第五十星 総帥の誘い
サブタイトルに悩んでしまったのです。
秋葉原にあるゲームセンター&カフェ。そのカフェスペースの一角に私達はいた。
軽く広めに探知を回すと知ってる気配が見つかる。陛下の隠密護衛…店外に2人、店内に1人。陛下は私と一緒にいる時、目に見えて分かるように護衛されるのは嫌うから非常に少数しか護衛として来てない。まぁ、その店内にいる護衛さんも普通にゲームセンター内を楽しんでるけどね。
それって護衛としてはダメなのかもしれないけど……そうでもしないと陛下は護衛に気付いて不機嫌になるから。
それで……私達が店内に入ってできることってクレーンゲームかボードゲームだけなんだよね。陛下って車椅子に乗ってることからも分かる通り足を悪くしてるから…聞いた話によれば20年前だっけ、悪くしたのって。
…それで、私達が今何をしてるかって言うと…
「ショーダウン。手札開示をお願いします。」
「…フォーカード。」
「む…ストレートだの。」
「スリーカード…」
…なんでポーカーやってるんだろね。いや、ここのカフェスペースってボードゲームスペースでもあるしカフェスペースにいる従業員さんは最低限ポーカー系とブラックジャックのディーラーはできるように教育されてるらしいから問題ないんだけど。
ちなみに手札の役は私がフォーカード、陛下がストレート、あと見知らぬ女性がスリーカードでディーラーさんはノーペア。
実は薄くではあるけど隠蔽かけてるから天皇陛下だってことは分かりにくくなってる。それでも間近で認識すればわかるけどね。
「やはり強いのう、スティラは…」
「引きが強かっただけ。それだけだよ、別に。」
あ、一応賭け事みたいな感じにはなってるけど実際の金銭は基本関わってない。こういうゲームに使えるポイントがあって、それを使ってポーカーとかブラックジャックとかができるようになってる。
ポイントの仕様としては当日の初来店時に500ptsが配布されて、基本的にはその500ptsで戦うことになる。貯まったポイントは受付で色々なものと交換可能だからそれで消費できる。あとお店のゲームもポイントで払うことができるはず。ほとんど仕様は現金と一緒だけど、店内でしか使えないっていう点で違うかな?
……もう一度言うけど、実際の金銭は“基本”関わってこない。この“基本”っていうのは受付でお金を支払ってポイントを追加できるから。オンラインゲームの課金要素みたいなものかな。…ただ1日あたりの追加上限は日本円で2000円(=4000pts)までと結構厳しめ……厳しめなのかな、これ?
「何か別のゲームでもやる?」
「む、そうだのう……そうじゃ、アレなんかどうかの?」
AR技術でテーブル上に浮かび上がっているチップを回収しながら聞くと、陛下はとある看板を指さした。
「……はぁ。…別にいいけど。」
「決まりじゃな。…そうじゃ、負けた方は何か言うことを聞く、でどうかの?」
「…いいよ。私が負けそうな気がするけど。」
「ほっほっほ。」
チップの回収を終えて陛下の車椅子を押してカフェスペースから出て、受付に向かう。
「すみません。」
「はい、どういたしましたか?」
「仮想戦闘システムを使用したいのですが。2名分。」
「……かしこまりました。こちらに必要事項を記入して少々お待ちください。」
渡された用紙に2人で記入して受付の人を待つ。少しして戻ってきた受付の人の手には鍵があった。
「そちら、お預かりします。お部屋の準備ができましたのでご案内します。」
私達から用紙を預かると、来た道を戻る受付の人の後を追う。通されたのは殺風景な一室。部屋の中にはベッドが2台と椅子が2脚、換気扇があって窓はなし。まるで病室みたいだけど別に病室じゃない。あと仕切りも付けられる。
ベッドと椅子の上にはコードが繋がれたヘルメットのようなものが置いてある。
「…では、はじめようかのう。」
陛下は自分で車椅子を動かし、椅子の近くまで行ってそのヘルメットを被った。私は私でベッドに寝転がって被るのだけど。…というか私の方が正解なわけで、陛下は車椅子から降りられないから椅子のままで被ってるわけで……
…はぁ。とりあえず警戒術式かけといて…と。
「「“ワールド・ダイブ”」」
一瞬意識が落ちて、すぐに復帰する。でも、復帰したときには病室のような風景ではなく高いビルが付近に立つ道路。
「ふむ、“摩天楼”ステージじゃな?面白いステージを引くものじゃ…」
陛下の言葉を聞きながら右手を振ってメニューウィンドウを出し、SNSを開く。
【アキバのゲーセン、その仮想戦闘空間内で“星王”と“星姫”の対戦だってよ!!】
【まじ!?】
【初代最強と現代最強の対戦!?】
【“死神王”と“星剣姫”の対戦なんて見ないと損だろ!!ただでさえ星剣姫は姿を現さないんだから!!】
【準備してないやつは急げ急げ、始まっちまうぞ!!】
【天皇陛下と希望の星、どっちが勝つんだコレ…!?】
…なんというか、予想通りというか。
「はぁ…」
「ほっほっほ。ネット上は色々と動き始めておるようじゃのう。」
「笑いごとかなぁ……」
陛下の方に目を向けると軽く剣を振っているのが見えた。…ちゃんと地面に立って、踏み込みも交えながら剣の調整中みたい。
私も私でメニューウィンドウを操作して刀を呼び出し、刀の調整に入る。…重さとか魔力抵抗の調整が主なんだけど。これが変わると戦いにくいからね。
一通り調整を終えて調整用のウィンドウを閉じると、コメントが加速しているSNSが目に入る。
「賭け事とか始まってないといいけどね。」
「始まっていたとしても1:1か1:2あたりじゃろうて。わしは老人じゃからのう。」
「国の象徴に加えて初代最強が何を言ってるのやら…本当は注意しないといけない場面じゃないの?」
「ポイントを使ってやる分には構わんからの。現金はいかんが。ゲームセンター店内において現金に近い使い方はできるとはいえ店外では使えんものじゃし、現金の代わりに賭けられるものとしてポイントというものを作ったんじゃからのう。麻雀の点棒と一緒じゃな。」
「…そう。」
「……それでも現金を賭ける店は現れるんじゃから面倒な物じゃ。」
陛下が呆れてため息をつく。その辺りは昔から変わってないらしいね。
…まぁいいや。
「…では、そろそろ…」
「…うん」
「「───対戦よろしくお願いします。」」
私と陛下の言葉がシステムに認識される。
〔方式“対戦(1VS1)” 舞台“摩天楼” 時間制限“無制限” 残機“なし” 妨害“なし”〕
〔対戦者A“星花 頼利”、対戦者B“秘魅咲 星柚音”───対戦を開始します〕
システムアナウンスが響くと共に対戦が始まるまでのカウントダウンが始まる。
「……」
…集中。相手は“死神王”。その名の由来は不死すらも殺すからだという。
陛下少し力を抜きつつも細剣の切っ先をこちらに向けるように静かに構えている。私は体勢を低くして刀の切っ先を向ける───いつでも飛び込めるような構え。
…確か、陛下の武器適性は“槍”、“大鎌”、“片手直剣”。通常、武器は適性がないと操り切れない。でも、陛下は私のように“感覚”で武器を操るのではなく“努力”で武器を操る。努力によって積み上げられてきた技術は時として感覚を越える。…たとえ何年も実戦をしていなかったとしても、このVR空間で鍛錬を怠らなければ体と脳はそれに応える。
〔FIGHT!!〕
「「───“強火炎”!!!」」
試合開始の声が聞こえると同時に2人そろって“強火炎”。火が衝突して相殺されたのを合図に私達は動き出す。
ということで次回、天皇VS主人公。
…この作品戦ってばっかりだなぁ、とか思いつつ。だって2、3話くらい前も戦ってたじゃない…?
作中に出てきたポイントに関してはメダルゲームのメダルをイメージしてもらえれば問題ないかと。




