表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/85

第57話 ミミズ少女とダークエルフの里

「へー、あれが悪魔の岩山ですか?」


「ああ、大きいだろ? 悪魔の岩山のふもとにダークエルフの里がある。しばらくは滞在たいざいすることになるから、あまり変な事して迷惑をかけるなよ?」


「変な事なんてしませんよ。私の事を何だと思っているんですか?」


「え? 世間知らずのお騒がせ冒険者かな?」


「……分かりました。ライムさんは失礼な人だと、アダマスの森のレイスには伝えておきます」


「い、いやだなあ。冗談に決まってるだろ? ドーラも意地が悪いなあ…… あははは」


「はあ、もういいですよ。それにしても、事前に予定をしていたよりも、一日早く悪魔の岩山まで到着が出来ましたね」


「フシュー、お主らの乗っているサンドタートルが異常なのじゃよ。休息も取らずにこの速度で移動が出来るとは、もしや、特別優秀なサンドタートルであったのか?」


「レンタルで借りた普通のサンドタートルだぞ。何故だか、今日は凄く元気があるみたいだがな。まあ、生き物なんだから、そんな日もあるんだろうよ」


 ライムの作った砂漠のオアシスで休息をしていたサンドタートルは、目を見張るほどの生命力に満ち溢れていた。

 なんの変哲もない普通の水であったはずだが、もしかするとドーラが粗相そそうをしているのが原因なのかも知れない。

 後に、ある人物があのオアシスの水を全て回収して、奇跡の聖水として様々な研究に活用をするのであった。

 自身のやらかしなど知るところでないドーラは、悪魔の岩山を興味深そうに観察している。


(思ってたよりも、ずっと大きな岩山だな。何でか父のガイドブックにも、あまり詳しい情報は載ってなかったんだよね。危険だから近付くなとしか書いていなかった。何が危険なのかは分からないけど、そう言う場所ほど珍しい鉱物とかありそうだよね)


 ガイドブックの情報不足に不満があるドーラだったが、もしかすると下手に詳しい情報などを載せて、ドーラに興味を持たれないようにしていたのかもしれない。

 そんな父の思惑も、ドーラには知るよしもなかった。


「なんか大きな切り株みたいな形ですね?」


「フシュー、そうの通りじゃ。悪魔の岩山とは、遥か太古に存在をした巨木の成れの果てなのじゃ。あれが切り倒される前には、雲よりも高くそびえ立つ巨大樹じゃった。長い年月により石化して、今のような岩山になったのじゃよ」


 悪魔の岩山を睨み付けるように、目を細めながらミーシャは説明をする。


「昔にはあんなに大きな木があったんですね。どうして切り倒されちゃったんですか?」


「……あれ程の巨大な大樹たいじゅじゃ。成長をする過程で、周辺の大地の魔素を根こそぎ吸い上げてしまったのじゃよ。この地域が砂漠化をしたのも、大地の魔素が無くなったのが原因なんじゃよ。それに見かねた大地の精霊が、精霊界よりこの地へと降りてきて、その巨大樹を切り倒した…… というのが一般的に伝えられている悪魔の岩山の伝承じゃな。ハーフスケール族であるライムのほうが、その辺の話には詳しいのではないか?」


「ハーフスケール族に伝わっている話では、巨大樹の元へとやって来た人族の男が、その荒れ果てた大地をなげき、復活をさせるために大地の精霊を呼び出したと言われている。願いを聞き入れた大地の精霊は、その男と協力をして巨大樹を切り倒し、やがて男と結ばれる事となってこの地で子を作った。その後、地上で暮らしていた大地の精霊は、男が亡くなるのと同時に精霊界へと帰っていった。ハーフスケール族の誕生にまつわる言い伝えだ。ただし、この伝承には幾つもの疑問点があるんだよな……」


「何がですか?」


「まず、大地の精霊が『人族の男と協力をして』と言うところだな。大地の精霊ほどの上位精霊が、本当に人族の力などを必要としたのか…… 事のスケールが大きすぎて、たとえ超越者の人族だろうとも、大した役には立たない思うんだよな」


「んー、直接的な力になれなくても、何かサポートをしたりとか? 食事を作ったりとか、掃除をしたりとか」


「そうだな。その可能性はある。当時のことなど、私達には分からないからな。もう一つの疑問は、『大地を復活させるため』に巨大樹を切り倒したのに、今現在もこの地域は砂漠化をしたままと言うことだ。これは私達にも確認ができる、厳然たる事実だ。この星で最も長い時を生きるエレメンタルドラゴンのミーシャなら、その理由について何か知っているんじゃないのか?」


 ライムからの問い掛けに、ミーシャは目を泳がせながら顔をそらしている。

 理由を知っているのか、明らかに動揺をしている様子だ。


「わ、我は何も知らんぞ…… 我は基本的に火山に引き込もっておるからの……」


「……本当か? お前、何か隠しているだろ? 冒険者としての私の感が、お前のことは信用出来ないと警告しているんだよ。私達に同行をしてるのも、ドルビィと戦うためではなく、本当は他に目的があるんじゃないか?」


「ド、ドキ! な、何を言うのじゃライムよ…… 我は頼まれてお主らのことを監視しているなど、そんなことがある分けなかろう……」


 ほとんど自白をしているようなミーシャであった。


「……まあいいさ。もしもミーシャが何か怪しい動きをしていたら、今度は手加減しないで殴ってもいいからなダイフク」


「ワン」


 ダイフクの目が鋭い光を発する。


「フ、フシュ…… 我は怪しいことなどせんのじゃよ…… そ、そうじゃ、我はダークエルフの族長と旧知の仲なのじゃ。どれ、人足先に里へと飛んでいき、挨拶をしてくるとするかの。お主らとは、里の宿屋で落ち合うとしよう。それでは行ってくるのじゃ」


 ミーシャはその場から逃げるようにして、ダークエルフの里へと飛んでいった。


「いや、行動が怪しすぎるだろ…… もしかして、ダークエルフの族長と裏で繋がっているのか? だとすると何のために? 族長には里で頼み事をしたいから、出来れば勘違いであって欲しいな……」 


「頼み事ってなんですか?」


「直接、大地の精霊から話を聞くために、悪魔の岩山を少し使わせてもらおうと思っていてな」


「大地の精霊さんにですか? でも大地の精霊さんは精霊界に帰っていて、もう悪魔の岩山には居ないんですよね?」


「そこで私の『精霊巫女』としての力を使う。精霊巫女とは自身の体に精霊を降ろして、その精霊の知識や力を行使することが出来るんだ。ただし、大地の精霊ほどの上位精霊を降ろすには、その精霊と強い繋がりがある場所で儀式を行う必要がある。人族の男と暮らし自らの子を生んだ悪魔の岩山でなら、私の呼び掛けに答えてくれる可能性があるだろう。ま、あまり期待はしてないがな。上位の精霊を降ろす儀式なんて、昔に成人のでやったとき以来だからな」


(儀式か…… それは好都合かな? 悪魔の岩山では、ライムさんと別行動が出来るってことだよね。ライムさんの目がなければ、レイヴィを使っての鉱物探索もやり易くなるしな。もしダークエルフの里の住人に見られても、変装の用意をしてあるから私の正体はバレないよね)


「ダークエルフの里の入り口が見えてきたぞ」


 ドーラの視界にダークエルフの里の正門が見えてきた。

 アダマスの街に比べると小さくはあるが、周囲がほりに囲まれた多くの建物の立つ里である。

 砂漠の中だと言うのに、塀の中には緑色にしげった木々も少なくない。

 悪魔の岩山の周辺だけ、砂漠地帯にもかかわらず土地が豊かになっているようだ。


「思っていたよりも住みやすそうな里ですね」


「悪魔の岩山が巨大樹だった頃に吸い上げた魔素が、まだ岩山の根元に残っているらしい。そのお陰で、岩山のふもとには今でも緑が残っているんだとさ」


 里の正門では、若いダークエルフの守衛が警備をしている。

 守衛はドーラたちの接近に気が付くが、特に警戒をする気配はなく、ドーラ達を笑顔で迎え入れた。


「ようこそダークエルフの里へ。女性の二人旅と言うことは観光が目的かな?」


 守衛が旅の目的をドーラ達に質問をする。


「まあ、そんな所かな? 大地の精霊に会いに来たんだ。少し話を聞こうと思っている」


 大地の精霊に会いに来たと聞いて、衛兵は目を丸くしながらライムを見つめている。


「ハーフスケール族? もしかして精霊巫女か? なるほど、確かに悪魔の岩山でなら大地の精霊に会えるかもしれないな。申し訳ないが、儀式をはじめる前に族長へ説明をしてもらえるかな? 許可もなく勝手に儀式などを始めたら、他の観光客や里の者が心配をするからな」


「ああ、もちろん勝手に儀式をやったりなんてしないさ。今日はもう遅いから、明日の朝にでも族長へは挨拶にいくよ。ちょうど道中でサラマンダーを仕留めたから、それをお土産に持って行くとしよう」


「よろしくたのむ。宿屋は門を入ったらすぐに見える。族長の家は、悪魔の岩山へと通じている裏門の前だ。乗ってきたサンドタートルは、そこの厩舎きゅうしゃで預かってもらえるよ」


 正門脇の厩舎には、他の観光客が乗ってきた沢山のサンドタートルが預けられていた。


「分かった、ありがとう」


 ドーラ達はサンドタートルを厩舎に預けて、ダークエルフの里へと入っていく。

 ダークエルフの里は多くの観光客で賑わっていた。

 通りには沢山の土産屋が営業しており、まさに観光地といった様相である。


「いろんな種族の人たちがいますね。ダークエルフの住人よりも、観光客のほうが多くないですか? とてもここが危険な場所には見えないです」


「里には多少の緑があるとはいえ、砂漠の中であることには変わらないからな。観光地としての稼ぎがダークエルフの主な収入源になっているんだ。て言うか、危険度な場所って何のことだ? この地は、何百年も争いの起こっていない平和な観光地だぞ?」


「え? そうなんですかです? 知り合いの話だと、近付いてはいけない場所との事なんですが」


「どこか別の場所と勘違いでもしているんじゃないか?」


「そうかも知れませんね。あれ、あそこに居るのはミーシャさんじゃないですか? 何をしているんだろう?」


 ドーラは人混みの中を歩くミーシャを見つける。

 ソワソワと何かを探しているような素振りで、見るからに不審者という感じであった。

 ミーシャは目的のものを見つけたのか、うっすらと笑みを浮かべながら建物へと入っていく。

 その様子を見ていたライムは、呆れた声で溜め息をつく。


「はあ、あそこは酒場だな。ドラゴンは酒好きが多いって言うからな。もしかして、酒が飲みたいから一人で先にダークエルフの里に向かったんじゃないだろうな…… ミーシャのことは放っておいて、私たちは宿屋に行くぞ。風呂にでも入って、今日はゆっくりと休むとしよう」


 ドーラ達は正門のすぐ横にある宿屋へと入っていった。

 観光地と言うだけあり、かなり大きな作りの建物で、内装もとても綺麗な宿屋である。


「長期の宿泊がしたいんだが、部屋は空いてるか? 二人と二匹の宿泊で、二週間ほどを予定しているんだが」


 受付の女性は宿帳を開き、空き部屋の確認をする。


「長期の滞在ですと、家族用の大部屋になりますがよろしいでしょうか?」


「それで頼む。もう一匹は遅れてくるから、あとで部屋まで案内してやってくれ」


「かしこまりました」


 受付の女性から鍵を受け取り、ドーラ達は指定された部屋へと向かった。


「バザーで借りた部屋と比べると、凄く広い部屋ですね」


「家族用だからな。部屋の中に風呂もついてるし、ベッドもちゃんと二つある…… 二つ? しまった! ミーシャをペット枠で数えていた! あいつも人型をしているから、これじゃあベッドが足りないぞ」


「本当だ、ベットが二つしかない。でも、バザーの宿屋でもライムさんと同じベッドで一緒に寝ましたし、またライムさんと一緒でも私は平気ですよ」


 ライムはバザーでの夜を思い出して、ひきつった顔をしている。


「これから二週間…… 私はまともに寝ることが出来るのだろうか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ