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第74話 ミミズ少女の失敗

 ドーラたちは、悪魔の岩山から宿屋へと戻ってきた。

 部屋の中にはミーシャの姿はなく、朝に出掛けたまま帰って来ていないようである。


「ミーシャさんは、まだ帰っていないみたいですね」


「ミーシャもラトっていう子と知り合いなんだろ? 迎えに行ってるのか、もしくは酒場で酒でもんだくれているんだろうよ」


 間違いなく後者だとドーラは思った。


「夕食はどうする? ラトって子はまだ来ていないが、ドーラの腹が減っているのなら先に食べてもいいが?」


「んー、ラトは何年もジャガイモしか食べていない可哀想な子なので、来るのを待ってから美味しいものを食べさせてあげたいです」


「おお…… 何かドーラが良いお姉さんに見える……」


「ふひひひ、そうですよ。ラトは妹みたいな子なので年上の私が面倒をみないと……」


(あ、違うか。ラトは魔神の眷族だから、少なくても三百歳以上ってことだよね。んー、でもあの感じだと、精神年齢はまだまだ幼いみたいだし、ダークエルフの年齢ではまだまだ子供にあたるのかな? まあ、私の方が姉役でいいよね)


 精神年齢ではドーラも充分に幼いのだが、ドーラは妹が欲しかったので自分は姉ポジションでいいかと思っていた。

 オママゴト感覚でいるドーラも、まだまだ子供なのである。


「それじゃあ、私は受付に食事を注文してくる。ラトって子はろくな食事をしていないようだし、せっかくだから美味しい物をいっぱい頼んでくるよ。料理が出来るまで時間もかかるだろうし、その間ドーラは風呂にでも入ってきたらどうだ?」


「そうですね。今日はほこりっぽい場所に長くいたので、お風呂で流して綺麗にしてきます」


 ライムは部屋を出て、一階の受付へと注文に向かった。

 階段を降りていくと、受付に大きな荷物を背負ったダークエルフの少女が立っているのが見える。


(お、ダークエルフの子がいるな。あの服は確か、ドーラが前に冒険者ギルドで着ていたドレスと同じ服だな。と言うことは、あの子がラトか)


「よう、もしかしてお前がラトか?」


 突然声を掛けられたラトは、怪訝けげんな表情でライムのことをにらんでいる。

 どうやら、叡智の仮面はアジトに置いてきたらしく、表情が分かりやすくなっていた。

 ただし、今まで叡智の仮面に頼っていた肉体活性の魔素を、自分だけの魔素でおぎなっている為、今のラトの魔素は普通のダークエルフの子供並みであった。


「……お前は精霊巫女か。そう言えば、お姉様のオマケで一緒に行動をしてたな」


「オ、オマケ?」


「ふん、まあいい。本来なら、お姉様との新婚生活には邪魔な存在だが、急な嫁入りと言うこともあるし、仕方がないからしばらくは一緒に居るのを許してやる」


「し、新婚?」


「部屋はどこだ?」


「え、二階に上がってすぐ横の部屋だ……」


「ふん、忠告をしておく。あたいとお姉様の邪魔だけはするなよ!」


「あ、はい……」


 不機嫌そうに話していたラトだったが、すぐさま満面の笑みに変わり二階へと上がっていった。

 呆気に取られるライムであったが、気を取り直して受付で食事の注文をする。


「何なんだ、あの子は? まあ、先に注文を済ませるとするか。料理を部屋まで届けて欲しいんだが頼めるか?」


「それでは、新たに一名様の長期宿泊と言うことなので、お先に追加の料金をお支払頂きます」


「……いや、私が払うのかよ!」


 情報量が多すぎて、理解が追い付かないライムだった。


 バーン


「お姉様、来たです! ……あれ? お姉様が居ない?」


 勢いよくドアを開けて部屋の中へと押し入ったラトだったが、そこにはドーラの姿は見当たらなかった。


「くそ…… さては、精霊巫女の奴がお姉様を隠しやがったな! 何処だ、何処にお姉様を隠しやがった!」


 ラトはベッドの中やカーテンの裏を探すが、何処にもドーラの姿を見つけられずにいる。


 カポーン


 入り口の隣にある扉から微かに音が聞こえてくる。


「なに、こんな所に扉があったとは…… これは隠し部屋か?」


 単に勢いよく部屋に入った為に、通り越して気が付かなかっただけである。


「クンクン、匂うぞ…… 間違いない、これはお姉様の匂いだ!」


 ラトにそんな能力は無いのだが、今のラトは全ての感覚がまされているのであった。


 バーン


「お姉様! 来たです!」


「あ、いらっしゃいラト。ラトも一緒にお風呂に入りたいの?」


 お風呂場ではドーラが全裸でダイフクの体を洗っていた。


「こ、こ、これが、ラッキースケベ……」


 ブー


 ラトは勢いよく鼻血を出して後ろに倒れた。


「……お前ら何をやっているんだ?」


 部屋に戻ってきたライムは、あまりのラトの騒がしさに呆れた顔をしている。

 ラトは風呂場の前で倒れたまま意識を失っているようだ。

 仕方がないので、ライムはラトをベッドまで運んで寝かし付けた。

 そんな状況も他人事のように、スッキリとした表情でドーラは風呂場から出てくる。


「ふう、気持ちよかった。ダイフクも綺麗になったね」


「ワン」


 ダイフクは嬉しそうに尻尾を振っている。


「お前らはいつもマイペースだな。ところで、このラトって子も私たちと一緒にこの宿屋に泊まるんだろ? さっき受付で追加の宿泊代を払わされたぞ。私が立て替えた金額は、ドーラに渡すイベント報酬から引いておくからな」


「ガーン…… 私のお金が……」


「それなら、ミーシャに相談でもすればいい。ドーラの話では、ミーシャとこの子は友人関係なんだろ? あいつは大金を持っているし、どうせ酒代にしか使わないだろうからな。年長者なんだから、あいつに払わしてやれ」


「ミーシャさんを探してきます!」


「いや、もうすぐ料理がくるから…… まあ、ミーシャならそのうち帰ってくるだろ」


「んー、食事もお金と同じくらい大事なので、今回はミーシャさんが帰ってくるのを待ちます」


 コンコン


「お、料理が届いたみたいだな」


 運ばれてきた料理がテーブルに並べられていく。


「ふひひひ、美味しそう……」


 部屋の中に充満する匂いに、ドーラはたまらずよだれれ流している。


「まだ食べるなよ。一応ラトが主役なんだから、目を覚ますまで食べるのは我慢をしろ」


「ラト! 早く起きて! ご飯の時間だよ!」


 ドーラは必死の形相ぎょうそうでラトの体を揺すって呼び掛けるが、ラトは幸せそうな顔で寝たまま一向に起きる気配がない。


「ぐぬぬぬ、し、仕方がない……」


 ニュルニュル


 ドーラは指先からスレイブワームを出して、ラトの耳へと挿入そうにゅうをする。

 どうやら、ラトを起こすことしかドーラの頭にはないようで、容赦なく奥までズッポリとワームを入れていた。

 その様子をライムは目を丸くして見ている。

 ほどなくして、ラトの髪が白色に染まる。


「うう、な、何だ? 力があふれてくるぞ……」


 無理やりスレイブワームの白い体液を体中に流され、元気一杯になったラトが目を覚ました。


「ふう、良かった。これでご飯が食べられる」


 ラトが起きたのを確認して、ドーラはスレイブワームを回収する。

 ドーラの後ろで一部始終を見ていたライムは、ひきつったような声で口を開いた。


「え、えっと…… ドーラさん? 今のは?」


「……あ! ふひひひ、みーたーなー」


 キラーンと目を光らせながらドーラは振り返る。

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