第10話 お正月は女神のヤキモチをいただきます
無事にエルフ村での挨拶を済ませたオレは、その顛末をフロラに報告をした。
「つーわけで、その後は飲めや歌えの大宴会ですよ。なんか、横にエミリールをあてがわれて、ワイワイガヤガヤと。盛り上がったなぁ」
「ふーん」
「あと、子どもたちも懐いてくれて。自分、正直子ども苦手なんですけど、エルフの子ってリアル天使ですよね。飴ちゃんあげたくなっちゃいます」
「エルフは天使ではありません」
「……なんか、テンション低くないですか? 気に障ることでも言いましたっけ?」
「知りません! エルフと結婚でも子作りでも好きにしてください!」
フロラがほっぺたを膨らませている。なぜだかご機嫌斜めのようだが、女神のプク顔もまた良き。
「あ、宴会に誘って欲しかったんですか?」
「違わい!!」
「冗談です。つうか、いくらルッキストとはいえ、これでも生前は社会人だったんですよ。見た目だけに騙されて結婚とかしませんよ」
「そうなんですか?」
「死んだじいちゃんが言ってました。『人間なんて美人もブスも一皮剥けば理科室の人体標本だ』って」
「おじいさん言い方……」
「『だから、人間大切なのは中身だ。見た目に騙されると、わしのようになるぞ』って。ちなみにその後、ばあちゃんのレーザービームのような視線を感じて、全速力で家から逃げていきましたけど」
「おじいさんも苦労されたんですね……」
「はい。だから、キレイな人ってだけで簡単に結婚したりしませんよ。カワイイ顔が拝みたかったら、オレにはフロラ様がいますから」
「やだ! タナトスさんったら!」
「ちなみに、この世界は一夫多妻ってアリですか? それによっては手当たり次第……」
「さようなら!!」
スマミの通信を一方的にブチッと切られた。慌ててすぐにかけ直す。
「すみません。今のは冗談です」
「冗談って言えば何でも許されるわけではないですよ!」
女神のくせに心が狭いなぁ。ちょっした悪魔ジョークじゃないか。しかし、本題はここからなので、機嫌を直してもらおう。
「そんなことより、食料問題解決の相談があるんです。農業始めようかと思うんですが」
「農業?」
「はい。狩りだけだと自給率が不安定じゃないですか。農業で安定した収穫があれば、自分もエルフの人々も安心して暮らせると思って」
「自分だけでは無く、エルフ族の生活まで心配するなんて……。タナトスさん、悪魔とは思えない素晴らしい心構えです! これは善行ポイント大量ゲットのチャンスですよ!! ……ってエッチぃ下心は無いですよね?」
「やだなぁ、無いですよ。ちょぴっとしか、って通信切らないで下さい! いつもの冗談です。でも、一つ問題がありまして……」
「なんですか?」
「こう見えても生前シティボーイだったもんで、土いじりとかしたこと無いんですよ」
「はぁ……。それでよく農業しようと思いましたね」
「デンキチさんが何とかしてくれると思ってたんですけどね。でも、仕事が入ったとかで、もうすぐ出ていくらしいんです。それで、代わりに農業に長けたゴーレムでも派遣してもらえないかと」
「なるほど。あっ、若干手法に問題のある方ですが、かつて比類なき収穫量で伝説となった、うってつけの女傑を知っていますよ」
「さすがフロラ様! よっ女神オブ女神!! サツマイモ採れたら黄金色の蜜が滴る焼き芋をプレゼントします!」
「もう! それほどでもありますけど! 焼き芋期待してますよ!!」
この世界はチョロい方ばかりで助かります。




