黄昏の国
空想の国のあるところに、いたずらぽんちゃんという女の子がいます。
彼女はとってもイタズラ好きで、とってもワガママな自己中の悪い子です。
ぽ ん「このオヤツはぜーんぶ、僕のために焼いてくれたんだよね!」
フィナンシェ屋「いや、それは町の労働者さん達の」
ぽ ん「もらうね!」
おまけに食いしん坊さん。
ぽ ん「うますぎー!」もむもむ
ぽん「こら!僕っぽい影さん!」
ぽ ん「なに?」
ぽん「ワガママで勝手なことばっかりしたら駄目なんだよ!怒られるよ!」
ぽ ん「誰そ彼は」くびかしげ
ぽん「僕が誰か聞いてるの?僕は、めちゃいい子ぽんちゃんです」
ぽ ん「めちゃいい子ぽんちゃん。それは本当?」
ぽん「そうだよ!僕は悪い子じゃありません!」えへん!
悪い子でいいんですよ。
子供なら、何をしても許されるのですから。
ぽん「あなたさんは誰?ナレーションさんじゃないよね。だって声が変だもん」
いやはや、こんなにもはやく本当の自分に気付くなんてね。
ぽ ん「おもしろーい」くすくす
おもしろいね。
ぽん「さっきから何言ってるの?」あしぱたた
なのり「わけわかめ山盛りなのり」あしぱたた
はじめに。
ここは空想の国じゃないよ。
ぽん「あれ?森になった」きょろりん
この森は、黄昏の国。
陽が沈むことのない悠久の国。
ぽん「ふーん」
子供たちが迷い着く所だよ。
ぽん「そういえば、僕はどうしてこんなところにいるんだろう」
近くを通りかかった時に私が誘導したんだ。
ぽん「そうだ。お昼の国を見つけて、みんな元気にしてるかなーて思ってた時になんかふわーっとして」
そう、チャンスと思ったね。
ぽん「こらー!あなたさんの方が悪い子じゃない!」おこだよ!
まあまあ、なにも私は意地悪をしたいわけじゃないんだよ。
ぽん「じゃあ何がしたいの?」
君たち子供を救いたい。
それだけだよ。
ぽん「は?」
大人になるとね、みんなして偉そうにするんだ。
きっと、自然を離れて人工物に囲まれることで、無意識に自分が偉いと思ってしまうんだろうね。
ぽん「……」うとうと
大人は、改めて自然に囲まれ、自身も自然の一部であることを再認しなければならないと私は考える。
ぽん「……」すやあ…
そうすることで、理性というプライドを取り戻し、少しは人らしく模範的に生きることを思い出すだろう。
ぽん「とりゅふぅ……」すややかー
おっと話がそれてしまったね、すまない。
私はあなた達にそうなってほしくないからー聞いてる?
ぽん「寝ながら聞いてまふぅ……」こくこく
では、少し難しい話になるけどしっかり聞いてね。
いい?続けるよ?
ぽん「ん……」すぴー
私があなた達子供に望むことは八十六つ。
ぽん「多くない?ひとつにして」ぱちくり
じゃあ一つにするよ。
ぽん「うん」
ずっといい子でいてね。
ぽん「それだけ?」
それだけのことだけど、難しいことなんだよ。
ぽん「僕なら大丈夫だよ」
どうしてそう言えるのかな?
ぽん「僕が悪いことした時、叱ってくれる人がいるから」
まずは叱られないようにしよう。
ぽん「そうだね」
うん。それでは、もう行っていいよ。
適当に歩いていたら森から出られるから。
ぽん「ねえ、二人は?」
あなたの友達は、私の娘と遊んでいるよ。
ぽん「娘がいるんだ」
娘は森と生きる子でね。
あなたと同じ、人であって人間ではない。
ぽん「え」
でも安心して。
友達があなたみたいに本当の自分に気付く、いい子でいられたら無事に森から出られるよ。
ぽん「いられなかったら?」
ここで子供のままでいてもらう。
もう大人にはなれない。
ぽん「それはいいこと?」
よくないことだよ。
ぽん「じゃあ、助ける!」
助ける?
ぽん「当たり前でしょう!友達なんだから!」
わかった。
その理由ならいいよ。
ぽん「木が動いた!」
さあ、お行き。
この先に友達はいる。
ぽん「よーし!待っててね二人とも!」たたっ!
そうして、ぽんちゃんはぴょんちゃんの元へ。
三日月の池へとやって来ました。
ぽん「あなたさん、ついてくるんだ」
ついてくるというか、ずっと側にいるよ。
ぴ ょん「君はなんて弱いんだ」ふみふみ
ぽん「あ!ぴょんちゃんの影が亀をいじめてる!」
待って。
あなたが飛び出してはいけない。
ぽん「どうして?」
本当の自分に気付く、その役目は自分自身でなきゃならない。
ぽん「よくわかんないんですけど」
その岩陰から少し見てて。
ぽん「わかった」
ぴょん「待て!」
ぽん「あ!ぴょんちゃん!」
ぴ ょん「誰そ彼は」くびかしげ
ぴょん「オレのことか?オレは……誰だ?」髪ぴこ?
ぴ ょん「なあ、オレと一緒にいじめないか」
ぴょん「なに?」
ぴ ょん「自分が傷つくより誰かを傷つける方がいいだろう。ほら、あの岩の向こうを見てみろ」
ぴょん「あれは誰だ?」
ぽん「こっち見てる。手、ふっていい?」
だめ。
ぽん「そう」
ぴょん「あれは誰だ!」
ぴ ょん「何を焦っているんだ?」
ぴょん「別に焦っているわけじゃあ」
ぴ ょん「彼女はいじめっこさ」
ぴょん「なんだと」
ぴ ょん「亀をいじめないとオレをいじめると言うんだ」
ぴょん「だからといって、亀をいじめるのはよくない」
ぴ ょん「なら、自分がいじめられてもいいと言うんだな」
ぴょん「いい!」
ぴ ょん「痛いぞ辛いぞむず痒いぞ」
ぴょん「それでも構わない」
ぴ ょん「わかった。じゃあオレをいじめるといい」
ぴょん「どうしてそうなる」
ぴ ょん「オレをやっつけて亀を助けるんだ。誰かを傷つける覚悟を学んだなら出来るだろう」
ぴょん「…………」
ぽん「だめだよ!ぴょんちゃん!」ばっ!
ぴょん「!」
ぽん「こういう時は逃げなさい!」
ぴょん「逃げるだと?そんなの許されない!」
ぽん「たまにはいいの!無理したらよくないよ!そうだ、この影に仕返しされるかもしれないよ!危ないよ!」
ぴょん「仕返し……」
ぴ ょん「やられたらやり返す。倍返しってやつだな」
ぴょん「貴様……!」髪ぴーん!
ぽん「やばっ、マジギレぴょんちゃんだ」
ぴ ょん「君がオレといじめっこの二人にいじめられるかも知れないし、助けた亀が君を裏切るかも知れない。そんなことも考えられるな」
ぴょん「…………」ぐっ!
ぽん「落ち着いてぴょんちゃん」ぷるぷる
ぴ ょん「それでも助けるのか?そもそも助けるって身勝手じゃないか?」
ぴょん「身勝手でも仕返しされても裏切られても!目の前に泣いている心があればオレは助ける!そのために手を伸ばすことを諦めない!」
ぽん「深呼吸しよう!ほら、はっひっふーて」
ぴょん「ぽん太。オレなら平気だ」かたぽん
ぽん「ぴょんちゃん……!僕はぽんちゃんです……!」
ぴ ょん「後がこわいぞー」
ぴょん「もし仕返しされそうになったり亀に裏切られることがあっても、その時はぽん太の言う通り逃げればいい。そもそも、君を傷つけなくても亀を助ける方法はある」
ぴ ょん「へえ」
ぽん「ぴょんちゃんはそうでなくちゃ!」
ぴょん「そうだオレの名は!オレの名は!」
ぴ ょん「誰そ彼は」くびかしげ
ぴょん「オレは風の戦士だ!」しゃきーん!
ぽん「ずこー」とびこみ!
ぴょん「ぽん太!」
ぽん「おっきなドジョウさんいたよ」ほら
ぴょん「よかったね」ほっ
ぽん「うん」
ぴょん「たまには、逃げてもいいんだよな」
ぽん「そうだよ。ぴょんちゃんはね、なんとなくだけど、無理してる気がするの。いつもいつもね」
ぴょん「心配かけてごめん」
ぽん「いえいえ」
ぴょん「……風」
ぽん「風?」
ぴょん「オレはいつか風になる」
ぽん「まだそんなこと言うの」じとー
ぴょん「冗談じゃないよ。本当になりたいんだ、風のように」
ぽん「そう」
ぴ ょん「おもしろー」くすくす
ぴょん「お前こそ誰だ。正体を現せ」
ぽん「あ、消えちゃった」
ぴょん「なんなんだ……それにここは?」
ぽん「後で説明するから、ぴょんちゃんは先に適当に歩いて森を出て。それで夜ご飯作って待ってて」
ぴょん「どこに行くつもりだ。ああ、もこちのところか」
ぽん「もこちゃんは僕に任せなさい!」うぃんく
ぴょん「オレも一緒に行く」
ぽん「ううん。僕ひとりで行かせて」
ぴょん「なぜひとりで」
ぽん「ひとりでやってみたいの」
ぴょん「…………」
ぽん「ひとりでできるもん!」ふんす!
ぴょん「わかった。もこちのことは任せる」
ぽん「任せんしゃい!」どやあ!
そうして、ぽんちゃんは一人でもこちゃんのいる向日葵畑へ。
ぽん「お」
その中心、開けた小花の広場にもこちゃんはいました。
ぽん「もう泣いてる」こそ
もこ「やめてよお!」しくしく
も こ「世界征服しないといけんのお!」しくしく
もこ「しなくていいよお!」しくしく
も こ「どうしてえ!」しくしく
もこ「わかあんなあい!」しくしく
も こ「しないといけんのお!」しくしく
もこ「でもお!でもお!」しくしく
ぽん「なにあれ……」ええ…
もこ「おちはみんなと仲良くしたいのお!」しくしく
も こ「みんな敵やなあい!」しくしく
もこ「そんなことなあい!」しくしく
も こ「邪魔者は敵ですう!」しくしく
もこ「でえもお!」しくしく
ぽん「うるさーーーい!!」
もこ「ぽんぽん」ぐすっ
ぽん「何を泣いてるの」ふきふき
もこ「おち、妄想で世界征服しないといけんの」
ぽん「は?」
もこ「……が元気になれんち」ぼそっ
ぽん「誰かを元気にするために世界征服なんてバカみたい!」
も こ「バカってなんよ!自分を好きやない人なんていない方がいいに決まってっちや!」
もこ「でも……」
も こ「そやろ!悪く言う人がいて楽しい?楽しくないやよ!」
もこ「でもお……」ひっぐえっぐ
ぽん「もこちゃん!はっきり言っておあげなさい!」
もこ「ワガママはだめーーー!!」
も こ「はあ?」
もこ「気持ちは誰かとつくるの!誰かと繋ぐの!いつもいつでも誰かと!お母さんがそう言ってた!」
も こ「アホやよ」やれやれ
もこ「アホやない!おちは少しずつ仲良くなる方がいい!少しずつ少しずつ、友達になる方がいいってわかったもん!」おててぱたぱた!
も こ「友達はそうかも知れんけど」
もこ「自分のことを好きと思わない人がいても、好きになってくれる人がいるなら私は歌うわ」
ぽん「それ、どこかで聞いたことある」
もこ「いつまでもいつまでも笑顔を忘れないわ。あなたの優しい気持ちを覚えているから」
ぽん「歌みたいだね」
もこ「アイマイミーうめなでしこ。お母さんの歌やよ」
ぽん「あーそういうこと!いい歌だね!」
もこ「うん!いい歌!」にこっ!
も こ「誰そ彼は」くびかしげ
もこ「おちはアイマイ・みいの娘、アイマイ・もこ!」
も こ「もこはもこの道を進む、そういうこと?」
もこ「そういうことです。て、おまたん誰よ」じとー
月花「おもしろー!」くすくす
ぽん「影から女の子が出てきた。もしかしてこの子が娘さん?」
名前はゲッカ。
美人でしょう?
ぽん「うーん。僕とどっこいわっしょいかな」
月花「おもしろー!」くすくす
ぽん「そっかな」えへへ
もこ「ちょっちおまたん!なんでこんな意地悪するんよ!」
月花「意地悪じゃないよ!頼まれてあなた達の背中を押してあげたんだよ、えらいえらいねして!」
もこ「せん!」ぷい
月花「おもしろー!」くすくす
もこ「はあ?」
ぽん「もういいよ。行こう」
もこ「うん」
月花「また遊ぼうね!」
ぽん「今度は影じゃなくて、あなたさんとね」
月花「はーい!ばいばーい!」おててふりふり
ぽん「ばいばい!」おててふりふり
というようなことがあったと。
ぽん「そのぷち嫌な声、安心するなー」のほほん
その印象どうにかしてください。
ぽん「嫌よ嫌よも好きのうち、だよ!」
だといいんですけど、納得はできません。
ぽん「それよりご飯まだ?」
ぴょん「おまたせ」こと
ぽん「やったー!ハンバーグだ!」きらきら!
ぴょん「ミントソースを添えて」こと
ぽん「いいです」のんのん
ぴょん「…………」
ぽん「スワンボートの中でみんなとご飯。やっぱりいいね、ね」
もこ「うん」くたー
ぴょん「もこちも酷い目にあったみたいだな」
もこ「ん」
ぽん「もこちゃんやっぱり泣いてたよ」
もこ「いちいち言わんで!」
ぽん「ごめんちゃい」ぺろ
ぴょん「さあさあ、いただきますしよう」
ぽん「うん」もむもむ
ぴょん「ぽん太……」髪ぴーん!
ぽん「ミントソースぷちうまだね」ぐー
ぴょん「だろう?」髪ぴこ
もこ「いただきます」あむ
ぴょん「もこちはどうだ?」
もこ「んーぷち微妙」
ぴょん「…………」髪へなー
ぽん「ハンバーグがミントソースに乗って、ぴょんちゃんのお口へれりごー」はい
ぴょん「おいちい!」髪ぴこぴこ!
もこ「……へっ」
ぴょん「はずかしい!」やんやん!
ぽん「どんまい。次はケチャップソースにしようね」




