第79話 ミミズ少女と天変地異
「ロリコンにはロリをぶつければいいんだよ作戦!」
「ロリ? それはどんな作戦だです?」
「ふひひひ、見ていて。百聞は一見に如かずだよ、ほい!」
チラ
ドーラはレイビィの前で神官服の裾を掴んでたくしあげた。
「おお、素晴らしい光景であります!」
レイビィの魔素が少し大きくなった。
「レイビィの魔素が増加した? いったい、どういう仕組みなんだです?」
「ふひひひ、どう? 簡単でしょ? レイヴィにパンツを見せることにより、魔素が希望に染まって大きくなるんだよ」
「パンツで? 意味が分からないぞです」
「んー、私も理屈は分からないんだけどね。もしかしたら、ドルビィさんを倒したときに希望を与えちゃったのが影響でもしているのかな?」
「ドルビィに希望を?」
「うん、私のファーストキスをあげちゃった」
「お、お、お姉様のファーストキスを! そ、そんな…… あたいが狙っていたのに、すでにドルビィの奴が……」
ただの間接キスである。
もっと言うと、ドルビィは体を内側から食い荒らされていた。
まあ、ドルビィの最後は幸せそうであったのも事実である。
「まあ、それが原因かは分からないけど、レイビィはエッチな事をしてあげると希望の魔素が大きくなるんだ」
「希望の魔素…… もしかして、レイスなのに聖属性魔法が効かないと言うのも、それが理由になっているです?」
「んー、多分そうじゃないかな? 存在自体が希望の魔素の塊になっているようだからね。何故かは分からないけど、レイヴィには聖属性の魔法が使えるようだし」
「特異過ぎて、あたいには理解が追い付かないぞです。でも、レイヴィに聖属性の魔法が使えるのは当然だです。魔神様の眷族になる前は、ドルビィは聖女の使徒だったです。自ら聖属性魔法の使用を禁じていたが、使おうと思えばドルビィにも聖属性魔法が使えたです」
「へー、そうなんだ。ドルビィさんはなんで転職をしたの?」
「あたいが魔神様の眷族なる前のことだから、詳しくは教えてもらってないです。ドルビィはあまり過去のことを話したがらなかったんだです。一度聞いてみたことがあったけど、笑いながら方向性の違いだとか言ってたぞです」
「なんか、鳴かず飛ばずの冒険者パーティーみたいな脱退理由だね。まあ、今はレイヴィの魔素を上げることに集中をしよう」
「あたいも協力をするってことは、レイヴィにパンツを見せればいいかです?」
「うん、嫌だったら別にやらなくてもいいよ?」
「見た目がドルビィだから妙な感じもするけど、これもお姉様のためだです! やってやるぞです! ほい!」
ラトはドレスの裾を掴んでたくしあげた。
「な、な、何だとおおおおお!」
レイビィは目を見開いて、ラトのドレスの中を凝視する。
すると、とてつもない勢いでレイビィの魔素が増大していった。
ゴゴゴゴゴゴ
周辺の大気が激しく振動をして、雲を吹き飛ばすほどの眩い光か天を貫く。
「え? 何? 何が起きているの?」
自分の時とは比べ物にならないほどのレイビィの変化に、ドーラは隣でドレスをたくしあげているラトへと視線を向ける。
ラトはパンツを穿いていなかった。
「ちょ、ラトやり過ぎ! それは駄目! うるさい人が見ていたら炎上しちゃう!」
「え?」
ラトはたくしあげたドレスの中を確認した。
何も穿いていない自身の姿に気が付いて、慌ててたくしあげていたドレスの裾を下ろす。
バサ
「そうだ、エイスに洗濯を頼んだときに脱いだままだった……」
バリバリバリバリ
ドーラはサンダーワームで森の上空に巨大なプラズマを作り出した。
現れた巨大な光の玉は、湖周囲に雷を落としながら森全体を揺らしている。
まさに天変地異、世界の終わりのような光景であった。
「レイビィ…… 忘れなさい…… 今見たものを記憶から消しなさい!」
バリバリバリバリ
「ひ、ひー なんでー」
レイビィは何も悪くは無いのだが、大精霊に匹敵するほど大きくなったレイヴィの魔素が、あっという間にプラズマによって分解されていく。
「お、お姉様…… そろそろ止めた方が良いぞです…… それ以上やるとレイビィが消えそうだし、この森も消滅してしまうです」
バリバリ……
上空のプラズマが小さくなり消えていった。
「は、しまった。思わず怒りすぎちゃった。レイビィは消えていないよね?」
「ひ、ひー なんとか……」
「ギリギリだです。もう、普通のレイスよりも魔素が小さいぞです」
魔素を増やすどころか大幅にマイナスになってしまった。
「ごめんねレイビィ。ラトも大丈夫? 見られてショックじゃない?」
「あたいは大丈夫だです。ドルビィとは家族のような関係だから、生まれ変わりのレイビィに見られても、少しビックリしたくらいだです。寧ろ、ドルビィとはよく一緒に風呂に入っていたから、ここまで効果があること自体が不思議だぞです」
「そう、良かった。多分、レイヴィにはドルビィさんの記憶がないから、ラトのことを家族としてではなく、異性として認識をしているんだろうね。でも、パンツを穿いていないラトには、これ以上この作戦をやらせるわけにはいかないよね。仕方がないから、初めの予定通りに私一人でやるか。ほい!」
チラ
軽快なリズムでドーラは裾をたくしあげていく。
ラトはダイフクと一緒に座りながら、その様子を眺めていた。
少しずつレイビィの魔素は大きくなっているが、先ほど失った魔素をとり戻すのには、まだ時間がかかりそうである。
「ほい! ほい!」
「お姉様、作業をしながらでいいから、質問をしてもいいかです?」
「いいよ、ほい!」
「お姉様の作った秘密結社ノーメンは、世界征服が目的なのかです?」
「え、何それ? あ、そう言えば、カムジさんに聞かれたときに、そんな風に答えたんだっけ、ほい!」
「違うのかです?」
「んー、目的とか全然考えていなかったから、秘密結社っぽい感じで答えただけかな、ほい!」
「そうだったかです。どちらにしても、お姉様に嫁いだあたいのことも、秘密結社のメンバーに入れてくれです」
「嫁いだ? よく分からないけど、ラトも秘密結社入りたいの? んー、別にいいよ。それじゃあ、帰りにアダマスの街に寄って、ラトの分の能面を買いに行かないとね、ほい!」
世界を滅ぼすことも可能な秘密結社なのであるが、加入のハードルは学院のサークル並みに緩いのであった。
「あたいとしては、魔神様の戻らないこの世界なら、お姉様が支配するのも悪くはないと思うです。お姉様には、その力があるぞです」
「んー、そう言うのは別にいいや。何か面倒くさそうだし、私は静かに暮らしていく方が性に合っているかな、ほい!」
「……分かったです。万が一、お姉様を利用して何かを企もうとする奴がいたら、あたいが全力で排除をするぞです」
「ありがとう。でも、危険なことはしちゃ駄目だよ、ほい!」
「はいです!」
「ほい! ほい! ほい!」
その日の空が暗くなるまで、アダマスの森にドーラのかけ声が響き渡っていた。




