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第16話 天道翔ける未来都市【4】

「なっ、シュリム……!?」


「はい。ふふ、もしかしたら、遠い親戚なのかもね」


 この時代にも、その名前が残っているのか。よっぽど大事にされているのか、失われていないのが不思議、というか……。いや、それ以上に運命にも近い偶然に驚くのだが。


「ちょ、ちょっと待ってね、リエンちゃん」


「? はい」


 グイっと、リリアはオレの耳を引っ張った。驚きと焦り、のような表情が見て取れる。具体的には瞳が小さくなって、額に少しばかりの汗を垂らして。


「ねぇ、アキ! リエンちゃんシュリムだって!」


「あ、あぁ」


 オレにしか聞こえないような小声で、囁くように叫んでいる。オレ以上に驚いているのが意外だ。いや、もっともではあるんだが、なんかもっとこう……違う感じがして……。


「あ、あの子、アキの子孫なのかな……?」


「い、いやぁ? そうとは限らないんじゃないかな。魔力の感じが全然違うし」


「え、そういうのって分かるの?」


「血液みたいなものだからね。色と流れ、って言うのかな。なんか癖があるんだよ」


 どちらかと言えば、オレの魔力は黄色くて粘質的の……例えるなら蜂蜜のようなものなのだが。別にベタベタはしてないけどね。対してリエンのそれは水色のサラサラ、まさに淀みのない川のようなものだ。


「あくまでイメージみたいなもんだけど、オレとは違う。まぁ1,000年あればそりゃあ変わるだろうけど、たぶん違うってのは分かる」


「……じゃあ、血は繋がってない、ってこと?」


「うん。……たぶん」


 つまり、やはりシュリムとはオレの家系を表す名ではない、ってことだ。集団か何かの名前なのか、何かしら“意味”がある言葉か。……分からんな。


「リエン……さん、その……シュリムって、何なのかな?」


「さん付けは要らないんだけど……さぁ? 代々継いでる名前ってだけだから……うぅん、普通の名前じゃないの?」


「まぁ……案外そうなのかもしれないけど」


 嘘は言ってないな。やっぱり、得られるものはないか。元々期待してなかった分、さほど落胆もないが。となるとこの話に意味はないかな。


「……あぁ、そうだ。で、オレ達が呼ばれた理由って?」


「あぁ、そうそう。まずは……先ほどは見苦しいところをお見せして申し訳ありません」


「え、あぁ! いやいや。いいよ、別にリエンが悪いわけじゃないでしょ」


 リベルトが暴れていたこと、アレを本当に学園の恥だと思っているらしい。もちろんそれが本題ではなかろうが、それでも律儀なものだ。


「で、えーと……お二人は魔導師ですよね? どのような魔導を?」


「……オレは黎明魔導っていう……こんなの」


 嘘をつく理由もない。オレは手のひらを窓の外に向け、そこから魔力の塊を放出した。レーザー、とは少し違うから、この時代にも珍しいだろう。


「私は空間魔導だよ」


「なるほど、空間魔導と黎明魔導ですか……。アキくんのはよく分からないけど、どっちも強力そうだね」


「アキくん……」


 一旦、ダメージを喰らったのは置いておいて。やはり空間魔導には大して意識を向けないか。そも、魔導自体珍しいとは言っても、この時代では元素魔導だろうから……特にこの学園においては比較的普通の部類なのだろう。


 元素魔導というのは、言葉の通り……とは少し違うか。要は魔法に近しい魔導のことを指す。例えば火炎魔導や氷結魔導、風魔導なんかは、規模や効率で魔法とは一線を画すものの、本質として魔法と近い。現代では空間属性が存在しないため、空間魔導は特殊魔導に分類されるが……。


「ねぇ、アキくん、リリアちゃん。私の魔眼はね、それなりに万能なんだ。二人、強いでしょ。学園に入らない?」


「強い……か」


 時計塔があり、魔導書が確立されているのがオレ達の世界。魔導の完成度で言えば、この世界よりもずっと上だ。強い、というのは間違いじゃないが……それより。


「そりゃあ願ってもないけどさ、オレ達はその……身分証とかもなくて……」


「深くは聞きませんよ。そういう方も少なくない。だから、私が校長にお願いしてみます。だからその……見返りと言ったらなんですが……」


 途中から、少し歯切れが悪く、声が萎んでいくようで。街で見た堂々とした雰囲気からはどんどん、その仮面が剥がれてしまっている。ギャップってヤツだな。


「いいよ、だいたいのことは受け入れる。入れてもらえるなら」


「じゃあさ! せっかくだし、決闘しようよ。もちろん、二人にもいいことはあるんだよ? ほら、私相手に実力を示せば、誰も文句は言わないし」


「お、おぉ……そんなこと……」


 女王、女神ときて、戦闘狂バトルジャンキーときたか。口調も敬語が剥がれ落ち、すっかり素のものに戻って……。とはいえ、その見返りとやらもオレ達からしたら願ってもないことだ。


「よし、それで手を打とう! いいな、リリア?」


「もちろん! お願いね、リエンちゃん!」


「うん! 善は急げ、早速校長室に行こう!」


 すっかり明るくなってしまって。その方が話しやすいし心地良いが。シュリムとは言ったが……オレよりリリアに似ているな。


 なんて、こんな順調だと無意識に浮かれてしまうが。魔導学園の最高指導者の待つ部屋に、オレ達は緊張と共に向かった。

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