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第15話 ミミズ少女と冒険者ギルド

 リサの説明していた通り、冒険者ギルド内はクエスト完了の報告をする冒険者達で活気にあふれていた。

 受付には長蛇の列が並んでおり、ギルド内にある酒場では一日の仕事を終えた冒険者達が、酒を片手にその労をいたわっている。


 バーン


 入口の扉が勢いよく開き、ダイフクに乗ったリサが冒険者ギルドの中へと入って来る。

 それまで騒がしかったギルド内は一瞬の静寂に包まれるが、入ってきたのがリサだと分かると、あきれた表情をしながら皆各々の作業へと戻っていった。


(一瞬怒られると思ったけど、特に注意されることもないのか。リサちゃんは、普段からこんな感じに冒険者ギルドに遊びに来ているのかな?)


「一般受付はあっちだ。行くぞ、フェンリル」


「ワン」


 一般受付で作業をしている女性は、ダイフクに乗ったリサの姿に気が付くと、苦笑いを浮かべながら作業の手を止めた。 


「はあ…… リサちゃん、今度は何の遊びをはじめたのかな? 危ないことばかりしてると、またマームさんに怒られるよ?」


「リサじゃない! 聖女様だ!」


「ああ、そういう設定なのね…… それでは本日はどの様なご用ですか聖女様?」


 受付女性のれた対応を見て、おそらく日常茶飯事な光景なのだろうとドーラは察した。


「冒険者志願の新人を連れてきたぞ! きっとこの世界を救う冒険者になるぞ!」


「新人? 世界を救う冒険者って、また大きく出たわね……」


 受付女性は、リサの背後に立っているドーラへと視線を移した。


「あ、はじめましてドーラといいます。今朝この街に来たばかりです」


「これまた若い子を連れてきたわね。私はクリスよ。もしかしてこの街には一人で来たの?」


「はい。あ、ダイフクも一緒ですが」


「ワン」


 ダイフクは嬉しそうに尻尾を振っている。


「ダイフクじゃない! フェンリルだ!」


 両手を振り上げながら、リサは訂正している。


「街についたばかりなのに変なのに振り回されて大変ね…… えっと冒険者の登録よね? 親に反対をされながらも、冒険者を夢見てこの街にやって来る子は多いからね。それなりの能力があれば、あなたくらいの年齢でも大丈夫よ。まあ、リサちゃんが一緒ってことは、マームさんのお目にかなったんだろうし、その辺は問題はないでしょう。それじゃあ、まずはあなたの魔素量を計らせてもらうわね」


「リサじゃない! 聖女様だ!」


「はいはい、聖女様なら仕事の邪魔をしないでくださいね」


「ぐぬぬぬ」


 クリスに論破されたリサは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 大人しくなったリサを横目に、クリスは受付の奥から丸い水晶を持ってきた。


「それじゃあ、この水晶に手を乗せてもらえる?」


「はい」


 ドーラは水晶に手を乗せた。

 水晶の中心が小さい灰色のような光を発する。


「あらら、これは…… 思ったよりも魔素量が少ないわね。色も黒に近い感じかな? ドーラちゃんは、今まで魔術や戦闘の訓練は何かしてきた?」


 クリスの評価はあまり良くないようだ。

 ドーラは先ほど考えた設定通りに、テイマーのふりをして話を進める。


「えっと、テイマーについて少し勉強をしました」


「あー、なるほど。テイマーね。それなら適正があれば、別に本人の魔素が少なくても問題ないかな。もしかして、ダイフクちゃんが従魔なの?」


「はい」


「この子は普通の犬だよね? 魔物の従魔じゃないってことは、討伐系じゃなく採取系の訓練をしてきたのかな? それじゃあ、今度はダイフクちゃんの魔素を計るね」


「ワン」


 ダイフクは水晶に手を乗せた。

 水晶の中心が白く小さい光を発する。


「これまた魔素量が少ないわね。色は綺麗な白。ダイフクちゃん大切に育てられて良かったわね」


「ワン」


 ダイフクは尻尾を振って嬉しそうだ。


「まあ、普通の犬よね」


「はい、普通の犬です」


「大丈夫よ。採取クエストとかの非戦闘系のクエストをメインに活動をするのなら問題はないわよ。戦うだけが冒険者の仕事じゃないからね。まあ、戦闘の適正も一応確認をしたいから、奥の訓練場まで来てもらえるかな?」


 ドーラはクリスに案内をされ、ギルド奥にあるという訓練場へと向かった。

 ダイフクに乗ったリサもそのまま一緒についてくるようだ。


(当たり前のようにリサちゃんがついて来ているけど、大丈夫なのかな? クリスさんの雰囲気からして、ずいぶんと緩いギルドなのかもしれないな)


 冒険者ギルドの裏口を出ると、街の外壁に沿うようにして訓練場が広がっていた。

 訓練場の中央では、若い冒険者達が教官に見守られながら模擬戦をしている。

 教官はクリスがやって来ることに気が付くと、にやけた顔をしながらドーラ達へと近付いて来た。


「これは勇者様。本日はどういったご用件で?」


「勇者じゃない! 聖女様だ!」


「がははは、今度は聖女様か。相変わらずリサは忙しいな。リサが一緒ってことは、後ろの子はマームさんの宿に来た新しい冒険者志願者かな?」


(なるほどね。リサちゃんが冒険者ギルドで有名なのは、新人さんを連れてくるお手伝いをしているからなんだろうな)


「ドーラといいます。この子は従魔のダイフクです」


「俺はここの冒険者ギルドの教官をしているアレクだ。アダマスの街へようこそ、ドーラ」


 ドーラは挨拶をして、アレクと握手を交わす。


「彼女はテイマー志願者です。魔素量は少ないので、非戦闘系のクエストが中心になると思います」


「ふむ…… 非戦闘系のクエストとは言え、任務中に魔物と遭遇することも少なくないからな。最低でも襲われた時に逃走が出来る程度の能力は必要だ。見たところ武器などは持っていないようだが、そう言った準備は何もして来なかったのか?」


 はっきり言って、ドーラの格好は軽装すぎであった。

 何の装備もしていないどころか、魔族領の魔の森で暮らしていた時に着ていた部屋着のワンピース姿のままである。

 ふらっと、近所に買い物にでも行くような服装なのだ。


(んー、成り行きで冒険者になるのを決めたからな…… これだと冒険者を舐めているみたいで、少し印象が悪いかな?)


 何かないかと考えたドーラは、ドルビィから奪った鎌のことを思い出した。


(ま、何もないよりはマシか)


 ドーラはアレクに見られないように、後ろに手を回してディメンションワームの黒い靄から鎌を取り出す。


 ブン


「一応、武器は持っています」


 何処からともなく取り出された鎌を見て、アレクとクリスは驚きの表情を浮かべている。


「な、アイテムボックス持ちか? いや、何もない空間から取り出したように見えた…… もしかして収納魔法か? どういう事だクリス? 魔素量は少ないんじゃなかったのか?」


「は、はい…… 測定では最低ランクでした」


(あ、しまった…… つい、何も考えずにディメンションワームを使っちゃった…… なんとか誤魔化さないと……)


「最低ランクの魔素量で収納魔法が使えるのか…… よほど魔素のコントロールに長けているのか? 確かに、採取系の冒険者には収納魔法の使い手が多いが、収納魔法には高度な魔術知識と膨大な魔素が必要なはずだ…… いや、そんな事よりも…… ドーラ、もしかしてその鎌は魔剣のたぐいか?」


「え? あ、はい。多分そうです」


 アレクはドーラの持っている鎌を見ながらぶつぶつとつぶやいている。


(よし、アレクさんの興味が鎌のほうに向いた。そっち方面に話を反らそう)


「いや、まさかな…… しかし…… 以前、王都にある図書館で読んだ文献に、似たような魔剣の絵があったな…… その鎌は何て言うめいだ? 魔剣なら銘があるだろう」


「え? 銘? 鎌の名前ですか? えっと……」


(ドルビィさんは何ていってたっけ? んー、何とかして鎌の話題を引っ張らないと…… 確か、お…… お…… で…… で……)


「お…… 大盛デカライス…… かな?」

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