第19話 ヤンキーとドワーフは喜平ネックレスがお好き
エミリールの求愛を華麗にスルーして、めっちゃ怒られたタナトスさん。
それから、一夜明けてのお話です。
「ちょっと、社長! ちゃんと反省してる? 乙女の告白をガン無視するなんて、さすがにありえないんだけど」
「あぁ、もちろんだ。紳士は同じ過ちを繰り返さない。これからは、10分に1度は浴槽から上がって休憩することにするよ」
「それも大事だけど! 反省するのはそこじゃないから!!」
昨日の晩、風呂上がりのお楽しみにと、自分の部屋でシュワシュワをプハーっと飲んでたら、顔を真っ赤にしたエルフが飛び掛かってきた。それからしばらく、床に正座させられ、コンコンと説教された。まぁ、人の話を聞かなかったオレが悪いので、仕方ない。怒った相手に何を言っても逆効果なのは、ハードクレーマーの対応で経験済みだ。なので、気持ちはサンドバッグに転生して、されるがままにフルボッコにされていたのだ。それで禊が済んだと思っていたが、まだご機嫌斜めらしい。
「まぁまぁ、エミリール君。秘書の君は僕の右腕。昨日は、のぼせて正常な判断を失っていただけだ。君を大切に思う気持ちにウソ偽りは無いよ」
「社長ったら、本当にツンデレなんだから! 今度だけは許してあげる!」
エルフのご機嫌取りにウソ偽りを言うのは良心が痛むが、背に腹は代えられない。そんなオレ達は今、怒ったり怒られたりの夜更かしの影響で、遅めの朝食をとった後、あくびしながら宿の池に棲む人面魚に餌をやっていた。朝食の残りのパンくずを撒くと、パグのようなキモカワ顔の人面魚が、するどい前歯を尖らせて、ガブっとパクついた。
「かわいい! 社長、1匹持って帰ってお城で飼いましょ!」
「かわいいかどうかはさておき、これ以上、お世話する生物が増えるのは大変だな」
「えっ? 社長、ペットなんか飼ってた?」
ペットじゃなくて、お前だよとは口が裂けても言えない。『あ、また食べた! エミリールも餌やってみろよ』とか言ってごまかしていると、門番のドワーフがやってきた。
「やあ、昨日の晩はお楽しみだったかな?」
「おはようございます、門番さん。昨日は、途中までは良かったんですが、最後は残念な結果に終わりました」
「若いのに大丈夫か? 今度、良く利く精力剤をやろう」
言い方が悪かったのか、どうやら花びら大回転の間でハッスルしたものの、志半ばで途中下車したと勘違いしているようだ。説明するのも面倒なので、適当に話を合わせることにした。
「お気遣いありがとうございます。それはそうと、領主様とのアポは取れましたか?」
「安心しろ。実はワシと領主は幼馴染でな。これはという商人がいたら引き合わせるよう特命を受けていたんだよ。お前のことを話したら、是非合わせろと言っていたぞ。昼前に領主の屋敷に行ってみるといい」
「お世話になりました。これはほんのお礼です」
「おっ! 昨日より1枚多いんじゃないか?」
「今後とも門番さんには、何かとお世話になると思いますので」
「ホッホッホッー! 悪魔、サイコー! ワシのことはダストンと呼んでくれ。この街のことなら、何でも気軽に相談しろよ」
「ありがとうございます。今後とも、どうぞよしなに」
それから、荷物を宿に預けて、領主の館に1人出かけることにした。エミリールを連れて行くと、まとまる話も破談になるので、『領主との話なんて退屈だろう。おこずかいをやるから、街を見物しておいで』といったら、ルンルンで飛び出していった。
領主の館は宿から程近くにあり、街の中心に鎮座していた。『ミスランで1番立派な建物だから、迷うことはないぞ』とダストンが言っていた通り、広い敷地を円形の壁で包み込んだ、壮大な邸宅は離れたところからでも、すぐに確認できた。
入り口まで行って、衛兵に声を掛けて名乗ると、話がちゃんと通ってたらしく、大きな観音開きの正門を開けてくれた。中には広大な芝生の庭園が広がっており、正門から続く石畳の道の先に、2階建ての屋敷が見える。衛兵に導かれるまま屋敷に入ると、天井の高い客間へと案内された。そこは中庭側が全面ガラス張りになっていて、照明もないのに眩しいほど明るい。広い部屋の中央には、良く磨かれた長方形の木製テーブルが置かれ、それを挟むように、大きな布製のソファーが2つ並んでいる。
「こちらでしばらくお待ちください」
案内してくれた衛兵はそう言うと、部屋から立ち去って行き、後にはしばしの静寂が訪れた。ソファーに腰掛け、中庭を眺めると、手入れの行き届いた庭木に、色鮮やかな小鳥が何羽かやってきて、木の実をついばんでいた。平和だなぁ。なんだか、眠たくなってきたぞ。と、ドタドタと騒がしい足音が聞こえる。振り返ると、勢いよくドアを開けて、領主らしき人が飛び込んできた。顔はダストンと似たり寄ったりの髭ズラのドワーフオヤジだが、えんじ色の上等なフロックコートを着て、Bボーイみたく、派手がましい金のネックレスをジャラジャラぶら下げている。
「おうおう! 待たせたな、客人! タナトスだったっけ? ダストンから聞いたぞ! なかなか気前が良いらしいな。金払いのいい奴は好きだぞ!」
「恐れ入ります、領主様。我が名はタナトス。見ての通り、しがない悪魔でございます」
「堅っ苦しいのはやめやめ! ワシのことはベルハルトと呼べ。呼び捨てでもかまわんぞ。それでお前、農産物を売りたいらしいな」
「はい。まだ栽培はこれからですが、ピヨカンに挑戦しておりまして」
「ピヨカン!? あれは、なかなか手を焼くぞ。最近は、成功例はあまり聞いたことがないな」
「実は私の農場には、熟練の農業指導員がおりまして。彼女が自信満々なので、多分できるんじゃないかと見込んでおります」
「ん! 話は分かった。もし、ピヨカンが無事にできたなら、どんどん持って来い。あれは、引く手あまただからな。言い値で買い取ってやるよ」
「本当ですか? ありがとうございます。それでは、収穫までこぎつけたら、また、ご連絡しますので」
「うむ。期待しておるぞ! ……それはそうと、花びら大回転の間はどうだった?」
「あぁ、あのラブホもとい、スイートルームのことですか。ええ、見事な再現力で、何を参考にされたのか気になっていたところです」
「ほほう……。ちょっと近う寄れ」
「はい」
言われるままにベルハルトのそばに寄ると、耳元でこう囁かれた。
「その言い方は元ネタを知っているな。さてはお前、転生者か?」
「!?」
おまけ
☆妄想お便りコーナー
今日は、脳内ファンのたろう君7歳からのお便りを紹介するよ。
【たろう君】
「とうふ先生、こんにちは。最近レベル5デス全然関係ないじゃん。タイトル詐欺もたいがいにしろよ。子どもナメんなよ」
【とうふ】
「たろう君、お便りありがとう。とうふも、ホントはレベル5デスを絡めたバトルの連続で、血湧き肉躍る冒険活劇を書く予定だったんだよ。でも、愉快なキャラ達が勝手に動き出して、『バトル? 美味いのそれ? それよかグータラしようぜ』って流れになってしまったのね、ぴえん。まぁ、レベル5デスはレアポケモンみたいなもんで、そのうちまた出てくるとは思うんだ。それまで、生暖かい目で見守ってて欲しいな」
みんなも、来世はパリピに転生希望のとうふ先生にお便りを書こう。




