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第11話 世紀末救世主伝説!

作者のひとりごと

作り過ぎた年越しそばを年明けも食べ続けたあとは、賞味期限の切れた肉まんをひたすら食べてました。

 フロラから農業ゴーレムが転送されてきた。ドラ〇ちゃんのようなずんぐりむっくりな体系に、大きな麦わら帽子を被っている。麦わら帽子にかわいいピンクのリボンが掛かっているところを見ると、多分女の子だろう。肩に(くわ)を担いだそのゴーレムは口を開いた。


 「ワタス、サナエいいます。よろしゅう。サナエちゃんと気軽に読んでケロ」

 「どうも。私、タナトスいいます。よろしゅうおたの申します。ケロ」


 ミラーリングでしゃべり方を真似てみると、サナエちゃんの大きな丸い目がピカピカと黄色に点滅した。多分、好感度アップのサインだと思う。サナエちゃんはキョロキョロと辺りを見回した。すると、帰り支度を終えていたデンキチさんと目が合った。


「あれま、デンキチさんじゃないべ」

「サナエ? オメェ、イツデテキタ?」

「ま、悪気はないってことで半年くらいだべよ。こう見えてもワタス、模範囚だったべ」


 サナエちゃんは得意気に語っているが、どうも聞き捨てならないことを言っているぞ。


「デンキチさん。サナエちゃんとお知り合いですか?」


 デンキチさんは黙ってコクリと頷いた。そして、少し思い悩むような表情を見せたあと、重い口を開いた。


「サナエキケン。オマエイイヤツ。ブジイノル」

「ちょっ、去り際に不安にさせるようなこと言わないでくださいよ!」


 親の危篤(きとく)を告げる電報のような不吉な捨て台詞を残し、デンキチさんは旅立っていった。


「デンキチさんよ~。達者でな~。あとはワタスに任せるべよ~」

 サナエちゃんは自信満々だが、デンキチさんの時と同じで不安しかないんですが。


「さて、森ばかりだべな。まずは畑作らねば」

 そういうと、サナエちゃんの肩が変形し、肩に2本の大砲のような筒が現れた。すると、ゴーっという音とともにその筒から火炎が噴き出す。

「ちょっ、ちょっとサナエちゃん!何する気?」

「何って、お前、この辺り一帯焼き払うべさ。汚物は消毒だべ。これ農業の常識。開墾(かいこん)の手間も省けて土地も肥えるし、一石二鳥だべ」

「森林破壊反対! 地球温暖化絶対阻止!!」



「というわけで、あやうくエルフに八つ裂きにされるところでしたよ。サナエちゃんをなんとかなだめて、今は地道にちょっとずつ畑を切り拓いて、成長の早い作物を育てています」

焼畑(やきはた)農業はサナエちゃんの得意技ですからね。あれでとある異世界では、世界の3分の1の森が炎の中に消えたとか」

「まるで、火の七日間……」

「でも、その異世界では食糧問題を解決し、サナエちゃんの銅像が各地に建てられたみたいですよ。今でも森を焼いた日は祝日としてみんなでお祝いするそうです」


 森を焼いた日が祝日って……。たぶん、その異世界、今じゃ砂漠化が進んで、怒り狂った住民がサナエちゃんの銅像引きずり下ろしてるんじゃないかな。あ、そうだ、この際、今まで気にしないフリをしていたサナエちゃんのあの疑問をフロラにぶつけてみよう。


「そういえば、サナエちゃんが来た最初の日、気になることを言ってたんですが。模範囚だったとかなんとか」

「あー、そ、それはですね……」

「フロラ様、目が泳いでいます。ちゃんとオレの目を見て話してください」

「いや、この前、天界でも焼畑(やきはた)農業をしようとしたんですが、誤って神々の御殿に延焼しまして。あ、今はデンキチさんが復旧してくれましたけど」

「神様の家に火をつけたら普通、極刑とかじゃないんですか?」

「それが、風神様がくしゃみして急に突風が吹いたのが原因なので、情状(しょうじょう)酌量(しゃくりょう)の余地ありということで、禁固刑ですみました」


 いや、天界で焼畑(やきはた)農業って頭おかしいだろ。刑期中に農業の再教育プログラムでも受けさせれば良かったのに。


「まぁ、事情は分かりました。ヒャッハーなやり口には困ったもんですが、農業知識が豊富なのは確かなんで、助かってはいます。そのうち畑も広がって、この辺り一帯、一大農業生産地になったりして」

「それ、いいかもです! この世界はエルフだけでなく、みんな食糧の確保に苦労してます。サンバルトンの食料問題を一挙(いっきょ)に解決すれば、大量の善行ポイントゲットで、悪魔の身とはおさらばできますよ!」


 なるほど。レベル5デスで悪者退治するだけじゃなくて、そういうクリアルートもあるのな。

「そうなれば、女神ポイントもゲットで、タナトスさんにあれやこれや先行投資したものを差し引いてもプラスリターンはと……」

 どこからか電卓のようなものを出してパチパチやりだしたフロラ。欲の皮の突っ張った女神はちょっと萎えるなぁ。


「フロラ様、目が(かね)マークになってますよ」

「あれれ! 私としたことが。テヘ」


 得意のてへぺろでごまかすフロラ。ごまかされるオレ。男子は悲しい生き物です。まぁ、人間の時はしがない平社員で終わった人生、異世界で農業法人の社長を目指すのもアリかもね。

 というわけで、農業やってみる気になったタナトスさん。でも、レベル5デスも忘れちゃうわけじゃないので、そのうち使うでしょう。たぶん(笑)。


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