第23話 この道はいつか来た道
久しぶりの1人旅。1人にされる寂しさは耐え難いが、好んで孤独になるのは嫌いじゃない。サナエちゃんに許可をもらったので、いざ如月さんに会いにウォールダム王国に向かうことにした。エルフは人間とはあまり交流がないらしく、ウォールダム王国へ直接続く道はない。交易はドワーフとしているので、とくに人間と関わる必要もないのだとか。なので、とりあえず中間地点の女神の祠を目指すことにした。フロラとはずっとスマミ越しにしか話してないから、美しいご尊顔を拝しておきたいし、悪魔の身で人間界に足を踏み入れるので、その辺りのアドバイスももらいたい。鼻歌を口ずさみながら、フロラへのおみやげに、好物のデラトマトをリュックに詰めていると、先日、人間監視カメラに任命したエミリールがジト目でこっちを見ていた。
「ねぇ、社長。旅は身軽が身上じゃなかったっけ? なんで、リュックいっぱいに野菜詰め込んでるの?」
「あぁ、これは女神様への献上品さ。日頃、色々お世話になっているし、これくらいはな」
「時々、手鏡越しにヘラヘラ笑いながら話してた相手? ニヤニヤして気持ち悪って、前から思ってたけど、まさか悪魔の身で女神様に気があるとか無いわよね」
「あるよ」
「そうよね……って、あるんかい! 私というものがありながら……ってか、あなた、女悪魔の許嫁もいたでしょ! あっちはからきしなのに、なんでそんなに気が多いの!!」
「あっちはからきし言うな。気が多いのにジェントルマンなところがオレの美徳だ」
「はぁ……。まぁ女神様が悪魔の相手なんかするわけないから、別にいいけど。叶わない夢からはさっさと覚めて、大人になりなさいな。幸せはすぐそばにあるものよ」
エミリールが名言ゆったった感出してドヤ顔しているが、これはアイドルの押し活のようなものだ。単細胞なエルフには、この高尚な趣味は分かるまい。
準備が整ったオレは、右から長ネギ、左から大根がはみ出てパンパンに膨らんだ、大きなリュックを背負うと、フロラの祠目指して、森の奥深くへと入っていった。一度来た道を逆にたどって歩いているので、道に迷うことはない。と、順調に進んでいたオレに、突如、水色のスライムが顔面に飛び掛かってきた。
「うわっ! びっくりした!」
見れば栗のような形をしたおなじみの魔物が足元に転がっている。刹那、おれは叫んだ。
「タイガーショーット!!」
力強く右足でスライムにシュートすると、10mほど先の大木目掛けてスライムボールは矢のように飛んでいき、水風船が割れるように四散した。
「キモチイィー!!」
会心のジャストミートに、思わず両手でガッツポーズをとりながら雄たけびを上げてしまった。でもオレ、球技全般苦手だったんだけどな。そういや、スライムとはいえ、一応攻撃を食らったけど、痛くも痒くもないぞ。オレ、とっても弱いタナトスさんだけど、さすがにモンスター界最弱の水色スライムよりはマシということか。そうだ、この機会に自分のレベルを確認してみよう。リュックからゴッドグラスを取り出して、スマミを鏡代わりに自分の姿を覗き込む。頭上にレベル16とある。へぇー。てっきりレベル3くらいだと思ってた。ひょっとして、魔獣を狩りまくって時に、経験値とか溜まってたのかもしれない。敵を知り己を知れば百戦危うからず。よし、これからはレベル5デスが効かない相手でも、自分よりレベルが低い奴は安心してタコ殴りにしよう。
それからは順調に森を踏破して、当初の目標である女神の祠にたどり着いた。オレの異世界での冒険、ここから始まったようなもんだよな。そう考えると感慨深いものがある。あんまり考え過ぎると、『お前、冒険なんか1つもしてないじゃないか』とどこからかツッコミが聞こえてきそうなので、もう考えるのはやめよう。早速、祠の中へ足を踏み入れる。
「お邪魔しまービャビャビャビャビャビャー!!!」
そうでした。悪魔が入ったら、こうなるでした。やっぱり考えなしは危険です。




