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【1万PV感謝】レベル5デスの使いどころがありません!  作者: 角乃とうふ


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第20話 その昔、ビジネスマンは24時間戦えたらしい

 ビクッとした。同時にそうだろうなとも思った。普通に考えたらラブホの知識なしに、あの部屋を作るイマジネーションは湧いてこないだろう。となると、オレと同じようにこの世界に転生した誰かが、ドワーフにその情報を伝えたと考えるのが妥当だからだ。ベルハルトはその辺りの事情を知っている。背中に冷たい汗が一筋流れるのを感じながら、オレは答えた。


「お見込みのとおりです。あの部屋と似たようなものを、前世で見たことがあります」


 正確にはドラマとか映画の中でしか見たこと無いけど、そこはオレの名誉のために伏せておこう。ベルハルトはさして驚く様子もなく、『やっぱりな』という顔をした。


「なかなか良くできているだろう。実は、あの部屋はワシが作ったんだ」

「ベルハルトさんが? すごいですね」

「まぁデンキチには負けるが、これでも元々職人なんでな」

「デンキチさんとお知り合いなんですか?」

「昔、現場で何度かな。その縁であの宿屋も建築してもらったのだ。お前こそ、その口ぶりだとデンキチと面識があるみたいだな」

「私もちょっとした縁で、自宅を作ってもらったり、色々世話になりまして」

「ほう! あいつが個人の家屋敷を手掛けることはめったにないぞ。そのうち見物に行かしてもらおう」

「ぜひぜひ。その際は、ピヨカンの栽培もその目で確かめてください」


 そこで、一瞬会話が止まった。一呼吸入れると、ベルハルトはゆっくりと語りだした。


「あれは、今から1年ほど前だった。ミスランの街の東の森に、建築用資材の採取に来ていたワシは、行き倒れになっていた旅人を見つけたのだ。声を掛けると、まだ息がある。荷車に乗せてミスランまで運び、介抱してやった。3日ほど意識がなかったが、なんとか元気になったよ。そのあと、そいつから身の上話を聞いたんだ。酷い目に合ったと泣いていたよ」

「そんなことがあったんですか……」

「なんでも、気が付いたらこの世界に転生してたらしい。程なく、チャラ男っぽい神様が目の前に現れて、『ゴッドエラーしちゃった! ごめんねごめんねー』と軽く言われたそうだ」


 あー。オレと同じパターンだ。これ、きっと余罪ありまくりだよね。


「それでお詫びにと、一瞬でメイク落としできる魔法を付与されたらしい。『いや普通に嬉しいけど! 確かにチートかもしれないけど! 異世界転生のチートってそうじゃないでしょ‼』ってあの娘、涙目で熱弁してたなぁ」


 わかるよ。良くわかる。なんならレベル5デスがマシに思えてきた。オレが出会った神様がフロラだったのは、案外幸運だったのかも。……ん? 先ほどの話に何か違和感があるぞ。


「あの、その転生者って女の人だったんですか?」

「あぁ、そうだ。彼女の名は如月(きさらぎ)恵。前世は確か、日本のOLとか言ってたかな」


 昭和のラブホの元ネタが女性だったとは。日本人だとは思っていたが、てっきり油ギッシュなオッサンだと思っていたぞ。転生者同士、是非会って話してみたい。


「その如月(きさらぎ)さん、今どちらにいるんですか?」

「今は人間の国、ウォールダム王国に行ってるよ。しばらくは例の宿屋で女性客相手にメイク落としサービスをしてて、結構評判良かったんだけどな。旅商人に、『これだけの魔法をお持ちでしたら、ウォールダム王国の貴族連中相手ならもっと稼げますよ』ってそそのかされたらしい。『ベルハルトさん。ご恩は一生忘れません。ウォールダム王国で名声を上げたら、必ず帰ってきます。その時は、絶対に落ちない化粧品をベルハルトさんが作って、私がそのメイクを落とすサービス業をして、共にぼろ儲けしましょう!』って泣かせることを……」


 ベルハルトが感極まっているが、その話、酷いマッチポンプですよ。


「しかし、如月(きさらぎ)さんにはラブホの知識があったんですか?」

「ワシも半分以上、言ってる意味は分からなかったんだが、恵がある日、こんなことをつぶやいたんだ。『私は、前世で生まれる時代を間違えた。真の幸せな時代はバブルだったのよ。そう、文字通り何もかも泡と(はじ)けたけれど、みな札束を振り回しながら肩パットを(とが)らして、風を切って歩いてた。何がコスパよ! 何がファストファッションよ! そんな貧乏ったらしい生活なんか糞くらえよ!! 私はロココ調の家具に囲まれて、ピンドン傾ける生活がしたいのよ!』ってな」


 うん、会いたい気持ちが急速にしぼんできたぞ。


「で、その話の流れで、バブル時代の豪華絢爛(けんらん)なラブホの魅力を語りだしてな。それに意気投合したワシらは、あれこれ2人で相談しながら、あのスイートルームを作り上げたわけだ」


 なるほど。そういう顛末(てんまつ)か。しかし、異性としての興味はともかく、あのラブホ部屋の再現力、ビジネスパートナーとしてはアリかもしれないと、良くハズれるオレの野生の勘が告げている。やっぱり1度、会いに行ってみようかな。


「恵に会ったら、こう伝えてくれ。例の化粧品は試作品段階に入ったと」

「必ずお伝えします」


 ベルハルトとがっちり握手を交わした。如月(きさらぎ)さんにあったら、『詐欺(さぎ)、絶対ダメ!』と注意しておこう。

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