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幕間 ローリーの異世界開拓記4

 師匠から死体処理を頼まれたローリーは、荷台を引きながら森の外へと出発をした。

 目的地の山は危険な場所だと聞いているので、護身用として以前師匠にもらった日曜大工セットを持ってきている。

 見た目はただの工具であるが、その全てが神話級の武具にも匹敵をする刃をもっていた


「念のために武器として使える工具を持ってきたが、そもそも何が危険なのかすらわからないんだよな…… 魔物がいる場所なのか、それとも毒などが発生している場所なのか、師匠は何も教えてくれないし…… 毒か…… 死体の中の一人は間違いなくドーラ様に殺されたのだろう。だが、残りの二人の死因は毒物の可能性が高い。体の所々に斑点はんてんが現れている。あの症状はマンドラゴラの根から抽出した毒物だろう。そうなると、あの二人はドーラ様に殺されたのではないな。即効性のある猛毒だが、調合には高度な薬学知識が必要だ。あのドーラ様にそんな知識があるとは到底思えない。そもそも、ドーラ様にはポイズンワームがあるから、わざわざ調合した毒などを使う必要がないはずだ」


 腐っても魔王軍の部隊長を任されていたと言うだけあり、ローリーはそれなりの知識と洞察力を持っていた。

 少々ドーラに対しての評価は辛辣ではあるが。


「俺も一歩間違えていれば、この死体のようになっていたんだろう。いや、間違えてしまったから、一度死んでしまったのだがな。俺のことを甦らせてくれた師匠には感謝しかない。死者を蘇生させることが出来るなんて、師匠は一体何者なのだろう? 聞いても教えてくれないし、困惑している俺をからかってばかりだしな。性格が悪いのだけは間違いないな。一度でも女神様と間違えた自分が恥ずかしい……」


 師匠のいないところでは言いたい放題である。


「ともあれ、半日ほど歩いたが一向に山に近付いている気がしない。この感じだと目的地までは数日はかかるな。まあ、体力的には問題はないだろう。一度死んで甦ってから、信じられないくらいに体力が有り余っているんだよな。何故だかわからないが、まったく腹も減らない…… もしかして、俺は甦ったのではなく、ゾンビにでもなっているのか? ……違うよね? 俺の心臓も元気に動いて…… あれ? 動いているよな? はあ、師匠のせいで全てが疑り深くなってしまった…… まあ、ゾンビは動くだけの死体で知能はないからな。俺は生きていると信じよう」


 とどまることを知らない師匠への悪口は翌日も続いていた。

 そんなローリーの視界に新たな風景が見えてくる。


「あれは山か? 目的の山とは別に、至るところに同じような山が見えるぞ?」


 ローリーの眼前には無数の山のようなものが連なっていた。

 その数は一つ二つではない。

 数十、数百ともいえる山のようなものが、地平線を埋め尽くすように広がっていた。


「森からだと山は一つしか見えなかった。この大地の地平線は、それほど遠くないってことか。ここが星なのかすら俺にはわからないけど、少なくとも元いた世界よりは小さな星状の球体なのだろう。ともあれ、目的の山を間違えないように進まないといけないな。別に他の山に死体を捨てても怒られないとは思うが、一番近い場所の方が早く帰れるからな」


 ローリーが森を出発して三日目になったが、ここに来てローリーは足を止めてしまった。

 疲れたからではない。

 それを見てからローリーはひたすら吐いていた。

 気分が悪いどころの話ではない。

 ローリーの生物としてに本能が、全身でそれの存在を否定しているようであった。


「オエー、し、死ぬ…… あれを見ているだけで、今にも倒れてしまいそうだ…… ここまで来れば俺にもわかる…… あ、あれは山なんかではない…… い、いったいあれは何なんだ? あれを見ているだけで、まるで俺の魂が死を懇願するかのように救済を求めている…… あ、あんな化け物が存在をするのか……」


 それは巨大であった。

 全ての生物を超越する存在かの如く、この世のものとは思えない巨大でおぞましい怪物だった。


「遠くに見える無数の山々も、全部があの巨大な化け物なのか? 俺にだってわかる…… あれは絶対に近付いてはいけないやつだ…… あそこに行けって師匠は馬鹿か? いや、師匠は馬鹿だった…… どうせ、この状況を何処かで見ながら笑っているんだ…… うひひひ、聞いているんでしょ師匠! もしも俺が無事に森へと帰れたなら、あんたの無駄についてる脂肪の塊を、ひいひい言わすくらいに揉みしだいてやるからな! 覚えておけよ! うひひひ!」


 半狂乱に陥ったローリーは完全に混乱をしていた。

 そんな状況になっても、ローリーは目的地に向けてひたすらその足を進めるのであった。

 四日目になって少し落ち着いてきたローリーは、その観察力も戻ってきたようだ。


「あの化け物が見えるようになてから、その場から全く動く気配が感じられない…… もしかして死んでいるのか? ……この無数に広がる化け物の全てが死んでいる? 師匠はあの場所に行けばドーラ様の力がわかると言っていた…… あの化け物がドーラ様の持っている力の由来なのか? ドーラ様の宿している力とは、あの化け物の力と言うことなのだろうか?」


 様々な憶測をたてながら、五日目にしてローリーは目的地へとたどり着いた。

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