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劇の国

主演の国には書いた出来事が実行されるヤバノートというものがある。


国民は国がヤバノートに描く人生に沿って暮らしていた。


それでも、主演は国民であり、そこに揺るぎない自由はあった。


しかしそれは、つい先日までのこと。


過去、ヤバノートの一ページを綺麗に切り取り、未来を独裁的に支配することを目論んでいた邪悪があった。


邪悪は、主演の国がヤバノートによって治められ、安寧の平穏を過ごす時を待ち望んだ。


それから時は現在となり、ついに野望が果たされる。


切り取られた一ページは悪魔の契約書へと変わり、主演の国は邪悪の手に落ちた。


そこへ偶然にも三人の女の子が訪れる。


鎖国していたところへの予期せぬ訪問者であったが、邪悪は彼女達をも支配することに成功する。


そこへまた、予期せぬ訪問者が現れる。


彼女は星の加護を受けていたがためにヤバノートによる支配を受けなかった。


ところが、宇宙を舞台に移して邪悪は彼女の大切な人を人質とした。


そこで彼女は大切な人を守るため、星の加護を大切な人へと譲り渡した。


だが、それが悲劇を招く。


加護を譲り受けた女の子がワームホールに吸い込まれてしまった。


それこそが邪悪の狙いであり、それでもそれをわかって女の子は加護を譲り受けたのだった。


残された三人の女の子。


彼女たちは主演の国で偽りの人生を演じることになってしまった。


折しも、ワームホールの中で死に怯える女の子が一人。


彼女が譲り受けた加護はそれに、祈りという形で応えた。


祈りは鎖となって星と繋がり、星は彼女に激しいノリを与えた。


それから疾うに主演の国へと降り立った彼女は邪悪の支配に飲まれそうになるも、決して臆することも屈することもなく抗い、決戦の場にて逆転の善なる一矢を放ちて宿命に終わりを告げた。


かくして、宿命から解き放たれた主演の国は昨日となり、明日は解放の国となった。


ばっちゃん「おしまい」

ばっちゃんがそう言って深く礼をすると、舞台には紙吹雪が舞い、客席からは歓声が沸き起こりました。


ぽん「あーおもしろかった」


ぴょん「いい劇だったな」セタップ


コケラ劇場を出て、ぽんちゃん達はその近くにある公園でランチタイム。


ぽん「もこちゃん、歴史に名前を残すなんてやるじゃん」このこの


もこ「もういいっちやめて」


ぴょん「劇にもなって、素晴らしい名誉だな」


なのり「素敵な劇だったなのり」


もこ「おち、ほんと大変やったんよ」


ぽん「サンドウィッチ作るのってそんなに大変かな」あむ


もこ「主演の国のこと!今度こそほんとに死ぬかと思ったんよ!」


ぽん「何回も聞いた。もういいっちやめて」


もこ「マネしないで!意地悪しないで!」おててぱたぱた!


ばっちゃん「あのーすみません」のしのし


ぽん「あ、劇に出てたおばあちゃんだ」


ばっちゃん「わたし、大根劇団のジアスターゼと言います」


ぽん「ほんとに大根しかいなかったね」


ばっちゃん「あの日。もこたんに主演の国を助けていただいて、その物語を急遽、劇にしたいと思って役者を募ってはみたのですが大根役者しか集まらず……。でも彼らは彼らなりに頑張って、ほんと、偉いなと思うし、実際、演技はすごくじょうずだったでしょう」


ぽん「うん。おもしろかったよ」


なのり「なのり!」


ばっちゃん「それは嬉しいです!彼らもきっと喜びます!いや、本当のこと言うと不安だったんです!でもそうハッキリ言われるとやってよかったなって、頑張ってよかったなって思います!」にこにこ


もこ「それで、おちらに何のご用ですか?」


ばっちゃん「訪れていた王子様から、もこたんに親書を預かりました。これです。まさか王子様に会えるなんて夢にも思わなかったしとても驚きました。そうそうけっこうなイケメンでしたよ」


ぽん「ラブレターかな。はやくあけて」ときとき


もこ「ないない」


ぴょん「なんて書いてあるんだ」


もこ「素敵なもこ。国家主催の演劇祭に来て劇を披露してほしい。日程はしあさっての夕刻の鐘が鳴る時でお願いする」


ぽん「エリンギくさい?」


演劇祭とは、王子様より指名を受けた人達が、たくさんの観客の前で劇を披露する不定期の催しものです。

期日まで極端に短く、当人の演劇力が試される場として有名です。


もこ「なんでおち?」


先の劇の物語の主役である、もこちゃんに興味をもたれたのでしょう。


ぽん「やっぱりラブレターじゃない」


ぴょん「かもしれないな」


もこ「えーやだなあ……」


ぽん「これ参加しなかったらどうなるの?」


ぬか漬けにされます。


なのり「わけわかめこんぶなのり」


ぴょん「とにかくやるしかないだろう」


ぽん「がんばれ!もこちゃん、なのりちゃん!」


なのり「え?」


もこ「なのり、おちと一緒に頑張る?」


なのり「いいなのり?」


もこ「やる?やらないの?」


なのり「やるなのり!」しゃきーん!


もこ「じゃあ、嫌々がんばりますか」


ばっちゃん「わたし、もしよろしければお手伝いしますよ。これでも昔、主演の国では有名な劇団員でしてね、そこでは」


もこ「よろしくお願いします!」


こうして、もこちゃんの特訓は嫌々ながらも始まりました。

お城と隣り合う来客用の宮殿で寝泊まりしての特訓です。


大根達「今日からよろしくね」


もこ「えと」


よろしくご指導願います。


もこ「よろしくご指導願います!」ぺこ


なのり「よろしくお願いします!」ぺこなのり


ばっちゃん「はい。それでは、まずは物語を決めましょうか。劇をするならばやっぱり物語を決めなくては」


もこ「物語か……」


ばっちゃん「実はひとつ、勧めたいお話があります。それはこれです。主演の国だけでなく世界的に有名なお話でして、その内容というのが」


なのり「絵本なのり!」


ばっちゃん「ええそうです。原作を短くまとめた絵本にございます。実はそれを編集したのは誰でもないこの」


なのり「先輩、読んでなのり!」


もこ「ええー」


大根達「よければ我々が劇として披露しましょう」


なのり「わーい!」ぱちぱち


ばっちゃん「では、よーくご覧になってくださいね」


大根達「我々、頑張りますよ!」


そう言った彼らの頑張りには煌めくものがありました。

演技をすること、それがどれほど難しいことか、もこちゃんは少しながら感じました。


ばっちゃん「いかがでしたか?」


もこ「舞台で見るのと、こんなに近くで見るのと、全然違いますね。すごくグッときました」


なのり「ちょっと自信なくしたなのり」のりしおー


大根達「ははは!どうしてさ、自信を持ってくれなきゃ何も成長しないぞ!」


ばっちゃん「そのとおり。彼らは自信を持って打ち込んでいるからこそ、今も成長しているのです」


大根達「大根なだけにね」


なのり「なるほどなのり」


もこ「おちらもがんばっちや!」


なのり「なのりは出来る子なのり!」


それから二人は、自信を持って練習に励みました。

一日かけて、まずは立ち振舞いを学びます。


ばっちゃん「動きにメリハリを!自身が感情となるのです!いずれその感情は失敗しない自信へと繋がります!」


もこ「……!」


ばっちゃん「そう、そうそう!自然体で感情のままに表現するのです!大きな動きは風のように優しく時に厳しく、小さな動きは草花のようにしなやかに!」


なのり「にゃ!」とてん


大根達「なのりちゃん!」


もこ「大丈夫?」すっ


なのり「はい!」


ばっちゃん「それ大事よ。仲間と互いに助け合い、互いに磨き合いなさい」


もこ「磨き合う?」


ばっちゃん「自分が知りたいことや自分にとって物足りないことを、相手の動作から学ぶこともあります」


もこ「なのりの動きから」ちら


なのり「のりのりなのり!」のりのり!


もこ「…………ないかな」じとー


二日めは、物語に入り込みました。

本格的な演技指導を受けての練習です。


もこ「なのり、そこはもっと動き小さくしたら?」


なのり「どうしてなのり?」


もこ「暗いシーンやっち」


なのり「こう?」のりしおー


もこ「うん。いいよね?」


ばっちゃん「よいでしょう。ところでもこたん、あなたはもっと息遣いに気を付けましょう。この物語はとっても寒い森の中でのお話で、貧しい家で暮らす主人公はたいそうなものを羽織えずに凍えていますから」


もこ「わかりました」


ばっちゃん「風や光など、物語の世界観も演技でしっかりと表現するのです。あなた方が観客を物語の世界へと誘い魅了するのです」


もこ「世界観……」


ばっちゃん「目を閉じてイメージなさい。場面は寒さの厳しい森のなか、そこに集まる登場人物たち」


なのり「くちゅん!」


もこ「え?」


なのり「寒いなのり」ぷるぷる


ばっちゃん「入り込んだ!素晴らしい!」


もこ「イメージイメージ……!」んー!


なのり「寒いよぅ……」ぷるぷる


もこ「ちょっち寒くなってきたかも」ぷる…


なのり「寒いよぅ……」ぷるぷる


もこ「誰か毛布を持ってきてください!」


大根達「わかった!」どたどた


もこ「おまたん、入り込みすぎやよ」さすさす


なのり「だって、なのりがしっかりしないと台無しになっちゃうなのり」ぷるぷる


もこ「なのり……」ぎゅ


なのり「あったかなのり」ほかほかー


もこ「元気になったらもっと頑張っちや!覚悟しいよ!」


なのり「はいなのり!」


もこ「ただし、無理はやめっち。風邪ひいたら困るやよ。ほどほどにね」


なのり「はい!先輩!」


もこ(おちがしっかりしなきゃ……!)


三日目。

みんなで気を引きしめて総仕上げです。


なのり「わたしと友達になってください!」


もこ「はい!喜んで!」


それは夜遅くになって終わりました。

しかし喜びの声はその場にありません。


ばっちゃん「みなさん」


依然、張りつめた空気の中でばっちゃんが言います。


ばっちゃん「明日になって、わたしたちの劇はやっと完成します。練習、本番、喜びを分かち合って、それでわたしたちの劇は完成するのです。かならず、ハッピーエンドにしましょう」


大根達「はい!マザー!」


ばっちゃん「二人とも、これからが本番ですからね」


もこ「がんばります!」


なのり「なのり!」


ばっちゃん「ではみなさん、今日もお疲れ様でした。明日もよい夢を。そう星に願」


大根もこ達「明日もよい夢を!」


なのり「なのり!」


からの翌朝。

盛大なパレードのファンファーレで目を覚ましたぽんちゃんとぴょんちゃん。

今日は朝早くから大にぎわいですよ。


ぽん「もこちゃんたちの劇、何時からだっけ」ねむねむ


夕方、四時過ぎです。


ぽん「じゃあ、もうひとねむり」とてん


ぴょん「応援に行くよ」ふらふら


ぽん「ヒゲメガネとパジャマでどこ行く気かしら」


ぴょん「すやぁ……」とてん


ぽん「ぴょんちゃんだって眠いんじゃない」うとうと


ぴょん「応援に……」ぐっ


セタップ!セタップ!セターップ!


ぴょん「いかなきゃ!」しゃきーん!


二人は支度をなんとか済ませてお城へ向かいました。

お花がたくさんのお庭でちょこっと遊んで、それから来客用の宮殿へ。


兵「止まれ。ここから先は関係者以外立ち入り禁止だ」


ぽん「もこちゃんの友達です」


兵「何か証明するものは」


ぽん「この目を見てください!」ぴゅあ~


兵「うーん。通ってよし!」


ぴょん「いいんですか?」


ぽん「いいの!いくよ!」


芸術的な池を見渡せる長い回廊を、るんたったと散歩して、ようやくもこちゃんのところへ到着です。


ぽん「たのもー!」


ぴょん「しっ!練習中かも知れない!」


ばっちゃん「あら!お二人さんおはよう!」ひょこ


ぽんぴょこ「おはようございます!」ぺこ


ばっちゃん「さ、入って構いませんよ。でも、今は本番に備えて各自イメトレ中だから静かにね」


中に入ると、豪華な装飾の部屋のなかで、大根達がすっかりくたびれて干し大根のようになっていました。


ぽん「もこちゃん!なのりちゃん!」


もこ「おは」やあ


ぽん「宮殿のお部屋どうだった?」


ぴょん「聞くところはそこじゃないだろう」


ぽん「気になるし」


もこ「とにかく広いし、ベッドはふわふわよ」


ぽん「ふーん」


もこ「聞いといてなんよその態度!」


ぽん「しっー!みんなイメトレ中だから!」


もこ「わかってます」ぷくー


ぴょん「なのりちゃん」


なのり「はーい!」


ぴょん「これはオレ達が願いを編んだミサンガだ。心から応援している、頑張れ」


なのり「緑が綺麗なのり!ありがとうなのり!」のりのり!


ぽん「もこちゃんは赤ね」はい


もこ「ありがと」


ぽん「へたっぴでごめんね!」ぷい!


もこ「なんも言ってなっちや」じとー


ぽん「それね、昨日ぷち徹夜で編んだんだよ」


もこ「ほんと、ありがとね」


ぽん「うん!じゃ、僕は劇まで寝るから」すたすた


ぴょん「ぽん太は今日も自由人だな」やれやれ


もこ「それがいいとこでもあっち。それに集中できっちいいよ」


ぴょん「ああそうだ」


もこ「?」


ぴょん「みなさん!これをよろしかったらどうぞ!」


大根達「それは?」


ぴょん「クチナシ茶です。リラックスできますし、ハチミツ入りで疲れも取れますよ」


大根達「いやっほう!!」


もこ「おまたんは気が利くね」


ぴょん「もこちもどうぞ」


もこ「うん、いただきます」


さて、ぽんちゃんぴょんちゃんが宮殿のふわふわベッドで気持ちよく寝ている間も、劇団員一同、一致団結して最後まで練習を頑張りました。

そして時刻は午後四時を回り、いよいよ本番の時となりました。


ぽん「お城の劇場って広いね」


ぴょん「ここは劇の国だから、きっと特別だろう」



劇場が暗くなって、開幕のブザーをオウムさんが演じます。

次に幕がさっと開かれると、インコさんたちが小鳥のさえずりを演じて、物語の世界が穏やかに広がってゆきました。


もこ「お掃除おわり!」


ある大きな国に、もこという少女がおりました。

彼女が物心つく前に両親は亡くなり、今は継母とその娘と三人で慎ましく暮らしております。


沢庵母「もこ!掃除が終わったら洗濯よ!」


沢庵娘「オヤツもおねがーい」


しかし継母と娘はいっさいの愛情なく、もこを飯使いのように扱っていました。

もこが見た目も心も美しい少女であることに嫉妬していたのです。


ぽん「あの大根きいろくない?」ひそ


ぴょん「たくあんじゃないかな」ひそ


そんな年の大晦日のことです。

まだ幼く、わがまま放題で有名な女王が。


なのり「新年をスノードロップの花で飾って、みんなで楽しくお祝いしましょうなの!」


と、いつもながら突然にわがままを言い出しました。

ところが寒さの厳しいこの国では、スノードロップは四月にならないと咲きません。


なのり「褒美はたくさんくれてやるなの!さあゆけゆけなのー!」


この命令は瞬く間に町へと広まりました。

もちろん、もこの暮らす家にも届きました。


沢庵娘「あの子いらないから捨てちゃいましょう」


沢庵母「もしかしたら褒美も貰えるかも知れないし、そうね。いい機会だわ」


ということで、可哀想なことに。

わずかな羽織ものと底の深い篭を持たされ、もこは雪の積もる森へと追い出されてしまいました。


もこ「スノードロップの花を篭いっぱいなんて無茶だわ。どうしましょう」


もこがとぼとぼ森を歩いていると、雪がどしどしと降ってきました。

それはますます酷くなって、ついには歩くことも出来なくなりました。


もこ「とても寒い……。わたし、ここで死んじゃうのだわ」


そう諦めた時でした。

遠くに僅かな明かりが見え、焚き火の音が聞こえました。


もこ「助かった」


光と音を頼りに近づいてみると、ごうごうと燃える焚き火を囲んで、十二本の沢庵が楽しそうに話をしていました。


沢庵「お茶漬けにこそ沢庵だよ」


沢庵「いやいや、卵かけご飯にこそ沢庵さ」


もこは意を決して、彼らのもとへ飛び出します。


もこ「あの……!」


沢庵達「!?」


もこ「あたたたさせてください!」


沢庵「暖まりたいのかい」


もこ「はい!」


沢庵「いいよ!ね、みんな!」


沢庵達「いえい!」


彼らは、もこを温かく迎えてくれました。

そして、なぜ、危険なこの時期に森へいるのかと尋ねました。


もこ「実は……」


訳を聞いた沢庵達は一同に頷くと、奇妙な躍りを順々に披露しました。

すると驚くことに、一人躍り終わるごとに雪が止み、風が止み、まるで春のように暖かくなって、芽が萌え、最後には辺りに様々な花が咲き溢れたのです。


もこ「すっごーい!」


沢庵「実は僕ら、姿は沢庵だけれど、これでも十二の月の妖精なんだよ」


もこ「え!妖精さん!?」


沢庵「そうだよ」


沢庵「さ、ほんの少し春が来た」


沢庵「今のうちに早く摘んでしまいなさい」


もこ「ありがとうございます!」


もこは大急ぎでスノードロップを摘むと、彼らにお礼を言いました。


沢庵「このことは、誰にも内緒だよ!」


沢庵「それにしても君はいい子だね」


沢庵「僕らにはわかるよ」


沢庵「そんな君へ今だけ!」


沢庵「このタワシをプレゼント!」


沢庵「もし困ったことがあればこれを使って」


沢庵「それで肌を擦れば、すぐに駆けつけるから」


沢庵「どうしてこんなに親切にしてくれるのかって?」


沢庵「言ったろう」


沢庵「僕らは、あなたのことが好きだから」


沢庵「それだけのことだよ」


沢庵「さ、帰り道には気を付けてね」


そう言って彼らが姿を消すと、辺りはすっかり冬に戻りました。

それでも、彼らに親切にされたもこは、心身ともにぽかぽかでした。


もこ「ただいまー!」


陽気に帰宅したもこを見て二人はびっくり。

さらに篭の中を見てもうひと驚き。


沢庵母「いったいこれはどうしたの!」


沢庵娘「ママ!ママ!ねえママ!」


沢庵母「もこ、わたしたちは今からお城へこれを持っていくから留守をお願いね!」


沢庵娘「何か盗られたら困るしね!」


もこは、二人が褒美を分けてくれるつもりがないことも、盗られて困るものがないことも分かっています。


もこ「いってらっしゃい!」


でもそんなことは、心が温かいのでどうでもよいのです。

それだけ、もこは幸せに感じていました。


なのり「もこー!そなたがもこであるかー!」


もこが貰ったタワシで食器を洗っているところへ、鼻息の荒い女王が家来を連れてやって来ました。


なのり「これをどーやって手に入れたなの!教えなさい!」


沢庵母「教えなさい!」


沢庵娘「言ーえ!言ーえ!」


もこ「あの、これはたまたま見つけて」


なのり「どこで!」


もこ「それがわからないのです。たまたまだから」


なんとか誤魔化そうとしましたが、女王があまりにひつこかったのと、二人が責めらて困っていたのを見かねて、もこは案内することを決めました。


もこ「うーん……」


雪の積もる森を突き進み、さっきの場所へとやってきましたが……。


なのり「ここ!?ここなの!?」


女王は家来の引くソリの上で体を反りながら叫びました。


もこ「だと思いますが……」


はっきりしないもこを見て、女王はお決まりのわがままを言い出しました。


なのり「見つけるまで、あなた方家族が帰ることを許しませんなの!」


沢庵母「ええー!」


沢庵娘「あの、わたしたちは」


なのり「文句があるなら見つけなさーい!」


とうとう困り果てたもこは、妖精からもらったタワシを使うことにしました。


沢庵母「こんな時に何をしているの!」


もこ「乾布摩擦です」


沢庵母「はあん!?」


沢庵娘「ママ見て!沢庵が!ねえ沢庵が!」


沢庵母「こんな森深くに沢庵があるわけないでしょう!?」


なのり「あ……あれは!」


沢庵母「沢庵!?」


沢庵「そう。わたしは沢庵の妖精」


沢庵母「沢庵の妖精!?」


沢庵「君たちだね。この子に意地悪するのは」


気がつけば、一行は十二本の沢庵に囲まれていました。

彼らは一行に鋭い視線を向けます。


なのり「家来たち!やっておしまいなの!」


女王が家来をけしかけるも、彼らは一瞬で毛のない猫にされてしまいました。


なのり「ふぇ……」


毛のない猫は寒さに、女王は恐怖に震えます。


沢庵「あんたらもだ」


続けて、継母と娘も毛のない犬にされてしまいました。


沢庵「最後にわがままな女王様。あなたはどうしてやろうか」


なのり「ごめんなさいなのぉ……」


沢庵「謝って済むなら沢庵は必要ない」


もこ「待って!」


もこは女王の前に立って願いました。


もこ「みんなを元に戻してあげてください!」


沢庵「しかし」


もこ「みんな、きっと反省しています。それにこのままでは、みんな凍えて死んでしまいます!」


なのり「そなた……」


沢庵は、もこの流した涙を優しくタワシで拭ってあげると、みんなを沢庵へと戻してあげました。


なのり「ありがとう!妖精さん!」


妖精「礼ならその子に言いなさい」


なのり「もこ!ありがとうなの!」


もこ「いえいえ」


なのり「わたし、反省しました。これからは人の気持ちを考えて生きてゆきますなの」


もこ「女王様……」


なのり「もこ!わたしと友達になってくれませんか!」


もこ「え?」


なのり「心の澄んだそなたから、人の気持ちを学びたいなの!」


もこ「…………」


なのり「わたしと友達になってください!」


もこ「はい!喜んで!」


沢庵「ふっ、もうそのタワシは必要ありませんね」


もこ「はい。これはお返ししますね」


沢庵「うん。では、帰り道には気を付けてね」


こうして一件落着。

継母と娘もすっかり反省したようで、夜が開けた翌日、もこは家族と笑いながらお城へと向かい、そこで、素敵なお友達も一緒に新年を楽しく迎えたのでした。


ばっちゃん「めでたしめでたし!」


ばっちゃんがそう言って深く礼をすると、舞台には鰹節が舞い、客席からは歓声が沸き起こりました。

これにて閉幕、お疲れ様でした。



ぽん「おもしろかったー!」


王宮内の大広間で合流して、贅沢なパーティーを楽しみながらの歓談です。


もこ「本当におもしろかった?」じとー


ぽん「うん!」


もこ「どうせ途中で寝たんでしょう」じとー


起きていましたよ。

それも夢中になって見入っていました。


ぽん「もこちゃんの演技すごかったね」


ぴょん「ああ。物語の世界につい誘われたよ」


ぽん「才能あるんじゃない」


もこ「そう?」てれ


なのり「さすが先輩なのり!」ぱちぱち


もこ「なのりも良かったよ」


なのり「そうなのり?」てれてれ


ぽん「二人の才能に僕が恵みの雨を降らせますから、これからも頑張ってね!」


もこ「はあ?」


ばっちゃん「もこたーん!結果の親書が届いたわよー!」のしのし


ぽん「ぬか漬けって書いてある?」


ばっちゃん「いいえ!」しゅばっ!


もこ「くぎづけ」


ぽん「どういう意味?」


君にゾッコンという意味です。


ぽん「じゃあ恋だ」


ばっちゃん「みんなで喜びを分かち合いましょう!」


イケメン王子「おーい!」


ばっちゃん「ああああの方が王子様よ!」きゃー!


ぽん「イケメンじゃない」このこの


もこ「おち、まだ子供やっち」てれてれ


イケメン王子「それでも好きだ!」どうぞ!


ぴょん「これはスノードロップの花束!」


ぽん「本気だ!」


もこ「あの、急に言われても」もじもじ


なのり「だめなのりー!」ばっ!


イケメン王子「どうして?」


なのり「なのりの方が先輩のこと大好きなのり!」


ぽん「おお!こっちも恋だ!」


ぴょん「いや違う!こっちは愛だ!」


イケメン王子「待ちたまえ。僕も本気でもこを愛している」


ぽん「スキャンダルだ!」


ぴょん「カメラを持った人が集まってきたぞ!」


イケメン王子「落ち着いてください。ひとりひとりにきちんと答えますから」


ぽん「どうするの?」ひそ


もこ「どうもこうも」


なのり「れりごー!」


もこたん元気でー!愛しの姫カムバーックー!最後に一言お願いしまーす!


もこ「ごめんなさーい!」


ぽん「ぷちもったいなー」


もこ「正直言って、おちは恋なんて全然わからんち」


ぽん「僕も同じ。恋ってなんだろうね」


もこ「ねー」


ぽん「ねー」


ぴょん「良かったな。誰にも取られなくて」ひそ


なのり「なのり!」

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