいちゃん。」
茨城童子にしてみれば、「魍紅葉と親しい」という理由だけで側近面をしている下っ端の配属先など、どうでも良い。
「ふん、好きにしろ。」
茨城童子の作戦、及び、魍紅葉の号令の元、文架駅西口、山頭野川の東側河川敷、そして鎮守の森公園へと、鬼一派が一斉に動き出す!
「・・・ク、クレハ。」
一方で、亜美は、どう見ても人外な連中と共に去る幼馴染みを呆然と眺め、黙って見送ることしかできなかった。紅葉に異常事態が発生しているのは明らかだ。動揺で震える体を抑え、直ぐに燕真に連絡を入れる。
-山頭野川西側の路地裏-
燕真の駆るバイクを先頭にして、雅仁の乗るバイクと、麻由を後ろに乗せて佑芽が運転するバイクが、人目を憚りながら住宅街を移動する。燕真のポケットでスマホが着信音を鳴らしたので、燕真は後続に手で合図をしてからバイクを路肩に寄せて通話に応じた。
「・・・了解、サンキューな。」
燕真は、亜美からの情報を雅仁達に説明をする。
「紅葉のヤツ、鎮守の森公園の方向に向かったってさ。」
情報収集すらしていないのに、いきなり足跡を掴めるとは思っていなかった。
「亜弥賀神社の結界を破壊するつもりでしょうか?」
「佐波木!君だけなら、移動行程を省いて公園に行ける。先に行ってくれ。」
「そうさせてもらう。」
文架大橋、智拝橋、明閃大橋、どれかを通過しなければ、川東の鎮守の森公園には行けない。橋の通過中に発見されてしまうと逃げ場が無いので、「どう、目立たないように通過しようか?」と思案していたが、その余裕すら与えてくれないようだ。
-山頭野川の東側河川敷-
闇霧2つが空中で停止をして、虎熊童子と金熊童子の姿に変わる。この地に設置してある結界は、他の3ヶ所(1ヶ所は破壊済み)を安定させる為の補助をしているだけなので重要拠点ではない。だが、真っ先に攻撃を仕掛けて、退治屋を混乱させ、他の地域同士の相互防衛を断つという戦略面での重要性がある。
「にゃははっ!弱そうな連中と、木偶の坊みたいなヤツが突っ立ってら。」
「アニキ(茨城童子)は、牛鬼と同格のヤツがいるって予想してた。
見た目で判断すると、前と同じ(ザムシードに倒された)恥をかくぞ!」
「オイラより前に倒された虎さんが、それを言うなよな!」
防衛の任に就いていたのは、大平法次(大武COOの専属ボディーガード)と、魍紅葉捕獲隊のC班。退治屋は、早急に本部、及び、周辺地域の戦力を文架市に集めたかったが、昨夜の本部襲撃に伴う混乱が迅速な対応を鈍らせていた。
「ボスは木偶の坊みたいなヤツだよな?」
「だろうな。他のザコ共(退治屋の隊員)とは、雰囲気が違う。」
「そんじゃ、アイツから潰してやろう!」
虎熊童子は帯刀している刀の柄に手を添え、金熊童子は両手にナックルダスターを装備して、大平法次目掛けて急降下をする!
「鬼が来たぞ!一斉銃撃だっ!!」
C班リーダーの妖幻ファイター(七篠権兵衛)の号令で、ヘイシ5人が銃を構えて一斉に光弾を連射する!しかし、虎熊童子&金熊童子は楽々と回避!ザコなど相手にせず、大平法次の懐に飛び込んだ!
「秘剣・涼音!」 「おりゃぁぁっっっっ!」
虎熊童子の放った音速の横凪が大平の上半身と下半身を分け、金熊童子の放つ拳の連打が大平の上半身を砕いた!
「何だ、コイツ?見た目通り、スッゲー弱いじゃん!」
「いや、警戒しろ!全身から妖気を発しているぞ!」
「グォッハッハ!おいだば、バラバラになったぐらいでは死なね!」
粉々になった大平法次の体が闇霧に変化して肥大化!身長10mで全身緑色の巨大妖怪=大太郎法師が出現をした!
-文架駅・西口ロータリー-
空中で待機をしていた星熊童子と熊童子が、河川敷での戦闘開始を感知する。
「始まったな。」
「グロロロ!戦闘解禁だ!」
防衛の任に就いていたのは、矢的大地(大武COOの専属運転手)と、魍紅葉捕獲隊のB班。この地区の結界は、地獄との繋がりを封じている主要結界の一つなので、攻略が必須になる。
「派手に暴れてやろうぜっ!」
「気配から察するに、虎熊童子と金熊童子が交戦しているのは鬼神軍の大太郎法師。
そして、昨日、魍紅葉姫に倒されたのは鬼神軍の牛鬼。
つまり、ヤツ(矢的)の実体は、鬼神軍幹部の残り。
天逆毎、もしくは、八岐・・・あっ!おいっ!」
星熊童子の講釈などお構い無しに、熊童子は金棒を振り回しながら矢的大地に向かっていく!群がってくるB班リーダーの妖幻ファイター(甘利亜真里)とヘイシ5人を金棒の一振りで弾き飛ばし、矢的に襲いかかった!
「チィ・・・四天王か。河川敷の気配も四天王。
どうやら、天逆毎が担当すー神社が‘当たり’だったようだな。」
矢的は、華奢な体格に似合わない力強い拳で金棒を受け止め、熊童子を睨み付けた。
「些か拍子抜けをしたが仕方あらん。
おらはおらの仕事をすー!・・・覚醒!」
矢的大地の全身から闇が発生して、八首の怪物=八岐大蛇へと変化をする!熊童子の金棒を受け止めた腕は蛇頭の一つだった!
八岐大蛇や大太郎法師が結界を守る理由など無い。むしろ、魍紅葉一派と同じように、結界の破壊を望んでいる。それでも防衛のフリをする理由は、退治屋の信頼を得て駒(消耗品)として使い続ける為。そして、交戦を経て鬼の幹部達を倒して、結界破壊の生贄にする為だ。
「矢的さんが妖怪になった?」 「牛木CSOと同じだ!」
妖幻ファイター(甘利)とヘイシ達は、戸惑いながらも、体勢を立て直す。




