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行き詰まる捜査

会議室の一室で資料をまとめノートに情報を整理し続ける太田の目には隈が浮かびそのシャツは捜査が始まった当初よりますますよれよれになっている。 

「よれよれ刑事」の面目躍如である。

小林は一心不乱に事件を追う太田の横にそっと湯気の立つ淹れたてのコーヒーを置いた。


「警部、根を詰めすぎると身体に触りますよ」


「……ああ、小林くん すまないね」


疲れた表情で小林に礼を言うと太田はコーヒーを啜る。


「だがもう少しで事件の点が繋がりそうなんだ…… 私の推理では4月2日、克典さんが多田昌也くんと入れ替わり、容子さんも誰かと入れ替わっている間に山岡達夫を連れ去ったはずなんだ……

だが決定的な証拠はない」


「しかし警部、お昼に店に来ていたお客さんも2人と話したと証言した人もいました。その推理は違うのでは?」


太田は首を横に振るとPCの画面の一つを小林に指差し簡単に説明する。


「……いや、この音声データを見てくれ

そしてこちらの証言も」


「うーーん、私には分かりませんが証拠にはならないのではないですか?」


訝しむ小林に太田は頷く。


「そうなんだよ、そこで」


声を潜め太田が何事かを告げると小林は顔を顰めた。

そしてしばらくの沈黙の後に太田が口を開く。


「刑事太田はここで終わるだろう。これから私は法に外れたことをする。君はついてこなくていい。後は頼んだよ小林くん」


「……警部 バカを言わないでください。ここまできたら最後までついていきますよ」

 




数時間後、とある雑居ビルの一室に腰掛ける太田の前には爬虫類のような冷たい目をした角刈りの男が無表情で腰掛けていた。

牛川ファイナンスの社長、牛川トオルである。


「……なんだ いつぞやの刑事さんか。桜の花はもうとっくに散ってるってのに例の事件は解決してねえみたいだな。こんなところで遊んでていいのか?」


軽口を叩く牛川に太田は何も言わずじっと佇む。


「なあ、アンタ。うちも暇じゃねえんだぞ。用件ならさっさと済ませてくれないか」


焦れた様子の牛川に太田はゆっくりと口を開く。


「……では聞いてくれますか」

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