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哲学の国

ぴょん「今夜は、いよいよバスケの世界大会のスタートだ」セタップ


ぽん「お姉ちゃん。大丈夫かな」


もこ「悪の国やっち、ズルばっかしそう」


ぴょん「悪の国にも、いい人はたくさんいる!!」


ぽん「大きな声。あーびっくり」どきどき


ぴょん「ごめん」


もこ「ううん。今のはおちが悪い、ごめんね」


ぴょん「いいよ」


もこ「どこでも、いい人はいる。隣にいるのに気づかんなんて」


ぽん「いい人でしょう!」えへん!


もこ「おまたんやない」ないない


これは必然!それは運命!されど宿命!


もこ「到着」


ぴょん「ここが哲学の国」


ぽん「いい匂いがする」くんくん


こんがり焼きたてパンの匂いがほんのり漂い気分ほかほか。


もこ「よく見たら、小さい家ばっかり」


本の重さで床が抜けて危険だから、ほとんどが一階建てなのです。


もこ「それどんだけよ」


代わりに、しっかり整った地下室がありますよ。


もこ「へえ」


ぽん「ぴょんちゃん。こんなところに来てどうするの?」


ぴょん「気持ち、心について考える」


ぽん「ふーん」


ぴょん「困っている人や悩んでいる人を助けたいなら、君にとってもいい体験になると思うぞ」


ぽん「そう」


もこ「興味なさそ」じとー


ぽん「あるよ」


もこ「ほーん」


ぽん「ぷちね」


もこ「やろね」


ロリータ「今は朝と昼の間、とすれば、おはにちはかしら」


ぽん「夜の前だから、おはにちんは、じゃない」


ロリータ「こんばんは、の前に二つの挨拶を順序よく置いたと、まあなんと哲学的な考えでしょう」


ぽん「でも僕はやっぱり、がおっしゅ!」がおー!


ロリータ「それぷち可愛いかも」


ぽん「じゃあ、やってみたら」


ロリータ「恥ずかしいわ」てれ


ぽん「どうして?恥ずかしくないよ」


ロリータ「そうね。私は子供だし挨拶するだけだものね。それでも、人前でオリジナルの挨拶を披露するのはどうかしら」


ぽん「今さらかな」


ロリータ「あなたさんにとってはそうでしょう。でも私にとっては初めてなの。そうよ、初めてだからこそ恥ずかしいことかどうかなんてわからないわ」


ぽん「せーの」


ロリータ「が……がお……」もにょもにょ


ぽん「挨拶は元気に!」


ロリータ「がおっしゅ!」がおー!


ぽん「よくできました」ぱちぱち


ロリータ「やん恥ずかしい、見られていないかしら」きょろきょろ


ぽん「誰も気にしてないよ」


ロリータ「どうしてそう言えるの?あなたさんはそこにいる人達じゃない。みんなひとりひとり個人なの。誰が何を思っているかなんてわかるわけがないわ」


ぽん「そりゃそうでしょう」


ロリータ「ではどうして。あなたさんは誰も気にしてないと言い切れたのかしら」


ぽん「なんとなくかな」


ロリータ「なんとなく……。そうね、この世の全てに確かなことなんてほとんどない。曖昧なことの方がたくさんだもの」


もこ「夕方には帰るから」すたすた


ぴょん「君、オレ達とカフェでおしゃべりしないか」ぐい


もこ「離して」


ロリータ「それが恋心のあるナンパだとしても、ぷちいいよ」


ぴょん「じゃあ、さっそく」


もこ「いつもいつもうざっちや。離して」 


ぴょん「一緒に過ごす時間は多い方がいい。一生は長いようで短い。あと何回君と思い出を重ねられるか。それを考えると不安で、恐くて、切なくて。だから……!」


もこ「はいはい」じとー


ぽん「もし、明日がこなかったらどうするの?その時に後悔しても遅いんだよ」


ロリータ「この方々のおっしゃる通り。ねえ、幸せはどこにあると思う?」


もこ「あの辺」


ロリータ「どこにあると思う?」


ぽん「今でしょ」


ロリータ「やっぱり私たち気が合うみたいね。そう、幸せは今にあるの。過去だって未来だって現在だって、幸せと感じるその瞬間は今なのよ」


もこ「ですよねえ」


ロリータ「それを少しでもたくさん積み上げられたら、それはどんなに素敵なことでしょう」


ぽん「きっと、あそこに落ちてるダイヤの指輪より価値があって」


ぴょん「あそこに落ちてるプラチナのネックレスより綺麗だ」


もこ「わからないけどわかりました。ついて行くっち、もう構わんで」


ぽん「じゃあ置いていこう」すたすた


もこ「かまっち!かまっち!」おててぱたぱた


なのりちゃんの奏でるピアノジャズが心地よき老舗カフェ。

ドリームよりもクリームくらえ。


メイド「ご注文はお決まりですか」


ロリータ「私は何を求めるのかしら」


ぽん「僕は、ワッフルとパンケーキとミルクセーキください」


ぴょん「ミントスカッシュで」


もこ「んーと、えとえと、えーとね」


ぽん「迷うね」


もこ「決まりました!村苺のパフェ!」


ロリータ「私が求めるのは解?愛?パイ?それとも」


メイド「鯛の塩釜焼きです」


ロリータ「そんな……」


ぽん「いっちゃった」


ぴょん「魚は苦手か」


ロリータ「そうじゃないの。私の限りある人生の選択肢、その一つを選ばれてしまったことが、ぷちショックなの」


ぴょん「誰かが選んでくれた選択肢が、正しい解を導くことがあるか」


ロリータ「それはジェレヌクの哲学ね!あなたさんもジェレヌクに関する本を読んだのかしら」


ぴょん「読んだよ。四回も」


ロリータ「続きはこうよね。二つと決まった解より唯一の答を求めよ」


ぴょん「そう」


ロリータ「それは簡単に導き出せるものじゃないわ。もしかしたら一生をかけるかもしれない。それでも、私は鯛の塩釜焼きと向き合うことを決めたわ」


ぴょん「その選択が正しいか間違いかではなく。君にとって良い答であることを期待するよ」


ロリータ「ありがとう。それじゃあ答が運ばれてくるまでの間、ジェレヌクについて語り合いましょう」


ぽん「くぅ……くぅ……」すやー


ロリータ「起きて。ジェレヌクについて語り合いましょう」とんととん


ぽん「誰さん……?」ねむねむ


ロリータ「ジェレヌクは、屁の理屈と言われても哲学を極めて、人々の理想を育んだ人よ。一生をかけた哲学は泉となって、人々にとって何よりの憩い、オアシスとなった。それからジェレヌクは、哲学のオアシスと呼ばれているわ」


ぽん「そうなんだ」


ロリータ「ここで有名な問いかけをひとつ。この世界は確かなものか」


ぽん「誰かの空想世界だと思います」


ロリータ「まあ、なんとメルヘンなのかしら」


ぽん「もしかしたら、僕の夢見る空想世界かも知れない」きりっ


ロリータ「それをあなたさん自身も、どこかの誰かさんも否定することはできない。そして、証明することもできない。だからこそ、世界は確かなものか。その問いかけに終わりはないのよ」


ぽん「じゃあ、なんで聞いたの」


ロリータ「これは人の心がどれだけ哲学的なものかを知るための問いかけよ。あなさんは、立派な哲学心をもっているとみたわ」


ぽん「そう」


ぴょん「心といえば。それがどこにあるかという問いかけもある」


ロリータ「そうそう。私もその問いかけ好きよ。あなたさんは、どこにあると思う?」


もこ「そう思うところにあるんやない」


ロリータ「きゃん!」どきっ


ぴょん「ジェレヌクと同じ答えを思いつくなんて!」髪ぴこ


もこ「どーでもいい」


ぴょん「どうでもよくない、すごいことだ。そうだ。君の言う通り、心は思いそのものなんだ」


もこ「はあ?」


ロリータ「心は抽象的な物体として思われがちだけど、そうじゃない。エナジーなのよ。ねえ」


ぴょん「ああ。心は刹那的に生まれ消えゆく儚い力。しかしそれは言動力となり、運命を築く」


もこ「ほーん」


ぽん「あ!空想とか妄想がそうだね!」


ぴょん「なんだって!」髪しゃき!


メイド「うっせい奴ら。お望みなら冥土に案内しましょうか」


ぽん「パンケーキまだ?」


メイド「いま焦がしてますから楽しみにしててください」


ぽん「ひどー」


メイド「ミルクセーキにワッフルにミントスカッシュにパフェに鯛のお造りお待ち」ことと


ロリータ「これが鯛の塩釜焼き……!」


ぽん「刺身だよ」


ロリータ「塩釜焼きが刺身に。これは哲学的だわ」


ぽん「間違えただけだと思います」


ぴょん「それはどうだろう」


ぽん「ミルクセーキうまちぃ!」にぱー


ぴょん「塩釜で焼いた中身が生だった。刺身の方が美味しいから勧めた。そういった理由も考えられる」


ロリータ「私はこう思うわ。もしかすると火が使えないんじゃないかしら、てね」


ぴょん「そうか!火が使えなければ焼けない!」


ロリータ「ええ。もしそうだとしたら、いえ、きっとそうでしょう。それでも私は、事実の確認はしないし改めて注文もしないわ」


ぴょん「どうして?」


ロリータ「心で温めた思いやりまで冷えてしまうからよ」


ぴょん「なるほどな」


ぽん「焼きたてワッフルうま」さくさく


もこ「毎朝のように食べてるやよ」


ぽん「それでも美味しいものは美味しいの」


ぴょん「そうだ。大事なのは食べた回数でも期間でもない。この一瞬だ」


ロリータ「ねえ、幸せはどこにあると思う?」


もこ「それ、さっき聞きましたけど」


ロリータ「じゃあ、わかるわね。どうして焼きたてワッフルがやっぱり美味しいのか」


もこ「この瞬間が幸せやっち」


ぴょん「わかってきたじゃないか」かたぽん


ロリータ「さすが、ジェレヌクの素質を持つ女の子ね」


もこ「パフェおいし」ぺろ


ロリータ「深いお皿のパフェって上から順に食べるけれど、浅いお皿のサンデーは好きなところを食べる。ねえ。これって、人は縛られて生きている証明にならないかしら」


ぴょん「なる。時間という概念などではなく、食べ方、という確かなものだからな」


ロリータ「やっぱり!私、ぷちすごい哲学を見つけちゃった!」うきうき!


ぽん「あ!みてみて!」


ぴょん「混ぜた!?なんてお行儀悪いことを!」


もこ「だって、こうしたら美味しいもん」


ロリータ「わかるわ。カスタードも苺ジャムもスポンジの欠片も苺クリームもチョコチップも苺も、より均等に口に運ばれることになるから。でもそれじゃあ、同じ味だけを味わうことになるよ」


ぽん「ああ!プリンを崩してない!」


ぴょん「まさか上手によけて慎重に混ぜた。それほどまでにプリンが苦手だったのか!」


もこ「好きやっち、ちょいちょい食べんの」


ロリータ「なるほど。そうすることで味の飽きを減らして、しかも、定期的に満足することができるわけね」


ぽん「おりこうさんてわけね」


もこ「そやね」あむ


ぴょん「はっ!食べ方が人それぞれに自由なら生き方だって!」


ロリータ「はっ!自由……!」


ぽん「じゃあ、人は何に縛られて生きているの?」


メイド「哲学です。はいお待ち」こと


ロリータ「今……なんて?」おそるおそる


メイド「この国の人間は哲学にめちゃくそ縛られてうぜえつってんです」


ぴょん「真理だ……」


ロリータ「ええ。スゥともプピィとも屁の理屈が言えないわ」


ぽん「しおうま?なにこれ」


メイド「塩釜焼きキャラメルパンケーキです。では、ごゆっくりせずにとっとと食い失せてください」ぺこ


ぽん「口悪いなあ」


ロリータ「幸せは一瞬だったわ。好きな哲学に縛られていたなんて……」


ぴょん「はふぅ……」髪へなー


もこ「本当の幸せはこの一口にこそある」


ロリータ「…………」


ぴょん「…………」


もこ「あーむ!んープリンおいち!」

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