表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/33

幕間 ローリーの異世界開拓記1

「う、うう…… ここは…… 何処だ?」


 ローリーが目を覚ますと、そこは見知らぬ森の中であった。


「そうだ…… 俺はドーラのことを襲って返り討ちになり……」


 魔の森での出来事を思い出して、ローリーは頭を抱えながら震えている。

 忘れることの出来ない脳に刻まれた記憶、体に残る感触。

 ローリーにとって、それらが夢ではなく現実の出来事であったと実感するのには充分であった。


「ひひ…… 覚えている…… 無数のワームに沈んでいく体の感覚…… そうか…… 俺は死んだんだな…… つまり、ここは地獄ってやつか……」


 ローリーは立ち上がり、周囲の様子を観察する。


「想像していた地獄の風景とは全然違うな。まるで普通の森のようにも見えるが…… 神様の手違いで天国に送られていたりして…… なんて都合のいい話はないよな……」


「うふふふ、ここは地獄ではありませんよ」


 ビクッ


 ローリーの背後から女性の声が聞こえた。

 恐る恐る後ろを振り向いたローリーは、その女性を見て驚愕の表情を浮かべる。


「め、女神様? ま、まさか本当にここは天国なのか?」


 腰から後ろへ崩れ落ちるローリーを見て、女性は楽しそうに笑っている。


「うふふふ、残念ですが天国でもありません」


「地獄でも天国でもない? そ、それじゃあ、ここは何処なんですか? 俺は死んだんじゃ?」


「そうです、貴方は死にました。ですが、ドーラ様の寛大なるご慈悲により、仮初めの命を持つことが許されたのです」


「ド、ドーラの? どう言うことですか?」


 ローリーの言葉に女性は不快感をあらわにした表情をする。


「……ドーラ様です」


「へ?」


「貴方ごとき虫けらが、ドーラ様を呼び捨てに出来るとお思いですか?」


 ゴゴゴゴゴゴゴ


 女性の怒りに呼応するかのように、突如として森全体が激しい振動に見舞われる。


「ひ、ひい!!!! す、すみません! ド、ドーラ様です! 訂正させて下さい!」


 ゴゴゴ……


「うふふふ、わかれば良いのですよローリーさん。ここが何処かでしたね? ここはドーラ様によって作り出された異空間、その中に存在する私の大地です。わけあって、私はこの空間に隔離をされているのです」


「ドーラ様の作った? 何故俺はその中に? 何故俺は仮初めの命を?」


 情報量が多すぎてローリーは混乱をしているようだ。


「貴方がここにいる理由は一つです。ついてきて下さい」


 女性は森の奥へと歩きだした。

 舗装などされていない木々の生い茂った森を進んでいくうちに、ローリーは奇妙な違和感を感じていく。

 何故だか、ローリーには親近感のある風景に見えたからだ。


「あ、あの…… 女神様…… ここは異世界なんですよね? 何故か、この森の風景は魔族領にある魔の森にそっくりなんですが……」


「元々のこの地は、一片の草すら生えない不毛の大地でした。この地がこの空間へと隔離をされた時、殺風景だといってドーラ様がこの森を作って下さったのです。その時に使用したのが、貴方がよく知る魔の森の木々の苗でした。貴方がこの森に親近感を覚えるのはそのためでしょう」


「ドーラ様が…… あ、あの、ドーラ様とは何者なのですか? 女神様よりも上位者なのは、なんとなく理解が出来ましたが……」


「うふふふ、気になりますか? ですが、その事について私の口からお答え出来ることはありません。それと、私は女神などという存在ではありませんよ。確かに、遠い昔にあなた方の星へと降り立った時には、私のことをそう呼ぶ者もいました。ですが、女神という存在は私には理解しがたい概念です。特に名前などは持ち合わせてはいないので、私のことはローリーさんの好きなように呼んでいただいて結構ですよ」


「は、はあ…… 好きなようにですか…… 女神様じゃないと言われてもな…… それ以外に思い浮かぶ呼び方なんて見つからないですよ……」


 女性のことを何と呼べばいいのかとローリーが考えていると、目的の場所に到着をしたのか女性は足を止める。


「うふふふ、つきましたよ。あちらをご覧になって下さい」


「な、なんだ…… と……」


 ローリーは目を見開いて言葉を失う。

 女性の指差した場所には、ローリーが想像もしなかった光景が広がっていたのだ。


「ここは私がドーラ様の私物を管理している場所です。物を整理するという概念が私にはないので、少々苦慮をしています。どうですか? ローリーさんの感想を聞かせてください」


「せ、整理? これが?」


 ローリーはフラフラとした足取りで背丈ほどの岩の前に歩いていった。


「こ、これは何ですか? 何故、岩の上にペンが立てられているのですか?」


「これはドーラ様の使っているペンです。手に持って使う物なので、なるべく汚れない場所に置いています。立てて置いているのは、その方が見栄えが良いからです」


「そ、それでは、この地面に並べられた干し柿は?」


「ドーラ様の保存食です。ドーラ様のお口に入る物なので、私の愛が伝わるように気持ちを文字にして表しました」


 干し柿は『ドーラLOVE』という文字になるように並べられている。

 その他にも、ローリーには理解できないような方法でドーラの私物が置かれていた。

 だが、それ以上にローリーには理解できないことがあった。


(はあ、はあ…… そうだ…… はじめから気付いていた…… 気付いていたのに、俺は気付かないふりをしていたんだ…… 絶対にそれを口に出してはいけないんだと…… 恐ろしかった…… 一度でもそれを口にしてしまえば、俺は二度とこの方が女神様には見えなくなってしまうと……)


 次第にローリーの呼吸が荒くなっていく。


「どうしたのですかローリーさん? 顔色が優れませんよ?」


(逃げちゃ駄目だ…… ここには逃げ場なんてないんだ…… 避けては通れないことなんだ……)


 覚悟を決めたローリーは、勇気を振り絞りながら震える口を開いた。


「はあ、はあ…… そ、それでは…… な、何故…… 何故、女神様は……」


 女性は不思議そうな顔でローリーを見ている。


「はあ、はあ…… 女神様は…… ど、どうして…… どうして頭にパンツを被っているのですか!」


 ニチャア


 女性は狂気をはらんだ表情で笑みを浮かべる。


「うひ、うひ、うひひひひひ…… そんなの決まってるじゃないですか。こうしておけばドーラ様がこのパンツをお穿きになる時、温かい状態で気持ちよく穿くことが出来るからですよ」


 ガーン


 ローリーは雷に打たれたような衝撃に見舞われた。


「そ、そんな方法で…… ち、違う…… 確かに、お仕えする上官の私物を肌で温めるという話は聞いたことがある…… 実際、魔族軍でもやっている者がいたらしい…… しかし…… そうじゃない…… 頭に被って温めるのではなく、それはふところに入れたりして……」


 ニチャア


 女性はローリーを嘲笑うかのような笑みを浮かべる。

 そして、両手を左右に大きく広げた。


「ローリーさん、まだまだですね」


 ドサーッ


 女性の着衣の内側から大量にドーラの下着が落ちてくる。


「ば、馬鹿な! すでに懐はパンツでいっぱいだと! そうか! 懐に入りきらなかったパンツを頭に被っていたのか! 何たる発想力! 何たるいさぎよさ! 決して凡人には真似をすることが出来ない、これこそが自己犠牲の究極の到達点だ!」


 ローリーは悟った。

 自分はこの女性には絶対に敵わない、自分とは次元が違う真の変態なんだと。

 そして、この女性に心からの敬意を抱くのであった。


「うふふふ、勘違いしないで下さいねローリーさん。これは全てドーラ様のため。私の行動は全てドーラ様への善意から来ているのです!」


「ぜ、善意から…… た、確かに善意からの行動ならば、相手も強く断罪をすることは出来ない…… 僥倖ぎょうこう…… そんな方法があったとは……」


 ローリーは膝をついて頭を垂れる。


「このローリー、あなた様の言葉に感銘を受けました。是非ぜひとも、師匠と呼ばせて下さい!」


 無事に女性の呼び方が決まったようである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ