第四十六星 魔境の夜・拾弐
大変お待たせ致しました…
筆が上手く動かず非常に時間がかかってしまいました。
衝動解放。
呪いの影響で狂化……発狂することができない私に存在する強化方法の1つ。
私の中に存在する闇……自己暗示をかけて封じているいくつかある衝動を解放することでその衝動に思考の一部を飲み込ませて戦うもの。
今回使ったのは“破壊衝動”。あらゆる物を破壊したくなるという衝動で、解放すると思考の3割ほどがその衝動に飲み込まれる。
自発的な衝動解放なら私自身がそれを完全に認識しているから止められるから問題ないのだけど。自発的じゃなくて偶発的なもの……つまり精神的なもので私が心の闇に引きずり込まれて、衝動そのものに思考全体が飲み込まれたときはランがいないと正常には止められない。ランがいない場合は…まぁ、一応私の頭を落とした上で心臓を潰せれば一時的には止まる。…そう、一時的に。不死だから死なないし。
ともかく、私は衝動に戦闘思考と肉体の制御を任せることで本能に身を任せたような戦い方ができるようになる。
…ちなみに、こんなことを思考しているのは破壊衝動に飲み込まれていない7割部分。身体は衝動に任せて動いてる。
「“溶岩の牢”、“鉄の空虚柱”───“氷獄の檻”」
溶岩で出来た牢屋を作り、それを鉄の四角柱で覆う。鉄の融点は1500℃よりも上だから1000℃程度しかない溶岩なら余裕で耐えれる。
その溶岩で出来た牢屋の中に超低温の檻を作る。
氷の魔法と火の魔法。同じ火元素系統であれど相反する方向の属性を近づけると反発する。氷の魔法は確かに火元素系統ではあるものの、“氷”そのものを作るには水が必要になる。
高温の物質に低温のもの、それも“水”を含む物を入れたらどうなるか───
「───“Phreatic explosion”」
答えは、“爆発する”。これは“水蒸気爆発”と呼ばれる現象で、水が高温の物体に触れて一気に気化するのが原因で起こる現象。この現象と似たものは身近でも起こっていて、熱したフライパンの上に水滴を垂らすと水滴が弾けるのがそれ。
「“土石流”」
爆発を見届けた後に土の魔法。高速起動するならばSi Skillよりも詠唱がなくとも威力がほぼ変わらない魔法の方が早く、強いからこそ魔法を使ってる。
そもそも、なぜSi Skillに詠唱が必要なのか。それはSi Skillの詠唱そのものが“祝詞”だから。
祝詞とは神道の祭祀において神に対して唱える言葉。Si Skillの場合は星の神と言っても過言ではない星霊様に対し、星素を通じて言葉を届ける。Si Skillの属性適性、特に“黄道属性”は即ち太陽系+αの星霊様との繋がりの強さを示し、繋がりが強ければ強いほど強力なSi Skillが使えるというわけ。
あと、詠唱に関しては星霊様達曰く、実際に声に出してもらった方が“言霊”に星の力を強く乗せることができるのもあってこうなってるのだとか。
対して、魔法の本質はイメージの力。精霊魔法はともかくとして、魔法自体はイメージ由来の術式であるからこそ詠唱を必要としない。魔力を以て火を、水を、風を、雷を、氷を、土を───そういった術式を具現化する。それが魔法の形。
なら霊術や妖術、神術はどうなるのかというと、これらはどちらかといえば魔法に近い。でも、術の種別によって性質や主な使われ方は少し異なる。
霊術は主に人間が持つエネルギーである“霊力”を用いて使う術式であり、決められた方法で行われる術式を言霊と触媒、型によって高速起動することが主な使われ方になる。秘守術であれば“刀”という触媒があり、現代の陰陽術であれば“最後がiの母音で終わる”という型がある。符術であれば“御札”という触媒がある。
妖術は主に怪異が持つエネルギーである“妖力”を用いて使う術式であり、強すぎる負のイメージの力によって常識を歪めることが主な使われ方になる。例えば妖狐が使う“狐火”や輪入道が使っていた“浮遊回転”なんかは本来あるはずの常識を歪めてそのまま現実に反映させている。
神術は主に神霊が持つエネルギーである“神力”を用いて使う術式であり、神の権限…主に自らの神格が司る現象や自らの神格に関わる事象を自在に操ることが主な使われ方になる。疫病神であれば“厄”、雷神であれば“雷”…黄泉神であれば“黄泉戸喫”…等々。
これらの術式……特に霊術は元々魔法であり、平安時代よりもさらに昔にも異世界と繋がってもたらされた魔法が現代に近づくにつれて次第に廃れ、忘れ去られていった…なんて説もあるけど、本当の事は誰も知らない。とりあえず、神術に関しては四神や四霊、あと天之御中主神様とかガイア様とかティアマト様とかが言うには別にそういう訳じゃないらしいけど。
………私の交流関係、特に対神霊の交流関係が異常なのはよく言われることだからもう気にしてない。
「“竜巻”」
こんな戦闘に関係ないような思考を回している間も私の身体は周囲を巻き込みながらゴッディブルを攻撃している。破壊衝動は大規模な破壊活動を目的としている衝動だから私の周囲は酷いことになってる。そして、この衝動は主目的が“大規模な破壊”だからこそ神裁きを実行できない。
一応、相手を殺害することに特化した“殺戮衝動”というのも存在する……のだけど。流石にそれは使えない。何故ならこの衝動による殺戮意思は人間や妖怪にも向き、また衝動に飲まれない思考を残せるといっても全ての衝動において衝動を解放したまま主目的から完全に反発するような制御をすることはほぼできないから。
即ち、それは私の凶刃が明葉達に向いてしまうことを意味する。私と違って不死ではない明葉達に。そして私が制御できない時に衝動を抑えることができるのはランだけ。
……相手を倒さなくちゃいけないとしても、友達を殺すのは嫌。自ら死を望むというのなら介錯という意味も込めて殺せるけれど、それはそれ。
…………はぁ。……嫌なこと、思い出した。気分も悪くなった、十分弱ったみたいだしそろそろ終わらせようか。
「“時空間震”!!」
蹴りと共に時間と空間に対し震動を発生させる。時間への攻撃は未来へ放てば残り続ける攻撃となり、過去へ放てば突如発生する攻撃となる。空間は…まぁ説明しなくても分かるよね。対象の空間をそのまま揺らしてるから、酔いそうにはなる。ちなみにやるなら空間を曲げてねじ切るとかもできる。今回は魔力がもったいないからやらないけど…
“時空間震”を放つと同時に主目的反発制御、ほんの一瞬停止したその隙を突いて首を絞めるようなイメージを以て衝動の停止と主導権の確保をする。身体に直結する意識を一瞬止めるなんて普通なら自殺行為だけど、不死だからどうでもいい。
氷咲で心臓のある部分を貫き、呪刀で上半身と下半身を分断。動き出そうとする下半身を引き抜いた氷咲と呪刀で細切れにして下半身の活動を停止させる。
「……ゼ、ダ……」
「……?」
「ナゼ、抗ウ……ナゼ、戦ウ……貴様ニトッテ、大切ナモノナド、ナイトイウノニ……」
…ゴッディブルの声か。確かゴッディブルは何か記憶を引き継ぐことが多いと聞くから…これもその類いだろう。
「ナゼ、阻ム……!!総テ滅ボス貴様ガ、ナゼ!!理解デキン!!総テ二拒絶サレル貴様ガ!!ナゼ、総テヲ守ロウトスル!?」
「……守ろうとする理由、か……」
理由…理由、ね。
「守りたいから、じゃ駄目なのかな。…大切と思える人を守りたいから、私は戦い続ける。その末に、目的を果たすために───」
そう、私の目的を果たすために。
「───幾度身体が死に、幾度蘇り、幾度化物と呼ばれようと。私が永遠の眠りを、永遠の安息を得るために戦い続ける。それが得られるためなら、私は誰に拒絶されても、誰に否定されても───大犯罪者、大量殺人鬼と言われても構わない。」
鐘が鳴る。0時の鐘。───終わりの鐘。
「───私が本当の意味で死ぬために!!そして、呪い持ちが人間ではなく兵器として扱われることを阻止するために!!!私は戦い続けるんだ!!」
そう叫んで私は呪刀を脇構えにしてゴッディブルに接近する。
残り時間は少ない。狂界が消える前にゴッディブルは仕留めなければ。
破壊衝動は大規模破壊が目的の衝動なので、技の候補としては“津波”と“地震”がありました。
悩んだ結果除外しましたけど…
…それと、スティラちゃんの目的が明かされました。
もっと早く明かしてもよかったのか、それとも明かさない方がよかったのか…悩むところです。
あとやっぱりスティラちゃんの対神霊交流関係はおかしい…今回名前が出たのって開闢神と原初の女神と地母神ですよ…?




