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第77話 ライムvsラト

「それ本当か? もしも、ラトの言っていることが事実だとすれば、今までのハーフスケール族の常識がくつがえされるぞ……」


「本当だぞ。魔神様に聞いた話だから間違いはない。ハーフスケール族は呪われた巨人族の末裔まつえいだ」


 砂漠地帯から宿屋へと戻ってきたドーラたちは、ベッドの上に座りながら話をしている。

 元々、ライムは色々と事情に詳しいラトから話を聞く予定だったのだが、自身の予想を遥かに越える事実が次々と飛び出してきたことに、ライムはベッドの上で呆然自失ぼうぜんじしつとなっていた。

 ラトが魔神の眷族だと言うことも、最早ライムには些細な問題になっているようだ。

 しかし、ドーラには興味のない話題らしく、退屈そうな顔でダイフクのお腹をでている。


「ハーフスケール族が精霊魔法を得意としているのは何故なんだ? 精霊の血を色濃く受け継いでいるからだと伝わっている?」


「そんなことを言ったら、今の世界にいる全ての種族は精霊の血を引いているぞ。そもそも、この星の魔素から生まれた巨人族は、ドラゴンと同じ原初の生命体だ。後から作り出された人族や亜人種と比べても、圧倒的に優れた魔素を持っていたんだ。その末裔であるハーフスケール族が大地の精霊に魂をいじくられたんだから、他の種族よりも精霊の色が濃くなったとしても不思議じゃないだろ」


「まてまて! 全ての種族が精霊の血を引いているだと? どういうことだ?」


「言葉の通りだ。始まりの二人と言われた、闇の大精霊様と光の大精霊が地上へと降りてきて、全ての種族のになったんだ」


「それって、もしかしてアダムとエバ信仰か? 300年前に魔神の眷族によて滅ぼされた、故国ユーラリシアに伝わっていた教えだったか」


「あたいらは関係ねえぞ。あれはドルビィが独断でやったことだ。まあ、アイツにはその権利が有っただろうがな」


「権利?」


「ふん、昨日今日出会ったばかりのお前に話すことじゃねえよ。これは、あたいら家族の問題だ。まあ、お姉様が聞きたいと言うのなら、詳しく話してやってもいいがな」


 ライムはダイフクとまったりしているドーラを見る。


「んー、私は興味ないから別にいいや」


「だそうだ」


「……そうだな、他人のプライベートに踏み込むのは良くないな。そもそも、大地の精霊が肉体を得た方法がわかった時点で、私の悪魔の岩山での目的は果たしている。私は歴史家でもなんでもないから、過去の神話なんて興味はないからな」


「なら、儀式はもう止めるのか? そうした方が利口だぞ。上位精霊が面倒くさい存在なのは分かっただろう?」


「駄目ー!」


 すさまじい勢いでドーラはベッドの上に立ち上がった。


「ラト、何て恐ろしいことを言うの? 何があろうとも、ライムさんには二週間の儀式をして貰わないと困るの! そうじゃないと、私がイベントの報酬が貰えなくなっちゃうんだからね!」


 ドーラは目を¥にしながら、ラトの鼻先に指を当てて絶叫をしている。


「ももも、申し訳ないです! お姉様の決定は絶対です! おい、精霊巫女! 明日から全力で儀式をしやがれ! 絶対にイベントを成功させるんだぞ!」


「あ、はい……」


「そういうわけなので、ライムさんは明日からも儀式のお願いをします。ちゃんと約束した通りに、レイスには大精霊クラスの魔素を与えますので」


「レイスって、例の無詠唱転移の使えるレイスかです? 無詠唱転移はドルビィにしか使えないと思っていたぞです」


「え? あ、うん、ちょっとね…… そうだ、ラトも明日から協力をしてくれない? その時に、そのレイスにも会わせてあげるよ?」


「やるぞです! お姉様のためならば、何処までもついていくぞです!」


「何をするつもりかは分からないが、無茶なことだけはするなよ? ドーラが暴走しそうになったら、ラトがちゃんと止めるんだぞ? 砂漠でしたようなことを万が一にでも街中でやられたら、大変な惨状になるからな?」


「やりませんよ。危険だと分かってるから、あの時は砂漠に移動をしたんじゃないですか」


「そうだぞ。お姉様のやることに間違いがあるわけないだろ、この馬鹿やろうが」


「……凄い心配だ」


 色々と疲れたのでライムは話を切り上げることにした。

 夜もふけてきた時間なので、いつまでも酒場から帰らないミーシャのことは放っておいてベッドで休むことにする。

 昨日まではライムがドーラと同じベッドで寝ていたが、今日はラトの強い希望により、ラトとドーラが一緒に寝ることになった。


「それじゃあ、よろしくなラト。ドーラはメチャクチャ寝相ねぞうが悪いが、今の私たちなら大事になることはないだろう」


「はあ、はあ…… と、とうとうこの時がやって来た…… け、結婚初夜が……」


 ラトは目を血ばらせながらドーラの隣に横になる。


「じゃあ、おやすみねラト。スースー」


「お、お姉様?」


 ラトは一瞬で眠りについたドーラに呆気に取られている。


「ドーラは物凄い寝付きがいいからな、って結婚初夜ってなんのことだ?」


「はわわわ…… こ、これが倦怠期けんたいきというものか……」


「意味がわからないことを言っていないで、ラトも早く寝ろよ。グーグー」


 相変わらず、二人とも寝付きが良いのであった。

 一人取り残されたラトは涙目で震えていたが、夜更かしは体に悪いと魔神から言われているため、今日は諦めて寝ることにした。

 全員が眠りについてしばらくすると、ベッドの中でドーラがごそごそと動き出す。


「むにゃむにゃ。今日はダイフクがないな…… 何処だ、私のダイフク…… ごそごそ」


「ん、なんだ…… お、お姉様? も、もしかして、ようやく初夜をやる気になったですか!」


「むにゃむにゃ。これはまな板か…… 私のダイフクは何処だ……」


 ドーラは目を閉じたまま立ち上がって何かを探しだした。


「クンクン、匂うぞ…… ミルクの匂いが……」


「え、ミルク? お姉様? あたいとの初夜は?」


 ドーラはライムが寝ているベッドへと移動をして、毛布を引き剥がした。


「いただきます…… ちゅーちゅー」


 ドーラは寝ているライムに抱きつくと、上着をたくしあげてミルクを吸い始める。


「はう! ド、ドーラ! 何で私のベッドに!」


「お姉様! 何であたいじゃなく精霊巫女に夜這いを!」


「ちゅーちゅー ミルク美味しい」


 ラトはライムからドーラを引き剥がそうと、必死に体を引っ張っている。

 スレイブワームにより強化をされた二人であったが、どんなにあらがってもドーラを止めることが出来なかった。


「な、何て力なんだ! さすがはお姉様、じゃないぞ! 駄目だですお姉様! 浮気は絶対にするなです!」


「く、まったく抵抗が出来ない…… 私はまだドーラのことを過小評価していたのか…… でも、何故だか悪い気がしない…… この感情は何だ? まさか、ワームの影響がまだ残っているのか?」


「おい、性欲巫女! 何まんざらでもない顔をしていやがる!」


「ラト…… 悪いな…… ドーラは私のミルクに夢中なんだ……」


 ライムは頬を赤らめながらラトに謝罪をする。


「ガーン…… ま、まさか、お姉様を寝取られた……」


 ラトは力なく膝から崩れ落ちた。


 カランカラン


 明かりの消えた宿屋の受付に、カムジに肩を抱かれながら酔っ払ったミーシャが帰ってきた。


「宿屋につきましたよ、ミーシャ様。いい加減に自分の足で歩いてください」


「ふしゅー、おお、ご苦労じゃのカムジよ。ついでに二階の部屋まで連れていって欲しいのじゃ」


 本来であればドラゴンであるミーシャは、例えS級冒険者と言えども運べる重さではないのだが、酔っぱらっていても一応は体重のコントロールをしているようであった。


「はあ、分かりました。部屋についたら自分の足でベッドに入ってくださいよ?」


 ミーシャとカムジは階段を上がっていくが、部屋に近付くにつれて、何やら悲鳴と卑猥ひわいな声が聞こえてくる。

 部屋の前に到着したミーシャとカムジは、ただならぬ不穏な空気に顔を見合わせていた。


「こ、これは…… 中に入っては駄目なやつなのでは?」


「フシュー、いつもにもまして、入りずらい雰囲気じゃの……」


 ガチャ


 ミーシャは恐る恐る部屋のドアを開けた。


「はあ、はあ、いいぞ…… ドーラの好きなだけ吸っていいんだぞ……」


「うわーん! お姉様が寝取られたー!」


 バタン


 ミーシャは無言でドアを閉めた。


((どんな状況?))


 部屋の外でミーシャとカムジは固まっている。

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