ナミダの国
友愛という情熱に燃えました。
救護の想いを生と極めました。
本当の自分に気付いた、まだあまりに幼い女の子。
これは、そんな彼女が勇気を以て自信を為す物語です。
ぴょん「いたた、またどうして墜落した」セタップ
ぽん「たまにあるの」
もこ「あっちゃだめでしょ」じとー
レモンティーの香りに似た清々しい朝。
スワンボートはナミダの国へ清々しい墜落、というより水没。
どこまでも透明な水に映された清々しい空へすっかり沈んだ都市を見て、人々はこの国を空の都とも呼びます。
ぽん「ほんとだ。町が沈んでて清々しい」
もこ「ふか……こわ……」
ぽん「わっ!」
もこ「きゃー!」おててぱたぱた
ぽん「ひひっ」くすくす
もこ「落ちろ!」どん!
ぽん「うわっ!」どぼーん!
ぴょん「もこち、それはあまりにもひどい」
もこ「どうせ平気やよ」ふー
ぽん「すがすがすーい」バタフライ
もこ「ほらね。こやっちに当たり前は通用せんのよ」
ぴょん「たしかに、ぽん太は常識破りな性格だが……」
ぽん「町の上に町があるって、なんか変な感じだね。下がどうなってるか潜って見てくる」ちゃぽん
八分四秒後。
ぽん「町は浮いてるみたい」ぷはー
もこ「はあ?」
ぴょん「足元を触ってみたら石じゃないぞ」
ぽん「ナレーションさん、何で出来てるの」
町は基本的に奔放スチロールで出来ています。
奔放スチロールは、とても自由に精巧な模造品が作れるだけでなく、耐久性、耐水性、耐火性、耐猫性、通気性、防腐性、防虫性、防臭性、防音性等、とにかく頑丈で快適な素材の優等生です。
ぽん「ふーん」
それ自体は、主にモンドルフィン、サルバネトラ、カッキクケッコ、アイクヨート等の素材と少々のレモン汁を合わせて作られます。
ぽん「へえ」
ここで質問。
ほんのりレモンの香りがしませんか?
ぽん「ぷち」くんくん
それは奔放スチロールを作るため、町のあちこちにレモンが植えられているからです。
ぽん「レモンみっけ!」たたっ
もこ「レモンて木なんや」
ぴょん「うちにも植えてあるぞ」
もこ「いいやん」
ぽん「ねえ、採っていいかな?」
もこ「採ってどうすんのよ」
ぽん「そりゃ食べるに決ま……お?」
もこ「あの大きい、えーと飾り?」
あの噴水するラムネ形のモニュメントは、この国にとって戒めのような存在です。
もこ「いましめ?」
遥か昔、この国の人達は大喧嘩しました。
レモンの汁を互いの目にかけ合って。
ぽん「ぷちたのしそう」
彼らはとても酸っぱい思いをしました。
そこで、もう争うことのないよう、感情をガラス玉に変えてラムネモニュメントに封じたのです。
ぽん「そうなんだ」
その争いの理由というのが。
もこ「待っち。ぴょんちは?」
ぽん「もう!いつもいつも勝手にどこかへ行くんだから!」ぷんぷくー
もこ「おまたんのことやん」
ぽん「違いますけど」
悲鳴にも聞こえた破砕音。
それは瞬時に全身を駆け抜け、心を搾るように刺激しました。
ぽん「なになに!?」
もこ「あーーー!」
ぽん「ラムネモニュメントが割れてる!」
もこ「ぴょんち!なんてことすんの!」
ぽん「え?ぴょんちゃんがやったの?」
ぴょん「そうだ」
ぽん「はやくごめんなさいしないと怒られるよ」
もこ「そういう問題やなっちや」
ぴょん「二人とも。オレのことを信じて待っていてほしい」
ぽん「は?」
ぴょん「っ!」たたっ
ぽん「あー!逃げた!」
もこ「ぽんぽん」かたぽん
ぽん「どうしたの?」
もこ「変な声が聞こえん?」
ぽん「うん。段々大きくなってるね」
それは国民の泣き声です。
感情を取り戻した国民が混乱して泣きわめいているのです。
ぽん「あらまあ」
ナミダの国。
その国名は国民の流した涙に由来します。
都市をすっかり沈めた水は遥か昔、彼らが心の枯れるまで流した涙といわれています。
ぽん「そうだったんだ」
今、再びその伝説が現実となれば……。
なのり「なのり?」
この国から溢れた涙はやがて大波となって、近くにあるいくつかの国を飲み込んでしまうことでしょう。
多分。
ぽん「やばっ」
もこ「どうしたらいいんよ」
泣き止ませるしかないですね。
ぽん「でも、この国の人達をみんな泣き止ませるなんてどうしたらいいの?」
もこ「おちが歌でみんなを繋ぐ!」
四割泣き止みました。
ぽん「一瞬ですごいね」ぱちぱち
もこ「おまたんもなんか考えて」ぜーぜー
ぽん「困った時の空想科学光線」
三割泣き出しました。
もこ「ばかやないの!?」
ぽん「空想科学光線には破滅と浄化の二つの力があるんだよ。なのにおかしいなー」
もこ「急にビーム撃たれたら誰だってびっくりすっちや」
ぽん「あ、そういうこと」なるぽん
もこ「もー……そもそもこうなったんはぴょんちのせいやよ……どこ行ったんよ」
ぽん「あ、戻ってきた」
もこ「ねこさん?」じとー
ぴょん「にゃあー!!」
ぽん「にゃーだって」くすくす
国民が何事かと続々と集まってきました。
遠方にいるものは地元テレビの中継を通してまで注目しています。
ぴょん「来月号のテレビ雑誌の表紙は、ねこさんに決まった!」
もこ「はあ?」
過去、国民が争った理由、それはオファーをもらった有名テレビ雑誌の表紙に自慢の嫁を出すことでした。
もこ「はあ?はあ?はーあ?」
戦いは夫同士の争いに留まらず、嫁同士の争い、姑同士の争い、子供たちの争いへと泥沼化しました。
その最終決戦となったのが、スペシャルハッピーパートナー、略してペットの自慢。
ぽん「で?」
犬が優勢かと思われましたが、フェレットやチンチラやインコやフクロウが思わぬスター性を発揮。
そこへ深い爪痕を残したのが猫でした。
猫は柑橘系の匂いが苦手で、この国では馴染みのないペットです。
それゆえに、この国の人達にとって猫は憧れ、いえそれ以上の存在だったのです。
ぴょん「ところが、ねこさんはそう簡単にここへはやって来てくれない」
ねこさん「にゃー」
ぴょん「それでも一匹、この国へ来てくれた猫さんがいた」
ねこさん「にゃー」
その猫さんは外国から移り住んだ人のペットでした。
ねこさん「にゃー」
ぴょん「その猫さんのおかげで、争いはうにゃむにゃに終わった」
ねこさん「にゃー」
しかしなぜ、ぴょんちゃんはラムネモニュメントをわざわざ壊したのでしょう。
ねこさん「感情を取り戻して、今度こそ、みんなに前に進んでほしいと心から思ったからだよ」
こんなことで、前に進むのでしょうか。
ねこさん「ささいなきっかけで前に進むことなんていくらでもあるよ。たとえば、カーテンを破って怒られても、きちんと甘えることで許しをもらう。ねこさんはそうやって前に進んだことがあるよ」
それでも難しく感じます。
ぴょん「雑誌は来月号で廃刊になる!」
なんと。
ぽん「はいかんて?」
なくなるということです。
ぽん「じゃあもう大丈夫なんだね」
争いの原因そのものがなくなり、最後の表紙を飾るのはみんなの憧れねこさん。
これで、すべて丸く収まることでしょう。
ねこさん「猫も丸くなる」くるん
ぴょん「ということでどうでしょう!これからはもう、無理に感情を封じ込めるのはやめにしませんか!」
さっきまでわめき散らしていた国民が、黙ってぴょんにゃんの演説に耳を傾けます。
ぴょん「わかり合う勇気をもってください!それを、信じる自信にしてください!」
ねこさん「流した涙をどう輝かせるか!みなさんで一緒になって考えていきましょう!ねこさんもレモンをかじられるように頑張るから、一緒に頑張りましょう!」
その想いの叫びに、国民は大歓声を上げて応え、レモネードをかけ合って喜びました。
ぽん「ぴょんちゃん」
ぴょん「また心配かけてごめん」
ぽん「ううん。何があったの」
ぴょん「偶然、オレの故郷の人に出会って頼まれたんだ。大好きだったこの国を救ってほしいと」
ぽん「そういうこと。一言いってくれれば良かったのに」
ぴょん「故郷に一度帰ったんだ。ほんとごめん」
もこ「帰ったん?」
ぴょん「ほんの少しだけな」
もこ「どやった?」
ぴょん「前より活気があった。だから、そろそろ帰ろうと思う」
ぽん「帰っちゃうの?」
ぴょん「ああ。でも、もう少し二人と旅をしたい」
ぽん「なら、思い出作りしなきゃね」
ぴょん「ああ」
もこ「…………」
ねこさん「レモンピール食べる?」はい
もこ「毛だらけやっちいい」
ねこさん「そう。元気だしてね」もむもむ
もこ「おちは元気やよ!」
ぽん「いつでも悩んでいいよ。ただ、もこちゃんも無理はしないで」
もこ「ありがとう。おちもそろそろ、本気で、決着つけっちや」がんばよ!
ぽん「?」くびかしげ
ぴょん「カスカスの国、黄昏の国、ナミダの国と来て疲れたから、次はリフレッシュできる国へ行かないか?」
もこ「賛成!」
ぽん「それじゃあ次の国へ向かって?」
ねこさん「れりごー!」
うわーん!ねこさーん!いかないでよおー!




