第37話 戦闘民族ハイエルフ
よーし、オレの華麗なるレベル5デスでボスをカッコ良く瞬殺ですよ、とワクテカしていると、尋常ならざる圧を背後から感じた。恐る恐る振り返ると、モーリスがハゲ散らかした残り毛を天に向かって逆立てて、黄金色のオーラを発している。ちょっ、お前はスーパーサ〇ヤ人か!
「ケモミミを連れて帰るじゃと……」
あ、おじいちゃん。そこが逆鱗に触れたのね。さすがケモミミ同好会会長。
「どんたんとぽんたんのことかー!!」
モーリスが叫ぶと、さっきまで晴天だった空に鉛色の雲が渦を巻き、あちこちで稲光りが始まった。これ絶対ヤバい奴だ。オレは工事用のヘルメットを被ると、すばやくデンキチさんの背中に隠れた。やがて、渦巻く雲の中心に、太陽のような光の塊が輝き始める。オレは、すかさずポケットからサングラスを取り出して装着した。大気がビリビリしている。と、ホブゴブリンが叫んだ。
「まっ、まさか、これは! 第二次魔人大戦の際、三英雄の大賢者が放ったという伝説の……」
「インペリアル・デッドクロスーー!!!」
せっかちなじいさんだな。最後まで言わしてやれよ。そう思った瞬間、世界は色を失った。ワンテンポ遅れて、壮大な炸裂音が響く。アワワワワ……。オレは泡を吹きながら一瞬、気を失った。
我に返ったオレがうっすら目を開けると、土煙が舞う中、目の前には、隕石でも落ちたかのような巨大なクレーターが出現していた。さっきまで、うじゃうじゃいた魔王軍は、跡形も無く消滅している。ただ1人、ラトロルだけが、皮膚を黒焦げにされながらも、仁王立ちしていた。なんちゅうタフガイだ。
「フンガー!」
あぁ、そりゃ怒るよね。ごもっともだ。せめて、グッドルッキングガイなオレ様が、スマートにとどめを刺して、『オレはレベル5デスで異世界を無双する』にタイトル改変といきますか。首を回して準備運動を始めた瞬間、
「汚物は消毒だべー!!」
「地獄の業火ー!!」
前からサナエちゃんが火炎放射、後ろからエムエルが爆炎魔法を食らわせた。
「バビブベボー!!!!」
意味不明な断末魔を上げて、ラトロルが消し炭になった。オ、オレの見せ場が……。呆然と立ち尽くすオレに、エムエルは猛然と駆け寄ると強く抱きしめた。
「タナトス! タナトスー!! 無事で良かったー!!」
「く、苦しい……」
「あ、ごめん!」
強烈なサバ折りに、背骨がやばいことになりそうだったぞ。でも、本気で心配してくれたんだな。
「ありがとう。だけど、仮にも仲間を倒しちゃって大丈夫?」
「まぁ、証拠も証人も無くなったから、ごまかせるとは思うけど……」
「良かったら、ここで一緒に暮らさない?」
「いいの?」
「当たり前じゃん。むしろ、遅すぎたくらいだよ」
「嬉しい! ありがとう、タナトス。もう離れない!」
「く、苦しい……」
そんなオレと泣き笑いする正統派ヒロインを、猫耳付けてスタンバっていた色物ヒロインコンビが、苦虫を嚙み潰したような顔で、遠巻きに見ていた。
「何よあの泥棒猫! いきなり現れたと思ったら正妻ぶって!」
「まぁまぁメグミーヌさん。今回は彼女のターンですが、いずれ私達にもチャンスが来ます。時を待ちましょう」
あー、君らのターンは向こう100話は無いんじゃないかな。




