第三十八星 魔境の夜・肆
うーん…
一話あたり2,000~3,000にしてるからなのか、それとも私の区切り方がおかしいのか…
どうしても話数が多くなりがちなのです。
青の風が吹く。吹き荒れる強風が、この世の穢れをすり潰す。
黒の水が廻る。穢れきった魂が液体となり、浄化されて循環する。
白の土が動く。液体となった魂が這い、幾重もの層を以て緩やかに濯がれる。
赤の火が導く。濾過された魂が煙を伝い、新たなる光を得て星に集う。
廻り、巡って幾星霜。星に集いし魂は新たに天地へ戻り来る。
風は吹き、水は廻り、土は動き、火は導く。そうして輪のように廻り続けて、循環は成る。
───輪廻の形である。
東方の龍が応えよう。我が風は裁定の風。総てに等しく訪れる殲滅の狂刃。
北方の武が応えよう。我が水は洗浄の水。総てを等しく交ぜる混成の螺旋。
西方の虎が応えよう。我が土は除去の土。総てを等しく受ける寛容の濾紙。
南方の雀が応えよう。我が火は転生の火。総てに等しく伝える道導の狼煙。
我ら四神、輪廻の型を担うもの。
我ら四神、霊魂の循環を担うもの。
───我ら、四神。生と死の境界を司るもの。
「……っていうのは秘魅咲にも伝わってるけどねー。」
青龍の身体に絡みつく“呪詛の縛手”なる紅い触手を斬り飛ばしながら呟く。
「最近はその力も弱ってるんでしょ、青龍。」
『その通り……です。…大変申し訳ありません。我々は魂の浄化装置でありながらその使命を全うできていません。スティラ嬢、その怒りはしかと受け止めましょう。』
「いや、別に怒ってなんかないけど。……っていうかなんで青龍は私に対してそんなに腰が低いのさ。」
『スティラ嬢ですから。』
「わけわかんない…」
なんでか知らないけど四神達は私に忠誠を誓ってるような振る舞いをするんだよね……昔から。契約上の主人は明葉なはずなんだけど。
「スティラー!鬼の足止めできてるよー!!」
「んー、もうちょっと待ってー!」
紅い触手を斬り飛ばしながら明葉に叫ぶ。別に明葉と道乃でも鬼を倒すことはできるけど……今は青龍に倒してもらった方がいいし。……ん?
『……スティラ嬢。指示を。』
「……はぁ。……注目!」
私が最後の紅い触手を斬り飛ばしたあと、声を張り上げると視線が私に集中する。
「明葉と道乃は青龍が鬼を滅したあとの“波”に警戒!!青龍は鬼を滅したあとは詠、白虎と合流して玄武の救援!あと……いるんでしょ、朱雀!!姿現しなさい!!」
『む、むぅ…バレたか』
そんな声と共に朱雀が姿を現す。…隠蔽荒すぎたんだけどさ……
「いやむしろその荒さでバレないと思ってたの!?…はぁ……って、そんなことより朱雀は裏鬼門に先回りして詠達が来るまで耐えて!」
『無茶を言いおって……その方が燃えるのは確かだがな!!』
「単純ね…」
『放っておけ、道乃よ。』
『そうですよ、朱雀の奇行は放っておくのがよいのです。道乃。』
よく響く声と共にその場に降り立つ人影。…人じゃないけど。言葉を聞いた道乃が小さくため息。
「…奇行扱いはあまりではないですか?黄竜様。」
『事実ですから。』
『……何用か、黄竜殿。』
黄竜───“五神”とする際、東西南北いずれでもない中央に座する存在。こう言うと麒麟の方が聞いたことはあるだろうけど、狂界内では黄竜が四神の纏め役として顕れる。
『朱雀、あなたの手助けをしに来たのですよ?今宵は無尽蔵とも言えるような軍勢ですからね。戦力は多い方がよろしいでしょう。』
『…かたじけない』
『さて…背に乗せてくださいな、朱雀。共に行動した方が連絡も早いでしょう。』
『仰せの通りに』
朱雀が空から降りてきて黄竜が乗りやすいように屈む。その朱雀に黄竜が乗ったあと、黄竜が私の方を向いた。
『スティラ。少し。』
「私?」
『えぇ。…あなたは神々……特に私共“五神”がなぜ自身の言葉に耳を傾けるのか、疑問に思っていますね?』
「へ?あ、うん……」
私が肯定すると黄竜が小さく笑った。
『あなたの理解できる解になるかは分かりませんが……私からあなたに解を与えましょう。』
「解…?」
『ええ。……あなたは、酷く死に近い存在であり───また、酷く我々に近い存在なのです。…お分かりいただけましたか?』
「……」
『……お分かりいただけたようですね、その表情は…』
「…さぁ、どうだろうね。」
黄竜の言葉に小さくため息をつく。
「私は“人間”で、あなた達は“神霊”───正確に言えばあなた達は“神獣”。種族はもちろん、そもそもの価値観から違うでしょ?神霊の価値観で語られたところで、人間が理解できているとは思えない。…違う?」
『……それもそうですね。そういうことにしておきましょう。行きましょうか、朱雀。』
黄竜の少し呆れたような言葉に朱雀が小さく頷き、そのまま飛び立った。その姿を見ながら大きくため息をつく。
「スティラ……あなたって本当、神々に対しても物怖じしないというか…」
「道乃と明葉もそうじゃない?」
「……あなたほどじゃないわよ…」
「私も契約関係だったり割と仲のいい神々じゃないとあそこまで軽い話し方できないよ…?」
「……」
……私ってそんなにおかしい?
『…スティラ嬢。朱雀が裏鬼門に到着したようです。』
「ん。それじゃあ始めようか。明葉、私の合図と共に鬼にかけてる“縛”を解いて。道乃は霊力矢の多重展開保持。」
2人が頷いたのを確認して氷咲の切っ先を天に向ける。
「青き花よ、開戦を告げよ。氷の華よ、汝告げるは合言葉───“氷百合開花の号令”」
詠唱完了───直後、花火が打ち上がる。……内容は氷だから、正確には花氷?一応Si Skillの一種なんだけど。
───パァン
破裂音と共に氷が散る。それと同時に私の横を強風が通る。
「■■■■■────!!!」
『それでは、私は白虎の方へと向かわせていただきます。』
「相変わらず青龍は仕事が速いねー!」
『これでも五行の木行、四素の風を司る青の四神ですので。ご主人様方も、お気をつけて。』
そう言ったあと、先程よりも強い風が吹く。…人々の青=水という認識もあって水も使えるとはいえ、流石は風の龍。一回の風圧が結構すごい。
「……さてと。私達も始めよっか。」
「…えぇ。」
私が向いた方向───鬼が明葉の術で縛られていた場所。その場所に“門”が出現しようとしていた。
「……大きそうだね」
「……これは…私達3人がかりでも骨が折れそうね」
…この日本のいくつかの場所に、“瘴気の溜まり場”みたいな場所が存在する。今、私達がいるこの皇居もその1つ。これを“小結界”といい、日本各地に散っている負の力を一ヵ所に集める役割を担っている。だからこそ、この皇居には害呪怪が多く集まる。
……だけど、この皇居の小結界は狂界外の皇居に異世界への扉があるゆえか負の力の溜まり方が他の小結界の比じゃない。それともう1つ、平安京…正確には陰陽寮の方にある小結界も。
「……来るよ」
門が顕現し、その門がゆっくりと開く。同時に何処かで8時の鐘がなり、まだ夜が長いことを報せる。
───東日本“東京”と西日本“京都”。日本において“京”の名を持つその場にて害呪怪の討伐に携わった人間はこの光景を目の当たりにし、恐怖し、その名を呟く。
天に浮かびし月の齡狂ひ、月満ちる星見へぬ夜。
即ち陰陽の均衡崩れ、陰の力が満ちる時。
血の色に染まりし月に導かれ、現世に姿現すは魑魅魍魎。
丑寅の門より出でし、人に害なす悪霊妖共の大襲撃。
歴史に刻まれしその伝説の名を───
───“百鬼夜行”、という。
四神達は朱雀以外二属性以上所持しています。
具体的には青龍が水と風、玄武が土と水、白虎が風と土、朱雀が火のみ…という感じで。
こう書くと朱雀が一番能力としては弱く見えますが、“人々の認識が合致している”という一点において他の四神達よりも優れているので他の四神達よりも高い耐久性と高い火力を保有しています。
基本的に四神達の実力は拮抗。とはいえ人々の認識の揺れが原因で青龍、玄武、白虎はその単体属性火力、耐久力が中途半端なので───火のみが強い朱雀が暴れ出すと割と面倒くさいことになります。




