第96話 終末のバハムート
どこかの研究施設だろうか?
その場所は地上からの光が一切届かない、地下深くに広がる暗く陰湿な部屋であった。
部屋の中にはこの世界のありとあらゆる生物が、薬品の満たされた容器に浸され整然と並べられている。
その無数の容器に囲まれるようにして、部屋の中央には一際大きい水槽に浸された一匹のドラゴンの姿があった。
水槽の前には、そのドラゴンを見上げるように顔半分を仮面で隠した一人の男が立っている。
(クックック、そうです。貴方はこの世界に存在する全ての生物の頂点、最強の邪竜なのです。私の長い人生で培った、魔術技術の粋をそそぎ込み貴方を生み出しました)
(我は最強……)
(そうです。貴方を止めることが出来る者など、この星の何処にも存在をしません。この星に終焉をもたらすのが、究極生物たる貴方の役目なのです)
(この星に終焉を……)
(ただし、残念な事に今の貴方はまだ未完成なのです。貴方が真の究極完全体になるには、この星の力の権化たる六体全てのエレメンタルドラゴンの魔素が必要なのです。器として作成した貴方の肉体も、少しばかり魔素の許容量に心許なさがあります。今の貴方の体では完全体になるどころか、今まで集めた魔素の30%程度にしか肉体が耐えられません)
(我は未完成…… 我は30%……)
(クックック、安心をしてください。今現在、貴方の弟の作成に取り掛かっています。これから生まれる貴方の弟であれば、きっと旧支配者の邪神をも越える、究極の生命体としてこの星に終焉をもたらす事でしょう。真の秩序ある世界を築くのには、いまのこの星の生命は邪魔なのです。あ、いえ…… クックック、安心をしてください。30%でも貴方は世界最強なのです。兄より優れた弟などいるわけがないのですよ。魔素の大きさなど、その者の強さの指標のひとつでしかありません。そう、魔素量など単なる飾りなのです。30%の魔素でも貴方が世界最強なのです…… 本当ですよ?)
(兄より優れた弟はいない…… 魔素は飾り…… 30%でも我は最強…… 我は最強…… 我は最強……)
「……30%でも我は最強なのじゃ! は! こ、ここは何処じゃ? 確か我はドルビィ様の命を受けて、魔族領にいるというブラックドラゴンを捕らえるために……」
魔の森へと落下をしたドラゴンは、何が起こったのか理解できずにキョロキョロと周囲を見渡している。
「うう、痛…… 頭が割れるように痛い…… よく分からぬが、どうやら何か硬い物が頭に衝突をして、我は気を失ってしまっていたようじゃな。生まれたばかりの、まだ培養液の中にいた頃の夢をみていたようじゃ……」
額から流れる血にドラゴンは困惑をしながらも、ゆっくりとその場に立ち上がって周囲を見渡した。
「施設で確認をしてきた情報によると、この森は魔の森という場所じゃな。この森は数多の命が散っていった古戦場らしく、生きとし生けるものを拒絶するゾンビの生息地帯と言うことじゃ。落ちたのがこの場所でよかったの。最強生物たる我が、昏倒をして不様に倒れている姿など見せられぬからの。ブラックドラゴンの棲む地獄谷はまだ先じゃな。こんな所で時間を無駄には出来ぬのう。この程度の任務に時間をかける様では、最強生物たる我の沽券に関わるのじゃ。それにしても、いったい何が我の頭に衝突したのであろうか? オリハルコンの刃すら弾き返す、この我の体に傷を付けるとは……」
謎の衝撃への疑問は解消されてないが、ドラゴンは気を取り直して翼を広げその場から立ち去ろうとした。
(おーい)
「ん? なんじゃ? 何処からか声が聞こえるぞ?」
(おーい。こっちこっち)
「誰じゃ? 我のことを呼んでおるのか?」
ドラゴンは不思議そうに周囲を見渡したが、その場に誰の気配も確認することが出来ない。
「……誰もいない。頭を強く打ったせいで幻聴が聞こえているのか?」
(下だよ、しーたー。下にいるよー)
「下?」
ドラゴンは声に導かれるままに、自身の足元へと視線を移した。
「むむ、人族じゃと?」
「あ、やっと気が付いた。こんにちは、ワイバーンさんですよね? 本で見たことあるけど、実物は初めて見ました。思っていたよりも大きいんですね」
ドラゴンの足元では、爪先にも満たない小さな少女が、手を振りながらドラゴンを見上げていた。
しかし、友好的な少女の様子に反して、ドラゴンは体を小刻みに震わせている。
「グオオオ、なんじゃと! 貴様、この我のことをワイバーンと言いよったかあああ!」
少女の言葉に激昂したドラゴンは、オリハルコンすら貫く鋭い牙を剥き出しにして、足元のドーラへと顔を狂暴な近付ける。
「え? だってワイバーンさんですよね? 普通のドラゴンと比べて細い体と長い首をしているし、本で見た姿そのものですよ? まあ、私は普通のドラゴンも見たことはないですけど」
「な、ぐぬぬぬ…… た、確かに姿形はワイバーンに似ているかもしれん…… じゃが、それはワイバーンのデザインを流用して、この我が生み出されたからなのじゃ。決して手抜きではないぞ。これが最も洗練された肉体なのじゃよ。よく見るがよい。我の大きさはワイバーンと比べて十倍以上あるのじゃ。この巨大な体の中には、ワイバーンとは比べものにならない程の魔素が秘められておるのじゃ!」
「えー、ワイバーンさんじゃないんですか?」
「グフフフ、そうじゃ! 震えて聞くがよい! 我はこの世界のあらゆる生物の頂点に立ち、この世界を終焉へと導く究極最強の生命体! 終末のバハムートなのじゃ!!! ガハハハ、丁度良い。ブラックドラゴンを捕らえた後に、まずはこの魔族領を滅ぼしてくれようぞ!」
「な、なんだってえ!」
ドラゴンの口上を聞いた少女は、言葉を失いワナワナと震えている。
しかし、その震えの正体はどうやら恐怖からくる震えでは無さそうであった。
(あわわわ…… こ、このワイバーンさん…… 自分の事を特別で凄い力のある存在だと信じ混んでいるんだ…… ほ、本当に存在したんだ…… ちゅ、中二病って……)
「あ、あの、ワイバ…… じゃなくて何だっけ? えっと、週末のバカテンポさんでしたっけ? やっぱり、時々片目が疼いたりするんですか?」
「バ、バカテンポ? 何のことか分からぬが、我は別に目が疼いたりはせんぞ? ああ、そういえば今は頭の痛みが酷いのじゃ。先刻、森の上空を飛んでいたら突然何かが頭にぶつかっての」
「あ、それは私がやりました。バカテンポさんと話がしたくて、小石を投げて森に落っことしました。一応、手加減をして投げたのですが、もしかして痛かったですか? あ、そうか。ただの小石じゃ投げた時の衝撃に耐えられないと思って、アイアンワームで小石を硬くしすぎちゃったのかな?」
「なんじゃと?」
先程の衝撃の原因が自分であるという少女の言葉に、バハムートは当惑した顔をしている。
(こやつは何を言っておるのじゃ? 何の力も感じられぬ虫けらのようなこの小娘が、我の額を傷つけれるわけがなかろう…… しかも、小石を投げてなど…… いや、待てよ…… 我が森に墜ちたことを知っていると言うことは、先程の我の不様な姿も見られているのか!)
「そうか…… お主は見ていたのじゃな? ならば死ぬがよい!」
ドカーン
バハムートは一切の躊躇をする事なく、オリハルコンすら切り裂く自慢の爪を少女に向けて叩きつけた。
魔の森全体を揺るがすかの様な激しい衝撃は、周辺の木々を吹き飛ばし、まるで隕石が墜ちた跡の様な巨大なクレーターをその場に作り出してた。
「ハア、ハア…… これで先程の我の失態を知る者は消えた…… フフフ、たとえ小娘であろうとも我は容赦はせんぞ…… 何故ならば、我もまだ生まれたばかりなのじゃ! むしろ我の方が年下なのじゃ! ……ん、何じゃ? 爪が痺れてる?」
勝利宣言をしたバハムートであったが、地面に突き刺さっている腕を引き抜いて違和感を感じる爪先の確認をする。
ピキピキ
パリーン
オリハルコンを切り裂くと豪語していた自慢の爪は、渇いた音と共に粉々に砕け散ってしまった。
「ぎゃー! 我の爪がー! な、何じゃ、何が起こったのじゃ!」
ズボ
土の中から少女の手が飛び出した。
モゾモゾ
「……よいしょっと。ぺっぺ、口の中に土が入っちゃった。別に痛くはないけど、体が汚れて不快だな…… まあ、先に小石をぶつけたのは私なんだけどね」
土の中から這い出してきた少女は、不機嫌そうな表情をしながら服についた土を払っている。
その異様な光景を前にして、バハムートは背筋が凍る不気味さを感じていた。
(な、何故こやつは無傷なのじゃ? 我の渾身の一撃をその身に受けて、どうして平然と立っていられる? そもそも、どのようにしてオリハルコンよりも硬い我の爪を砕いたのじゃ?)
バハムートは目を見開きながら、少女と砕け散った自身の爪先をしきりに見回している。
「もしかして爪が割れちゃいました? 咄嗟にアイアンワームで体を硬くしましたので、バカテンポさんの爪が耐えられなかったみたいですね。アイアンワームは、何でも鉄みたいに硬く出きて凄く便利なんです」
(は? 体を鉄にする? いやいや…… たとえそれが出来たとしても、鉄の硬さ程度で我の爪が砕けるはずがない…… この小さな小娘は、自身の体をオリハルコンよりも硬く出来るとでも言うのか?)
「んー、それよりも困ったな。森の真ん中にこんなに大きな穴が出来てたら、私がやったと勘違いされて父に怒られちゃう。しょうがない、みんなでこの穴を埋めて」
ゴゴゴゴゴ
少女が何かに命令をすると、地の底深くから何かが蠢いているような地響きが発生した。
「何じゃ! 何が起こっている! うわああ!!!」
不気味な地響きにバハムートが狼狽えていると、バハムートの巨体ごと地面が盛り上がり、巨大なクレーター跡がみるみるうちに消えていった。
「よし、整地は完了。でも、見事にこの部分だけ地面が禿げちゃったな。木も生やしておこう、えい!」
少女は自身の腕を引っ掻いて、傷口から流れる白い血を地面へと撒いた。
ニョキニョキ
整地された土の中から辺り一面に木の芽が生えると、凄まじい速度で大木へと成長をしていく。
「よし、これで元通りになったかな」
「ば、馬鹿な…… せ、生命を誕生させたのか?」
「んー、ちょっと違うかな? 地中にいるワームに木の種を蒔いてもらって、私の体液で成長を促進させました」
「ワ、ワーム? 体液?」
「はい、紹介しますね。私の家族みたいなものかな? みんな可愛いワームたちですよ」
ウゴゴゴゴ
少女とバハムートを中心にして、夥しい数のワームが地中から湧き出してきた。
少女の小指程の小さなワームから、バハムートよりも巨大で見るからに獰猛そうなワームまで、隙間なく二人のまわりを取り囲んでいる。
(な、何なんだこれは…… 我は何と対峙をしていると言うのじゃ…… そもそも、この森は魔族領のはず。何故、人族の娘がこんな場所にいるのじゃ? いや、違う…… 我にはわかる…… この娘は魔族でも人族でもない…… ドルビィ様の言う通りじゃった。魔素など単なる飾りにすぎないのじゃ。この娘は正真正銘の化け物なのじゃ……)
ワームに囲まれながら、少女は満足そうな笑みを浮かべている。
完全に心をへし折られたバハムートは、少女に背を向けながら震えた声で口を開く。
「そ、そうで…… あるか…… うんうん、可愛いらしい家族じゃのう…… そ、それでは、我は急ぎの用事があるので、この辺でお暇させてもらうとしようかの……」
バサッ
これ以上この少女と関わってはいけないと判断したバハムートは、平静を装いながら何食わぬ顔で上空へ飛び立とうとした。
「あ、ちょっと待ってください」
ガシッ
その場を立ち去ろうと翼を広げたバハムートだったが、後ろから少女に尻尾を掴まれてしまう。
「な、何かな? 我は急いでおるので、掴んだその尻尾を放して欲しいのじゃが……」
「もう少し遊んでいきませんか? 私はこの森で父と二人で暮らしているので、話し相手がいなくて退屈しているんですよ」
「すまぬが、我はお使いを頼まれている最中なのじゃ…… お主と遊ぶのはまた次の機会と言うことで……」
バサッバサッ
「な、何でじゃ? 上空へ上がれない?」
いくら羽ばたいても飛び立てないバハムートは少女へと振り返り、その足元に蠢いているものに戦慄をする。
無数のワームが少女の足に絡み付くようにして、少女と地面を固定しているのであった。
「ひっ…… は、放せ! くそ、何て力なのじゃ!」
「んー、そんなに帰りたいんですか? それじゃあ、ひとつだけ実験に付き合って下さい。これが終わればバカテンポさんを解放してあげますよ?」
「じ、実験じゃと? な、何をする気じゃ?」
「先日、新しい能力のワームが生まれたんです。父には危険だから使っちゃ駄目と言われているのですが、バカテンポさんになら試しても大丈夫かなと思いました。ワイバーンには毒耐性があると本で読んだことがあります。バカテンポさんにも毒耐性はありますか?」
「も、勿論、我は究極生物じゃから毒への完全耐性を持っておるが……」
「ふひひひ、じゃあ…… ちょっとだけ…… いいですよね?」
少女が人差し指を立てると、指先から小さなワームが顔を出した。
「そ、それは?」
「ポイズンワームです。牙から毒を出すのですが、生き物に対してはまだ使ったことがありません。バカテンポさんは毒への耐性があるようですし、試しに使ってみても平気ですよね?」
シャー
少女は小さな牙を剥き出しにした指先を、バハムートへと近付けていく。
「ま、待て! 待つのじゃ! 確かに究極生物たるこの我は、この世界の有りとあらゆる毒に対して完全なる耐性を持っておる。しかし、それは駄目じゃ! 究極生物としての我の本能が拒否しておる! どう見てもそれはこの世の存在とは思えん!」
「はあ、はあ…… 大丈夫ですよ…… ちょっとだけ、先っちょだけなら入れてもセーフですから」
ガブ
「や、やめ…… 痛! イタタタタ! 入っちゃってる! 先っちょが入っちゃってる!」
「はあ、はあ…… 入れたい…… 奥までズボっと入れたいよ……」
「イタタタタ! 何でこんなに痛いのじゃ! 抜いて! それ以上入れないで!」
「はあ、はあ…… あー、出したいよー 濃いのをドクドクっと中に出したいよー」
「やめてくれ! 出さないで! 中に出されたら逝っちゃうから!」
「はあ、はあ…… 出ちゃう、出ちゃうよ…… あ、ちょっと出ちゃった」
「あ、ああ…… そんな……」
バタ
ポイズンワームの毒を流されたバハムートは、白目を向きながらその場に倒れた。
そして、薄れゆく意識の中、自身の愚かさを悔いていた。
(何と愚かだったのじゃ… 我は最強なんかではなかった…… たとえ100%の究極完全体になったとしても、この化け物には全く敵わないであろう…… ドルビィ様、申し訳ありません…… ドルビィ様に魔素は飾りと忠告をされていたのに…… ああ…… 願わくは…… 新しく生まれてくる弟が、この化け物に出会うことがないように…… 我々は…… 弱い……)
バハムートは死んだ。
「あ、死んじゃった。ちょっと漏れただけなのに、毒が強すぎたのかな? もっと、毒の強さをコントロール出来るようにしないとな。さてと、さっきから覗いているそこのあなた。あなたはストーカーさんですか? それでは、次はあなたに遊んでもらいましょう」
(気付かれていた!)
木の陰から一部始終を監視していたハイラは、恐怖に打ちひしがれ地面に腰を付いて震えている。
(に、逃げないと!)
慌てて立ち上がろうとするハイラだが、足が震えて上手く立ち上がる事が出来ない。
(動いて! 立ち上がって逃げないと!)
ハイラは震えを止めようと必死に自身の足を叩くが、震えが止まるより先にハイラの頭上から少女の声が聞こえてきた。
「逃がしませんよ? ロリコンとストーカーは見つけたら殺していいと父から教わっています」
ジョバー
ハイラの下の地面に水溜まりが広がっていく。
(死…… そ、そうだ! 父上から預かったあれを!)
パニックに狼狽えながら、ハイラは震えた手で持たされた包みを少女へと差し出す。
「ああ、そう言うことでしたか。荷物を届けに来てくれたんですね。ありがとうございます。私の力を見られてしまいましたが、おじさんの知り合いなら殺したりしなくても大丈夫ですよね?」
コクコク
ハイラは無言で何度も頷いている。
「うお! でか! こんな大きなドラゴンは初めて見たな」
バハムートへと近付く何者かの声が聞こえてきた。
「あ、父だ! 見て見てー ワイバーンさんだよー 遊んであげたら死んじゃったー」
少女は嬉しそうにその声の元へと走っていった。
「た、助かった…… あ……」
危機を乗りきったハイラは、自身の下半身の状態に気が付くと、無言で立ち上がって森の奥へと消えていった。
その日の夜、魔王城の謁見の間では、魔王がハイラからの報告を受けていた。
「ご苦労だったねハイラ。どうやら、無事に世界の危機を乗り越えることが出来たようだ」
安堵した表情をする魔王とは対照的に、ハイラは震えた声で魔の森で見た少女についての質問をする。
「魔王様…… 私は恐ろしいです。彼女は何者なのですか? 魔の森にやって来たドラゴン…… あれはまさしく、この世界を滅ぼすことが出来るような危険な存在でした。そんな存在を相手にして、彼女はただの遊びかのように…… まるで子供が羽虫をいたぶるかの如く、あのドラゴンを殺してしまいました。何故、あのような非現実的な存在が魔族領にいるのですか?」
「え? 何でって、そりゃあ英雄殿のお子さんだからだよ。英雄殿が人族の女性との間で作った娘さんらしいね。君も見ただろうけど、彼女はまだ幼いから善悪の区別もあまりついてない。何としても、彼女にはこの世界を好きになってもらえるような、理性的な大人へと成長して欲しいんだけどね」
「……本当に英雄殿の娘なのですか?」
「さあ、どうだろうね? 少なくとも私はそう報告を受けている。そして、私はそれを受け入れた。そんなに気になるなら、君が自分で英雄殿か彼女に訊ねてみるといい」
「嫌です、怖いです。確実に殺されます」
「あはは、だよね。まあ、今後は君に彼女の監視を頼むことにしたから、機会があれば一度訊ねてみるといいよ」
「は? 何を言っているんですか? 嫌です、殺しますよ?」
「あれ? 君のその服装、さっきと変わっているよね? クンクン、この臭いは…… あ、なるほど…… ふふふ、君も大変だったようだね」
何かを察した魔王は、にやけた顔でハイラを見つめる。
「……コロス」
「え? 何て言ったの?」
ハイラは立ち上がって腰から短刀を抜く。
「この変態ズリセン魔王めが! 死ねー!」
「ヒ、ヒー!!!」
今日も魔王城の謁見の間では、二人のイチャつく声が響き渡っていた。




