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第64話 ミーシャvs白い悪魔

「ふしゅ、もう朝か…… 本当に酷い目にあったのう……」


 目を覚ましたミーシャは、部屋の中を見回してライムの姿が見当たらないことに気が付く。


「ライムは何処にいるのじゃ?」


「おはようございます、ミーシャさん。ライムさんなら今日も朝風呂に入っていますよ」


「ああ、なるほどのう…… 昨夜はライムに助けられたのじゃよ。もう少しで、我はドーラに食べられてしまう所じゃったのじゃ」


 ミーシャはボロボロになった胸のうろこを見つめながら、昨夜の出来事を思い返している。

 昨夜、ライムと約束をしていた通りに、ミーシャはドーラと同じベットで眠りについていた。


「むにゃむにゃ、何か硬いものが顔に当たっている……」


 ドーラは鱗におおわれているミーシャの胸を鷲掴みにした。


「ふしゅ…… んん、なんじゃドーラよ? なにゆえに我の胸を掴んでおるのじゃ?」


「むにゃむにゃ、これは岩飴いわあめかな? 美味しそう、いただきます…… ペロペロ」


「フシュ? 何をしておるのじゃドーラよ? 我の胸なんか舐めても美味しくかろう?」


「むにゃむにゃ、味がしないな。よし、噛み砕いてみよう…… ガブリ」


 ドーラはミーシャの背中に手をまわして、鱗に覆われたミーシャの胸にかじりついた。


 ミシミシ


「うぎゃ! わ、我の鱗が!」


 バリバリ


「ま、待つのじゃドーラ! 腕を放すのじゃ! くう、なんたる剛力! ラ、ライムよ! 起きてくれ! た、助けてくれー!」


「んん、うるさいなあ…… せっかく、久しぶりにゆっくりと寝られたと言うのに…… ってドーラ! 何をやってるんだ!」


「ライムよ助けてくれ! このままじゃ、このままじゃ我は食べられてしまうのじゃ!」


「こら、ドーラ! ミーシャを食べちゃ駄目だ! ミーシャなんか食べても美味しくないぞ! ……いや、まてよ。ドラゴンの肉は高級料理でめちゃくちゃ美味しいって聞いてことがあるな」


「ライムー! 馬鹿なことを言うとる場合ではないのじゃ! 早く、早くドーラを引きがしてくれ!」


「す、すまん!」


 ライムは慌ててドーラを引き離そうとするが、ドーラの怪力の前に全く歯が立たないでいる。


 ベキベキ


 ミーシャの鱗が砕けてベットの上に飛び散った。


「ぎゃー! もう駄目じゃー! お終いじゃー!」


「くそ、こうなったら仕方がない! ほら、ドーラ! お前の大好きなミルクだぞ! 美味しい美味しい私のおっぱいだぞ!」


 ライムは上着を脱ぎ捨てると、ドーラの後頭部に自身の胸を押し当てた。


「くんくん、匂うぞ…… ミルクの匂いがする……」


 ドーラはくるりと振り返り、ライムの胸へと吸い付いた。


「いただきます…… ちゅーちゅー」


「はう…… 結局、こうなるのかよ……」


 そして、長い夜が明けた。

 汗を流し終えたライムが、下着姿で風呂場から出てくる。


「おお、ライムよ。昨夜は本当に助かったのじゃよ」


「はあ、不本意だったが仕方がない状況だったからな。まったく、ドーラの怪力の前には、エレメンタルドラゴンのミーシャですらあらがうことが出来ないとはね…… これでアダマスの街に帰るまでは、私の安眠もお預けとなってしまった……」


面目めんぼくないのう…… あそこまでの絶望を感じたのは、生まれてはじめてなのじゃよ」


「ミーシャさんの鱗がボロボロですけど、私が寝ている間に何かあったんですか?」


 元凶のドーラは、まるで他人事のような顔をしている。


「はあ、何でもない…… ドーラの寝相が悪かっただけだ。ドーラは今日も別行動なんだよな? ミーシャはどうする? 今日も私の儀式を見ているか?」


「フシュー、今日は我も別行動をするのじゃ。昔の知り合いに少し会いに行ってくるのじゃよ」


「わかった。もし何かあったら、悪魔の岩山の頂上まで連絡に来てくれ」


 宿屋での朝食を済ませると、皆それぞれの目的地へと向かった。

 ドーラは昨日と同じように、悪魔の岩山の裏側へと訪れている。

 もちろん、全員とも秘密結社ノーメンに変装をしていた。


「それじゃあ、今日もよろしくねレイビィ」


「かしこまりました」


 レイビィは一礼をして、悪魔の岩山の中へと消えていった。


「さてと、今日は何しようかダイフク」


「ワン」


「そっか、カムジさんのことが気になるのか。昨日、カムジさんが帰っていく時に、念のためにスコープワームをカムジさんの体に付けといたんだよね。せっかくだし、カムジさんが何をしているのか覗いてみよう」


 ドーラはカムジに付けたスコープワームと視界の共有をする。


「ここはカムジさんの部屋かな? 見やすいようにスコープワームを移動させよう」


 スコープワームはカムジの体から離れて、部屋全体を見やすい場所へと移動をした。


「部屋の中には、カムジさん一人だけしかいないな」


 カムジはソファーに座りながら剣の手入れをしているようだ。


 ガチャ


「あ、誰かが来た」


 部屋の中に入って来た人物は、ローブを脱いでカムジの正面のソファーへと腰を下ろす。


「悪魔の岩山の様子はどうだった?」


「今日も精霊巫女は儀式を始めたようだ」


「そうか。あの程度の脅しでは、やはり儀式を止めることは出来なかったか」


「悪魔の岩山頂上には、儀式を行う精霊巫女の姿しか見当たらなかった。昨日一緒にいた仲間は、精霊巫女とは別行動をしているのだろう。この機に乗じて、その仲間を探し出してさらうと言うのはどうだ? それを取り引き材料として、精霊巫女と交渉をすれば……」


「……武器を持たない女子供をか? この里での我々の評判を落とすような行為は、絶対に避けなければ駄目だ。万が一にも、カーラング家の家名に泥をることがあったとしては、坊っちゃんが帰って来られた時に会わす顔がない」


「しかし、あの精霊巫女は手強いぞ。里への被害を出さないように、戦って追い出すことは難しいだろう」


「ふむ、どうにかして精霊巫女を里の外まで誘き出す方法があればな……」


 カムジたちは何か良い案がないかと話し合っている。


「カムジさんは、なんでライムさんの儀式を止めさせたいんだろうね? 話を聞くかぎりでは、そんなに悪い人たちではなさそうだけどな…… んー、ここでレイビィの帰りを待ってるのも暇だし、直接カムジさんに話を聞きに行こうかな? 昨日、悪魔の岩山頂上で顔を見られてるけど、仮面とローブで変装をしたまま会いに行けば私だとバレないよね?」


「ワン」


 ダイフクも尻尾を振って賛成をしている。


「うん、そうしよう。念のために私一人で会いに行ってくるから、ダイフクはここでレイビィの帰りを待っててね」


「ワン」


 ドーラはディメンションワームで黒い靄を出すと、カムジのいる部屋へと移動をした。


「な、何者だ!」


 突如として部屋の中に現れた侵入者の存在に、慌ててカムジはソファーから立ち上がって剣を構えた。


「ふひひひ、こんにちは。秘密結社ノーメンです」

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