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第14話 天道翔ける未来都市【2】

 空を舞うのは乗り物の類。いや、それ以前にこの大地が、都市が空中に浮いているのだが。そこに目を瞑れば、大して発展しているわけでもなく。それは塔が無い影響か。そもそも現代の技術が来るところまで来た証拠か。原因は分からないだろうな。


「……いやいや、浮いてるのをスルーできないでしょ」


「いや、できないけども」


 目を輝かせて、リリアがツッコミを入れた。魔導はさておき、古代から現代にかけての魔法は五元素魔法が一般的だ。あるいは魔導においても、大抵の場合は元素魔導ではあるし。


 対してこの世界、未来ではそれに加えて空間そのものに作用する魔力も開発されているのだろう。その能力が現代に持ち込まれていない以上、簡単なものではないだろうが。ただリリアは魔導書があれば使えてるわけで……知識、ではあるのか。あるいは魔導は別?


「ねぇ、魔導学園で誰かに勝つって言ってたけどさ、誰?」


「あぁ、えーっと。……リエン、だっけな。なんかリエンちゃんって」


「“ちゃん”ってなんだ“ちゃん”って」


 そうは言われても……記録書にもリエンちゃんって書いてあるんだから……仕方ないんだよ。たぶんよっぽど愛嬌があるのか、攻略者みんなに好かれるタイプだったんだろう。


「っていうかさ、私ちょっと不安なんだけど」


「ん? 何が?」


「学園ってさ、入れる? 私達、身分証も何もないけど」


「……あ」


 思えば魔導書や時計塔の許可証ライセンスもこの世界じゃ意味をなさないか。とはいえ、学園に入らなければ何も始まらないし始められない。


「ま、なんとかなるっしょ」


「えっ、急に雑じゃん! 直感担当は私じゃないの!?」


「そんな担当は無ぇ」


 思考放棄とまではいかないが。オレなりにちょっとした根拠だってある。前の攻略では意思疎通という、攻略に必要な最低限の補助はあった。となると、そもそも攻略不可能にはならないはずだし、学園に入ることもできるはずだ。


「無理です。身分も分からない怪しい人を、入れるわけがないじゃないですか」


「なっ……!?」


 転送場所から数十分、王立魔導学園の門。言葉の通り門前払いを喰らったわけで……。いや、二コマ落ちじゃないんだからさ。絶対何か、抜け道はあるはずだ。


「いやいや、どうにか入れないですか? お願いですから……」


「無理なものは無理ですよ。通報しますよ」


「そ、それは困る……」


 冗談じゃないぞ。リエンちゃんは学園の生徒なんだ。会うならともかく、決闘なんかをするなら学園内じゃないと絶対に無理だ。詰みなのか? いや、何か抜け道はあるはず……たぶん。


「アキ、一旦下がろう。こればっかりは無理言っても仕方なさそうだ」


「んん……そうだな。考え直すか」


 リリアに腕を引っ張られ、そのまま学園の離れにある喫茶店に入った。学園には入れない……ということは、そもそも塔からの補助はそこじゃない。恐らく天空都市への滞在許可、といったところか。


「たぶん他の人達にはちょっと浮ついた住人としか認識されてないんだな。設定は家に身分証を忘れちゃった人って感じかな」


「忘れちゃったじゃ済まないよ」


 どうしたものか。門番にお願いしても無駄、まさか忍び込むなんてことは……いや、できないか。学園内に用がある以上、下手な真似はしない方がいい。……いよいよどうしたものか。


「おいおい、下民が俺の道を歩いてんじゃねぇよ。この俺がリベルト様だと知らねぇか? いや、制服を見りゃあ分かるよな、あぁ?」


「ぐわっ……!」


「ん……?」


 カフェラテを飲みながら、学園の入り口に繋がる大通り、そこで少しの騒ぎが聞こえた。遠目で見ると、倒れ込んだ貧しそうな青年と、対するは金髪のいかにも高貴そうな青年がいる。言わずもがな、威張っているのは金髪の方だ。


「ねぇ、アキ。アレ、私嫌だ」


「やめとけって。変に偉いさんに楯突いたら、この先動きづらいから。それにこの世界はあくまで模造品、現実じゃない」


 そう言いながら、オレの意識は必要以上にそちらに向いていた。高貴か貧乏かなど、それ以前に品性を失った輩に遠慮するのも屈辱だ。


 時計塔が存在しないこの世界において、魔導とは現代よりも大きな価値があり、より希少だ。それは前の、古代の世界においてもそうだったが、発展した時代になればその優位性も変わってくる。


「リリア、オレが一発、アイツを撃つから。その直後にちょっとだけ空間転移テレポートしてくれ」


「分かった」


 調べたところ、この魔導学園というものには世界中の魔導師の卵が通っているらしい。この世界の魔導とは、先天的な特殊能力か、あるいは才能を持った上で最高に優れた師匠を持った者しかなれない。その割合で言えば全体の一パーセントにも満たないだろう。だからこそ、そんな存在はまるで最高位の貴族のような振る舞いを……。


「……っ! いや、オレ達が手を出す必要もなさそうだ」


「え、どういうこと?」


 手のひらに術式を展開しかけて、遠く、学園の中から飛んでくるその魔力に気がついた。繊細で、輝くほど力強い魔力。分かりやすく強者、それをオレの魔眼が見つけた。


「学園の……」


「うがッ……!」


「恥晒しめが!」


 確かに貴族と見紛うほどの煌びやかな制服を見に纏い、輝かしい金髪を揺らして。彼女は瞬く間に、言葉の通りに瞬きの間に、男、リベルトとかいう者を組み伏せていた。

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