↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/126

第112話 裏切り

(く、まさかムロさんがこうもあっさりと叡智の仮面を奪われてしまうとは…… あまりにも不用意に近付きすぎです…… いえ、精霊を体に降ろした状態で、巫女が意識を保てている事が異常なのでしょう…… 油断をするのも仕方がありませんね。しかし、これはどういう事でしょうか? あの依り代の人形は、間違いなく昔私が作った代物です。いったいどうして、ライムさんがあれを持っているのですか? 不慣れな裁縫さいほうのために出来が悪く、恥ずかしいのでアジトの自室に保管をしていたはずなのですが…… まさか、眷族の中に裏切り者がいるのですか? ……考えたくはありませんね。兎にも角にも、この状況を無事に切り抜けないことには…… ムロさん、頼みましたよ)


 状況に介入をすることが出来ない、もどかしい気持ちのドルビィとは裏腹に、ライムは手際よく依り代の人形を地面に置いて魔法の詠唱を始める。


 ピカッ


 詠唱が終わり依り代の人形が光を放つと、ライムの体に浮かび上がっていた痛々しい血管が消えていった。


「ふう、ようやく体の痛みがなくなった。これでお前も自由に動けるだろ? えっと何だっけ? リリスちゃんって呼べばいいのか?」


 ライムの言葉に反応をして、依り代の人形はゆっくりと立ち上がる。


「確かに動けるようにはなったけど、もう少しマシな依り代はなかったんかいな。スーパーアイドルのうちに対してこんな雑な扱いをしたら、精霊界のファンたちが黙ってへんで。間違いなく炎上間案件やわ」


「贅沢を言うな、って言うかアイドルって何だよ? 精霊界ではそんなものが流行っているのか? 文句があるのなら、そのファンとやらがいる精霊界に帰ればいいだろ。話を聞く限りでは、リリスちゃんはアダムと言う奴から地上界を出禁にされているんじゃないのか?」


「まあ、堅いこと言うのは無しやで。そもそも、うちは騙されてここに呼ばれたわけやし、アダム様の眷族も絡んでるっちゅうのならそない怒られへんやろ」


「適当だなあ…… ま、私には関係ないことだから別にいいけどさ」


 ライムは首を鳴らしながら再びムロへと視線を移す。


「……さてと、お前はこれからどうするんだ? 叡智の仮面は私に奪われ、自身の魔素も使い果たした。今の弱りきった状態のお前に、ここから逆転をする策は残っているのか?」


 ライムが指摘をする通りに、ムロの呼吸は荒く今にも倒れそうな表情をしている。


「はあはあ…… お、俺は…… どうしたら良いと思いますか?」


 ムロの言葉を聞いたライムが不機嫌そうな顔をする。


「はあ…… 少しは成長をしたのかと思ったが、相変わらずお前は甘ちゃんだな。お前も一端の冒険者と言うのなら、想定外の事態が起きても持ち前の機転でなんとかしてみせろ!」


「せやで、諦めない心が奇跡を呼び寄せるんやで! アイドル魂やで!」


 よく分からない事を言いながら、リリスはピョンピョンと飛び跳ねて応援をしている。


「……」


 ムロは腰にかけてある鞭を手に取ると、ライムの持つ叡智の仮面目掛けて腕を振るった。


 パシッ


「おっと、良い鞭さばきだ。こうしてると、昔お前に稽古つけていた頃を思い出すな」


 ライムはあっさりと鞭先を掴んで防いでいだ。


「うんうん、ええ心掛けやで。うちは優しいアイドルやさかい、努力をする姿を見せられたら黙ってられへんのや。よっしゃ、頑張るあんたにうちが協力をしたるわ」


 ヒョイ


 リリスはライムの足元に駆け寄ると、飛び掛かってライムの手から叡智の仮面を奪っい取った。


「……はあ? リリスちゃん何で?」


 決してリリスの動きは速くなかったが、予想外の行動によりライムは反応をすることが出来なかった。


「べー、あんた上から目線でなんか気に入らへんのや。せやから、うちはあっち側につくでえ」


 人形の体であっかんべーをしながら、リリスはムロの元へと駆け寄っていく。


「リリスちゃん……」


「ま、うちの全てはアダム様のもんやし、その眷族と協力関係にあるあんたに力を貸すのが当然の流れやろ? はっはっは、これで形勢逆転やな。見てみいや、あの娘の鳩が豆鉄砲食らったような顔。おもろい顔やでえ。うちが裏切るとは、微塵も思っとらんかったんやろな。えーっと…… それで、あんた一体何がしたいねん?」


 何も状況を理解しないまま、その場の雰囲気だけで行動をするリリスであった。


「リリスちゃんは転移の魔法は使えるか?」


「転移魔法かいな? うちクラスの上位精霊ともなれば、集団儀式なんかなくとも転移魔法を使えるで。まあ、転移魔法は術式が複雑すぎるさかい、発動にはそれなりの時間が必要やけどな」


「よし、それならばリリスちゃんはその仮面と一緒に、リリスちゃんの体が保管されている悪魔の岩山内部へと転移をしてくれ。それでリリスちゃんの体にその仮面を被せて欲しい」


「この仮面をかいな? この仮面に宿っている者が、アダム様の眷族なんやな? せやかて、いくらアダム様の眷族ちゅうても、アダム様以外にうちの体を許すのはちょっと気が進まへんわあ」


 リリスは人形の体をくねくねと揺らしている。


「……その仮面はアダムと言う者の魔素の一部から作り出された物だ。その仮面を被せると言うことは、リリスちゃんはアダムの一部と合体が出来ると言うことだぞ?」


「ブハー! アダム様と合体! あかん! 人形の体なのに鼻血が出てもうたわ!」


 冗談でもなんでもなく、実際に人形のリリスの体から鼻血が吹き出していた。

 きっと、全ては愛のなせる奇跡なのであろう。


「分かった、うちに任せときい! ほなら転移魔法の詠唱に入るさかい、あの性悪小娘のことは任せたで! しっかりと時間を稼いでや。えっと、あんた名前は何やけ?」


「ムロだ、ここは俺に任せろ。何としてでも俺が時間を稼いで見せる」


 ムロはリリスに笑いかけると、のんびりと腕を組みながら眺めているライムへと体を向ける。


「作戦は固まったか? クックック、せいぜい私を楽しませて見せろよ? それにしても、召還された精霊が召還主のことを裏切るかねえ。上位精霊は我が儘って言う噂は本当だったなって…… あれ? ああ、盛り上がってきたところで申し訳ないんだが、どうやら時間切れのようだぞ。さっき私はお前が何をしても無駄だと言っただろ? ほら、後ろを見てみろよ。時間をかけすぎたせいで、私より怖い奴等がここに来たみたいだぞ」


 ムロは慌ててライムの指差した後方へと振り向く。

 悪魔の岩山頂上に繋がる山道から、怪しい仮面を被った三人組が歩いて来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。