第二十六星 拒絶
「……以上で、討伐報告を終了します。」
あくまで事務的に。機械的に。淡々と、感情なく告げる。
「うむ、報告ご苦労。」
「それでは、失礼いたします。」
そう告げて立ち上がり、会議室を去ろうとする。実際のところ、ギルド総本部に赴く用事とはこれだけ。……本来であれば、公的な用件はこれだけなのだ。
「待て。」
「…何か。」
「用件はまだ終わっていない。」
「はて、終わっていないも何も公的な用件はこれで全てなはずですが。」
ギルドの公的な用件といえば“報告”のみだ。具体的には討伐報告と調査報告、それから殉職報告など。ただし、それらは基本的に各ギルド支部でも問題はなく、私のようにギルド総本部に呼び出されて報告するのはまずない。精々新種が発見された際や不明点が多すぎる際くらいなのだ、そういうのは。
「お前にはなくとも私にはあるのだ。」
「はて、それは公的な用件なのでしょうか?少なくとも私は公的な用件というものは報告であると認識していますので地球代表理事様の用件は公的とは思えませんが。」
「私が公的だといえば公的だが、なにか文句でもあるのかね?」
「総帥でも副総帥でもない貴方に何の権限があると?こうして会議の場で私的な用件を済ませるのは公私混同に値しますが。」
「うるさい、黙って私の話を聞かんか。」
「……我儘な方ですね、それでも総帥と同じ還暦ですか。」
…この人初老にしか見えないけど普通に還暦迎えてるからね……とはいえ、会議室の空気が悪化したのも事実。周囲の参加者の嫌悪感はあの男に向かってるとはいえ、気分のいいものではない。
「…それで、何のご用でしょう?」
「ふん、最初からそうすればいいものを。」
別に貴方のためじゃないんだけど…
「さて、本題に入るとしよう。」
「……」
「…いい加減、戻ってこんかスティラよ。」
「お断りします。」
即答。
「遊んでばかりおらずにいい加減戻ってくるのだ。少しは我が家のためになれ。」
「再び申し上げましょう、お断りします。」
再び即答。……というか、私よりランクの低いこの男に“遊んでる”とか言われたくないんだけど。
「この分からず屋めが。お前が戻ってくることが最善だと何故わからん。」
「貴方の価値観など分かりたくもありませんので。」
「ふん、ガラクタと遊ぶのがそんなに楽しいか。」
「……えぇ、少なくとも貴方の元へ戻るよりは───いえ、貴方のいるこの場に来るよりも、非常に楽しいですね。」
棘のある言い方になったけど気にしない。
「あんな型落ちの鉄屑など役にも立たぬという───」
「おい」
……それは、私の逆鱗だぞクソジジイ。
「なんと言われようがあの子は私の仲間。貴方に何か言われるような筋合いはない。」
「命もないというのに盾としての役にも立たぬ鉄の機械など邪魔でしか───」
そこから先は言葉が消えた。私が地球代表理事の目の前に移動して首を掴み上げたからだ。
「……!」
「例え身体が機械であろうとあの子は人間だ。あの子だってちゃんと生きてる。あの子の存在を否定するのは私が許さない。」
そう告げて地球代表理事を解放する。私は私で踵を返して扉に向かう。
「こ、こんなことをして……!!貴様の両親がどうなってもいいのか!!」
「……両親?」
…何言ってるんだか。
「…お父さんも、お母さんも。……貴方が殺したんでしょ。」
そう告げたあと、去ろうとして思い出す。
「あぁ。貴方が私に差し向けた刺客達は全員アメリカにお返ししますので。」
「……チッ。使えんゴミ共めが……」
「……では。」
ゴミなのは貴方の方だ、と言いかけたけどどうにか抑えて会議室を出た。
「……はぁ。」
…ホント、なんであんな人間を駒としてしか見ない家系と血が繋がってるんだか。私に戻るように言ってくるのも、非常に優秀な駒を手元に置きたいだけだ。
「……事務室、行こう」
……“私”がいるから。“私”を手に入れるために───障害となる“邪魔者”は消された。嫌になるね、ホント。…私なんて、消えてしまえばいいのに。私の身体が、それを許さない。




