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第四十四星 魔境の夜・拾

前回に引き続き戦闘はなしです。

ちょっとした準備回。

神々って本当に多いですよねぇ…(遠い目)

「到着、っと。」


東京から飛んで数分。目的地───京都、羅生門前に降り立った。


「降ろすよ、明葉?」


「う、うん。」


お姫様抱っこの状態から明葉を降ろすと同時に、明葉とそっくりな女性───明菜さんが姿を現した。


「お待ちしてました、スティラさん。それから明葉に道乃ちゃん、アリアナさんも。」


全員が頷くと共に私は明菜さんに視線を向ける。


「ゴッディブルは?」


「未だ顕現せず……ですが、時間の問題です。…こちら、所望されていたお酒になります。」


「ありがとう。」


「お母さん、私達は何をすればいいの?」


「明葉はスティラさんのお手伝いがメインになると思うけど…万が一の場合に備えて戦う準備はしておいてね。」


「うん!」


「道乃ちゃんとアリアナさんは主にゴッディブル以外の脅威への対応を。」


「任せて、明菜さん。」


「わかりましたわ、明菜さん。…それで、その。スティラさん、お酒を所望した理由は何ですの?あなた未成年ですわよね?」


「んー?」


お酒を望んだ理由?


「簡単といえば簡単だよ。今回の戦闘にお酒を使うから。」


「…酔拳…ですの?」


「吞まないよ?…この刀でいいかな」


そう呟いて量子変換ポーチから一振りの刀を取り出して酒樽に入れる。この刀は楓さんが予備の武器として作ってくれたものの1つで、未だ無銘。銘は私が決めて、って言われてるんだけど思いつかないんだよね。メンテナンスはちゃんとしてもらってるんだけど……使い方が荒いから嫌われてそう。


酒樽の中に入れた刀の柄を持って、樽の中の酒をかき回す。


「…“伊邪那美之死(イザナミのし)”、“火雷大神之雷ほのいかづちのおおかみのいかずち”、“禍津日神之災まがつひのかみのわざわい”、“建御雷神之怒(タケミカヅチのいかり)”、“須佐之男之渦(スサノオのうず)”、“菅原道真之怨すがわらのみちざねのうらみ”、“蘆谷道満之呪あしやどうまんののろい”………」


私が言葉を紡ぐごとに樽の中が重くなり、お酒が黒くなっていく。


「……うっ…どんどん呪詛が重なってく……」


「というかなんでそんな神々の中に私をいれるのよ……」


「……あの、明葉さん。スティラさんは何をしているのでしょう?」


「…私も実際に見るのは初めてだけど、多分神と対峙するための呪い…武器を作ってるんだと思う。ねぇ、合ってる?」


「明葉、正解。…こんなものかな。」


かき混ぜていた酒樽から刀を引き抜く。頭身に黒い粘体が付着していて…まぁ、普通の人なら恐怖すると思われるそれ。


「───“天津麻羅之鉄(あまつまらのはがね)”、“加具土命之焔カグツチのほむら”」


それを───燃やす。そこから手元に鎚と金床を用意して、そのまま刀身を打つ。


「な、何をしているんですの……?」


「……神に捧げる酒と、神を殺す炎を以て、神と対峙するための武器を鍛える。以前、スティラさんが言っていたことです。実は私も目にするのは初めてなのですが……なんと禍々しく、恐ろしいことでしょう…」


「神殺しの呪いがかかった武器だからね、簡単に言えば…流石に一撃で倒せるほどの力はないけど、正確に使えば本当の神ですら殺せる……って、禍津日神様が言ってた。」


「災いの神のお墨付きですか……恐ろしいわけです。」


そもそもの話、鍛える時に使う要素として神話上で実際に神を焼き殺した炎を使っている時点でその神殺しの力は本物。なんで私がそんなのを使えるかっていうと……加具土命様と禍津日神様との契約なわけだけど。


今私がしているのは鍛治という形を取って刀に対して付与を行う作業。魔法やSi Skillによる付与が武器の表面に薄く展開するものなら、こっちは金属そのものに練り込むもの。


解呪しない限り半永久的に続く付与。それだけに扱いはかなり難しい。特に今回私がやってるのは単純な属性付与じゃなくて、呪詛の付与なわけだから。


「…ん、これで完成」


「……見てるだけで呪われそうですわ……よくご無事ですわね。」


「既に呪われてるからね、私は。」


「……」


アリアナが黙る。そんな時に───


『明菜、大変!!ってあ、スティラもいる!やっほー!』


「こんにちは、麒麟。」


「どうされました、麒麟様?」


四霊が一角、麒麟。四神が皇居を護る者なら四霊は平安京を護る者。だから、ここには応竜、鳳凰、麒麟、霊亀がいる。


『って、のんびり挨拶してる場合じゃないの!!実は───』



ゾクッ



「…っ!?」


悪寒がした。この気配、まさか───


「───忌鬼…っ!?」


『そう…!まもなくここに顕現するの……!』


「そんな…!ここには今、神擬きが現れるのですよ!?」


ゴッディブルと忌鬼。組み合わせとしては最悪の部類。……取れる方法は1つ。


「……明葉、忌鬼に回って。ゴッディブルは私が1人で相手するから。」


「っ……分かった…!忌鬼の気がスティラに向かないように頑張る…!だから……気を付けてね、スティラ…!」


明葉も私と同じく1人の流れ星で、それ以前に陰陽師でもある。忌鬼とゴッディブル、その危険度はよく理解してる。だからこそ、反論せずに従ってくれた。


明葉が明菜さん達の方に言ったと同時に、星侵獣の顕現反応。現れたのは黒い球体、だけどすぐに形を変える。


「…神擬き……“ゴッディブル”。姿は……“アルテミス”か」


変わった姿は弓を携えた女性。ギリシャ神のアルテミス様と同じ姿。月の女神、狩猟の女神と呼ばれるその存在。


正直な話、面倒な相手が来たとは思ってる。…ここは、狂界。月の力は、月神の力は非常に強くなる。そしてそれは、神の力を複製(コピー)するゴッディブルでも同じことが言える。


「───神裁き。神を殺す焔よ、偽りの神を殺す一助となれ。我が声に応えよ、黄泉の扉……っ!」


呟くと同時に刀に込められた念が蠢きだす。常人なら恐らく発狂するけど、私は狂気完全耐性コンプリートマッドネスレジストがあるからそのまま使える。


忌鬼は明葉達に任せておけばいい。私は目の前のゴッディブルに集中すればいい。


…そう。今はただ、目の前の神を───


「───殺す……っ!!!」


ゴッディブルが不気味に笑ったと同時に私は地面を蹴る。周囲には2時の鐘が鳴り響いていた。

ゴッディブル…

前回からキャラ達が“神擬き”って言ってますが、神の力を再現するスライムみたいな存在です。

その再現故に曖昧な神力の影響で同時に1体しか顕現できないような存在ですが、その力は本物の神の力とほぼ一緒です。普通の人間が簡単に太刀打ちできるような存在ではありません。

……普通の人間なら、ですが。

既に気付いている方もいると思われますが、スティラちゃんはその身に宿す力が“普通の人間”の領域を大幅に超えています。…そのスティラちゃんに“私よりも強い”と言われていた雹星さんが少し恐ろしいところですが。

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