第三十二星 神社
目的地に向かうついでに星間ギルド地球内日本本部に向かい、ルシリールとエレナの入星手続きと仮登録手続きの説明をしておく。それが終わったら本部から出て目的地───神社へ向かう。
「…ん」
笛の音が聞こえる。…ううん、横笛とオカリナ、それからハープと琴。この神社には基本的に2人しかいないはずだから楽器のうち2つは人以外が鳴らしてるもの。…だと思うんだけど。とりあえず境内に入れば……
「……あ!スティラー!スティラが来たよ、“道乃”!」
「あ、本当…“明葉”が言ってた時間から少し遅くなったけど大丈夫だったの?」
「こんにちは、明葉、道乃。私に関しては問題ないよ。」
私を見つけて声をかけてきたハープを弾いていた黒髪の少女は“安倍 明葉”。その明葉の言葉に反応して私に気付いたオカリナを吹いていた黒髪の少女は“蘆屋 道乃”。2人とも神社の巫女で、私の友人。特に明葉はここ晴明神社の一人娘で、非常に強い力を持つ。…当の本人はその力に振り回されかけてるらしいけど。ちなみにこの晴明神社、西暦2030年に建てられたらしくて実は割と新しい。先々代の巫女である明葉のお祖母さんが何かを感じて建造を依頼したらしいんだけど……実際その2年後に星元なわけだから割とその勘を馬鹿にできないっていう…
「それで明葉、メッセージにあった用事って?」
「えへへ……これ!」
そう言って明葉が見せてきたのは1枚のカード。
「……これ……ライセンスカード?…って、あ。」
明葉が見せてきたのは流れ星としてのライセンスカード。…それも、正式なもの。ということは……
「私、やっと正式ライセンス試験に受かったの!!これで晴れて私も道乃やスティラと同じ正式な流れ星だよ!!」
「ホント、やっとよね……」
「…そっか。」
“正式な流れ星”。これはFランク以上の流れ星を指す言葉で、研修課程を終えた……基本教育の段階を終えた流れ星のことになる。明葉は数年前から何度も挑戦し続けてたんだけど座学試験でいつも躓いてたんだよね…
「実力はあるのに座学が本当に弱いのよね、明葉は…これだから実力特化の天才は……そういうの、嫌いじゃないけれど。」
「えへへ……いつも付き合わせちゃっててごめんね、道乃。」
「別にいいの。…ところでスティラ、聞いてもいい?これより先も座学試験って……」
「ないよ。Eランクへの昇格試験以降は全部多項目での実技試験になるから…まぁ、2人なら軽く突破できるんじゃないかな。」
友人としての贔屓目じゃなくて本当にそう思う。実力の明葉、知識の道乃。明葉は高い実力と感覚だけど、道乃は高い知識に加えて実力もあるから実力と対応力が求められるEランク昇格試験以降も簡単に突破できると思う。
「スティラと冒険できるようになるまであと一歩!私、頑張るよ!」
「……そう」
「もちろん私も頑張るよ。…心配しないで、スティラ。私も明葉も、無理はしないから。特に明葉のことは無理しすぎないようにちゃんと見てるから。」
「…ね、私の不安見透かすのやめてくれない?」
「分かりやすいよ?」
「分かりやすいけど?」
…そんなにわかりやすいかな?と思ったら───
ゴーン、ゴーン、ゴーン───
突然、鐘の音がする。本殿の方から。私も明葉も道乃も、その本殿の方を見る。
「……あの鐘が鳴った」
明葉が少し低い声で呟く。その目つきはさっきまでの元気な少女みたいなそれじゃない、冷静な戦闘員としての目。
「…スティラ、ごめんだけど今夜お願いしてもいい?」
「うん、最初からそのつもりだよ。」
「……ごめんね、いつもいつも。報酬はいつも通り神社から払うから。」
「別にいいのに…」
「ダーメ。元はと言えば私達の仕事なんだから、私達から依頼として登録してる以上報酬は出さないと。」
…とはいっても……スピレで500万、日本円で480万とかあっても使いきれないのよね。あまり買わないから。
「それじゃあ、夜…いつも通りの時間にここに集合。」
いつも通り…ってことは今回の場合は星暦25年6月29日22時に来ればいいはず。
「…本当にごめんね、スティラ。忙しいのに。」
「いいよ、別に。…明日も忙しくなるし。」
「………本当にごめんね。」
ひとまず、一旦これで解散になった。…さてと、一度ステラーシップに戻るかな…




