表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/84

第39話 クーニとロレン

「なんて最低な戦いなんだ……」


 スコープワームを使いレイビィの戦いを見ていたドーラは、あまりにも低俗な戦いに頭を抱えている。


「レイヴィめ…… 絶対に、自分があの冒険者の裸を見たかったから、わざと服だけが吹き飛ぶように攻撃をしたな…… しかも、どういうわけか裸を見た後にレイヴィの魔素が大きくなってた。興奮すると強くなるとか、本当に最低の魔物だ……」


「ワン」


「え? 仲間に変態がいるのは恥ずかしい? そうだね、なるべく人前には出さないようにしないとな。私達まで変態だと思われたら嫌だしね。そもそも、実体がないから物理的な攻撃が効かないのは理解できるけど、なんでアンデッドなのに聖属性の魔法が効かないんだろう? 今のレイヴィは、私のパンツで魔素が希望の色に染まってるから? 希望の魔素には聖属性の魔法が効かないのかな? んー、謎だ。それに、なんでレイヴィが聖属性の魔法を使えるんだろう? 確か、聖属性の魔法は聖女とその使徒にしか使うことが出来ない魔法だって本で読んだことがある。本来のドルビィさんは魔神の眷族だし、聖女とは真逆の存在のはずだよね? まあ、相手の冒険者も聖属性の魔法を使っていたようだし、最近ではその辺の冒険者でも使える、ありふれた魔法なのかもしれないな。実体がないのに普通に手を使って篭を奪ってたりとか、他にも色々と意味がわからないことはあるけど、面倒くさいからそう言うものだと思って気にしないでおこう」


 レイスなどの肉体を持たない魔物は、いわゆる意思を持った魔素の集合体である。

 ドーラのパンツにより希望の魔素に染められたレイビィは、聖属性の特性を持つ最強のレイスとなったのだ。

 そして、魔神の眷族であるにもかかわらず、ドルビィが聖属性魔法の術式を知っているのにはある理由があった。


「戻りました、我が主よ」


「……」


 全裸のライムを抱えたレイヴィが、転移の魔法でゴブリンの集落へと戻ってきた。

 はたから見れば、完全に事案じあんの光景である。


「ま、まあ、確かにあの状態で森に放っておくのは可哀想だけどさ…… だからと言って、お持ち帰りしてこられても困るんだけど……」


「クックック。であれば、アダマスの街に転移をして、この者を放り出して来ましょうか?」


「全裸の状態で女性を街に放り出すのは、いくらなんでも酷過ぎるでしょ…… とは言っても、私やレイビィが街に届けるのは色々と問題が出そうだしな…… んー、どうしよう?」


 ライムの処遇しょぐうにドーラが悩んでいると、後ろでそれを見ていたクーニが提案をしてきた。


「ほっほっほ。それならば、わしがロレンの元に彼女を届けるというのはどうじゃ? 森で倒れていたのを保護したことにすれば、何とか誤魔化せるじゃろう」


「んー、仕方がないか。ディメンションワームでアダマスの街まで送りますので、後のことはクーニさんにお願いします」


「うむ、任されたわい。それと、冒険者ギルドのギルド長室の前に直接転移をすることは可能かの? わしとロレンの間に交流があるとはいえ、突然、冒険者ギルドにゴブリンが現れたりすれば、わしのことを知らない冒険者達に討伐をされてしまうからの。他の冒険者には見つからぬよう、内密にロレンの元へと彼女を届けた方が、色々と面倒事もないじゃろう」


 筋骨隆々になった今のクーニを冒険者が見たら、絶対に裸足で逃げ出すだろうとドーラは確信していた。


「……分かりました。引き渡しの様子はスコープワームで監視をしていますので、何かあればすぐにディメンションワームでクーニさんを回収します」


「うむ、頼んだわい」


 ドーラはディメンションワームを使いクーニをギルド長室の前へと送った。


「それにしても……」


 バリバリ


 ドーラはサンダーワームでプラズマの玉を作る。


「ひ、ひー なんでー」


「聖属性の魔法は効かないのに、このプラズマはレイヴィに効くんだよね? どうなっているんだろう? んー、見た感じだと浄化というよりも魔素自体を分解しているのかな?」


 プラズマの光にあてられたレイビィの魔素が、みるみるうちに小さくなっていく。


「ひ、ひー からだが、きえる……」


「あ、ヤバい。本当に消えちゃう」


 慌ててドーラはプラズマを消した。


「はあ、はあ…… わ、我が主よ…… 私の体で実験をしないで欲しいのですが……」


「ゴメンね、ちょっとやり過ぎちゃった」


 レイビィの魔素は見るも無惨なほど弱々しくなり、体は透けて今にも消えさりそうになっていた。


「はあ、はあ…… わ、我が主よ…… どうか私に希望をお与えください…… このままでは私の存在が消えてしまいます……」


「え? それって、まさかあれをやれってこと?」


「ご、御慈悲を……」


 レイビィは今にも消えそうな弱々しい声で訴えている。


「はあ、仕方ないな。これで最後だからね」


 うっすらと頬を染めながら、ドーラはドレスの裾をたくしあげた。


 ピカー


「おお! 希望に溢れるう!」


 レイビィの魔素が増大し、体からは神々しいほどの光がほとばしっている。


「クックック、さすがは我が主ですねえ。ますます恥じらいに磨きがかかりました。このレイビィ、心より感服かんぷくをいたします」


「嬉しくない……」


 ドーラの顔が真っ赤になっている。


 一方その頃、ロレンはギルド長室でアダマスの森の調査報告書を確認していた。


「アダマスの森の様子は極めて静かであり、ミミズの大量発生も確認が出来ずか……」


 昨日までの調査隊による報告では、特に森での異変を確認することは出来なかった。


「フィーネからの報告が間違っていたとは思えない。現に、ワイルドウルフによるアダマスの街への襲撃も発生している。考えられるとすれば、すでにアダマスの森での異変が集束をしている場合か…… 今日の調査団には、クエストから戻ってきたライムを同行させている。土魔法の得意な彼女であれば、地中深くまで詳しく調べることが出来るだろう。今日の彼女からの報告を待ってから、今後のアダマスの森への方針を固めるとするか…… !」


 突如として部屋の前に出現した魔素の存在をロレンは察知する。

 しかし、ロレンは慌てることなく、むしろ嬉しそうな表情を浮かべながら、持っていた書類を机の上へと置いた。


(この魔素は…… ふふふ、懐かしいな……)


「アダマスの森の外へと出てくるのに留まらず、冒険者ギルドにまで侵入をされるとなると、流石に私でもかばいきれないよ? 危険を犯してまで私に会いに来るとは、一体どう言う用件なんだい?」


「ほっほっほ。先刻、アダマスの森で倒れている冒険者を保護してのう。その場に捨て置くわけにもいかず、お主へと届けに来たのじゃよ。部屋の中に入ってもよいかの、古い友よ」


「どうぞ」


 ガチャ


 ギルド長室の扉がゆっくりと開き、クーニが部屋の中へと入ってきた。


(……は? これはクーニなのか? 確かに、この魔素はクーニのものと同一のものだ…… だが、体が若すぎないか? なんだあの太い腕は? 目の前にいるこのゴブリンは、本当に私の知ってるクーニなのか?)


 ロレンはクーニの体の変化に気を取られ、裸で抱えられているライムの事は目に入っていないようだ。


「ほっほっほ、何処を見ておるおじゃロレンよ。可愛いお嬢さんが、あられもない姿で抱えられているというのに。おぬしには、そっちの趣味があったのかの?」


 クーニはロレンをからかうように、ライムを抱える腕の筋肉を小刻みに動かしている。


「やめてくれ…… 私にそっちの趣味はないし、その女性もお嬢さんと呼べる年齢じゃないよ。ハーフスケール族だから見た目は若いが、とうに婚期を逃したベテランの冒険者だからね。可愛いと言うのは…… まあ、意外とギルド内で人気があるから間違ってはいないがね」


「なんじゃ、いつからアダマスの冒険者ギルドはロリコンの巣窟そうくつになったのじゃ?」


「彼らの話ではハーフスケール族は合法だからセーフらしい。これでも彼女は歴とした大人だし、容姿だけで区別をするのは種族差別にも繋がるからね。最近はそういうのに五月蝿うるさい団体が多いんだよ」


「ほう、人族の社会も色々と大変なんじゃのう」


 本来の主旨から話がそれてしまったが、改めてロレンは状況の説明をクーニへと求めた。


「それで、いったい彼女はどうしたんだい?」


「森で拾うた」


「裸で?」


「うむ、そうじゃ」


 クーニは抱えているライムをギルド長室のソファーに寝かせた。

 ロレンは壁に掛けていたローブを持ってきて、寝ている裸のライムへと被せる。


「……君が乱暴なことなどしないのは分かってはいるが、冒険者ギルドの長としてその説明だけで納得する訳にはいかないよ? 彼女に露出癖があるなどの報告は受けていないからね」


「詳しい話は、このお嬢さんが目を覚ましてから本人に聞くがよい。わしから言えるのはそれだけじゃ」


「……分かったよ。この件についてはそうするとしよう。それで…… 危険を犯してまで君が森から出て来たんだ。それだけが目的じゃないんだろ?」


 ロレンは真剣な表情でクーニを見つめる。


「アダマスの森での件じゃよ。今アダマスの森で起きている異変はお主も知っておるじゃろ? じゃが、森のことは心配いらん。これ以上の無用な詮索せんさくはせんことじゃ。これは友人としての、お主への忠告じゃよ」


 ロレンの表情がより一層に険しくなる。


「それこそ、アダマスの冒険者ギルド長として放って置くことは出来ない。理由は何なのだ? 私にも言えない理由…… もしかして、ドーラが原因か?」


 ドーラがアダマスの街に来てから何かが動き出した。

 ロレンにはそうとしか思えなかった。


「ほっほっほ、どうじゃろうの? ドーラ嬢のことなら心配はいらんと思うぞ。彼女は良い子じゃからの。我々の敵でないことは保証しよう」


「君のその体は、ドーラがやったのかい?」


「ふむ、最近何故か体調が良くての。今のわしは、王国騎士団と争っていた全盛期よりも遥かに元気だわい」


 筋肉を躍動させるクーニの姿に、ロレンは呆れ果てた顔をしている。


「分かったよ…… これ以上のアダマスの森への詮索はやめにしよう。どうやら、今の君と敵対するのは自殺行為になりそうだ」


「感謝するぞ、我が友よ」


「はあ…… 魔素自体は以前よりも小さいのに、今の君にはまるで勝てる気がしない。まったく、いったいドーラに何をされたのやら……」


「ほっほっほ。肩を揉まれたり、色々とねぎらってもらったからのう」


 ギルド長室での楽しそうな笑い声は、受付で仕事をするクリスの耳にまで届いていた。


「ギルド長室から笑い声が聞こえるわ…… 誰も受付を通してないわよね? 一人で大笑いをしてるなんて、ギルド長は疲れが溜まっているのかしら?」


 クリスはロレンのことを少し気持ち悪いと思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ