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【1万PV感謝】レベル5デスの使いどころがありません!  作者: 角乃とうふ


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第36話 ディールしようぜ!

 魔王軍襲来の報を受け、オシッコ漏らしかけてたくせに、なぜか急にイキり出したタナトスさん。一方、魔界では、タナトスしばき隊の出陣式が行われようとしていました。

 その夜の魔王城。1,000人近くの鹿男討伐隊が整列し、いくつもの松明(たいまつ)が揺らめいていた。そこに、魔王ガレスの(げき)が飛ぶ。


「何が鹿男だ、調子に乗りやがって! オレッちのケモミミちゃんを横取りした報いを受けさせてやる! 野郎ども、鹿男を始末した後は略奪し放題だ。ただしケモミミ女子に手を出したやつは死刑! 以上、検討を祈る!!」


 辺りが魔物達の粗野な歓声に包まれる中、魔王のすぐ後ろに控えていたエムエルは、(うつむ)いて思いつめていた。やがて長い沈黙のあと、悲痛な決意を胸に顔を上げる。


 タナトス、早まってはだめ。今からそっちに向かうのは、四天王のラトロル。彼は純粋な戦闘力なら魔王ガレスに次ぐナンバー2。オツムが弱いのが玉にキズだけど、小賢しい参謀のホブゴブリンがその辺をサポートしている。あなた達が束になっても、到底勝ち目の無い相手。でも、きっとあなたなら、仲間を守るために命を惜しまないでしょうね。けれど、私はもう二度とタナトスを失う訳にはいかない。気付けば、私にとって、今のあなたも大切な存在になっていたから。だから、たとえラトロルと刺し違えてでも、あなたは私が守る。……タナトス。私がいなくなっても、どうか元気で生きていてね。



 それから数日かけて、ラトロル率いる鹿男討伐隊は、狭い森をぞろぞろと蟻のように行軍し、ついにタナトス農場に足を踏み入れた。


 「何だ!? あの見たこともない要塞は!」


 純和風のタナトス城を見て、魔物達が騒ぐ。その天守閣には、鹿が両手を上げて降参している白旗が掲げられていた。


「ラトロル様、白旗ですぜ。とんだ腰抜け野郎だ!」

「フンガ! フンガ!」


 白旗を指さして、ゲラゲラ笑う魔物達の前に、オレはサナエちゃんとデンキチさんを伴って、颯爽と立ち塞がった。鹿の被り物をして。

 

「き、貴様、いつの間に! その鹿頭、お前が魔界から獣人族を連れ去った鹿男だな!?」

「ケーン?」


 まったく、とんだ言いがかりだ。獣人族が自分の意志で引っ越してきただけなんだが。よく考えればもらい事故だよな、これ。首を傾げるオレに、参謀らしきホブゴブリンが言葉を続けた。


「魔界の住人は魔王様の所有物。それを強奪した重罪により、この地の財産はすべて没収だ! 言っておくが、今更命乞いしても、もう遅いぞ。つ・ま・り、お前たちは全員死刑だー!!」


 ウォーっと歓声を上げる魔物達。そこに向けてサナエちゃんの火炎放射キャノンがゆっくりと向けられる。


「な、なんだ抵抗する気か!?」


 身構えたホブゴブリンにくるりと背を向けたサナエちゃんの照準はピヨカン小学校へと向けられた。


「控えおろう! ここにおわすお方をどなたと心得る! かつて、別の世界で火の七日間と言われる大災害を巻き起こした、伝説の農業ゴーレムサナエちゃんであらせられるぞ!」

「ははーっ!……て、おい!! なんか、ヤバそうな奴ってのは分かったが、何で自分たちの農園に向けて攻撃態勢に入ってるんだ⁉」

「えー、だってオレ達皆殺しでしょ? でも、ただ殺されるのも(しゃく)じゃない。だから、やられる前に、ここら一体、草の根1つ残さず灰にしようと思って」

「テメー、頭オカシイのか!」

「オレの頭のことより、自分の心配するんだな。魔王様は、お前らが金銀財宝、食糧満載で帰って来ると期待してるよ。でも、鹿男は始末する前に全部灰にしてしまいました、ちゃんちゃんって報告したらどうなる?」

「そ、それは……」

「お前も灰になるよねー。一足先にあの世で歓迎パーティーの準備して待ってるよ♪」

「ひ、卑怯者ー! 正々堂々とガチで勝負しろ!」

「魔物が正々堂々とか言うなよ。大体、そういうのは脳筋のセリフだろ。僕ちん、インテリだから」

「貴様ー!!」

「フンガ?」


 緑の顔を真っ赤にして怒り狂っているホブゴブリンの横で、状況が全く呑み込めていない総大将のラトロルが首を傾げている。よしよし、もう一押しだな。


「そこでだ、取引といこうじゃないか」

「取引?」

「デンキチさん例の物を」


 デンキチさんが、あらかじめ用意していた大きなリヤカーを前に出す。中には、満載の高級フルーツや野菜と一緒に、宝箱を1つ入れてある。それをホブゴブリンに開けて見せる。


「そ、それは! 金貨の10倍の価値はあるという、ミスリル小判!!」

「これ、全部君にあげるよ」

「何が目的だ!?」

「これを持って魔王城に帰ったら、『鹿男は討伐しました。領地は占領の上、配下の魔物に支配させております。獣人族は奴隷にして、現地でこき使ってやります。年貢も前の獣人族の里より2倍は納めさせます』とか言えば、魔王様も納得するだろ」

「し、しかし、鹿男討伐の証拠が……」

「あ、それならコレもあげる」


 オレは被っていた鹿の被り物を投げてやった。


「く、首が~!! って貴様、何者だ!?」

「我はラファエル。調停者なり」


 さすがに、素顔を晒すのはまずいので、鹿の被り物の下に、白いデスマスクを装着してみた。


「ま、それはともかく、ちょっとこっちへ」

「な、なんだ?」


 ホブゴブリンを手招きして近くに引き寄せると、ラトロルに見えないように、ミスリル小判の入った革袋を(ふところ)にさっと押し込んだ。


「こ、これは⁉」

「今後ともよしなに。いずれ、魔王国でも商売しようと思ってますんで。あなたとは良い話が出来そうだ」

「お前、魔物より悪いな」


 ホブゴブリンはニヤッと笑い、後ろを振り向くと鹿の頭を片手で掲げて叫んだ。


「鹿男打ち取ったりー!」


 シーン。鎮まりかえる軍勢。何言ってんだコイツといった顔で、魔物達がホブゴブリンを見ている。


「確かに鹿男の首だけど、後ろの白マスクの男は?」

「あ、あれはマボロシー! 幽体みたいなもんだ。いずれ、消える!」

「オレ達の取り分は? あと、ケモミミ娘連れて帰らないと魔王様ゲキオコだぞ」

「いや、そ、それは……」


 ホブゴブリンが他の魔物たちに詰め寄られてる。むー。魔王も隠れケモミミ同好会だっとは。しかし、これは想定内。ここはネコ耳を付けたエミリール&メグミーヌを差し出すプランBに移行するか。おっと、その前にゴッドグラスで相手の戦力分析だ。ホブゴブリン、レベル32。はずれ。ラトロル、レベル75。75! ビンゴー!! プランCがいけるじゃん! と思ったその時、想定外のプランZが胎動を始めていたことに、オレは気付いていなかった。

 想定外のプランZとはなんぞや? 次回、怒涛の展開に幕が開く!

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