第33話 使ってないポイントカードで財布がパンパンです
悪魔でありながら正義感溢れる好青年タナトスに、獣人ガステオの卑劣なハニートラップが襲う! 抵抗むなしく、陥落してしまったタナトスの運命はいかに! ※概ね事実と異なります。
「ちょっと、社長! 獣人族が移住してくるなんて、聞いてないんだけど!」
「エミリール君。雨に濡れた人にそっと傘を差しだすのに、何をためらうことがある?」
「そうじゃぞ、エミリール。お前も村長となったからには、もっと慈愛の心を学ばねばならん」
久しぶりに遊びに来たモーリスと歓談していると、先日の鹿男様の高度な政治判断に、なんちゃって秘書がケチをつけに来たので、2人して返り討ちにしてやった。エミリールはハッとした顔になり、
「社長、おじいちゃん。私が浅はかでした。ごめんなさい!」
と深々と頭を下げて、逃げるように応接室から出て行った。モーリスはその姿が見えなくなると、あごひげを触りながら、ニヤッと笑った。
「しかし、上玉のケモミミが何人もおるのう。さすが、タナトス君は見る目がある」
「そうですよね、モーリスさん。これを見て助けないなんて、男じゃないっスよね!」
「さよう。エルフはもともと獣好き。ケモミミはもっと好き!」
「気が合いますね、ささ、1杯どうぞ」
などと二2して、悪代官とその腰ぎんちゃくのように、高笑いしながら酒を酌み交わした。ちなみに、メグミーヌとベルハルトにも呆れられたが、最終的には『労働力になるんならいいんじゃね?』と、了承してもらった。
「という訳で、最近は割と忙しくやってます。人手も増えたので供給体制が整ったら、今後はさらに本格的に商売を進められるんじゃないでしょうか?」
「タナトスさん、とうとうここまで来ましたか。ヒナの成長を見守る親鳥のような気持ちで、ずっと見守ってきた私も感無量です……」
フロラにスマミで近況を定期報告すると、涙ぐんで微笑んだ。これはレアな表情だ。ごちそうさまです。
「そして、おめでとうございます! なんと、善行ポイントが折り返しの10ポイントに到達しました!」
「ヤッター」
条件反射で、棒読みバンザイしてみたものの、なんか善行したっけ? まぁ、食糧事情の解消には一役買っているのかもな。あ、動機はともかく、獣人族も保護したしね。
「それでは、選べる神具ギフトチョイスの時間です! さあさあ、どれにします?」
フロラの前には5、6個のアイテムが並べられている。剣やら巻物やら瓶やら。
「ちなみに、イチオシはどれですか?」
「それは、コレ! レベルアップの種です!」
見れば、小さな宝箱の中に、アーモンドみたいなものが1粒入っている。
「これを食べるとレベルアップするんですか?」
「はい! レベルが1上がります」
「……」
「今、なんだ1かと思いましたね?」
「そりゃ、そうですよ」
「それは、失礼ながらタナトスさんが貧弱だからです」
うん、失礼しちゃうぞ。ホントのことだけど。
「でも、強者になるほど、レベルアップは難しくなります。しかし! この種を食べればカンストの向こう側にだっていけるんです!」
「へー。リミットブレイクできるんですか? そりゃ、すごいな。でも、オレには当分用無しの気が……」
「今のタナトスさんにはそうかもしれません。でも、欲しい人にとっては、一国と引き換えになるほど価値のあるものですよ」
なるほど。財産価値もあるのか。ダイヤモンドや金塊みたいもんだな。何かの取引に使えるかもしれない。他のアイテムの説明も1通り受けたが、基本、戦力アップの武器や魔道具がほとんどだった。
「じゃあ、オススメの種にします。オレ、平和主義者なんでバトルとか興味ないし」
「毎度あり~!」
フロラが茶目っ気たっぷりにウインクした。もう、可愛いんだから女神様。
「それで、お返しというわけではないですが、フロラ様の別荘を建設中です」
「別荘⁉」
「神殿っていうのかな? いつでもここに遊びに来られるように。ここらの住人も増えて来たんで、信者の増加にも繋がるかな? なんて」
「フロラ、感激です!! 楽しみにしてますね!」
後日、完成した神殿を訪れたフロラは、口をあんぐり開けて固まった。立派な朱塗りの鳥居がそびえ立つ、日本式の神社がそこにあったからだ。まぁ、デンキチさん作だから、こうなるとは思ってたけどね。




