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98話 伯方島

間違えて予約投稿時刻を9時に設定してしまいました。

 10分ほど時間をかけて松村先輩は茂みを抜けた。とは言っても表面上の茨を切っただけで俺達の目の前には未だに蔓が蔓延っている。


  だが、仕方がない。ここは進む他無いのだ。流石に時間をロスし過ぎた。俺達は茂みを掻き分けて進む。


「痛ててて!」


  茨が切断されたと言っても複雑な構造の茨は俺の服や皮膚に容赦なく絡みつき損傷を与える。実際に俺の身体には無数の引っ掻き傷が出来てしまっていた。茨を超え、倒木を跨ぐ、上の道路の塀の上に出た。そこを飛び降りれば完全に道に出る。


  だが、塀はそこそこ高い。飛び降りた際に足には強めの衝撃が加わった。疲弊していた足には痛いダメージだ。


「ほら、若干こっちの方が早かったろ?」


  50メートル位後ろには山猫達の姿が見えていた。確かにこっちの道の方が早かった。だが、ここを越えるのにかかった労力を考えたら全然お得では無い。たった数十秒得するだけで、これだけ体力を消費するならば普通に行った方が良かった。


  何しろ、後ろから松村先輩が切り拓いた道を進むだけでこの疲労感だ。自分で道を切り開いてたとしたならば、もっと疲れるのは間違いないだろう。大三島橋の全長は約330メートル今までの橋に比べたらかなり短く感じた。


  橋を渡る途中で先輩達と離れ、俺達は伯方島へと足を踏み入れた。ここからが割としんどかった。しばらく、伯方島に入ってからは静かな下り道を降りた。周囲にあるのは海では無く、木々ばかりで何も見えない。意外と平地よりも下り坂の方が膝などには負担がかかる。気がつくと俺達は無言になっていた。


  何も喋らずにひたすら歩く。この時の俺は何を考えていたのだろうか?家に帰って早くゴロゴロしたいとでも考えていたのだろうか?全員が全員黙っているのだから同じ様な事を考えていたのだろう。


  山を抜けると左側に建物が少しずつ見えて来た。だが、まだ少し物足りない。右側には次の目的地である大島へと続く高架橋が長く続いている。


  この高架橋の先が見える限り、この道は終わらない。先が途絶える気配が一切ない高架橋。これに対して俺は若干の恐怖と畏怖を覚えた。ここまで歩いて来た距離は実際はフルマラソン完走程度の距離だ。だが、これだけの距離を歩いた事が無い俺にとってはかなりの距離に感じてしまっていた。


  伯方島に入ってから1時間弱。俺達は住宅街へと入った。緑色の見慣れない店舗などが多く、少し新鮮な雰囲気だ。この店は福山市などにあった気がするが広島市内では見なかったな。テレビCMでよく見るお馴染みの店である。


  伯方島に入った時点で時刻は13時半手前。時計の針が15時を回った辺りで俺達は本日の終点である大島大橋の手前にある伯方島の道の駅へと到着した。


  大島で泊まる予定の民宿は大島大橋の終点から少し離れている為、輸送には時間がかかる。その為、俺達はこの伯方島の道の駅で時間調整を行う必要があった。


  ここでは時間調整の為にここで少し休む必要があるのだ。とは言っても上級生の先輩達は既に宿に着いている為、あまり待つ必要も無いが、時間的に考えて休む時間は十分にあった。


  ここの道の駅では様々な特産品が買える。テングサで作った寒天ジュースや、愛媛の名産品であるじゃこ天、みかん100パーセントのジュースなど特産品のオンパレードである。じゃこ天は広島でも販売されている。魚のすり身をすり潰して作った食べ物であり、焼いても美味いし、直に食べても美味い。少し身が荒く、骨も入っている蒲鉾と考えたら良いだろう。


  これに醤油などをかけてトースターで焼いたら美味いんだよなぁ。


  俺は道の駅でテングサレモンジュースとじゃこ天を購入し、道の駅のベンチで足を揉んだ。ここには大きなビーチがあり、原付などの貸し出しも行なっている。


  風がかなり強い。少しでもゴオオォという海風が立てる音のせいで会話もままならない。今の季節は決して台風が来ている訳でも無い。それでもこの強風だ。西から来る高気圧から風が吹き下ろしているのだろう。この道の駅から見える橋の下を風は潜り、何も遮る物の無い瀬戸内海を我が物顔で通り抜けれるのだ。


  15分ほど休憩を取った俺達はビーチに向かう。するとそこには見慣れた人影があった。二年生達だ。


  ビーチにはイカの甲骨や、白骨化したフグの死骸、タイの死骸などが打ち上げられている。そんな中、颯先輩は魚を釣ろうと必死になっていた。いや、この風だったら無理だろ。その横で山中先輩達はふんどし姿で寒中水泳を試みている。


「嘘だろ!これ14号の重りだぞ!」

「もうそろそろ行こうぜ……重り何個海に投げ込んだんだよ」


  颯先輩が投げた重りは空中で風によって押し戻され、宙を舞い、かなり手前に落ちる。それも颯先輩が投げた場所から数メートルの場所に。勿論そんな事では釣りは出来ない。


  14号の重りと言うのは、かなり大きめの重りだ。少しだけなら釣りをやった事があるので俺でもわかる。それが押し戻される。その現象は風がどれだけ強いかを簡易に表していた。


「この為だけにじゃこ天買ったんやぞ」


  どうやら、餌は持ってきていなかったみたいで颯先輩は道の駅で買ったじゃこ天を針に付けていたらしい。いや、それ絶対投擲した時点で餌取れるから……。


「まな板と包丁も持ってきたのに……」


  そこまで用意周到ならどこで魚釣り出来そうかを事前に調べたり、餌を持ってきたり出来たんじゃないか?やはり、先輩達はどこかが抜けている。


  海に何個重り投げ込んだんだよ!?って椿先輩が突っ込んでる辺り、彼らは結構長い時間釣りをしているのだろう。勿論釣果はゼロだ。それに重りを投げ込んだと言う事は糸を何度も切ってしまっている。


  風に対抗する為に重い重りを付けたのだ。糸もそりゃあ切れやすくなる。そもそも、14号の重りとかあまり使った記憶が無い。


  先輩達はまだここから離れそうに無かった為、俺達は青空達のグループと合流し、内山先生の点呼を受けてから道の駅を出発した。


緑色のよく見る店とはザグザグの事です。

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