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第四十三星 魔境の夜・玖

ざっくりですが魔境たる所以をお話していますー。

「───ぽ!!」


鬼門のあった場所から少しはなれた場所。害呪怪を相手に暴れてる影があった。あ、鬼門はあの後結局消滅したよ。


「……なんで八尺様がいらっしゃるのでしょうか?それに狼男に吸血鬼まで……」


「さぁ…明葉、分かる?」


「古今東西どんなところからでも怪異や神霊を引き寄せるのが狂界だからねー。」


「実在しないはずの怪異でもいてもおかしくはないわ、アリアナ。」


道乃の言葉に1つ思い出して口を開く。


「そもそも怪異や神霊っていうのは人間の恐怖心や畏怖心から生まれるわけだから……昔は存在しなくても今はいる、ってことは起こるよ。」


「……そういうものですか。」


そういうものなんだよねー…


「…それにしても、わたくしの見間違えでなければ大蛇(オロチ)がおりませんこと?」


「あー…あれは八岐大蛇(やまたのおろち)だねー…」


「白面金毛九尾の狐もいるわよ、普通に…」


「ついでにヒュドラにメドゥーサもいるよあそこ…」


「……あの、多すぎません?」


「「「だってこの国、通称:魔境だし。」」」


「……ですわね。」


あ、アリアナが諦めた。


「狂界……わたくし達が日々過ごす場所とは別の空間。話には聞いていましたが、ここまで人外魔境だとは思いませんでしたわ…」


「アリアナって狂界内に入るのは初めてだっけ?」


「そうですわ……」


「狂界外よりも顕現しやすいらしいからね、狂界内は。八岐大蛇や九尾とかの怪異系は基本的に夜に顕現するんだけど。」


明葉が暗に言った通り、狂界外でも怪異や神霊は顕現する。それでもまぁ、人の気配が少ない狂界内の方が気が楽らしい。そしてこの狂界は日本にしかないから、世界中から安らげる居場所を求めて怪異達が集まる…っていう。外国の怪異……怪物が正しいのかな?まぁ、それらがいるのはそれが理由だね。


そもそもの話、なぜ現代に神霊や怪異がいるのかっていうと。


それはこの世界が異世界に繋がったのが原因。原因…というか発端。


知っての通り、元々この世界は科学を以て様々なことを解明、証明してきた。


魔法の存在可否、怪異の存在可否、神霊の存在可否、災害の発生要因、天候の移り変わり……等々。本当に様々なことを解明し、科学的根拠を定義してきた。


そんなところに異世界の“魔法”が登場した。


科学者達も最初は科学的に証明しようと試みた。…だけど、無理だった。どうやっても科学的に説明できない、“幻想”が証明されてしまった。


───その、“幻想”が証明されてしまったからこそ。


“幻想”の存在であったはずの神霊や怪異、魔法がこの世界に再び姿を現した……


ざっくりと説明すればこんな感じかな。


……じゃあ、なぜ日本が魔境と言われているかという話をすると。


まず1つとして異世界への門がある故に多数の種族が行き来する拠点であること。人種じゃなくて種族ね?だってこの日本、普通の人間だけじゃなくてエルフとか猫耳娘とかドワーフとかゴブリンとかオークとかもいるし。もちろん人型の存在だけじゃなくてスライムとかトレントとかゴーレムとかもいるよ。


次に、その技術力が他の国と比べて段違いに高いこと。昔から日本の技術力は高かったらしいけど、それを遥かに越える技術力になったらしいね。


3つ目に、狂界という言わば“裏世界”を作り出すことが可能な場所であること。他の国に狂界は存在しないし、それを維持・発動できる楔もないし、狂界の術式を国中に敷くための強力な術者もそこまでいないから。この日本の狂界だって敷く当時は陰陽寮全体で作業に当たったって話だし。


4つ目に、神霊や怪異の顕現が容易なこと。これに関しては私もよく分からないんだけど、天照様曰く“日本は他の国に比べて幻想の受け入れが容易”らしい。そんなわけで“あらゆる神々の住まう島国”なんて言われることも。各国の神々はいつもは各国にいるし、ほぼずっといるのは日本の神々である八百万の神だけなんだけどね。


5つ目は、日本人・外国人・外星人問わず呪われた者を国内に大量に抱え込んでなおそれを守りきる鉄壁の防御力。楓さんがルシリールとエレナの受け入れを即座に了承した理由がこれかな。星元後に一度とあるくだらない……正直私としてはくだらないとしか思えない理由で戦争が起こったらしいんだけど、ただ1人の犠牲者もなく日本を、日本に住む者達を守りきってるわけだから。


最後に、呪われた者に対する人権の保護とそのサポート力。ほとんどの国は呪われた者に対して兵器としての価値しか見いださない。それだけあの男の考えが浸透してるってところでもあるんだろうけど。事実、呪われた者は兵器として非常に優秀……驕ってるつもりじゃないけど、私なんかは兵器として存在するだけでその国の勝利が確定するようなもの。でも、そうであってもこの国は私達に兵器としての価値を見いださず、人間としての在り方を求める。それは天皇の方針だけじゃなくて、国全体の方針。他の国から見れば少し異質に見えるらしい。


そんなわけで、この国は“魔境”と呼ばれてる。今上天皇は“このくらい当然のことじゃろう?”って言ってるから…本人は特に今の状態を意識してやってるつもりはないのかもね。


ちなみに、5つ目で挙げた戦争に関して。日本は仕掛けた側じゃなくて仕掛けられた側なんだよね。それに対して自衛を行った結果が鉄壁の防御力になる。実際今も正式な軍隊はないからね、日本。日本国内の保有戦力みたいな形で存在するのは結局のところ自衛隊と在日米軍くらい。


私達“流れ星”は中立位置存在だから保有戦力としては見辛いし、日本国憲法第9条には引っ掛からないかな。日本ギルド所属の流れ星はただただギルドの場所がそこで登録されているだけで、希望すれば日本から衣食住の提供がちゃんとされること以外はホントに自由だし。兵士としての召集なんてないけど、戦いへの参加を拒否されるわけでもない。流れ星本人の意思でどちらかの陣営につくか、それとも静観しているかを選べるわけだから。基本は本人が関わる戦争じゃなければ静観してるけど。


そもそも技術力が世界一になってるのだって元はといえば流れ星達の旅路を補助するために色々と試行錯誤をした結果であって、国の戦力として用いるためではなかったっていう。


「……」


「…スティラ?何か考え事?」


「……いや…なんでもないよ。」


「……あまり思い詰めすぎないでね?」


「ありがと、明葉。」


私の目的は何人かが知ってる。…たぶん、ザニアの星霊様であるミティア様も気がついてる。否定しないでいてくれてるのはありがたい。


…本当は否定したいと思ってるのも、なんとなく分かる。



ピリリリ、ピリリリ



「うん?明葉、電話鳴ってない?」


「え?…あ、ホントだ。…お母さんから?」


明葉のお母さんというと、京都にいる明菜さんのことだね。


「もしもし、お母さん?…え?スティラなら一緒にいるけど……あ、うん、わかった。」


そう言ったと思うと電話口を上に向けてスピーカー状態に。


〔……あ、通ったかな…スティラさん、聞こえますか?〕


「聞こえますよ、明奈さん。どうしましたか?」


〔すみません、先程狂界内に強大な星侵獣顕現反応が確認されました。もしも、手が空いているようでしたら娘達と共に向かってはいただけませんか?もちろん、こちらは新規依頼として報酬は別にお支払します。〕


「え、でも……東京は」


「こっちは私達がいるから大丈夫よぉ?」


声に振り向くと輪入道がいつのまにかいた。


「あそこの鬼門と裏鬼門さえどうにかしてくれればあとは私達で処理ができるわぁ。だから気にせずに行ってきなさぁい。」


「……分かった、任せたよ。」


「…あらぁ。随分と簡単に通すわねぇ?」


「明葉から報告受けてるからね、私がいない間頑張ってくれてたって。」


「……明葉ぁ?」


「伝えておいた方がいいでしょ?」


「恥ずかしいのは変わらないのよぉ。」


あ、そっぽ向いた。


「早く行きなさぁい?」


「あ、うん……とりあえず明菜さん、場所はどこですか?」


〔私のいる場所…羅生門前です。…スティラさん、あなたの腕を見込んでお願いがあります。〕


「…?」


〔───あなたが使う人の域を越えるとされる技。“神裁き”を、お願いします。〕


「……ということは、相手は神か……」


正確には、神を模したただの模造品だけど。


「神擬き……“ゴッディブル”を相手取るのは構いませんが、私は今サイノカワを手元に持っていません。…ですので、明奈さん。1つ、お願いがあります。」


〔……?〕


「私達が着くまでに、お酒を用意していただけますか。できることなら、一樽分。」


〔……承りました。すぐに用意させていただきます。それではお願いします、スティラさん。明葉達のことも、どうか。〕


その言葉を最後に電話は切れた。


「…明葉、行く?」


「行く!」


「私も行くわ。」


「わたくしも当然ながら行きますわ。」


3人の言葉に小さくため息をついてから輪入道を見る。


「それじゃあ、頼んだよ。」


「任せなさぁい。きゅるきゅるきゅる~」


きゅるきゅる言いながら私達の前から去っていった。


「…行こうか。アリアナ、ごめんだけど道乃をお願い。」


「分かりましたわ。案内はお願い致しますね?」


「ん。」


「わ、わっ!」


筋力強化して明葉のことをお姫様抱っこ。地味に安定するんだよね、これ。アリアナもやってるし。


「それでは参りましょうか、お姫様?」


「…………うぅ。イケボ出せるの、ずるいよ…」


私の囁きに対する明葉の小さな呟きに苦笑いしてからその場を飛び立つ。鐘が鳴る───3時の鐘。さてと……間に合うかな。

またお酒出てきましたけど…一応言っておきますがスティラちゃんは飲酒しませんからね?

調べたらアメリカでも法律違反になるそうですけど。

それと流れ星関連の補足を。流れ星は基本的に自由行動ですが、それは国の戦闘関係に関わってない(日本で言えば自衛隊)場合での話です。流れ星でありつつ国の戦闘関係であるというのであればそれは国所属の兵として含めることができます。…まぁ、日本ギルドはあまりそういう人はいないので特に関係ないですけど。流れ星でありながら日本で職を持つのも自由なのです。そもそも1年の大半を地球外で過ごす流れ星は少数ですから。

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