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70話 文化祭

  夏休みも半分程終わった。先輩達が出場したインターハイの結果は5位だった。それが良いのか悪いのか俺には分からない。だが、国背先輩の兄は昨年インターハイで2位の成績を残していた。それも一位と0.2点差で。国背先輩は現在高校三年生。志道学園ワンゲル部で高校三年生が大会に出るのは異例だった。


  昨年の結果を踏まえて、相当悔しかったのだろう。それで無理を言って今回出場させて貰ったので、その結果が5位。本人としては悔しかったに違いない。インターハイメンバーを迎えた日。エースは泣いていた。だが、言い訳をする事は一切無かった。


  しかし、あの日から国背先輩は人が変わったように練習を始めた。今までも国背先輩の練習量は他の人と比べて軍を抜いていた。それにも関わらず彼は更なる高みを目指していた。兄の仇を取る。そう心に覚悟を誓った。そう思わせる程に。





  夏休みが完全に終わり月例テストがあった。セミナー合宿の成果も虚しく結果は惨敗。俺は頭を抱えた。月例テスト終わりすぐ、鳥取県での登山合宿があったが、俺は次の定期テストの勉強の為に休むのを余儀なくされた。親から許可が出なかったのである。次のテストで少なくとも下から50番以内に入らなければ合宿には行かせない。そう言われてしまったのだ。




  時は10月。定期テストの次の日。希望者向けの合宿があった。少人数制の為、すぐに人数が埋まる。定員は10名程を予定していた為当然俺の入る席は無かった。


  合宿に参加出来ない。勉強も出来ない。俺の中に不安が溜まる。俺は少しずつ山への意欲が自分の中から削がれていく事を感じていた。今回だけ頑張ってみるか。俺は必死に休みの日を返上して勉強した。


 だが、朝も早く、夕方は部活。家に帰ってから夜遅くまで勉強。このサイクルを繰り返していた影響は昼間に顕著に現れた。


  授業中はぼーっとしており、何も頭に入ってこない。夕方は走るだけの体力が確保できない。何もかもが悪循環だった。だが、本人である俺はそれに気づく事は無かった。ただひたすら頑張って疲れる。それで成果が出ると思い込んでいたのだ。


  テスト返却の前。学校ではオープンスクールが開かれていた。ワンゲル部の出し物はクライミング体験。ジャグリング同好会の出し物はジャグリング体験。ジャグリングとクライミングと言うどちらもマイナー競技。物珍しさに沢山の小学生が集まった。その二つの部活を兼部している俺は忙しく動き回った。


  幸い、ワンゲル部の方はクライミング担当の良芽先輩と鬼登先輩だけでも事足りた為俺はジャグリング同好会の方のサポートに付いていた。クライミングは同時に出来る人数に制限がある。その為、人員はそこまで必要では無かったのだ。その代わり、俺達に求められたのは新規の勧誘だ。大きな看板を持って小学生を勧誘する。俺はジャグリングのブースでクライミング体験の看板を掲げたまま、ジャグリング同好会のサポートをしていた。


  ジャグリング同好会は自由な部活だ。半分程の部員がどこかの部活と兼部している。それ故にジャグリング同好会のブースには様々な部の勧誘看板が鎮座していた。俺達の勧誘の成果もあってクライミング体験には長蛇の列。一旦勧誘は打ち止めとなった。小学生は未知のものには弱いのである。この子らが来年学校に入学して、部に入ってくれる事を俺は願うのみだ。

 

  ワンゲル部に至ってはオープンスクールは半分詐欺である。クライミングなんてワンゲル部に入って最初の数回しかやっていない。俺も最初はこの餌に釣られたものだ。俺はこれで勘違いして入部してしまう被害者が増えない事を願った。


  オープンスクールは盛況に終わった。だが、俺にはこの後最大の試練が待ち受けていた。


 文化祭である。


 俺はジャグリング部の公演の練習の為にしばらくワンゲル部の練習をミーティングを除いてサボる事にした。だが、これは後に最大の間違いであった。


  ワンゲル部の様な運動部は文化祭当日やる事は無い。やる事があるとするならば文化祭前日に行う文化祭準備の椅子並べなどであろう。特に文化祭前後はクラスの出し物とかもある為、かなり忙しくなって来る。


  しかし、特例として文化祭前の一週間は学校で残留許可証と言うのを発行して貰えば夜7時半まで居残る事が出来た。それにより、ジャグリング同好会などの合同練習などにその時間を活用する事が出来る。だが、当然その一時間だけでは練習時間は足りなかった。


  個人の練習では無いのだ。ジャグリング同好会ではコンビネーションを主流とした合わせ技もある。その練習は一人では出来ない。人が必要なのだ。その為、俺は俺が練習から一人抜けた所で周りに影響が無いワンゲル部の練習よりもこちらの練習を取った。俺は文化祭が終わったらすぐにワンゲル部の練習に復帰するつもりだった。だが、未来はそうはならなかったのである。





  定期テストの結果が返却された。


『280/297』


  俺は数字を見て固まった。そして、とてつもない虚無感に襲われた。周りから見れば授業中常に寝ている俺が点が取れていないのはあからさまだった。だが、俺自身はこう思っていた。


「これだけやって取れないんだったらもう何でも良いや」


  俺は暫く言葉を発さず虚空を眺めていた。


いきなり時飛びます。

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