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荒廃の大地より愛欲を込めて  作者: 蓮見燐
1章 最強と少女
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40:誰かがご都合主義にしなければならない世界

 ウルグリム皇国、皇都。

 その地下に広がる、ウルグリム皇国の皇城。

 世にも珍しい地下に広がる皇国の象徴は、決して空の光を浴びることなく、しかして膨大かつ広大に、立体迷宮の如く複雑怪奇に異質に広がる。

 当然、ただ広いだけの空間ではない。ウルグリム皇国を動かすための様々な機能が、この皇城に集約されている。

 世界最大の国家。その中枢の役割は、十分に果たされるだけの広さと機能、そしてそれを活かす人々が居る。

 今も城の至る場所で、様々な人々が各々の役割を果たすため駆け巡っている。

 その中の一人に、クルーベルも居た。


「…………………………」


 誰も通らぬ通路を、無言で淡々と歩んでいくクルーベル。

 この通路を他の誰も利用しない理由は単純明快。この場所には、十剣聖及び十賢者、そして皇帝のみが踏み込むことを許される、皇城の中のトップシークレットだからだ。

 当然。他の通路のように傍から見えるものではないし、常人が踏み込めるものでもない。

 そもそもこの場所は、皇帝の権限を持つ者より理の裁定者として認められた者しか認識できず踏み込むことが出来ない。

 加えて。そもそも皇城に来る理者が、クルーベルが仕事の関係で来る程度。ヴェルサスを始めとした他の理者は、各々の家や領地、仕事場などに居り、皇城に来ることが殆どない。

 故に。この理の裁定者及び皇帝の領域は、事実上クルーベルとヴァメルの固有の領域とまで言えるほど、人気が無いのが基本なのだ。


「……此処まで来ればいいか?」


 そんな誰も通らぬ通路で。今もクルーベル以外誰も居ない場所で。

 当のクルーベルは足を止め。誰も何もない虚空へと、言葉を投げかける。

 決して独り言ではない。何もない虚空へ向けて、確かな確信を持って。


「相も変わらずしれっと気付くんですから。感知能力どうなってます?」


 クルーベルの声に応える声が、その場に発生する。

 形は無い。気配はない。恐ろしい事に魔法も感知されない。

 だが確かに、クルーベルの背後から、ヴェルサスの声がその存在感と共に響く。

 クルーベルはそんなヴェルサスに対し、背を向けたまま言葉を交わす。


「理解できる範囲で俺の数百倍色々精度の高い感知を普段使い出来る奴には言われたくないな。それと、こんな訳の分からん暗殺者の技能を使える奴にも」

「単に存在を消滅させつつ維持してるだけです。お気になさらず」

「気にするわ。何をどうやっとる。死んだまま生きてるようなもんじゃねえか」


 言葉を交わすヴェルサスとクルーベル。

 しかし変わらずこの場にはクルーベル一人。もし傍から形だけ見ることがあれば、クルーベルが何もない通路で立ち止まり、独り言を喋っているようにしか見えないだろう。

 だが確かにこの場にはもう一人の声が有る。それも最強という簡潔な二字の称号を持つ、ヴェルサス・ヴァナディースの声が。

 誰も居ないのに在る。完全な矛盾。決して姿を見せないわけではなく、存在しないという状態でありながらそこに在る。

 それを呼吸のように用いる存在。それがヴェルサス・ヴァナディースという最強だ。

 尤も。長い付き合いであるクルーベルからすればこの程度、想定を超えてくるが故に驚きこそすれ、その驚きも含めてもはや慣れたものではあるのだが。


「で?何の用だ?」

「聞かずとも分かっているでしょうに」


 端的なクルーベルの問いに、何処か疲れた雰囲気のヴェルサスの言葉が返ってくる。

 物覚えは良い方でなくとも、純粋に頭の回転が良すぎるクルーベルだ。当然、ヴェルサスが何故この場所で声をかけてきたかなど、とっくに理解している。

 しかし、狙いがあっての事かはたまた気まぐれか。クルーベルは理解していようとも、決してそれを言おうとはしなかった。

 ヴェルサスもそれが分かっているが故に、端的に用件を投げかける。


「今回の件。何処から何処までが予定通りですか?」

「全てが我が意のまま、とでも言えば満足か?」


 ヴェルサスからの問いに、同様に端的に答えるクルーベル。

 その返答にヴェルサスは、姿こそ無いが明らかに溜息を吐いた気配を漏らす。


「本当に全てがクルーベルさんの意のままであったのなら。……今頃もっと別の結末になっている事でしょうね。その果てが悲劇か喜劇かは知りませんが」


 あるいは惨劇ですか?とヴェルサスが何処か確信を持って訊ねる。

 クルーベルはその結末の推測には何も答えず、これまでと同様に淡々と答える。


「大筋は予定通りに進みはしたな。発端が想定外だったことも相まってか、結果にも想定外が重なって、思い通りとはいかなかったが」


 言葉とは裏腹に、特に何とも思っていないようなクルーベルの声音。

 事実何とも思っていないのだろう。想定外が重なる程度、世の中には無数に存在している。

 こんな大地で、こんな国で。軍師などという重要極まる役職を務めるクルーベルには、飽きるほど起きた事象だ。


「想定外。具体的には」

「異世界からの来訪者、ネネカ・クロツチ」


 でしょうね、とヴェルサスがクルーベルの言葉に納得する。

 ネネカの存在はクルーベルに限らず、この世界のイレギュラー。世界最強と謳われるヴェルサスなど可愛いものだ。

 ネネカが異世界から来たと知られれば、それだけで決して小さくない騒動が起こるのは目に見えている。


「彼女の事はどうするんです?放っておくわけにもいかないでしょうに」


 異世界の存在というだけで、決して周囲は彼女を放っておくことは無いだろう。

 異世界出身という事情は、上手く扱えば万能薬となるが、見方によっては全てを朽ちさせる劇毒ともなり得る。

 ウルグリムの現状を考えれば、どちらになるかは殆ど賭けにも近い状態。その賭け自体も、ヴェルサスたちが制御することでようやく成立するほどのもの。

 とてもではないが、野放しに出来る存在ではない。


「基本はお前の裁量に任せる。拾ったのはお前だ。お前が責任を持って対処しろ」

「ンな無茶な。拾ってきた猫じゃないんですから」

「他の大陸ならともかくこの大陸で猫なんか拾えるか。獣人か人獣の方がまだ拾える」

「それもそれでどうかとは思いますけどね?」


 でも良く拾ってるだろ、というクルーベルの言葉に、ヴェルサスは押し黙る。

 事実であったから。

 でなくば、今頃ヴェルサスの屋敷にあれほどのメイドは居ない。

 ヴェルサスの屋敷で働くメイドは全て、経歴こそ異なるが一様にヴェルサスに関わった身寄りのない者だ。

 それを拾ったと評するのなら、クルーベルの言葉は紛れもない事実と言わざるを得ない。


「……まあ、仕事の関係でも、今後も私の屋敷に住まうであろうことは分かりますけどね」

「それでいい。皇都に駐留する強力な存在が二人になるだけでも、現体制を疎む奴らには頗る邪魔に感じるだろう。仕事も当分は皇都とその近郊で片付くものばかり。なら現状の延長線上で構わん」


 ネネカの実力も知名度も、ヴェルサスにはまだ遠く及ばない。

 だが前代未聞の竜を従える存在ともなれば、必然的に世界的にその存在感は高くなる。

 竜という世界共通の絶対強者。その脅威が丸ごとネネカのものとして加わるのだ。

 場合によってはヴェルサスと並ぶ存在感を示すことになっても、何ら不思議はない。

 ウルグリム皇国としてはその存在感を利用しない手はない。ヴェルサスもそれは分かっていた。

 分かっている上で、問う。


「……ネネカさんがドラゴンテイマーの才能を持つ事、推測出来ていたので?」


 ヴェルサスの問いは、結果を確信した上でのそれ。

 確実にこれまで以上に鋭い感情を込めて投げ掛けられた言葉は……これまでと変わらず、クルーベルを特別刺激することは無かった。


「可能性は推測出来ていたが本当に持っているとは想定していなかったな。おかげで予定が大きく狂わされた。全く、想定外を幾ら想定しようとも、規格外の想定外を想定しても無駄だと思い知らされた」


 言葉とは裏腹に声音には大した抑揚もなく、淡々と大した感情も感傷もなく、他人事のように語るクルーベル。

 先ほどまで皇都南部で風竜たちとの交渉の場に居た際の雰囲気が、丸ごと全て幻想だと言わんが如く。

 そんなクルーベルに対しヴェルサスは、同様に大した動揺も何もなく、唯々いつも通りに話を進める。


「成程成程。流石のあなたでも、今回の件の顛末は想定しきれなかったよう。ですが……」


 そこでヴェルサスは一つ、ふむ、と言葉を止め。


「……それで。成果は?」

「十分だ。想定内の消費で想定された最大以上の成果を得られた。惜しむらくは消費が想定内では有っても想像以上であったことぐらいだが、結果として得られたものはその価値以上。消費した甲斐は有った」


 消費が想定内では有っても想像以上の消費。その結果得られたものは、想定以上の価値。

 それは確かに、十分だ、と評するのが的確では有ろう。

 最善ではない。落第でもない。及第点以上では有るのだから。


「そうですか」


 対するヴェルサスの声音は、何処か鋭い。

 端的な言葉にもその鋭さの一片が現れているような気がした。


「答え合わせでもご所望か?」

「ええ、まあ」


 クルーベルの問いに、これまでと変わらず端的に返すヴェルサス。

 どうやら彼女の目的は答え合わせのようだった。

 クルーベルは無言で以ってヴェルサスの問いを促す。


「……【呪幻神官】を動かしたのは、あなたですね?」

「そうだ」


 これまでと同様。クルーベルはヴェルサスの問いに、端的に答える。

 肯定という形で。


「……目的は皇都周辺の竜種の殲滅。その第一目標としてサザンベルス山脈に住まう風竜の群れを標的とし、支配下に置いていた反乱組織を捨てる目的もついでに兼ねて【呪幻神官】ラフォン・フィオルテに接触、協力を申し出る。その手土産として、回収したスタンピード・ラヴェジャーの残滓魔力を与えた。……大筋はこんなところですか」


 淡々と語ったヴェルサスの言葉。

 それに対しクルーベルは背を向けたまま、何処か感心した様子で肯定する。


「お前の視点では圧倒的に少ない情報だろうに、よくまあそこまで辿り着いたものだ」

「一応反乱組織捕まえてきたの自分ですし。あと、幸いにも反乱組織を調査する過程でクルーベルさんの存在を時折確認していましたし。組織捕まえる時の思い当たる組織云々の話の時に私に向かわせるために嘘交えたなーとは察してたので。そもそもこっちに来て言葉を発したその時から、なんか魔法使ってるなーとも思ってましたし。そんな感じの情報を他にも色々集めた結果、まあなんかやってる……というかなんかやったんだろうなあ、と」


 声で気付くなよ、と苦言を呈するクルーベルに対し、いつもの事過ぎるんです、とヴェルサスは溜息交じりに述べる。

 クルーベルは軍師では有るが、椅子に座ってただ指示を出すだけの者ではない。自らの身で以って現地どころか前線へ赴き、前線で指揮を行うタイプだ。

 そんなクルーベルが、平和な時代を作る今、主に何をやっているか。

 極めて優れた闇属性の魔法を用いての、反乱組織及びその疑いのある組織への潜入及び攪乱だ。

 魔法で以って様々な認識を覆し、敵味方共に殆ど誰も気付かないまま反乱組織へ潜入し、掌握し、誰も気付かぬまま己の尖兵とし……あとは、栄えるも滅びるもクルーベルの思うまま。

 この方法は公表こそされていないが、公然の秘密という形で知られている。が、クルーベルの手腕と極めて強力な魔法により、警戒は何の意味もない。

 ウルグリム皇国ほど巨大且つ莫大な恨みを買い、反乱が無数に起きていようとも、微塵も瓦解しない理由の一つがこれだ。

 法と褒賞で結束を防ぎ。僅かに結ばれた中に脅威が存在している可能性を決して否定できず。それらを超えて反乱を起こしたところで、ヴェルサスという最強の理不尽にはどうしようもない。

 無限の繁栄と共に慈悲を与える聖女エリーゼ、絶対的な理不尽のヴェルサスと併せて、現在のウルグリムを成立、維持させている三法則の一つだ。


「そうだな。特に南のサザンベルス山脈の風竜と、東のドルバキア大霊湖の水竜。奴らは頻繁に皇都へ襲撃を引き起こしている。皇都の安全保障のために、奴らの排除は絶対条件だった。故に、スタンピード・ラヴェジャーの残滓ホロウの排除と実験も兼ねてまずは風竜の排除を試みた。その結果が今回だ」

「実験とは?」

「【呪幻神官】の持つ禁忌の技術の基となった魔法性質の出力確認。莫大な魔力を以ってすれば、竜にも通用するのかの確認だったが……行って正解だったな。最終的な顛末は想定外だったが」


 何処までも淡々と、ただひたすらに事実だけを述べるクルーベル。

 人情は確かにある。しかしそこに暖かみは微塵もない。

 唯々冷徹に、人も竜も何もかもを記号として見、国としての最善を選び続ける。

 機械ではない人の身と意志で以って、機械の如き冷徹さを振るうクルーベルは、確かに軍師に相応しかろう。


「では、想定外は?」

「先も言ったが、発端となった次元魔力反応から始まる異世界人類ネネカ・クロツチ。彼女の存在と彼女の動向、その全てが想定外だ。元よりスタンピード・ラヴェジャーを引き起こすつもりではいたが、次元魔力反応のせいで数倍の規模にまで膨れ上がった。おかげで、魔力を治める容器を余分に用意しなければならなくなった上、他の反乱組織を贄にする手も使えなかった。全く、魔力を治める容器も安くないんだがな」


 ヴェルサスの確認するような問いに対し、クルーベルは少しだけ語気を強めてこれまでと同様に淡々と答えた。

 しかし語気の強さに反して、相変わらず冷徹に淡々としていた。

 それに対する様々な思考はとうに済ませたと、言わんばかりに。


「……成程。纏めますと、本来はスタンピード・ラヴェジャーの残滓魔力……ホロウの処理も兼ねて反乱組織と【呪幻神官】を使って実験ついでにサザンベルス山脈の風竜の排除を行う予定が、ネネカさんがドラゴンテイマーの能力と高い魔法能力を有していたために排除が流れで難しく。代わりにヴァメルへと、正式にドラゴンテイマーと成るであろうネネカさんを、理者として迎えることを仄めかす程度に進言した。……経緯としてはこんなところですか」

「概ね間違いない。当然、細部はお前の想定と異なるだろうがな」


 当初の目的は果たせなかった。しかし結果として目的以上のものを得た。

 竜は脅威では有るが、その脅威が丸ごと味方となったのなら排除するよりも利は大きい。

 そもそもネネカ個人を理者として抱えられたのがあまりに大きいと言える。比較的平和な異世界の知識を持つが故に、現在の戦争の果てに荒廃しているウルグリムを立て直すのにその知識が役に立つのは勿論、国の情勢に大きく携わる理者の穴埋めを真っ当な形で、決して争いに偏り過ぎることが無い人材で以って行えた。

 想像以上の消費では有っても、想定以上の結果を得られた。純粋に結果だけを見るならば、本当に十分だと評するのが一番となろう。


「そういうお前はどうだ?ヴェルサス」


 クルーベルは変わらずヴェルサスの声の発信源に背を向けたまま。顔を向けることもなく。

 しかし視線だけは、僅かに横へと動かす。

 決してヴェルサスの声の発信源を、見ようとはしないまま。


「随分とあの女が気に入ったらしいが。そのために一体どれだけ因果を操った?」

「さあ?少なくとも今の私は操って居りませんが」

「今の、ねえ」


 クルーベルが目を細める。

 ヴェルサス・ヴァナディースは最強だ。名実共に、事実として。

 彼女の前に、過去、現在、未来全てが大した意味を為さない。

 ヴェルサスがやろうと思えば、現在から歴史を自分勝手に作った歴史で塗り替えることも、未来を好き勝手操ることも容易い。

 当然、現在が現在に至るよう因果を操ることも、造作もない。

 今のヴェルサスが因果を操っていなかろうと、未来のヴェルサスが現在となるように因果を操っている可能性も、永遠に存在し続けるのだ。


「……ご安心を。少なくとも私は、彼女に関することで因果をむやみやたらとどうこうするつもりは有りません」

「…………………………」

「私とて在るがままを愛でる事くらい有ります」


 クスクス、と微かに笑う声が聞こえる。

 ヴェルサスが零した笑みのようだが、姿が存在しない以上本当に笑っているのかは怪しい所だ。


「第一に。未来全てを好き勝手したところで、面白みも有りませんしね?」

「……そうか」


 思わずクルーベルは目を伏せ、一つ溜息を吐く。

 どうということはない。前々から分かっていたことを再認識しただけだ。

 最強のヴェルサスとそうでないクルーベルでは、致命的に視点が異なる。それこそ、他人か否か以上に。

 視点が異なるということは、考え方も異なると言うこと。

 ヴェルサスの考え方は、変わらずクルーベルには理解の出来ないものだった。


「というわけで。あまりネネカさんを利用し過ぎないよう、お願いしますね?」

「…………………………」


 どこか楽しそうな雰囲気のまま。ヴェルサスはクルーベルへと、警告を放つ。

 あまりにも冷徹に。さらりと自然に。剣山の如く鋭さで。

 それに対しクルーベルが沈黙している間に、ヴェルサスの存在感は消える。

 最初からこの場には、クルーベル以外居なかったかの如く。


「……お前がそう言うと思ったから、遠回りしてんだよ」


 はぁ、と軽くため息を吐いたクルーベルは、最初からそこには居ないヴェルサスが現在居る場所へと視線を向ける。

 より正確には、ヴェルサスと共に居る異世界から来た少女へと。


「……お前も難儀な奴に好かれたものだ。そいつは欲を知っていても愛も恋も知らぬ、宙を覆す怪物だぞ?精々押し潰されないよう、気を付けろ」


 クルーベルは誰にも聞こえぬ警告を、苦笑交じりに告げる。

 当然誰一人、その警告を聞く者は居ない。

 最初から当人の前で有ったとしても語る気は無い。

 警告を受け取るべき張本人は、その程度の事は細かな事情を知らずとも、とうに理解しているから。


「俺が成すべき事は、あの日から何一つ変わっていない」


 クルーベルは歩みを再開しながら告げる。

 誰も聴く者の居ないこの場で、確かにそこに居て、確かに聴いている、最強へ向けて。


「そのために俺が今成すべき事として、俺は都合良く現れた存在を都合良く使っただけだ。お前が、俺が都合良く使った花一輪を気に入って愛でたいというのなら好きにすればいい」


 ただし、とクルーベルは加える。


「愛でると言うのなら最後まで面倒は見ろ。この世界は、お前も知っている通りに甘くない。何時その花を散らさんとする者が現れるか、俺も予測は出来んぞ?」

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