第三十五星 魔境の夜・壱
前書き・後書きもこれからはちゃんと書いていきます。
「サナ!」
「まかせてー!」
私がサナの名を呼ぶと背後で炎が吹き上がる。背後から近づいてきていた“害呪怪”が焼き尽くされて無に還る。陰陽師たちの陰陽術だけじゃなくて、異世界の人達や精霊達の魔法、私達流れ星のSi Skillも害呪怪に通る。そもそも物理攻撃が有効な時点で他の攻撃が通らないわけはない。
「結」
道乃が鈴を振って呟く───道乃を囲んでいた害呪怪が動きを止める。
「束」
道野の背後にいた個体も含めて糸に引き寄せられるかのように害呪怪が道乃の前方、その一点に集まる。
「滅」
バシッ、と大きな音と強い光が生じたかと思うと害呪怪の姿はきれいに消えていた。
「斬!」
明葉は明葉で槍で害呪怪を思いっきり斬りつけていた。…槍って突くものじゃなかった?
「突───砕!!」
害呪怪の身体に突き入れたと思ったら害呪怪が爆発四散。内部からの破壊。
「…うん、この辺りはこれくらいかな?」
「相変わらず明葉は力任せに戦うわね…」
「道乃は結構静かに戦うもんね。」
この2人が使っていたのは陰陽術。昔───それこそ平安時代とかのよりは大分簡略化されているようで、文字にすると一文字くらいで発動できるようになっているとのこと。武器や戦い方から分かるんだけど、明葉は物理優先の戦士型、道乃は術式優先の魔術師型なんだよね。ゲームで例えると。私も物理優先だから何とも言えないけど。
「皇居まであと少しだけど……やっぱり多いね-。」
「四神門があるから仕方ないわ。…京都の方は大丈夫かしら。」
「お母さん達がいるし大丈夫だと思うよ?」
四神門───皇居にある4つの門がそう呼ばれている。各門にそれぞれ1体の四神が宿り、狂界内で顕現して私達の手伝いをしてくれる。京都の方には別の存在がいるけど、それはまたいつか。
「そうだといいけど───ってスティラ、後ろ!」
「え───」
明葉の声に後ろを振り向いた途端、私の視界が逆さになった。
「ああああああ」
「…あー、捕らえられてるのか……」
足に巻き付いた触手のようなものを見てそう呟く。視界上部、地面の方向で道乃が呆れるのが見えた。
「普通取り乱さない?」
「発狂完全耐性あるから。」
「そうだけど……なんて言っていいのかしら、そういうタイプってアニメとかで女の子を弄ぶじゃない?」
あー…
「まぁ、確かに…?」
「確かに、って……楽観的ねぇ。」
「あああああ……」
「…そして五月蠅いな。」
私は頭の後ろで風を起こして足を手で触れるようにする。
「裂」
2人と同じ陰陽術を使って触手を斬り裂き、拘束から抜け出す。私も一応陰陽師としての力はあるからね、陰陽術使えるんだよ…
「ああああああ!!!」
「創───潰!!」
取り乱した害呪怪を即座に創った半透明の角柱で潰す道乃。害呪怪も星侵獣の一種だから絶命すると無に還るんだよね。
「きゅるきゅるきゅる…」
聞き覚えのある声に目を向けると車輪がそこに立っていた。
「…あ、“輪入道”。」
「久しぶりねぇ、スティラ。明葉と道乃も。順調かしら?」
「順調よ。」
「問題ないよー!」
「それはよかったわぁ。」
輪入道。日本に伝わる妖怪の一種。同じ“怪異”でも“妖怪”と“害呪怪”は違う。考え方の違いみたいなものだけど…私達に害をなすのが“害呪怪”。私達に害をなさないのが“妖怪”。怨霊の類は大体“害呪怪”になることの方が多いかな。
「そっちはどんな感じなの?」
「そうねぇ…目についたのを片っ端から狩ってるけれど全然追いつかないわねぇ。」
「あ、やっぱり多い?」
「明葉は分かるでしょうけれど、最近狂界は起動していなかったもの。それは溜まり込んでいるでしょうねぇ。おかげで四神達も門付近に縛られたままよぉ?」
「わ、それはまた…」
「早く助けに───っ!」
輪入道が言葉を言いかけて止めた。険しい表情の先には蝙蝠みたいな害呪怪。
「スティラ、お願いできるかしらぁ?」
「任せて」
私が短く返事をすると輪入道が私の手元まで転がってくる。車輪部分をしっかりと掴んで息を整える。
「私達は離れてるよー。」
明葉の言葉に頷き、蝙蝠に狙いを定める。
「準備はいい、輪入道?」
「えぇ───」
声をかけた後その場でジャイアントスイングの要領で回転。回転が速くなってきたころに───
「行───けっ!!」
手を離して投擲。投擲された輪入道は綺麗に回転しながら飛んでいき───
「───きゅるきゅるきゅるきゅるきゅるきゅるるるるる!!!!!」
奇声というかなんというか……ともかく、声を発しながら回転数を上げて蝙蝠に突っ込んでいった。それを見ながら明葉が一言。
「…魔境たる所以、だよねぇ。」
「そうね…地球上の他のどの国よりも怪異の数が多いんだもの。それは魔境と言われるわよ。」
実際、それ故もあるのか地球特有の星侵獣である害呪怪が現れるのもこの日本だけだし。別の国にはこれまた別の存在が現れるけど。
「とりあえず四神達の救援……行けそうにないね」
「湧いてきたわね、怨霊が…しかも強めね」
わらわらと、という表現が合いそうな湧き方をした怨霊たちに明葉が小さくため息をついて口の前に指を立てた。
「朱雀・玄武・白虎・勾陣・帝公・文王・三台・玉女・青龍」
「あ、九字…」
道乃がぽつりと呟いた直後、怨霊たちがまとめて弾け飛んだ。
「…いや、明葉の九字ってやっぱり強すぎない?」
「土御門家……元・安倍家が実際に使っていた九字だもの、安倍家の明葉が使えばそれは強いに決まってるわよ。」
「それもそっか。」
要するに血筋による適性ってことだね。不意に、微かに鐘の音がしたと思うと、明葉が私達を見つめた。
「11時の鐘が鳴った。まだまだ余裕はあるけど、油断は禁物。早く四神達の所に行かないとね。」
「あ、うん。」
「というか、もう11時の鐘が鳴ったのね…」
本当に多いな、今日…
今更ですが、基本的に私は1話につき2,000文字から3,000文字前後を目安に書いています。
…読みにくいのか読みやすいのかはちょっと分からないんですけど…
……どのあたりで切ればいいのか分からなくなるというのもありますが。




