第十七星 属性適性検査
少し待っていると、空からランが降りてきた。
「お待たせして申し訳ありません、主スティラ。」
「ううん、大丈夫。さっき連絡してからそこまで待ってないから。」
「そうですか…?」
ゆっくり飛んでても1分くらいでくれば早い方なんだけどな……って
「ラン?」
「はい?」
「ここ、怪我してる。」
ランの右頬。小さめだけど、ハッキリとわかる傷があった。
「あぁ……先ほど避けきれずに矢を掠りましたか。」
「治してあげるからじっとしてて?」
「…助かります。」
私は治癒は得意じゃない。…けど、この軽傷くらいなら完治させられる。
「……ごめんね」
「…」
私の呟きにランは何も答えなかった。聞こえていなかったのなら、それでいいのだけど。
「ラン、適性測定装置は…」
「ここに。」
そう言ってランが量子変換ポーチから取り出したのは水晶玉が顕微鏡のステージの場所に収まってるような感じのもの。これが適性測定装置なんだよね。
「……」
接眼レンズを覗いたまま水晶玉に手を触れる。すると水晶玉が淡く光って中に模様を映し出す。“占い”に似てるけど、占いじゃない。占いに使うこともできなくはないけど…水晶玉は水晶玉だし。…あ、私の適性出た。
「…何度も見てるけど、ホント…ねぇ。」
「……」
私の呟きにランが表情を曇らせる。
「……ラン、ちょっといい?」
「はい?」
「…もし、この先何があったとしても……エレナだけは絶対に守ってね。」
「……」
私の言葉にランが悲しそうな表情をする。
「…呪いの化物になるのは、私だけで十分。彼女まで私みたいになる必要はないんだから。」
「……はい。」
実際───適性とか見てみないことには正確なことは言えないけれど、一番私の現状に近いのはエレナ。…なら、いずれ…私と同じようになる可能性がある。最終的に決めるのはあの子自身だとはいえ…ね。
「…よし。適性検査を始めるよー!私とランの前に二列で並んでねー!」
ランが2台持ってきてくれたから手分け出来るね。ちょうど…10人ずつか。
「それじゃ、よろしくお願いけろ…」
「って、私の方の最初はルシリールか。水晶玉に触ってね。」
接眼レンズは2セットある。検査者本人ともう一人が見れるように作られてる。1セットずつ覗いて水晶玉の中を見る。
「…うーん。わよにはよくわからないけろ…」
「…“♅”が五つに“❀”が三つか…」
「んよ…?」
「あぁ、言い忘れてた。適性は全部模様で表されるの。ルシリールの場合…まぁ、結構な風属性使いだね。」
「ほんとけろ…?」
「ホント。例外属性の中で風元素を示す花属性を使えることから魔法適性あるかもしれないけど…」
ハンドルを回して表示するものを変える。万華鏡みたいな感じで、いろいろな物を見ることができるんだよね。
「あー…魔法適性はないね。」
「そ、そうけろ…」
魔力に反応しなかったからね、水晶が。一応魔力にも反応するからね、この装置。
「Skill傾向は呪詛が結構強めかな……ま、適性とか検査したところでどれがどれだけ伸びやすいかでしかないみたいなところあるけど。」
「そ、そうなのけろ?」
「ん。…で。星素容量:大…割と大きい方だね、ルシリール。これは制御大変だよ…?」
そこまで告げてから量子変換ポーチから取り出した紙に検査結果をさらさらと書いていく。
「これ、持っておいてね。…次の方」
ルシリールが椅子から立ち上がったのを確認してから次の人を呼ぶ。
「…あ、水晶の中の模様の意味はこんな感じだから自分の診断結果と照らし合わせてねー。」
───属性適性模様───
☉……日属性適性
☽……月属性適性
♂……火属性適性
☿……水属性適性
♃……木属性適性
♀……金属性適性
♄……土属性適性
♁……地属性適性
♅……天属性適性
♆……海属性適性
♇……冥属性適性
☆……無属性適性
●……虚属性適性
❄……氷属性適性
☂……霧属性適性
❀……花属性適性
⚡……電属性適性
♡……想属性適性
♰……罪属性適性
♪……祝属性適性
───傾向適性模様───
⚔……近接
☄……遠距離
⛓……黒魔法
✨……白魔法
↹……防御
±……解析
∞……具現化
※……補助
補足:模様の数が多いほどその適性が強い。
黒板に書いた後に適性検査を進めていく。
「…よろしくお願いします」
「あ、最後はエレナか。」
ちょっと考えてからエレナを見つめる。
「えっと…何か?」
「……エレナ、なんか喋ってみて?」
「へ?あ、はい……」
その声と周辺の変化を感じて最初のが聞き間違えでなかったことを確認する。
「やっぱりね。」
「え?」
「“妖精声紋”。貴女が持つ声はそれだよ。」
「“妖精声紋”……?」
妖精声紋───大星素容量と同じく呪いの1つ。妖精の声を聞き、妖精に声を届けられる力のこと。簡単に言えば“精霊魔法適性者”かな?
「あとでエレナには説明してあげるから今は水晶に触ってねー。」
「は、はい…」
ぎこちなく触るエレナと淡く光る水晶を確認してから私もレンズを覗く。
「……っ!」
映っていた模様の種類は───☉、☽、♂、☿、♃、♀、♄、♁、♅、♆、♇、☆、●、❄、☂、❀、⚡、♡、♰、♪、↩。つまり、これは、この子は───
(“全属性適性”…!!)
多少各適性のばらつきはあるけど、間違いない。よりにもよってエレナに、呪いの1つである“全属性適性”が現れてるなんて…!!
「…スティラ、さん?」
「…はは」
“魔力適性:中”。“魔力属性適性:水”。
(───ふざけんな。“単独呪詛”ならまだいい。だけど───“四重呪詛”はふざけんな!!!)
大星素容量、全属性適性保持者、魔力核、妖精声紋。これらは全て呪いだ。エレナにかかっている呪いは4つ。……ほんと、ふざけんな……!
「あの……顔、怖いですよ…?」
「…うん、ごめん。……ごめんね、ちょっと頭触るよ」
「…?は、はい…」
エレナには私のようになってほしくない。だから───魔力核と全属性適性を強めに隠蔽する。これは私の我儘だし、エレナの意思とは関係ない。…でも、この四重呪詛は人の人生をいとも簡単に……総てを狂わせる。エレナの望まない形で狂わされるのは避けたい。
「本当に、嫌ね……」
小さく呟いてため息をつく。…ザニアを離れれば今後エレナと会うことがあるかは分からない。どうか何も変わらず、平和に生きていられることを願う。
「よし、適性検査終わり。次は無属性Si Skill教えるよー。」
……かつての私のように、総てを喪う。そんなことがエレナの身に起こらないことを。心から願う。




