第41話 なんだって野外フェスは真夏にするんだろう?
「つーわけで、第1回夏祭り企画会議を開催する。イベント名は『超絶美少女神に萌えキュン♡ フロラ夏フェス!』だ」
「却下。ネーミングがダサ過ぎ」
「何を言っているんだ、マダム! これはフロラオタにロックオンしたマーケティング戦略で……」
「最初から間口が狭過ぎなのよ!」
オレのナイスなアイディアを、いつものようにメグミーヌが一蹴した。
「まぁ、イベント名は置いといて。我らが守護女神フロラ様の信者獲得と、やって来た参加者からチャリンチャリンとお代をいただくのが祭りの目的だ。それには何か目玉が必要だな」
「花火はどうだべ、タナちゃん。確か、デンキチさんが得意だったはずだわさ」
「サナエちゃん、いいね! オレ、温泉と同じくらい花火には目がないのよ。漆黒の夜空に咲く、一瞬の艶やかな花。花火を見るたびに思うんだ。この花火のように短くとも美しい人生を生きたいって……」
「貴方の生きざまからは、細長く生きようとするセコい姿勢しか見えないけどね」
「マダム、的確なツッコミをありがとう。あくまで理想論です。で、花火、どうですかね? デンキチさん」
「アサメシマエヨ」
デンキチさんの目がバイオレットピンクに怪しく輝く。やる気だな、デンキチさん。
「花火もいいけど、私、盆踊りが踊りたい! あれ、結構トランス状態になってクセになるのよ」
「マダム、なかなか渋いチョイスだな。だが、異世界人にはあのビートは逆に新鮮かもしれない」
などと、メグミーヌと2人、ジャパンネタで盛り上がっていると、エムエルとエミリールがポカンとしている。そっか、異世界人には何のこっちゃだもんな。
「エミリール君。何か意見はあるかな?」
「そうね、エルフの祭りには歌と踊りが欠かせないけど……」
「魔界の祭りもジャンルは違うけど、やっぱり歌と踊りよね」
エミリールの発言に、エムエルも同調した。
「なるほど。よし、メインステージを組んで音楽イベント開催だ!」
「いいと思うけど、肝心のミュージシャンはどうするの? 王都の歌手に知り合いがいないわけじゃないけど、いまいちパンチが弱いのよね」
メグミーヌが腕組みをして首を傾げる。
「そうだな……。オーディションをやるのはどうだろう? そういう審査員もいっぺんやってみたかったんだよ」
「まぁ、ダイヤの原石が見つかれば、既存の歌手を呼ぶより面白いかもね」
「よし、決まりだ! さっそく準備に取り掛かろうぜ」
そんなわけで、音楽フェス出場者大募集をかけたのだった。
それから、しばらくたった後の魔王城。1通のビラを手に四天王筆頭のドキュエルが魔王ガレスに駆け寄った。
「魔王様! これを見てください」
「何々、『ディア&ディアーpresents 君こそスターだ! 鹿ロック出場者オーディション開催』だと? 鹿男め、オレを差し置いて楽しそうなイベントを……」
ガレスはチラシを握りしめて、悔しそうな表情を浮かべた。
「いや、これは鹿男暗殺のチャンスですよ、魔王様」
「な、なんだって!」
「いや、そんな食い気味にガブリ寄らなくても……。この音楽フェスに刺客を紛れ込ませるのです。フェスが盛り上がれば、鹿男にも必ずスキができるはず。そこで、事故に見せかけてサクッと抹殺。上手くいけば、モーリスを刺激しないまま、目的を達成できます」
「ムフフ。ドキュエル。そちも悪よのう」
「いえいえ、魔王様には負けまする」
そのやりとりは、後々『成敗!』のおしおきを食らうフラグとは、異世界人の2人には知る由もない。
「して、その刺客には誰を?」
「先日、四天王にリクリートしたばかりのセイレーンがいるではありませんか」
「ハーイ、魔王様。あなたのセーレちゃんですよ」
背後からセイレーンがひょこっと顔を出した。小柄で青髪のショートボブ、しかもガレス好みのロリ巨乳というハイスペックで、面接の際、一目みてガレスが『採用!』と絶叫した逸材である。
「セーレたんは魅惑の超美声だから、絶対即合格でオオトリ確定だね。でも、危なくなったらすぐに逃げていいんだよ」
「魔王様、やさしい~。でも、セーレがんばっちゃうもん」
「セーレたん、いい子過ぎる!」
おいおい、セーレたんって。ドキュエルは心の中でため息をついた。ま、セイレーンは歌が本分だから、この任務にはうってつけだろう。頼むぞ、セーレたん! ……あれ?




