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厳海の国

スワンボートは、まとわりつくような猛吹雪の中へ突入しました。

間もなく窮境です。


ぽん「きゅうきょう?」


つまるところ、世界の果てです。

そこは人が生きるには非常に苦難なとても寒く冷たい地域で、それでも唯一、厳海の国という国があります。


ぽん「げんかいのくに」


厳海の国は、限界を超越して進化を目指す人々が暮らす国です。

厳しいけれど、暖炉のような温もりを持ち合わせた人々がおります。


ぽん「ふーん」


辛いこともあるでしょうが、それでも、かけがえのない経験を得られると思いますよ。


ぽん「うーん」


がんばれぽんちゃん!


ぽん「いかない」


ぴょん「行こう」セタップ


ぽん「えー厳しいの嫌い」


ぴょん「一緒なら頑張れる」


ぽん「そういうのいいから」


ぴょん「ぽん太の目指す夢の先にも、厳しい試練が待ち受けているんだぞ」


ぽん「そうかもだけど、無理しなくてよくない?」


ぴょん「無理してでも助けなきゃいけない人がいたら?」


ぽん「…………」ちら


ぴょん「どうする?」


ぽん「うーん」


もこ「うーんてなんよ」じとー


ぽん「もこちゃんは自分でどうにか出来そう。ぴょんちゃんは何でも出来そう」


ぴょん「そんなことはない。ほら少し前に黄昏の国で、オレも、もこちも、ぽん太の言葉に助けられたじゃないか」


ぽん「そうなの?」


もこ「どーかなー」


ぴょん「もこち」


もこ「おちも正直言って、厳しいのはちょっち」


うるせえ!!!いこう!!!!どんっ!!


ぽん「いつも無理やりなんだから……」


もこ「やだなあ……」


強引な波を寄せ付けず、気高い剣山を背負う白銀の戦艦都市。

それがここ、厳海の国です。


ぽん「せんかんとし?」


大昔、時空を渡る宇宙戦艦として活躍していたコヴェナント号は波動砲を受けてこの星へ墜落しました。

大急ぎで修理が行われましたが、この激しい寒風によって、コヴェナント号はあっという間に剣山と一体化するように凍りついてしまいました。

そこで、搭乗員一同はやむ無く、ここで生きる覚悟を決めました。

掘削、さらに掘削、ひつこく掘削、そうして見つけたマグマの熱をエネルギーに変えて生きる術としました。

それから、起きてる?


ぽん「ちゃんと聞いてます!」ぷんぷくー


良かった。

まーそんなこんなのある日、たまたまコヴェナント号を見つけた冒険家の話を聞いて、世界中から好奇心旺盛な人々が集まってどーたらこーたらで国となりました。

おしまい!


ぽん「雑」


さあ、行っておいで。

外に迎えが来ていますよ。


ぽん「外、ヤバいんだよね」


確実に遭難して明確に凍死するレベルです。


ぽん「まあ、空想科学服なら大丈夫かな」がちゃ


ぴょん「うわっ!すごい風だ!」


ぽんちゃん。


ぽん「なに?」


もこちゃんが凍ってしまいました。


ぽん「生きてる?」こんこん


もこ「……」かちーん


なのり「……」こちーん


ぴょん「とりあえず扉を閉めよう」


ぽん「うん」ぱたん


もこ「ざぶいいい!」がたがた


ぽん「がむしゃらの国で着た空想科学服があったね」


ぴょん「ああ、あれか」


ぽん「れっつらお着替え!」


もこ「あったかー」ぬくぬく


ぽん「極端なんだから」


ぴょん「それだけ外も、空想科学服もすごいということだ。とにかく気をつけて外に出よう」


ぽん「行くよ!」がちゃ!


サレナ「いらっしゃあ~い」


ぽん「…………」ぱたん


ぴょん「化け物がいるなんて聞いていないぞ!」


もこ「はやく次の国に行こう!」


彼、いえ、彼女は化け物ではありません。


サレナ「そうよ。私は」がちゃ


ぽん「ぜったい化け物だよ」ぱたん


サレナ「化け物じゃないってば!んもう!」がちゃ 


ぽん「鍵閉めよう」かちゃ


サレナ「開けろごらあ!でてこいごらあ!」どんどん!


もこ「ふぇ……」びくびく


彼女はサレナ。

優しいオカマですから安心してね。


サレナ「聞いてんのかごらあ!!」どかっ!


もこ「優しくない」ぐすっ


ぽん「もこちゃんを泣かせるなんて許せない!僕がやっつけてやる!」がちゃ


サレナ「いらっしゃあ~い」


ローズ「はるばるようこそ、厳海の国へ」


ぽん「…………」ぱたん


ぴょん「オカマに彼氏がいるなんて聞いていないぞ!」


彼女、いえ、彼は彼氏ではありません。


ぽん「じゃあ、どういう関係かしら!」


ぴょん「はっきりしてもらおう!」


ローズ「僕はオナベのローズ。サレナとはただの友達だ」


サレナ「そういうことだから、はやく出てらっしゃい」


ぽん「何のご用ですか」がちゃ


ローズ「それはこちらが聞きたい」


ぽん「何のご用もありません」


もこ「失礼しました」ぺこ


ぴょん「というのは冗談で、厳しい試練を受けに来ました」


ローズ「なら、ついておいで」


サレナ「お望み通り、厳しい試練をあげちゃうわ」


ぽん「こうなったら仕方ないかな」


ぴょん「お、やる気になったか」


ぽん「僕はやる時はやる子なんです」


ぴょん「もこちは?」


もこ「やりますよ」むすー


ということで、三人は雪の積もる甲板へと元気良く飛び出しました。


ぽん「雪合戦だー!」ぽーい


もこ「やったなー!」それー


サレナ「ごらあ!」


もこぽん「ごめんなさい!」ひっ!


サレナ「ここからは一切甘やかしません。ご先祖様のように強い覚悟を持ちなさい」


ぽん「何する気?」


サレナ「生きろ」


ぽん「は?」


ローズ「ここで、自分たちの力で生きることを経験してもらう」


ぽん「無理です」真顔


もこ「子供やっち」真顔


サレナ「いいからついてきなさい」


一行は容赦なくビンタしてくる雪と戦いながら前進します。


ぽん「ここ、お船の上なんだよね」


うっすら見えるお家が気になりますか。


ぽん「うん」


この甲板で暮らす人達は、特に自分に厳しい人達です。

あまりに厳しい環境ゆえに、その数は国民全体のおよそ二割ほどです。


ぽん「ふーん」


もこ「中はどうなってんの?」


都市機能を完備した居住施設となっています。

中は、この寒さが幻だったのではと思うほど温かいです。


もこ「中に行かんの?」


ローズ「中に入る時は病気したり、マブい彼女を探す時くらいだね」


サレナ「他にはそうね、サウナに入って彼ぴーを探す時くらいかしらん」


ぽん「今なら家のサウナに入りたい。お父さんと我慢大会してあげてもぷちいいかも」


もこ「家にサウナあんの?」


ぽん「お姉ちゃんがお父さんの為に作ったの」


もこ「おまたんのお姉ちゃんすごすぎ」


ぴょん「へぷちっ!寒くなってきたな」


ぽん「おへそ丸見えだからだよ。お腹壊さないようにね」


ぴょん「うん」


もこ「ほんと、空想科学服着てんのに寒くない?」


ぽん「この服は怪我とか病気とかしないように守ってくれる服だから」


もこ「どういうことよ」


ぽん「そうならないくらいに寒いのから守ってくれるだけで」


サレナ「次に寒いって言ったら海に投げるわよ」


ぽん「二人は薄着で寒くないの?」


サレナ「私たちは頑張って限界を超えたからね」


ローズ「頑張ったら温泉に入れてあげるから、それまでの辛抱だ」


ぽん「温泉!?」わくわく


もこ「やった!」うきうき


サレナ「さ、着いたわよ~ん」


一行は船首へとやって来ました。

狂暴な波が船体に何度も食らいついています。


ぽん「落ちたら死ぬね」


もこ「脅かさんでよ」じとー


ぽん「わっ!」


もこ「…………」


ぴょん「落としたらダメだぞ」かたぽん


もこ「我慢できないかも」けっ


サレナ「みんなこっちにチュウしてもーく!」なげっちゅ


ぽん「おえ……んく」


ローズ「さあお前たち、これを持って」はい


ぽん「なにこれ」


ぴょん「太い縄だな」


ぽん「わかった!これでサレナさんを縛るんだ!」


サレナ「あはあん!うふうん!やだあん!私は縛られたくないタイプなのおん!」くねくね


ぽん「げろろろー!」


サレナ「おいごらてめえ」


ぽん「それでどうするの」


ローズ「先にこのイカリを縛る」ぎゅっ


ぴょん「まさか……」


サレナ「ご飯を頑張って釣りなさい」


ぽん「無理です」のんのん


ローズ「大丈夫。ほんの少しは手伝うから」


もこ「エサは?」


若者「や!やめてくれえ!」ずるずる


サレナ「こい!根性なし!てめえ玉なしか!」ぐい


若者「ああー!やあだあー!!」がくがく


サレナ「おらあ!限界を超えてみろ!」ぽいっ


若者「うわあー……ぁぁぁ……!」どぼん!


ぽこぴょん「…………」


サレナ「彼は根性なしだからその罰よ」


ぴょん「厳しすぎないでしょうか」ぷるぷる


サレナ「そんなことないわよ!後でちゃんと助けてあげるし、そうしたらどうせ、あいつも最終的に私にメロメロになるんだから!」


ローズ「悪く思わないでね。この甲板で暮らすには生半可な覚悟じゃ無理だから、どうしても厳しく教える必要があるんだ」


ぽん「ねえ。はやく助けてあげよう」


もこ「釣るんやね」


ぴょん「あ……」


サレナ「あのカジキを釣れ!今よ!」


ぽん「おっきなー」


もこ「釣れるかな」


ぴょん「あの人カジキに食べられてるぞ……」


ローズ「あいつはカジキのオジキ。世界一のカジキだ」


ぽん「かかったかも」くいくい


もこ「手伝っちや!」


ぴょん「カジキじゃない……あの人が必死に掴まっているんだ……」


サレナ「さあ!引くわよ!」ぐいー


ローズ「ソーラン!ソーラン!」ぐいー


ぽん「シーチキン!シーチキン!」ぐいー


もこ「おすし!おすし!」ぐいー


ぴょん「もう少しだー!がんばれー!」ぐいー


みんなで力を合わせたことで、体長八メートルのカジキのオジキが釣れました。


サレナ「あんた、これで厳しさが身にしみただろう」


若者「ばぶびぃ」がちがち


サレナ「こっちよ。中へ行きましょう」


ローズ「さて、僕たちはこいつを調理しよう」


ぽん「火ならこの空想科学放熱銃で」ちゃき


ローズ「貸して」


ぽん「はい」


ローズ「消えてなくなりなさい!!」ぽいっ


ぽん「なにするの!」おこだよ!


ローズ「便利な道具に甘えちゃいけない。火の付け方を教えるから、まずは雪風避けのカマクラを作るんだ」


二時間後。

みんなで作ったカマクラ。


ローズ「滑り台だよねこれ」


ぽん「上はね」すいー


もこ「下はカマクラやよ」ひょこ


サレナ「おまたー!」きゃぴきゃぴ


ぽん「ノコギリ?」


サレナ「みんな集まってちょうだい」


サレナはみんなを集めると、ノコギリをぽんちゃんにも握らせました。


サレナ「角の切り取り、いっしょにやるわよ!」


ぽん「うん!」


ぎーこぎーこと引いて押して二分半。


ぽん「おー!武器みたい!」しゃきーん!


ローズ「危ないから振り回しちゃいけないよ」


ぽん「これでどうするの?」


ローズはカマクラの中へ入ると、上着のポケットからビンを一つ取り出しました。


ぴょん「中に入っているのは何の石ですか」


ローズ「これはヒルドラストンという石だ」


ぴょん「ヒルドラストン?」


ローズ「あの山に豊富にある石でね。昔々、修理がまだ終わらない頃、一部の人たちはこれを使って火を着けたんだ」


もこ「どうやんの?」


まず、甲板が見えるまで丸く雪を掘ります。

それからそこへ砂利を撒いて、ヒルドラストンを幾つか置いて、カジキの角ドリル。


ぽん「やりたいやりたい!」はいはーい


ローズ「子供には危ない」


サレナ「あんた火傷しても知らないわよ」


ぽん「どんなに厳しくて辛くても、僕はやるって決めたんです!」


ドリルがしたいだけです。


ぽん「おりゃー!」しゃしゃしゃ!


熱盛!


ぽん「は?」


熱盛が出てしまいました失礼しました。


ぽん「前も出てたよ」


それよりよくできました。


サレナ「これからも、火を着ける時は必ず大人と一緒になさいよ」


ぽん「はーい!」


もこ「すごい燃えるね」ほかほか


ぴょん「不思議だ」ぬくぬく


続けてカジキの捌き方を教わった三人は、お腹いっぱいになるまでカジキ料理を食べました。


ぽん「美味しかった」ぺろり


サレナ「三人ともよく頑張りました」


ローズ「ご褒美に温泉に入らせてあげましょう」


そこから少し移動して着いたところは、二人の住むシェアハウスでした。

一見して簡素な石造りの家です。


ぽん「温泉どこ?」


裏の。


もこ「ドラム缶……」がっくし


ぴょん「凍え死ぬぞ!」


サレナ「平気」


ローズ「この脱衣所で脱いで入るんだよ」


傍らにある脱衣所はとても立派な発泡スチロールでした。

床暖房完備でもうここから出たくないほど快適です。


ぽん「外出たくない」


もこ「また凍りそう」


ぴょん「いくぜ!」がちゃっ!


ぽん「ぴょんちゃん!」


もこ「寒っち閉めて閉めてー!」おててぱたぱた


ぽん「そうしましょう」ぱたん


ぴょん「開けて!」どんどん!


ぽん「なんで?」


ぴょん「まだかかりそうだってへぷちっ!お願いだからくしゅん!開けて!ねーねー開けてよー!」どんどん!


ぽん「大丈夫?」がちゃ


ぴょん「体が痛い……」ぶるぶる


ぽん「そう」


ぴょん「どうしてはやく開けてくれなかったの?」ぶるぶる


ぽん「なんとなくかな」


ぴょん「……!」ぺちぺち!


ぽん「いたいいたい!裸だからやめて!」


ローズ「準備できたよー!」


もこ「準備できたって」


ぽん「はあ……行きますか」


ぴょん「先に出て」


ぽん「はいはい」


三人は脱衣場からドラム温泉までの僅かな距離を、クルミ割り人形より歯を鳴らしてちょこちょこと急ぎました。


ぽん「あっち!」


もこ「はやく入って!」ぷるぷる


ぽん「だって熱いもん!」


ぴょん「さむいさむい!」ぶるぶる


入浴。


ぽん「いいかんじー」


もこ「あったまっちやー」


ぴょん「この温泉はどういう温泉だろう」ちゃぽ


ローズ「それは海水温泉だ」


ぽん「は?」


サレナ「あの山から流れるミネラルだとかなんだかのおかげで、この辺りの海水は熱を与えると温泉になるのよ」


ぽん「へえ」


サレナ「さ、ここでもうひとサービス!」


ローズ「楽しいショータイムをお楽しみあれ!」


ぽん「つまらなさそう」


もこ「しっ!」


ローズ「僕はオナベ。だから女で男」


サレナ「私はオカマ。だから男で女」


ローズ「お前は女なのか?」


サレナ「あなたは男なの?」


ローズ「男が女に」


サレナ「女が男に」


ローズ「あれ?」


サレナ「もしかして私たち」


二人で「入れ替わってる!?」


ぽん「ふーん」


もこ「へえ」


ぴょん「わあ」


ぽん「ほらつまらない!」


サレナ「そんなことないわよ!私たちが子供の頃はすんごく流行ったんだから!」


ぽん「どーでもよい」


サレナ「てめえ海に沈めてやる!」


ローズ「まあまあ」がしっ


ぽん「なんか寒くなった」ぷる


もこ「試練も終わったみたいやっち、もう行こ」


ぽん「うん」


あなたのー!名前ー!覚えたわよー!


ぽん「やっぱりスワンボートはいいね」


もこ「快適。おまたんのお姉ちゃんにありがとー」


ぼん「どういたしまして!」


ぽん「え?お姉ちゃん?」


音声が繋がっております。


ぴょん「チョコ姉、何かあったの」


ぼん「事件はないよ。あ、この前のバスケの決勝戦を見逃したのは事件だね」


ぽん「もー何回も謝ったでしょう」


ぼん「見てほしかったのよお!!」


ぽん「はいはい。それでなに?」


ぼん「あなたさん、厳海の国へ行って心まで冷たくなったのね」くすん


もこ「優しくしたり」ひそ


ぽん「ごめんねお姉ちゃん。僕、ずっと会えなくて寂しくてそれでね」


ぼん「まあ!そうだったの!それなら好都合だね!」


ぽん「なにが?」


ぼん「明日、占湯の国で会いましょう!」


ぴょん「会えるの!?」


ぼん「週二日休みで、明日は休みだから会えるよ!」


ぴょん「ええ……」髪へなー


ぼん「待ち合わせはてけとーに、それじゃ待ってるよ」


ぽん「はーい」


お姉ちゃんに会えるの楽しみだね。


ぽん「うん!」


それでは占湯の国へ向かって。


ぽん「れりごー!」

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