第30話 滝壺の先輩
旧友、来る┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(シヴァと詩音の夢の中)
目が覚めるといつもの縁側で仰向けに眠っていた。
「詩音、来たよ」
シヴァは起き上がると同時に詩音に夢の中にやってきたことを伝える。
しかし、詩音は縁側にはいなかった。
辺りを見渡しても詩音の姿はどこにもなかった。
「えっ...、詩音...?」
シヴァはゆっくり立ち上がると縁側から家の中へと入っていった。
シヴァは真っ先に書斎に向かう。
書斎に辿り着くと、詩音は熱心に本を読んでいた。
「詩音、来たさ」
シヴァは本を読む詩音に話しかける。
「シヴァ、気がついていたか?」
詩音は本を読みながらシヴァに尋ねる。
シヴァは何のことか理解できなかった。
「詩音、何の本を読んでいるんだい?」
シヴァは詩音の元へと近寄っていく。
詩音は読んでいた"国境なきサーカス団"の本をシヴァに見せる。
「シヴァが黒聖国で行ってた"ロット劇団"。この本に書いてあるんだ」
詩音は"国境なきサーカス団"の本を開くと、あるページを指さす。
「ほら、ロット劇団!書いてあるだろ?」
シヴァは詩音が指さしたページをじっと見つめる。
「本当に書いてあるさ...」
詩音は本を閉じるとシヴァに話した。
「分からないんだけどさ。この本、何だか大事な気がするよね」
詩音は"国境なきサーカス団"の本を本棚に戻すと、シヴァに話した。
「この本に挟んであった写真、シヴァとソフィアによく似た人って結局誰だったの?」
シヴァは詩音に首を横に振る。
「分からないのさ。よく似た人だったけど...」
詩音は何かを思い出したようにシヴァの方を見る。
「滝壺でシヴァ言ってなかった?本当の両親は別にいるって」
シヴァは詩音の話に頷く。
「そうさ。僕には本当の両親がいる。顔も見たこと無いんだけどね...」
詩音は棚に戻した本をもう一度見つめる。
「もしかしたらシヴァの父親の写真だったりして?」
シヴァは笑いながら詩音に話す。
「そうだと驚くさ。サーカス団の名もなきピエロが父なら...」
詩音は笑みを浮かべてシヴァのことを見ていた。
「何だかシヴァとあの金髪の騎士嬢を見てると、"国境なきサーカス団"の名もなきピエロと売れない女優に見えてくる」
シヴァは詩音に首を傾げる。
「僕とソフィアが...かい...?」
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(白聖国 首都クロワイト ホワイト駅)
「シヴァ、シヴァ、起きてください?」
ソフィアの声でシヴァは目が覚める。
「あれ...?ここは...?」
シヴァは起き上がると、ここが寝台車のベッドの上であることをようやく思い出す。
「ホワイト駅に着きました。降りましょう」
ソフィアは荷物をまとめて下車できる状態でシヴァの前に立っていた。
「そうか、寝てたのか...。分かった、降りよう」
シヴァはベッドから立ち上がると荷物をまとめてソフィアと共に寝台列車から降りることにした。
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改札口を抜ける2人。
シヴァは重たい荷物を持ちながらソフィアに話しかける。
「随分と寝てたみたいさ...。ごめんよ、折角の寝台列車だったのに」
ソフィアは笑顔でシヴァのことを見る。
「いえ、私も先程起きましたから。それより、ホワイト駅にカリティアが迎えに来てくれると言ってました。急ぎましょう!」
ソフィアは帰ってきたのが嬉しかったのか、いつもより跳ねるように走って駅の外へと向かった。
シヴァはそんなソフィアを見つめながら後を追いかけた。
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駅の外にやってきた2人を待っていたのは、まさかの人物であった。
シヴァは待っていた人物を見て思わず口に名前を出す。
「ユグ姉!?」
なんと2人を待っていたのは、緋色のカーディガンを羽織った狩人ギルド"DW"のマスターである"ユグレッド"だったのだ。
ユグレッドは真っ赤な車を親指でさす。
「さあ、乗りな。荷物はトランクに詰めていいから」
シヴァとソフィアは一瞬だけ間を置いてからユグレッドの赤い車に近づいて行った。
トランクに荷物を積み終えたシヴァとソフィアは揃って4人乗りの車の後部座席に座る。
「よろしくお願いします」
ソフィアは丁寧にユグレッドに挨拶する。
「はいよ、任せて!」
意気揚々と答えるユグレッドはまさかの助手席に座る。
「えっ!?ユグ姉、助手席なのかい?」
シヴァは思わずユグレッドに尋ねる。
すると運転席に柿色の髪の華人の男が乗り込んでくる。(※華人...華の大陸の主な人種)
「よっしゃあ!シヴァ!それにシヴァの彼女!準備はいいか!?」
乗り込んできた柿色髪の男はかなりハイテンションでシヴァとソフィアに話しかけてくる。
ソフィアは柿色髪の男に戸惑いを隠せなかった。
シヴァは柿色髪の男を見ると思わず声をあげる。
「ええーー!?"憂炎"!?どうしてここにいるのさ!?」
ソフィアはシヴァに尋ねる。
「シヴァ、この人は誰なのですか?」
シヴァはソフィアに話す。
「天華国の第一王子さ!樹化異の討伐の時に協力してくれた人さ!でもどうしてここに!?」
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※朱憂炎。
天華国の朱家の長男である。
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憂炎はシヴァとソフィアの方に身を乗り出しながら話す。
「どうしてここにいるかは簡単なことよ。俺とユグは昔からの知り合いだから久しぶりに会いに来たって訳よ」
ソフィアは手を挙げて憂炎に質問する。
「あの、2人はどこで知り合われたですか?」
憂炎はユグレッドと顔を見合わせてから答える。
「どこって"滝壺の寺院"だけど?」
シヴァは目を点にする。
「えっ...!?ユグ姉って滝壺にいたことあるの!?」
憂炎はシヴァに話す。
「あれ?俺ら言わなかったか?"翡翠"も"騎臣"もユグを知ってるぜ!」
ソフィアは1人だけ話について行けなかった。
「滝壺っていったいどんなところなのでしょうか...?」
ユグレッドは憂炎の背中を叩く。
「おい、無駄口言う前に車出せ!さあ、シヴァ!帰ったら飲むぞー!」
「よっしゃー!飲むぞー!」
憂炎は誰よりも酒を楽しみにしていた。
真っ赤な車が北に向かって進んでいく。
ユグレッドの同期、憂炎とは何者なのか...?
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(後日談)
その後、ノースタウンについたシヴァとユグレッド、憂炎は夜から朝まで酒を飲みながら語り明かした。
話題は多岐に渡り、"樹化異の事件"のことや"理想の結婚"まで...。
中でも盛り上がったのが、"滝壺の寺院"の話だった。
ユグレッドもシヴァも同期が8人いるが、ユグレッドは男女がそれぞれ4人ずつなのに対して、シヴァは男女が7人と1人だ。
シヴァが中でも印象的な会話がある。
シヴァはユグレッドに尋ねた。
「滝壺の仲間の中で、1番凄かったのは誰だい?」
ユグレッドはシヴァの問いかけを聞くと、笑顔が急に消える。
「聞いて驚くな。私らの中で1番強かったのは...。
"ソロモン・ナイトメア"だ」
衝撃の人物、ユグレッドと同期!?┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




