第三十九星 魔境の夜・伍
な、なんとか形になった……
割と私って戦闘描写苦手…?書いてるのは楽しいんですけどね…
…鬼。建物よりの大きな身体を持つ鬼もいれば、人間よりも小さい身体を持つ鬼もいる。
「───“鬼斬法・壱”。“首斬”」
「■■■■■───!!!」
私よりも遥かに大きい身体を持つ黒鬼が悲鳴を上げる。首は斬り落とせたけど硬すぎて10回も放つ羽目になった……でも、消滅してないってことは絶命してない。だから、斬り落とした部分から少しだけ跳躍。
「“鬼斬法・参ノ強”!!“心貫・鋭”!!」
氷咲を黒鬼の心臓に向けて鋭く突き落とす。“斬り方”って言ってるけど突き技とかもあるんだよね。ともあれ、それで黒鬼は消滅する。
「いつもながら、黒鬼の相手は疲れるねー…」
「いやそもそも黒鬼を単独で相手にできるとかおかしいからね!?」
「普通青鬼くらい───ああもう、うっとおしいわね!!“潰”!!」
道乃が浮遊させてた岩で黒鬼を潰す。そこに明葉が槍で一突き。怯んだのを確認してから鬼門からまだまだ出てくる害呪怪に対して手を向ける。
「水晶よ、眼前の敵の行く手を阻みたまえ!汝の不可視なる身体にて、害なす者の困惑を───!!“水晶封印”!!」
明葉が詠唱したのはSi Protect…の一種だけど、結構攻撃的な使い方をすることが多いやつ。早い話がとあるゲームの“がんせきふうじ”…の、水晶版(これ以外にどう説明していいかわかんない…)。
「“鬼斬法・弐ノ強”───“眼刺・徹”!!」
明葉が放った黒鬼の眼への打ち込みで黒鬼が消滅する。その間に私は“水晶封印”で封じられた害呪怪達に連撃を浸透で叩きこんでおく。浸透勁は使えないけど攻撃を浸透させるSi Skillが使えないわけじゃないし。
……そもそも、“鬼斬法”というのは“鬼狩法”という技術の一種でしかない。それぞれ…斬撃刺突の“鬼斬法”。打撃粉砕の“鬼砕法”。銃矢砲撃の“鬼撃法”。破邪封術の“鬼封法”…そして、ちょっと特殊な“鬼殺法”。よく私が使うのは“鬼殺法”なんだけど、条件揃ってないし。
「第二波、来るよ!!」
害呪怪をすべて消滅させたのを確認して2人に警告。第七波くらいまで来そうだな、これ……第二波は“鬼の大行進”───鬼のみで編成された軍勢のパターンか。ちなみに第一波は“鬼将の侵攻”───強力な鬼を指示頭とする軍勢のパターンだった。
「明葉と道乃は後方から飛んでくる呪詛に警戒しながら赤鬼と青鬼の相手をしてて!」
そう告げてから高く跳躍、目の前にいる赤鬼を最初の踏み台にして軍勢の後方を目指す。
攻撃の赤鬼が3、浄化の橙鬼が3、補助の黄鬼が3、速度の緑鬼が4、防御の青鬼が6、妨害の藍鬼が2、呪詛の紫鬼が1、術式の白鬼が1、物理の黒鬼が1。…“虹鬼”勢揃い、か…それでも金鬼銀鬼銅鬼に加えて邪鬼幽鬼怨鬼とかがいないだけまだいいかな……
「■■■■───」
「───させるか!!」
一番後ろにいた紫鬼が詠唱しようとしたから魔力と星素を乗せた蹴りで止める。次いで霊力を魔力と星素に重ねて氷咲に乗せて紫鬼の腕を断つ。傷を凍らせて再生阻害するのも忘れない。
その後すぐに紫鬼の身体を駆け上って跳躍。跳躍中に魔力を足に集中させておく。
「“鬼砕法・弐”!!“頭割”!」
宣言と共に紫鬼の頭に踵落とし。バキッ、という音と共に断末魔をあげることすらなく消滅していった。攻撃の種別が対応するものであれば各“鬼狩法”は使えるから……例えば剣であっても鞘みたいなので斬撃性をなくしてしまえば“鬼砕法”が使える、みたいな感じ。
「……っと!」
紫鬼を倒したのに気がついた黒鬼が私にその剛腕を振るってくる。それを跳躍で避けて黒鬼を見据える。
“虹鬼”と呼ばれる9色の鬼の中で厄介なのがこの黒鬼。非常に好戦的で、非常に力が強く、非常に硬い。物理的な装甲と物理的な火力を両立して詰め込んだような存在。鈍重な近距離高火力高装甲型、といえば伝わるのかな。
「■■■!!!」
「っ…!」
振り下ろされる剛腕を跳躍で避けて、急降下後に股下へと潜り込む。そのまま足に一閃しても有効打は入らない───
「硬ったいなぁ、もう!!」
幸いなのは今回の鬼が“巨鬼”と呼ばれる身長5mくらいある個体で、身体の小回りが比較的効かないこと。死角───特に股下への対応は遅れやすい。だから。
「“鬼砕法・壱”───“踵打”」
踵に蹴りを加えて体勢を崩しやすくする───
「“鬼砕法・肆”!!“膝砕”!!」
その直後、膝裏まで飛び上がって膝蹴り。片足だけとはいえ“膝カックン”のように足の支えを失った黒鬼はそれで倒れこむ。倒れこむ前に私は高く跳躍しておき、高さを稼ぐ。
「“鬼砕法・極”───!!」
魔力、霊力、星素……それから重力の圧縮。それらの強化を全て足に集中させて。
「───“鬼砕”!!!」
黒鬼の心臓に当たる部分に、巨大な風穴を開けた。…ここまでやれば流石に絶命する。心臓破壊と断首はほぼ致命傷だからね。特に人型だと。…あと、重力まで使った理由は戦脚じゃないから破壊力不足なのと私自身の体重が結構軽いから火力が出にくいからなんだよね。
そのまま周囲を見渡すと、私が黒鬼に時間をかけている間に白鬼以外はすでに倒されていた……あ、明葉の槍で倒された。
「…はぁ……ホント、極は疲れるなぁ…」
各“鬼狩法”はそれぞれ零から拾、加えて極と裏の十三の技がある。その中でも極は使い手に対して非常に負担をかけるもの。
「…“鬼殺法・壱”が使えれば楽だったんだけどね。」
「ねぇ、スティラ?ここにいるのみんな女の子だからいいけど、それは多分当人にとっては怖いからね?」
「…明葉。全員女じゃないわ。そこで須佐之男様達が見てるわよ。」
「あ、いたんだ…」
…須佐之男様……神気消してるから私も気付かなかったんだけど。
「天照様と月読様もいるんだねー…確かに狂界内だと月読様の力はすごく強くなるけど…」
「月の神だものね。狂界内は言ってしまえば闇の空間だから闇と空間を司る“月”の神である月読様は神々の中でも強い力を発揮するのよね…」
そういえば日本神話上だと月読様って男性なんだけど、私達が見てる月読様って女性なんだよね。…月って女性の属性あるわけだから別にいいのかな。
…それはそれとして───
「えっと、第一波で8体、第二波で24体だから……32体か」
「3/10を越えたあたりなのね……」
百鬼夜行とは怪異の群れのこと。…なんだけど、特に皇居と陰陽寮の鬼門から現れる百鬼夜行は、その集った負の力が原因なのか本当に100体の鬼が現れる地獄染みたものとなる。現れた鬼門は何度かに分けて怪異を産み出し、産み出された直後から暴れまわる。
「第三波───“幽冥の参列”だ…」
「わ、ハズレ引いちゃった…」
“幽冥の参列”とは、鬼以外の悪霊や怨霊、呪詛の塊が群れを成して現れるパターンのこと。百鬼夜行を終わらせるために狩る対象である“鬼”は1匹も出ないから、そういう意味でも明葉の言った“ハズレ”は的を射ている。
どこかでまた、鐘が鳴る。7時の鐘。明葉と道乃の表情に消耗が見えるし、私も少なからず消耗してる。それでもこの夜は終わらない。
───0時の鐘が鳴る、その時まで。
狂界内……というか、狂月になっている間は常に“満月”となっています。
常に月が満ちている状態なのでその月を司る神である月読様…そして描写はされてませんがギリシャのアルテミス様、ローマ神話のルーナ様なども平常時よりも力が強い状態になっています。
反面、太陽を司る神である天照様、アポローン様、ソル様などは狂月が発する強い闇によって力が阻害され、平常時よりも力が弱い状態となります。
…それでも普通の人間より強いのは変わらないのですけど。
余談ですが、日本三神の武器はそれぞれ天照様=八咫鏡、月読様=八尺瓊勾玉、須佐之男様=草薙剣というように三種の神器をそれぞれ割り当てています。




