命乞い?もう遅黙れ
のんびり更新人知れず…
暗躍なんて言うとカッコイイけど、暗い所で一人躍ってると思うと何じゃそりゃって思うわorz。
この物語には三つの人種が登場します。
絹色人種「シルキッシュ」、緑色人種「ヴィリジアン」、地色人種「サルファラス」。
それぞれ白人/黒人/黄色人をイメージしてますが、この言葉を使いたくないので語感の異なる造語を当て嵌めました。何かヤじゃない?この言い方がさ、
早く次の章に行きたくて、問題片付けるまで話が長いもんだからショートカットしました。ついでに次章の登場人物もフライングで出しちゃう勢い。お陰で時間食ってしまったわー。
めっきり肌寒くなって来たこの頃、一年を通じて温度に大きな変化の無い場所もあったりした。しかし、それが理由でこの男の恰好も通年変わり無いと言う訳ではない。学園プラチナプラタナス大学側の保険医ユウキ・ジュウモンジは相変わらず黒いコートに身を包み、保健室の窓辺で外に視線を遣りながら冷めた残りの煎茶を呷る。左しか晒していない大傷の跨ぐ非日常的な目で日常の光景をただただ眺めていた。日の落ちる時分も随分早くなって来たものだ、今日もぼちぼち引き揚げるか。
今に始まった訳ではないが、ここ数ヶ月もの間この男は随分と退屈をしている。夏季休暇の間は学園に用事が無く、連日ダウジングロッドの街中にある住居兼仕事場の薬局で地元のサルファラスの客を中心に東方系の薬を処方していたくらい。それすらも殆ど助手任せで自らは新聞などを読み耽り情報と甘味の消費に明け暮れる毎日を惰性で続けている。夏が明けてからやる事が増えて生き生きするかと思えばそんな事も無く。
この男は待っている、ただ只管に仏頂面で。待たざるを得ないが故に甘んじる退屈なのだ。
ガタゴトと人の動く気配がしてから隣の準備室へ続くドアが開く、浮かない表情で白い和服姿を現したのは助手のトキミだった。着替えを終えて帰りの手荷物も既に携えている。
「お待たせしました。棚卸は何とか終わりましたので。───」
「いつになく遅かったな、」
「あぁ。今日来て下さったのはポンさんじゃなくて別の方だったんです。」
酒蔵メリーベルの薬品の卸売り販売員、ポンザ・ロウバルの事である。いわゆる置き薬感覚で配達に来てくれる馴染みの担当者、要領の知れた彼でないため時間を取ったのか、ジュウモンジの関心はその程度だった。湯呑を片付けるのが億劫だったので申し訳程度に蓋だけするが、目敏く見付けた助手は流れるようにそれを準備室へ持ち運ぶ。保険医は誤魔化すでもなく話を進めた。
「─珍しい事もあるものだな。」
「…一昨日テーブルターニングであった自動車の衝突事故はどうもポンさんらしくて。」
ドアを開け閉め一旦掃けて、一息置いてハンカチを手にしつつ再び現れる。
「──。」
「容態は、」
「全身打撲に片足骨折。お話からすると単純骨折、恐らく元々の疲労の蓄積があっての事かと。」
「ふむ…」
「当分仕事は無理でしょうね、少し心配です。」
保健室を出て戸締りして、活動中のサークルの賑わいを通り過ぎいつもの通り帰路に就く。普段なら今晩は何で一杯引っ掛けようかなどとろくでも無い事を考えるのだが、この時のジュウモンジは少し違っていた。馴染みの取引相手の凶報が心の何処かで引っ掛かっている。トキミも同じらしくいつに無く口数が少ない。
駅も通り過ぎて入り組んだ街の小路に入り込むと周りの店を見回しながら思い付いたように提案した。
「…今度テーブルターニングに行く機会があった時用に、何かお見舞いになりそうな物を買っておきましょうか。」
「そうだな。」
「日持ちする物でしたら暫く置いておいても」
トキミがそう言い掛けた瞬間、すぐ真横の建物同士の隙間から何かが二人に雪崩掛かって来た。突然の出来事で二人は成す術も無く圧倒的な勢いに飲み込まれてしまう。けたたましい衝突音と破壊音が鳴り響き、粉塵の舞い上がる狭い小路の民衆は騒然となった。
「★わっ!何だ一体どうした?!」「?路が塞がっちまったぞい×!」「何だこのガラクタの山は!こんなモンがどうしてこんな所に?」「おい、誰か下敷きになったぞ!!」「ひょっとして薬屋のジュウモンジ先生じゃないか?!助け出さにゃ!」「↑おおい皆、手を貸してくれえ!!←」
住人達が一斉に救助活動へ駆け付ける、ダウジングロッドの街小路はコミュニティが密かつ盛んであり、人々の結束力はとても固い。堆く積もった鉄屑や割れた瓶などが威勢の良い掛け声と共に鮮やかなリレー作業で次々と撤去され、下敷きとなった二人の身体が露わになるまで然程時間は掛からなかった。瓦礫からトキミを庇い覆い被さっていたジュウモンジの黒コートはボロボロで、所々に血が滲んでいる。先陣を切って助けに入ったサルファラスの筋肉質な親父がボロボロの上半身を引き起こした。
「←おい先生っ、大丈夫か?!確りしろ!」
「×……すまない、命拾いした…」
「命拾いったってあんたこんなんじゃ×───↑おおい誰かっ、この中にお医者様は居らんかあっ?!」
「医者は私だ…」
「いやそりゃそーだが、あんた自身をどうすんだよっ?」
「何、×っ~伝手がある。心配無用だ。
──皆、済まなかった。お陰で助かったよ、本当にありがとう…」
「「………、」」
「──トキミ、動けるか…」
「…×何とか。───申し訳ありませんお館様、…急にこんな★っ痛た×…」
「これは…不味い事になったやも知れん。」
嫌厭する事も無く駆け付けてくれた住民達への感謝の言葉は少な目、軽い捻挫で済んだトキミに寄り添われる格好で保険医は重たい足を無理やり動かしその場を去った。傷だらけだったが足取りは思いの外確りしているので、知れた仲である住人達は心配もそこそこに一息ついて何事も無かったかの如く自分の商売へと戻って行く。
ジュウモンジが努めて足を速めたのには理由があった。
「───」
「お館様…」
「…傍若無人と言うか姑息と言うか。少なからず不逞の輩は居るようだな、」
「──それは?」
抱いていた違和感の正体とまで行かないが匂いと言うか毛色のようなものは知れた。
自分達を危険な目に遭わせた輩がまだ近くに居るなら他の住人達まで巻き込みかねない。
血を滴らせながら凶悪な仏頂面が鼻で嗤う。
「狙いは『メリーベル』か。」
■■■ 命乞い?もう遅黙れ ■■■
見事な満月が澄み切った夜空にひっそりと光を放っている、華やかさは無くただ静かに厳かに。建国記念日の前夜に首都テーブルターニングは浮かれた人々らで賑わっていたが、夜が更けるにつれそんなお祭りムードも形を潜めて行く。ガス灯の光がみるみるぼやけて来た、未だ魔性の国と謳われる本邦で古より逢魔が時とされる当にその頃合い。
この街をまた「霧」が覆い尽くそうとしている。
視覚の及ばぬ圧倒的存在の何処から魔の手が伸びて来るか知れたものではない、老若男女を問わず人々は建物へ立て籠もり戸を固く閉ざして多かれ少なかれ恐怖に身を震わせる。壁を隔て直ぐ外では世にも恐ろしい魑魅魍魎が跋扈しているのだ。遮蔽物に付け入る隙間を抉じ開けんばかり、霧はどんどんその存在を強めて行く。
スモークにしては焚き過ぎの感が否めない、観客に見えてほしくない今ならむしろ上出来。
今この舞台に最も相応しい正にお誂え向きと言えよう。
ボロを纏った怪人役が舞台袖の物陰で自らの大根振りを情けなく思っていた。
「──結局僕は、自分一人じゃ何も出来ない半人前なんだな……」
「自分を卑下するなと言われたの、また忘れたのかしら?」
声のした背後の暗闇の奥から、揺らめく微弱な明かりが徐々に近付いて来る。
黒は拡がりやがて人と分かる形を成した、大根役者のすぐ後ろに共演の女優が迫る。
灯りを携えた喪服の女性。しかし、彼女は主演ではない。
「どうせ人は一人じゃ何も出来ない。一人前だのハーフサイズだの思い悩むのは後になさい、今はやらなければならない事があるんだから。」
「──御意。」
「まあ、やらなければならないと言うよりは、やり返したくて仕方ないと言うか…
『落とし前を付けてもらわないと気が済まない』のよ、こちらとしては。もうあんただけの話じゃなくなってるのっ。」
「──←」
被っているボロ布の暗い影で眉をひそめた怪人は喪服姿のすぐ傍へ近寄り用心深く耳打ちする。
「…いつもの話し方に戻っちゃってます×。気を付けてください、」
「~ゴチャゴチャうるさいわね、誰のせいでこんな事になってると思ってんのっ?」
「×うぐっ→…──それはそうと、万が一誰かに見聞きされた時のため用心はしなきゃです。えっと、確か……『ブレンドイメージは大事』だって、」
「それ、あんたの記憶違い?でなきゃまた変な言葉を教わった?」
今回の喪服の女性は「代役」なのだ。
「ふう。─────────
…この緊迫感、そう言えばあの時もこんな感じだったかな。丁度一年なのは因縁かもね。」
「何がです?」
「私達と、あんたが初めて出会った時の事よ。」
「…遠い昔の事のように感じます。」
「気合入れて行きなさい。──あの時とは違う、今はあんた一人だけじゃない。これは…」
人差し指で帽子のつばを突き上げた。
「『戦争』よ。」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォーーーーーンンッ、
落雷の如き凄まじい衝撃と轟音が霧の包み込む夜闇を激しく揺るがす。喪服は固唾を呑むように喉元を上下させるも口の中はカラカラで、ぺちゃっ鼻から乾いた息が漏れるだけ。意を決し建物の隙間から裏通りへ出て行くと怪人もその後に付き従う。手先のランプの火元を蝋燭から油に切り替え上へ翳してみれば、蛇腹状の金属板が無残に捲り上がり暗い口をぽっかり開けていた。ここは金属加工業者の保有する自社ビルの裏手門、漂う硝煙の匂いに喪服はベールの裏で顔をしかめる。
ポロの怪人が真正面を見据えたまま手短に発言した。
「二階から飛び降り二人、」
「★『僕よ』っ、」
「御意っ!←←」
「「!?」」
大きなゴミ袋を乱暴に放り捨てたような荒っぽい音、僕は瞬く間に霧を逆巻き飛び降りて来た二人組を背面の壁へと叩き付ける。悲鳴や苦悶と思しき声が聞こえるような気もするが戦闘不能になったのであればどうでもいい。今の怪人は力任せに殴り飛ばしただけで相手の心配など一切していない、喪服の主も同じだった。
静かだった建物全体から沸き起こる不穏な気配。真っ暗だった破孔に電燈が点り、影の濃い暖色系の光の下へ労働者風の厳ついヴィリジアン達が奥の出入り口からわらわら迎えに現れる。物騒な面構えといい携えた得物をこちらへ向ける辺り完全に臨戦態勢、異形のこちらを見止めて動揺する様子は少しも無い。ビルの大きさからして恐らく中にはまだ相当の人数が控えているだろう、それらが明確な敵意を以って襲い掛かって来た。僕は護るべき主の前に侍り普段自らの奥底へ深く眠らせている始原的な攻撃本能を呼び覚ます。
上等だ。
民間施設に対する強襲、これはメリーベル家次期当主個人による純然たる「報復」なのだ。
騒動は外回りの社員が見舞われたアクシデントに端を発する。当初はちょっとしたアンラッキー程度で受け流していたが、そんな事が相次ぎ度合いは徐々にエスカレート。確証は無いものの俄かに不審人物の関与が疑われ始めたのだ。
決定打はポンさんが遭遇した交通事故である。警察による現場での実況見分の結果、通行人の男一人が社用車に纏わり付いていた事が判明した。その際に何かしらの小細工を仕込んだと見られるが、中破した車からは痕跡を見付けられなかったと言う。何せ壊れているのだから。
そこで困った点が一つ、容疑者が「ヴィリジアン」と言う事だ。
シルキッシュ至上主義の絹色社会にとって彼ら以外の人種は遍く犯罪予備軍であり、警察はしょっ引けそうな近場の者からさっさとしょっ引き犯人に仕立てたがる。相手がヴィリジアンと分かれば犯人特定は大変な労力を強いられる事から、他人種への締め付け強化と言った代替策で手打ちにさせられがちなのだ。締め付け自体は確実に実施されるため治安の維持に少なからず繋がる事だけは確かだが、根本的な解決には当然至らない。実質犯った者勝ち逃げ切った者勝ちで、腹癒せが出来れば良いと考える下衆でもない限り被害者はほぼ泣き寝入りに近い。旧国帝政の時代より変わる事の無い歪な社会の有り様をメリーベルは今更ながら思い知る事となった。
「ちょっと、僕くーん?」
「フンっ!───→…何ですか?主さん、」
「こっちは噂のブラック・ドゥーだってのに、あいつら全然怖がる素振りが無いんだけど?」
「×そりゃそうですよ。向こうはこっちが『暗礁密林の』ブラック・ドゥーじゃない事を知ってます。奴らにとって貴女は黒い服を着たただの小娘、僕は生意気な死に損ないですから。」
「~舐められたものね、」
「少し脅してやりましょう。」
「え?」
警察がまともに取り合ってくれず放っておかれるのと大差ない状態が続く内、何者かの故意と思われる災いはとうとう学園プラチナプラタナスまで及ぶようになる。初めは教室の窓ガラスなどの器物損壊、次に教職員の身の危険、遂には級友までもが事故に巻き込まれ出したのだ。
こうなってしまっては一刻の猶予も無い。警察が宛てにならない以上は自らの手で、と意気込んだまでは良かったが何をどうすれば良いのか手合いの分からぬ一般人に分かろうはずもなし。酒蔵メリーベルは経営者を含め従業員一同頭を抱え、忍び寄る見えざる脅威に怯え怒り悲しんでいた。
しかし、解決の糸口が全く見当たらなかったのかと言えばそうでもない。
本件に関わる重大な手掛かりを隠し持つ者が固く閉ざしていた口をとうとう開いたのだ。
(【蜻蛉王ノヤドリ「波濤」】っ!!)
ボロの隙間から緑色の唐草模様をちらつかせ大きく開いた両腕を後ろから前へ五指で掻くように力強く押し出すと、周辺の大気が霧ごと粘性を帯びたかの如く彼の所作に引き寄せられ疾風怒濤となって屋内へ殺到した。少し離れていた彼の主は突風で暴れ出す総身の黒装束を「もう」などと文句を言いながら慌てて手元の灯りごと押さえ込む。ジェズは風を操る不思議な力を持っているのだ、ミーシャはもう驚かない。
一瞬で圧され一瞬で放たれる、刹那に生じる大きな波が衝撃となって有象無象を無慈悲に壁や天井へ叩き付けた。床に崩れ落ちたそれらの躯体は何処かしらが歪み最早呻くだけの肉塊と大差無い、奥の入り口であわや難を逃れた加勢が地獄絵図を目の前にして酷く狼狽える。そうだそれでいい。
「どうした←、根城に攻め入ったこの無礼者を制するのではなかったのか?お前達は身を守る術も持たぬ弱者にしか力を振るえないのか??さあ、立ち向かって来るがいい、我に戦いを挑んで来るがいい!お前達の王に自らの全てを捧げる忠心があるなら、…何もかも投げうる覚悟が本当にあるならな!!」
「「★★→!?」」
「さもなくばその場に平伏せ!自らの愚かな行いを悔やみ受ける報いに恐れ慄けっ。
我が直々に出向き振舞ってやろう。───黒き酒、存分に味わうがいい!」
電燈の映し出す何処か無遠慮な光と影、それらを霞ませる冷たい霧が激しく渦巻く。構えを解いた唐草模様が片腕で空を一薙ぎすると、荒ぶっていた大気が嘘のように静まり返った。風を従え意のまま行使する超常的その力、黒い酒を振舞われる側に戦慄と動揺が見て取れる。
風の使い手の昏い口元から発せられる咆哮のような言葉は威厳と憤怒に満ちていた。
「虹 族『緑』ガ 長、死 ナ ズ ノ『死 王』コ コ ニ 在 リ !
己 ラ『橙』ノ 者 ニ 告 グ !『燈 王』ハ 何 処 ゾ ? !」
創業百年の老舗、巷で長らく愛される酒蔵メリーベルが組織的にヴィリジアンから攻撃される理由はただ一つ。異世界のさる部族が伝える謎の掟により「死んでいなくてはならない忌み子」を計らずも匿っているからである。その当人により情報は次期当主らへ開示された。
自らは暗礁密林の一大勢力たる「虹族」緑の第四王子、ジェズワユト・ウ・ナパンティ。
彼は唯一生存を知られる橙の第二王子、ブンドド・ヰ・ナパンティに生命を狙われている。
更にはその身の証として第二王子から「呪珠」と呼ばれる宝珠を奪還しなくてはならない。
酒蔵関係者の度重なる不幸は恐らくその宿敵の手に因る挑発であり恫喝であろうと。
秘密を明かされた当家の長女、リュアラ・メリーベルは情報の濃さに大層困惑した。
既に果実の収穫と酒の仕込みを終えて同業関係者との懇親会を控える大事な時期、そこへ降って湧いた異世界のイザコザと言う濃い味の代物に彼女は取り扱いを考えあぐねる。彼女主導の下ワインの増産体勢を整えるに当たって、酒蔵は他所の果樹園や建築業者など外部との仕事付き合いが一気に増えていた。今年の懇親会は彼らとの実質的なキックオフに当たり、その活動的な実情を公の場に披露出来れば、伝統を守りつつそれだけに胡坐をかかない「新しい酒蔵メリーベル」を世間に印象付け事が出来る。
宿命に抗うリュアラの続けるスタートダッシュ、この勢いをここで止める訳に行かないのだ。
周辺に頻発するアクシデントは不吉で酒蔵のマイナスイメージへ繋がる事も避けたいのは山々。しかし得体の知れない厄介事に腰を据えて対処出来る程の余裕を彼女は持ち合わせておらず、ましてや証拠も無い一従業員のファンタジーな憶測になどぶっちゃけかまけていられない。ジェズは責任を感じ本来伏せておきたかった血生臭い内情を吐露してくれたのだろうが、そんな事を今言われてもとリュアラは表情を曇らせるばかり。
一方で積極的な姿勢を見せたのは当家の次女、ミーシャ・メリーベルだった。
「←恐れ入ったかしら?あんた達下っ端がいくら束になった所であたしの僕に敵わないのっ。分かったらとっとと観念して『責任者』を出しなさい!そうすれば───少なくともこの国で商売を続けられるくらいには勘弁してあげるわっ。」
「←……ぉ嬢様、お嬢様っ、」
「…何よ、」
「言葉使い×。ご自分の事はその…『我』口調で。もっとなんかこう、…偉そうに?と言いますか…」
「~ぁぁあもうっ面倒臭いなあ×。あんた達『裏仕事』の時はどうお喋りしてんのよっ?」
まるで酒蔵を追い詰めるように発生する不幸の数々は、社内の従業員に止まらずメリーベル家と縁のある恩師や親友へまで及んでいた。首謀者が居ると捉えればやる事が徹底している印象は有る、あの自信過剰で無駄に偉そうなガチムチ筋肉男なら仕出かしかねない。経緯はさておき、ジェズの抱える問題をある程度知り得ているミーシャは速攻で理解を示し報復の意志を強く表明する。嫌がらせの姑息さ執拗さに腸が煮え繰り返るのは当然だが、周りの人々を身内の問題に巻き込んでしまった事を何より大変申し訳なく思っていた。おのれガチムチ許すまじ。
そして怒髪天を衝く妹の怒りの矛先は姉へと向けられる。リュアラは眼を剥き大慌て。
警察に対する働き掛けや従業員への注意喚起など彼女は決して対応を怠っていた訳ではない。しかし、苦渋を滲ませるジェズの告発を聞いておきながら何処か及び腰でいるその態度がミーシャは無性に腹立たしかったのだ。ジェズの気持ちを何だと思ってる、その怒りはジェズ本人の窘めにも治まる気配を見せず、舌鋒の集中砲火にリュアラのメンタルはゴリゴリ削られて行く。
私だってジェズの気持ちを大切に思ってる、いい加減逆ギレ気味にリュアラは反論するがそこでうっかりボロを出してしまった。
ジェズの心情を蔑ろにして「裏仕事」へのヤル気を削いでしまう事だけは是が非でも阻止したい。その強い危機感を平素から抱く彼女は、告発通りの事件なら自らの手に余るといち早く判断し、裏社会の先達たるガノエミー一家へと助力を要請済みだった。それで貴方の事を真っ先に考えている大丈夫だからだって私はなどとジェズへ懸命に身振り手振りアピールし始めたのだ。彼が口の前で人差し指を立てシーシーと必死に訴える手前、妹のスナギツネのような眼差しが見詰めるその真横で。
『酒蔵メリーベルの訪問販売の秘密のサービス「黒ワイン」が裏社会でご好評を集めている。』
喪服に身を包む黒ミーシャの近くで蹲っていた男が片腕を押さえ引き攣る顔を上げた。
「~~ゃ……闇巫女を…騙る…偽者めえっ。」
「他所が勝手にそう呼んでるだけでしょ、ニセモノ扱いは心外。却って本物の人にも失礼じゃない?」
「×くっ……これしきの事で…我らが引き下がるなどと×っ…~思うなよっ、」
「あっそ、根性あるじゃない@。仕返しのやり甲斐があるってものよ。」
不意に黒ジェズが告げる。
「後方から左四人と右三人、右が先攻。」
「…へし折ってあげる、『ごめんなさいね。』」
言葉を口にしたその瞬間、灯りと霧の形作る星雲に二つの流星が過った。それらは戯れるように全天を弾け飛び、遥か天頂へ集うと地上へ降り立ち小さく静止する。描いた軌跡の先で某かのバタバタ倒れる音がして降臨者達は屹立した。黒ミーシャに根性を誉められた男も後を追って虚ろな瞳で頸を傾げバタリと倒れ込む。
ボロの隙間から覗く白き六芒星、緑が死王の忠臣ザクレア・ナスカとユーディー・ナスカだ。ジェズと同じく頭の上からボロを身に纏い、中は袖を捲ったアースカラーの作業用の古着を着込んでいる。胸元を見て性別が分かる程度の格好、ボロの頭数が増えるとまるで邪教徒の集まりに見える。
「…主よ、露払いなら我ら二人で充分だ。」「ヤドリの使い手でも居なけりゃ負けないよ、」
「そもそもあんた達は奇襲を受けて酷い目にあったんでしょ?都会の荒事にも慣れたんだろうけど相手が相手、この先狭い中から何が飛び出すか分かったもんじゃないんだから。あんた達は基本『王』の前を固めて陣形を崩さない。それと、やっつけた相手は片っ端から拘束しといて。縄はギっチギチにね、」
「「御意。→」」
「───。
←作業が終わるまでここで待機。僕くんは周りを警戒して、」
「我も縛りましょう。」
「駄目。その時間短縮は今あまり意味が無い。あいつらはずっとあんたを見てる、あんたはどっしり構えて自分が制圧する側の中心人物である事を見せ付け続けるの。いい?」
「っ御意。」
黒ワインの実態が明らかになるとミーシャは間髪入れずナスカの二人を巻き込んだ。ブラック・ドゥーと呼ばれている事に驚きを見せたが反応は至って淡白で、二人は殆ど抵抗無くミーシャの言葉を受け入れた。仕える王のジェズが唯一の身内である自分達に対し秘密を抱えていた事は大きなショックだが、自分達は宿敵である燈王からスカウトされている事実を依然としてひた隠しにしている。鞍替えする気など毛の先程も無い、しかし不忠を疑われ絆を損ねる事だけは絶対に避けたい、そんな彼女らはミーシャ・プロデュースに笑顔で従う他なかったのだ。
ジェズはジェズで黒ワインと言う秘密がバレて家臣から非難轟々を心の底から恐れるも、彼女らの大人しい様子を見て胸を撫で下ろし安堵の息をついていた。しかし、自分の口から言い出せなかった不甲斐の無さ恰好悪さは如何ともし難く、後ろめたさ一入の彼もその流れの中ミーシャの言いなりにならざるを得なかったりしている。
ミーシャ小隊が黒ワインでブラック・ドゥーをしてる最中リュアラはどうしているのかと言えば、
単身で堅苦しい黒のスーツをシックに決めて酒蔵メリーベル次期当主の最中をしていた。
「まあ、そんな接ぎ木の仕方でそんな効果が。」
「原産が痩せた土地のせいか分からんのですが、これが存外丈夫な樹でして。移植された側の葉病も快方に向かいました。僻地への遠征は散々でしたが…いやはや、良い拾い物をしましたな。」
「それは僥倖です。」
「これからの時代、私達生産者も自分達の周りばかりだけでなく、もっと外の世界へ視野を広げて行かないといけませんなぁ。」
「学びがありますわ、素敵なお考えだと思います。」
そこそこ高級なホテルの1フロアが丸々貸し切り状態。国内や近隣諸国の酒造関係者の他、上流階級の名だたる愛好家らが華やかな衣装を着飾りグラス片手で談笑に興じている。年に一度催される酒造界の「懇親会」、リュアラは家政婦長ともども父と叔父に随伴しパーティーへ臨んでいた。会場は既に宴も酣である。
業界デビューを兼ねた初陣の昨年は人目を愉しめる華として愛想良く振る舞っているだけで良かったが、今年は事業拡大の事実を公に広め新しいメリーベルを牽引する立役者として界隈の注目を集めねばならない。持ち前のコミュニケーション能力の高さが候を奏し、出席者達への話題の浸透は順調だった。彼女を離れから見守る父と叔父は、彼女が見せる経営者に相応しい大人の立ち振る舞いにほろ酔い加減で目を細める。
「───私達の時よりも、上手く立ち回ってるかもなあ。」
「ハハハ、そうだね。僕らは懇親会の序盤でヘトヘトだったなあ。あの頃は業界に慣れようとガムシャラで頑張ってただけだったし、」
「あれはあれで良かったんじゃあないか?今と比べて世の中が大らかと言うか…粗が多くて変化も早かった時代だ。酒蔵は従業員が離れて行った後だったし、何につけても形振り構っていられなかった。」
「父さん母さんも叔父さんもみんな過労で………僕らがもっと機敏に酒蔵を回せていたらと思うと…」
「過ぎてしまった事はどうしようもない。今は経営も持ち直して私達はあの子らと当分一緒に居られる。若い頃ほどの底力はもう無いが……あの子らが酒蔵を盛り上げたいと張り切るなら、それを支えてやろうじゃないか、」
「…僕らもまだまだ張り切ろう☆。」
「ハハハハハ☆。そうだな、」
客同士の会話の輪から少し外れ落ち着いた様子でいる兄弟経営者の近くへ、ハンチング帽を被ったトレンチコートがグラスを携え若者を伴い歩み寄って来た。この不粋な場違い感、ドレスコードに抵触しまいか。
「どうもこんばんは、メリーベルさん。」
「?これはどうも。ええと…──!あぁ、警部さんじゃありませんか。」「春先はご迷惑をお掛けしました。お怪我の方は…もう大丈夫そうですね、」
「えぇ、お陰様でもうピンピンしてます、どうぞお気になさらず。ご丁寧にお見舞いまでいただきまして、ありがとうございました。」
上機嫌の赤ら顔を見せているのは今春酒蔵の販売ホールで野生のイノシシに病院送りとされたバッカス・ワドー警部だった。件の連続猟奇殺人犯から痛手を大型アップデートされた彼にとって、半年も前の腰痛などノーカンである。怪我を負うのも仕事の内とは言え、全身で猪突の猛進を受け止めるのは職業柄ではないだろうが。
このパーティーの主催は酒造業の組合で、業界関係者以外の面々は招待された大口の客か著名人と言った富裕層ばかり。警部が居ると言う事はつまりそう言う事な訳か、マシューとニコラスは認識を改める。去年まで見た事無かったはずだがなあ。
「おや?後ろの青年はもしかしてウィル君じゃないかね、」
「ご無沙汰しています、メリーベルさん。」
「おお、合ってて良かった。ストーカー騒ぎの時はどうもお世話になった、ありがとう。」「スーツ、キマッてるねぇ♪。それ以前に何だか見違えたなあ、逞しくなったんじゃないかい?」
「ありがとうございます。」
黒い礼服で姿勢正しく警部に同行しているのはウィル・アム・バーモントだ。半年前と比べ明らかに体格が確りしており顔付きが精悍になっている、洗練された印象にマシューとニコラスは感心し彼に対する評価を更新した。掘り出し物を見付けたかの如くホンホンふんふんと好青年を上から下まで覗き込む。酒の席とは言え流石に失礼、これにはウィルも苦笑い。上半身を起こしたマシューは満足気な顔をしていた。
「少し見ない間に随分と鍛えられたようだ。君は警部さんにご指導いただいているのかね?」
「はい。警部は勿論、他の方にもシゴかれてまして×。」
「ハハハハハ☆、そうかそうか♪。
→いやはや、若い人材が育って行くのは見ていて頼もしいものですな、警部さん。」
「まぁ…そうですな。もっとも、我々が暇になれるような世の中だったら良いんですがね、」
「仰る事ご尤もです。」
「ご商売の方は如何です?近ごろ手広くなされているようですな、」
「いやあ、それ程でも。」
「ご謙遜を。何でもここ数ヶ月で新規顧客がいっきに増えたそうじゃないですか、」
マシューは照れ臭そうに頭の後ろを掻いた。それね、そーれ訊いちゃぅうう?オイエエエエェェ。
「☆ハハハハ、#それは娘の努力の賜物でして。恥ずかしながら、私達が何をどうこうしたものじゃあないんですよ~。」
「興味深いですなぁ、それは一体どのような?」
「何て事は無い、いわゆる訪問販売です。私達は昔から置き薬なんかも手掛けてまして、それの延長みたいなものですよ。」
「成程、培われて来たものがあったと、」
「どうでしょうなあ…何某かあったのなら嬉しい事ですが。物流における品質管理やら他所との提携やら、ここ最近の新しい試みは全て娘達のやってる事でして。私達は書類にサインこそしますが、内容については一切関知しとらんのです。」
「ほう、一切、」
ハンチング帽の下でワドー警部の片眉が僅かに上がる。
「えぇ、それこそ金回りまで娘らを信じて全て。始めは正直あまり期待していなかったのです、しかし…#存外上手く回してくれています。──親バカと思われるでしょうが×、」
「いやぁ、とんでもない。」
「苦労をするにしても、娘らと同じ頃の私達が経験したような馬鹿馬鹿しい苦労は……させたくないのですよ。時代は変わった。新しい風を呼び起こそうとしているあの子らを傍で見守り、来たるその時に引き継いで行ければと…そんな事を───ハハハ。」
「知り合いの経営者から似たような話を聞いた事があります。何処も事情は同じなのかも知れませんな、」
「どうぞ、これからもご贔屓に。」「宜しくお願いします☆。」
「こちらこそ。では、我々はこれで。」「失礼します。」
ハンチング帽を軽く持ち上げ会釈する。一緒に背中を向けた青年をマシューが呼び止めた。
「あーウィル君、」
「─←はい、」
「良かったらリュアラにも声を掛けてやってくれんかね?本人も喜ぶと思う。」
「☆ありがとうございます、それでは。→」
経営者兄弟の許を後にした二名は本職の魔法警察へと人知れずシフトする。如何にも酔客と言った風体の警部だが、顔に出易いだけで酒には滅法強く殆ど酔っていない。酒を一滴も飲んでいない教え子の血色の良い顔をジト目で睨み付け鼻息雑じりに窘めた。
「~目当ての娘の親父に良いように言われたからってニヤニヤするんじゃあない、」
「×ニヤニヤなんかしてませんよっ。」
「で、どう思う?」
「白ですね。」
「フン。──あの様子じゃ酒蔵メリーベルとしてブラック・ドゥーに関わり合いを持ってないのは間違い無い。接点はやはり…」
「リュアラ・メリーベル個人。」
「相変わらず物証は何も無し。まぁ、それはそれでいいんだ今更別に。っがーぁ、
…居るな、確実に。様子見の奴らが。」
「こんなパーティーで何をする訳でもないでしょう、」
「様子見だ、互いの。ブラック・ドゥーに関わっている連中がどんな奴らなのか奴ら自身も知りたがっている、概ねアタリは付いてるだろうがな。奴らはブラック・ドゥーを利用したいし利用されたくない、俺達は奴らの視界に入ればそれでいいんだ。」
「疑い出すと誰も彼も怪しく見える×…」
「メリーベルに近付こうとする奴らを片っ端からマークしときゃいいんだ。───そうら、また親父達に近付く奴がー居ー…─────────」
「──警部?」
絶句するワドー警部。オイオイオイオイ何てこった、そんな驚きぶりだった。視線の先にはグラス片手にメリーベル兄弟へ近付くご婦人が一人、その常軌を逸する見目麗しい姿にウィルは息を呑む。あれ程の美女ならどんな堅物や朴念仁でも一撃玉砕に違い無い、しかし他の客らはそんな彼女の姿が目に入らないのか気に留める様子もない。かく言う自分達も小一時間ほどこの場に居るが今まで全く気が付かなかった、そんな事があり得るか。来場者は目敏くチェックしていたはず、彼女の美しさが際立つ分かなり異常な気がする。
銀髪だろうか、直立姿勢で床に届きそうな程長く豊かな髪は光沢と透明感を兼ね備え、空に靡くその様はさながら秘境に滔々と流れる清水のよう。肌こそ白いがシルキッシュにはあまり見えない、例え人間でないと言われても疑問に思わない。細い眉と長い睫毛、優しげな目許は笑みを湛えているが黒々とした瞳に何か得体の知れない恐ろしさも感じる。整った鼻筋と鮮やかなワインレッドに彩られたVの字を描く唇、宝石を鏤めたかの如き煌びやかなショールに純白のパーティードレスとハイヒール。透明で、蠱惑的で、不可思議で。
ウィルは警部の取り留めのない制止を後ろに、彼女の会話を聞くため客らに紛れて接近を試みる。
透き通る彼女が発する声は見た目より幼く、顎下をくすぐられるような奇妙な気分にさせられた。
「ごきげんいかが?──お初にお目に掛かります、酒蔵メリーベルご当主のお二方。」
「どうもこんばんは。」「お世話になっております。」
「私、テーブルターニングで占いなどをしている【ウイドナ】と申します。毎晩メリーベルのワインには愉しませてもらっています。」
「#これはこれは、ご愛顧いただき誠にありがとうございます。」
「いつもの美味しさがいつも愉しめる、万人が安心して美味しくいただけるものを世に送り届け幾年月……流石は百年続く老舗。私、決して美食家などではありませんが、メリーベルのワインはまろやかな味わいの中に積み重ねて来た研鑽が感じられるようでとても気に入っております。」
「大変、畏れ入ります。」
「───…ふぅ#。これは一昨年の葡萄でしょうか、今年の出来も上々ですね。そう言えば、今年からご息女の意向を積極的に取り入れワイン造りに新しい試みを活かしていると小耳に挟みました。後継者の育成にも余念が無いのですね、愛好者の一人としてとても心強いです。」
「☆いやあ、はっはっは#。恐縮です。」
「それもまだ学生のご身分なのだとか、お若いのに腕利きでいらっしゃる。時期的にはもう進路を決められている事と思いますが、このまま酒蔵を継がれるのですか?」
「本人は大学へ進みたいようですな。あの通り家業には積極的なので、進学についてとやかく言うつもりもありません。好きにやらせてやろうと、そう思っております。」
「そうでしたか。時に…──『留学』などはお考えにならないのでしょうか?」
「?ほぉ。」
1ファンを名乗る占い師の当たり障りの無い話の中に現れた何気無い単語、人垣を挟み5m程間合いを取りつつ耳を傾けていたウィルは焦りを覚える。オイオイオイオイ何てこった。
(★×聞き違いかっ?あの女性は「留学」と言ったのか??何て事を言い出すんだっ冗談じゃないぞ!!リュアラさんとは只でさえ逢える機会が少ないのに、~外国なんて行かれたら僕たちの…僕達の育んで来た愛がっ×!~~)
身体は春の頃より鍛えられているのだろうが、恋愛の観念と言うか思考の気持ち悪さの矯正には至らなかったらしい。完全に聞き耳を立てていますと言うコメディーのワンシーンのような姿勢になるが、しかしイケメンは何をやってもイケメンである。マシューは彼女の提言に怪訝な顔をした。
「特にそう言った意向は聞いておりませんが…何か?」
「あぁ、変な事を言ってごめんなさい。これは──占い師の性のようなものでして、ご息女からそのような気運が感じられたので、つい。」
「はぁ。まぁ。本人が望むのなら吝かではありませんが…」
「これは人の生涯の中でそう何度も訪れない絶好の好機、良い気運の高まり☆。…今この時期の貴重な体験は必ずやご息女の見聞を広め、お金では手に入れる事の出来ない一生物の財産となりましょう。」
「→ハハハ×。あー……気運?」
「うふふふ☆。えぇ♪、気運。」
「まぁ、そうですな。…本人の意志次第と言う事で。ハハハあはー…どうもご紹介ありがとうございます。まあその、×何と申しますか、……では私達はこの辺で…→」
見た目こそ綺麗だが言葉の端々が何処となく胡散臭い。人並外れて姿が綺麗なだけに、綺麗ではない何かを見えなくさせていると感じる。阿漕な取引相手とも渡り合って来た長年の経験からそう気取ったマシューとニコラスは、示し合わせたかのように占い師との会話を切り上げた。
当主らが愛想笑いで彼女の横を通り過ぎたその背後、透き通る髪を揺らめかせ彼女はにこやかに申し添えた。
「私の占いは─────────←←←←← 中 ル ノ デ ス ヨ ?」
まるで耳の直ぐ傍で囁かれたような感覚にド肝を抜かれ、兄弟は駆けっこポーズで拳を振り上げ二人揃って跳ね上がる。大いに狼狽え慌てて振り向くが、美しい長い髪の占い師の姿はもうそこに無かった。影も形も残り香すら無ければ、それこそ今までそこに居たと言う事実すらも怪しく。二人は瞼を瞬く。
「★───←?→?!───@??」
「××──────────…兄さん、」
「…落ち着けニコラス、お前は少し飲み過ぎだ。」
「そう見えるかい?だとしたらそれは兄さんが飲み過ぎている証拠さ、」
「「─────────」」
「うむ……少し酔い醒ましにエシャレットのピクルスでも齧りに行くか×、」
「妙案だね、是非そうしよう↓。きっと今の僕らに一番必要な物じゃないかな…」
ウィルも自分の見たものが信じられなかった、目を見張ったままその場に硬直する。行き交う人の陰に視線が遮られたかと思えば、次の瞬間彼女は忽然と姿を消したのだ。人ごみに紛れ行方を眩ませたなどと言う小賢しい手品ではない人外にも等しい所業、正に「魔法」である。背筋に冷たいものを感じる。
(─────視てる事しか…出来なかった。いや、視る事すら××………何だ……何なんだあれはっ~~───ブラック・ドゥーの大爪を見た時だって、こんな気分にはさせられなかった×!僕は幻でも見ていたのか?!──────
…★!そうだ警部、さっきの素振りは…何か知ってるはず!!←)
「←警部っ、」
「─────────~、」
ワドーの許へ戻ると当人はバツの悪そうな顔をしながらショットでブランデーを呷っていた。ウィルを一瞥すると酒精臭い溜め息をはく。
「───気が済んだか?いいかウィル……君は何も見なかった、聞いた事もサッパリ忘れろ、あそこには『何も無かった』んだ。分かったな、」
「??何ですか唐突に、一体どう言う事なんです?」
「おいおい知る事になる、今じゃない。──いいから仕事に戻るぞ、←」
「×←待って下さい!さっきの女性、警部はご存知なんですよね??せめて理由くらい教えて下さい!おいおい知るなら今知っても同じでしょうっ、」
説明の手間に悪手を取った以前の出来事を思い出しワドーは片手でバチンと渋面を覆う。掌を左右し額から撫で下ろすとその手を傍のテーブルへ付き足を組んだ。
「そーだな、さっきの占い師は言ってみりゃあ…『教会の協力者』だ───×。←間違っても報告書になんか記録するんじゃあないぞ?他言無用だ、」
「教会の?他言すると…何かあるんですか?」
「あ×?───@あー…ぁああ巡り巡って~ぇ、俺達がぁ、──とんだ目に会う。」
「はぁ、」
(~~避けねばならん………ここは何としても避けねばならんのだっ。謎女を追い掛けたがるウィルの悪趣味に付き合わされたら堪らん事になるぞ~っ×。ブラック・ドゥーだけでも面倒なのに、よりによってあの「疫病神」の尻なんか絶っっっ対に追わせんからなあああぁぁ~)
「私のお尻がお好き?#」
「「★★おうわあああああああああああああああーーーーーっ!?@×〒▼◇」」
疫病神の笑顔がすぐ真横にあった。ギャグではないリアル神出鬼没に警察コンビは泡を食う。
「☆ご無沙汰していましたワドー警部、お仕事に精が出ますね、」
「~×あっぐ××………→あーいや何、貴女もーお元気そうで、↓どうもこうも……」
「こんな場所でお会い出来るとは夢にも思いませんでした、ええ本当にええ。←こちらの青年が貴方の教え子ですか?」
「×えっ。ぁ…はぁ、まぁ。」「初めまして……ウィル・アム・バーモントです。」
「まあ。貴方があのバーモント卿の、」
「?祖父をご存知なのですか、」
「×あぁごめんなさい、貴族制なんてもう無いのに私ったら。─お父様もお元気ですか?」
「父ですか。父は住まいが別ですし仕事場でも会う事は先ずないので、最近どうしているかは。」
ウィルの父も国家警察の一員である。その父に憧れてウィルは今の道に進んだ訳だが。
「お知り合いでしたか、」
「面識はありません☆。」
(何故訊いた…)
「占い師の性のようなものでして、訊かずにはいられないのです☆。時に…──」
「はぁ…」
「─────────『闇巫女』は、どうしていますか?─────────」
黒ミーシャなら健闘している。今の彼女はさながら優秀な指揮官だった。
ラスボス直前の最後の砦である家臣、ビアリス・レズリ・メズリとヒュゲルギア・ケンプフェルトをナスカの二人が優勢のまま追い詰めている。奴らの退く先に騒動の首魁である怨敵・燈王が居るはず。
「←←鞭も飛び道具も使えないなら」「←←それ程怖くないね!!」
「~↑卑怯者共!!正々堂々勝負しろ!!×ヒュギィ下がれっ!→→」「★×!→→」
「よく言うわ!!散々嫌がらせしてくれた分際で、卑怯もラッキョウもあるもんか!これは戦争よ?!戦争!!→野郎共のおじさま方!お願い!!」
「「↑↑撃つぞコラーーーーーーーーっ!!」」
「★↑↑もう撃ってるだろうがっ卍!!」
白鉄の斥候ビアリスが喚きながら逃げているのは、ビルのシャッター爆破にも貢献してくれたガノエミー一家のカチコミ部隊の皆さんのお陰である。ミーシャの提案でリュアラが手配した強力な助っ人達だが、彼らはヤクザとしては穏健派であり抗争の経験者は遍く高齢のためメンバーに含まれていない。威勢良くライフルを取り回せど、建屋の中は跳弾が怖いのでへっぴり腰の威嚇射撃しか出来ていなかったりする。先陣を行くザクレアとユーディーにフレンドリーファイアしない事を祈るばかり。
主を護りつつ射手達の後をついて行くジェズは複雑な気分を味わう、口元がHの字になっている。
「………」
「──何よ、どうしたの、」
「いやぁ、味方が力を貸してくれるのはとってもありがたいんですけど…。銃持ちのシルキッシュが銃を持たないヴィリジアンを一方的に襲ってくコレって、なんか……暗礁密林での奴隷狩りを見てるようで×。」
「あー…───っ……今は余計な事を考えない、向こうの眼鏡はシルキッシュじゃない。そんな事よりあんたはこれから決着に挑むんでしょ、」
「×ううっ、そうでした↓。」
「情けない顔すんじゃないのっ。大丈夫よ、あんな筋肉ムキムキだって銃で囲まれれば一たまりもないんだから。」
「★銃で撃つんですか×?」
「あんたがやられそうなら最悪ね。何度も言ってるけど今日のこれはあんた一人だけの問題じゃないの、こっちは関係無い人達にまで怪我人が出てるんだからね?それも一人や二人じゃないんだからっ。私達に手を出したら痛い目を見るって、あいつらに思い知らせなきゃ。」
「──…」
「@大丈夫だって、あの筋肉男絶対に死んだりしないから。急所を外れれば人間なんてそう簡単に死なないものよ。」
急所がどうのと分かった風な話をしているが、ミーシャの見識は小説などから得た似非に過ぎない。
ヒュギィは二丁のブーメランを折り畳んだまま打突に、ビアリスは鞭状の金属製の帯を丸めて刀のようにしてナスカ二人と攻防を繰り広げるが、人並み外れた煌闇精のヤドリの俊敏な動きとそれを援護するガノエミー一家の銃弾の前にじりじりと後退の一途を辿る。武装集団の襲撃など想定していなかった二人は部屋着の軽装で、攻撃を受けた際のダメージは自分達の考えている以上に大きかった。
「★っ×~~───←!!…←!……★×?→★っ××→」
「己えっ×!→駄目だヒュギィ!このままじゃどの道ヤられる!」
単と双を変幻自在の一心同体ナスカの攻撃を辛くもいなし、騒々しく執務室の前を通り過ぎる。銃で武装した多勢に無勢では部屋へ逃げ込んだ所で有利な点など何も無い。貴金属を取り扱う場所であり、売り物や貴重な機材を傷付ける訳には行かないのだ。狭い通路で攻めに転じたとてナスカ後方からの援護射撃を前にしては下がらざるを得ない。
3階部分は従業員らの生活空間、駆け上った4階は丸々社長のプライベートフロアで住居を兼ねた社長室と大浴場がある。ここを護れねばジュエリー・オレンジロードの取締役社長でもある燈王ブンドドの身を危険に晒してしまう。しかし彼の超常的で強大な力に便乗すれば、偽ブラック・ドゥー一味を殲滅する事も不可能ではない。とうとう彼女らは最終防衛ラインの社長室にまで差し掛かった。
その瞬間、何故かビアリスは霧の工場町での大乱戦を思い出す。
連続猟奇殺人犯の模型屋は彼女とすれ違いざまこう訊いたのだ。
『君、良いのかい?ブラック・ドゥーを殺してしまってさぁ、』
(!!×~~~↓~~~↓↓、~~~~~~~~……)
「~くっ、←←」
「×?←!───!!」
「×いいっ、ヒュギィ!このまま階を上がるっ!」
「★?───!←!!」
「私は…~『お断り』だ!お前が自身の生命を賭してでも燈王を護りたいと思うなら好きにしろ、でも私はっ~~…」
「……。」
扉の前を通り過ぎひたすら上の階を目指す、しかしそれは主に危険が及ばぬよう敵勢を誘き寄せている訳ではなかった。かつて王女だったビアリスは出自である鉄血族を滅ぼした燈王に復讐心を深く抱いている、それを知るヒュギィは彼女の気持ちをただ想い運命を共にする事とした。瓶底眼鏡の裏で人知れず瞳に覚悟の炎を燃やす。
二人は主を見捨て、屋上より近隣のビルを伝いここから抜け出すつもりなのだ。
屋上の高さは5階相当で霧も届かない。他に高いビルは無いでもないが、そんな場所に人は住まないので霧に覆われた今なら人目も付かない。施錠されていない木戸を叩き壊すように開けて外へ飛び出せば辺りは満月に照らし出され視界も良好、どうにか行けそうだとビアリスは嚥下する。飛び移れそうな隣接する建物に視線を巡らせた。
背後の階下から緑の賊が迫って来る。二人は肌寒い晩秋の夜空の下に躍り出て、だだっ広い屋上の中央付近で立ち止まった。行き先はまだ定まらない、扉から出て来た追跡者達がそれを囲うように散開する。ガノエミーのライフル持ち3名の中心にザクレアとユーディー。
「ハァ、×ハァ、っ……──屋上だな、」「ハァ、ハァ、?行き止まりじゃんっ、セカンド何処よ??」
「…こんな所に燈王が居る訳ないだろう、顔を拝みたくば何処でも好きに探すがいい。」
「───」「───」
相手の手元で展開される鉄の鞭とブーメランを見てナスカは警戒心を強める。ビルの中と違いここは動きを阻害する障害物が身近に無い。援護射撃こそあれど相手は手練れのうえ手負いの獣、一体何を仕掛けて来るか。
身構える後ろに到着した我が君のためナスカは左右へ道を開ける。怪人に扮する第四王子が声を上げた。
「動くな!これ以上逃げ場は無いぞ。──セカンドは何処だ?」
「知らんな@。私達に構わず何処となり探し出して好きにしろと言っている、~ブラック・ドゥーの贋物が。お前など虹族を名乗る事すらおこがましいわっ。」
「知らないと言うならそれでもいい。」
「───、」
「今まで色々世話になった礼もまだだ、セカンドの前にお前達を叩きのめしてやる。」
「生憎暇は持て余していない、」
「その通り、これからお前達はお仕置きの時間だ。己が愚行をたっぷり悔やむがいい、」
「~~抜かせフォース…」
ジェズはビアリスに遺恨があった。一つは大切な身内をコテンパンに傷め付けられた事、もう一つは国立美術館の地下で呪珠を奪われた事である。こと後者は模型屋との死闘の末ズタボロの手も足も出ない状態で彼女から挑発を受けている。第四王子にとって屈辱的だった事は間違いないが、むしろ横取りされた事実を家臣にひた隠しビクビク生きていた自分が惨めで情けなくて仕方なかたったのだ。
因みに「叩きのめしてやる」とは決して彼女をボコボコにしてやろうと言うつもりではない。その高飛車な自尊心を伝家の宝刀スパンキングで完膚なきまで叩きのめし、恥辱に悶えさせてやろうなどと彼にしては珍しくサディスティックな報復を企てていたりした。
素は純朴そうな顔をしているクセに性癖はくすぐりフェチの兄と近いのかも知れない。
「←←っ!!──────」「★?ヒュギィ!?」
ビアリスの前へヒュギィが庇うように跳び込み、持ち前のブーメランを構えて尻叩き怪人と対峙する。言葉を話す事の出来ないヒュギィは肩越しにビアリスへ見返り背中で語る。
(!ここを任せて先に行けと言うのか?!~馬鹿なっ××、相手は鼻摘まみ者でも虹族の王に連なる血!奥義をろくに使わないフォースと直接戦った鉄血のこの私が歯牙にも掛けられなかったんだ×!専ら机働きのお前が何とか出来る相手じゃないだろうっ~、…私のために…そんなっっ………)
「×↑お前が戦う必要はない!虹族など捨ておけばいいんだ!ヒュギィ!!」
「────、」
「奇妙な投げ物を器用に使うようだが、不得手だな。戦士の身のこなしじゃない。」
「!──。」
「ヴィリジアンでもないお前が何故セカンドに従う、」
「────────────────────────」
「…ただ戦うのみと。女のためか、心意気は認めよう。──主よ、ここは我が。」
「早くして、」
「←←!!───」
先に動いたのはヒュギィだった。ブーメランを両翼に掲げ怪人のすぐ目の前にまで踏み込み敢然と立ち向かう。難無く躱す相手を追い廻し右へ左へ得物を振るうが、体躯に比べ幅広で重量もあるせいか動きは大きく傍目に次のアクションが丸分かり。そんな奴をどう悔しがらせてやろうとジェズが思案する内、僅かに避け損ね左肩が掠った。思いもよらぬ粗雑な痛み、ボロの下で血が滲む。
(!っ、──あの「くの字」、刃物みたいに鋭い×。あんな重たそうな物を素手で握ってあの男は平気なのか?まともに当たるとマズいぞ、下手に防御したら大怪我だ。…もう止めよう。)
「そこまでだ←。」
「→→…っ!←」
離れ際のスピンは直前と比べ極端に速かった。こめかみの隣を殺意の籠もった金属板が電光石火の勢いでぶっちぎりジェズは胆を冷やす。ブーメランを放つ気配を察知出来なかった、それはナスカも同じだったが二人は一目で一連の所作を見極める。
(広げて使っていたくの字を両腕ごと身体に折り畳んで軸回転を速くした…)
(更に加速して勢いを乗せながらくの字を広げて投げた、って所ね。シルキッシュのくせに、)
((煌闇精みたいな技を使う。))
(今までのヤケクソみたいな立ち回りは奇襲のための布石だな。でも)
(そんな小細工、殿下に通用なんかしないっ。)
「「★?殿下!!」」
「来るか、」
「←←~───」
相手は更に踏み込み距離を詰めて来る、またブン回しと思いきや構えが違っていた。ブーメラン内側の中央を橋渡しするように設えてあるグリップを握り締め、両腕は胸の前で組んだ体当たりスタイル。より近接して繰り出される斬撃は間合いが縮まった分だけ速度が増し、ジェズに相手を悔しがらせるような余裕は無くなって来た。仕切り直しと彼が飛び退いた所でヒュギィがニヤつく。分厚い眼鏡で目許は窺えぬが、その不敵な表情を悟ったジェズは敵の術中に嵌った事を理解する。
手持ちの武器は1つだけ。投げ付けて来たもう1つは何とか避けた、その認識が間違いだ。
「★★しまった!!卍←←←」
「!←←←」
弾丸のように跳び出し猛ダッシュ、空飛ぶ凶刃の的はジェズでなかった。復路の先は、
「←←←主よっ!!」
防衛対象が攻撃される緊急事態で自身に攻撃が及ぶ事など構っていられない、ヒュギィはこの状況が形作られるのを待っていたのだ。漸く見えた敵の無防備な背中を追い掛け射程に捉える。狙いは筋肉の薄い胸の脇、手にする刃を確実に肺腑まで。
「───!卍卍っ←←」
「皆地面に伏せてっ!!」
「「★?!」」
ブラック・ドゥーの鶴の一声、彼女は急ぎ片手で帽子を押さえその場に伏せた。ジェズもナスカもガノエミーらも声に釣られ慌てて腹這いになるとドゥーの頭上を殺意満々の風切り音が通り過ぎる。喪服姿のまさかの行動に的を逃したヒュギィは呆気に取られ、想定外の愛器の帰投を番の愛器で咄嗟に受け止め後ろへ弾けて転倒した。
意外な主の機転に僕僕は呆然としながら家臣共ども目を白黒させつつ膝を立てる。黒ミーシャも立ち上がって身の回りなどを叩く。
「何よその顔は、」
「ぁいや卍、あのっ↓、その…↓↓↓」
「…あいつは自分があんたに敵わない事を判ってた。だからあんたを相手にしないやり方であんたの嫌がりそうな事しようとするって、分かってたわ。そしたら一番弱そうなあたしを狙って来るに決まってるじゃない@、曲がって飛ぶ羽もあの病院で見たしバレバレよ。──ほら、ちゃっちゃと片付けて、」
「──────」
(ミーシャお嬢様、良かった…↓↓↓。ミーシャお嬢様だったから助かったんだ。もし、今のがリュアラお嬢様だったら………くの字は…きっと避けられない、生命に関わる大きな傷を負ってしまっていたっ××。僕は…お嬢様を…~護れなかった卍卍↓…この僕がっ~~この…僕が××!!!~~~~~)
戦力的優位を誇る彼が何故護れなかったのか。彼は霧の工場町で既に指摘を受けている。
『君はさぁ、──恐るべき「うぬぼれ」だね。』
僕はあれから成長していない、その未熟ぶりもあの殺人鬼は馬鹿にしていた。模型屋の突いた図星の重ね重ねに自分が情けなく黒ジェズは爆発する。もう容赦しない、立て直そうとしているヒュギィへ怒り任せに悪魔の如く襲い掛かった。片手で白い頸を根こそぎ引き摺り上げて強烈な腹パンを見舞い、そのまま身体の表から地面へ叩き付け両手首を外回しに後ろ側で捕まえる。腰を踏み付け両腕を捻り上げてやれば相手は声にならぬ血の混じった苦悶の息を絞り出した。それでも武器は頑なに手放さない。
例え対象が意志を持たぬ無機物だったとしても、圧倒的力で是非も無く上からぐちゃぐちゃに押し潰すようなジェズの非道い行動がミーシャはとても怖かった。普段は柔和で穏やかな彼の時折見せる恐ろしい姿、見たくないしそんな姿になって欲しくない。握り拳で胸を押さえて息を呑む。
「←我が主を害そうとした!…この手かっ~~この手がそんなふざけた真似をしたのか!!~~~
───悪 イ 手 ダ。こんなモノ、腕ごと身体から 引 キ 千 切 ッ テ ヤ ル 。↑↑」
「★×卍!!~~×卍!!~×卍卍!!×卍★×っ卍★★×卍!!!」
「←←その手を離せ!フォースっ!!!」
ヒュギィをおいて逃げ出すなど出来ないビアリスが突進して来た。放った鞭の一撃はフォースにいとも容易く片手で捕まえられる、この程度の急襲を受け止める事は死線を潜り抜けて来た死王にとって雑作も無い。そうすると分かっていたビアリスが間髪入れず手前で素早く円を数回描き下から前へ投げると、鞭を捕まえているフォースの腕に渦が巻き付き深く食い込んだ。
「!↑その腕貰ったあああああああっ卍!!←←」
握り手を外へ払い上から空を一刀両断。歪な鋭い光の筋が一瞬で宙を斬り刻み、衝撃を伴い一直線に震えて両者は硬直した。腰を落としもう片手で鞭を引き込むビアリスの手元は固くてびくともせず、切断するつもりでいたフォースの片腕は貰えそうにない。腕を覆うサラシの下に何か細工が仕込んであるのか。
「…←←」
「★?!~チイっ×!→」
(また鞭を手繰られるっ、その手は食うか!!)
前回の大乱戦では武器が奪われる事を嫌い張り合ったためそれを利用されて背後へ回り込まれた。ビアリスは握っている鞭を手放し予備を取ろうとするが、普段想定していなかった敵襲で備えなど何もしていない。そして、
(…屋上から脱出するためこの鞭はどうしても必要!失う訳にはっ~~~~
→→絶っっっ対に渡すものかーーっ!!)
引きに絶対負けまい、必死で全身全霊の力を籠めると彼女の脚は地面から離れ、次の瞬間ヒュギイの上で身体が二つ折りになった。たった一振りで鞭を引き寄せた綱引き勝者の腕の先がビアリスの腹に深々とめり込み、裏の腰を突き抜けて出た衝撃波が周囲を揺るがす。彼女の視界はスローモーションで何が起きたか分からない、中身が吹き出そうな腹部の鈍い内圧に口から飛沫を上げ目を見開く。二つ折りの隙間から拳が引き抜かれると続いてもう片方のゲンコツが頭の上に激突し、彼女は目にも止まらぬ速さで地面へ額付いた。「ごつ」と言うつまらない音がして土下座の格好で動きが止まる。
有無を言わさぬ主君の無慈悲な私刑はビアリスに因縁のあるユーディーとザクレアですら引いた。
(→×ぅーうわあああぁぁ…、激おこじゃん殿下~。)
(私達の兄さんがやられた時も相当な怒りっぷりだったが、それ以上だ。あの時は病を患ってたからな…、あんな殿下は初めてだ。正直───恐ろしい……)
((死んだな@、あの女。))
ヒュギィの縛めを解いたフォースは立ち上がり、今度はビアリスの頸を片手で掴まえ上へ掲げた。失神した彼女は立つ事が出来ず吊り上げられた状態のまま割れた額からしとどに血を滴らせる。更に強められた首への圧力で彼女は気を取り戻し、苛烈な鈍痛と息苦しさに表情を歪めた。頸を締め上げるフォースの腕を覚束ぬ両手で何とか押さえ爪を立てる。必死に抵抗するがやっぱりびくともしない、圧がまた強められた。
「★★卍ぐっっ×ぁ…~~~~~~卍卍卍!!」
(~己っ~~己おのれ己おのれえええええぇぇ!また…、××踏み躙られるのかっ。こんなにも一方的に、力尽くにっ、無理矢理に!!また虹族のいいようにされてしまうのか×……自らの気の向くままっ、~私達の身体を、一族の誇りもっ、魂の尊厳さえも!~何もかも滅茶苦茶にして奪って行く↑↑この悪魔共めえええええええっ×!!)
口惜しや恨めしや歯を食い縛りながらフォースの頭へ手を伸ばし上から横から掻き毟る。纏うボロがズタズタに引き裂かれ、銀髪の影の下から冷酷な視線でビアリスを貫く死王の顔が現れた。圧迫は更に強められ、首筋に太い血管が浮き出る。
(★卍~~~私にっ~いつまで……敗者の醜態を…晒し続けさせるつもりだっ××、何処まで私の心を穢せば気が済む×!~殺すならっ卍いっそさっさと殺せええええええええっ卍卍!!)
人を殺めてしまいそうなジェズの仕打ちにミーシャは強い忌避感を抱き彼を止めようとしている。しかし身体が言う事を聞かず発声はおろか瞼を閉じる事すら出来なかった。胸の中の空気をどんなに入れ換えても息苦しくて仕方ない。
(ゃめなさぃ……止めなさいったら。…止めて、止めて…止めて止めてやめてやめてジェズもうやめて×!それ以上駄目、それ以上はっ××…──ぁたしが言わきゃ、あたしが言わなきゃっ、あたしが!でも……~声…出ない、身体が…×動かないっ、どうして×?……ちゃんと言いなさいよあたし、あたしが確りしないでどうすんのよ!××あいつを止められるのは、あたししか!!)
「★×!~~★×!~~★×★×!~~~★×★×★×」
↑↑↑↑ガラアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!ゴロオオオオオオオオオオオッ!!
突如として網膜を灼く強烈な閃光と爆発が屋上を襲った。一体何が起きたのか、階下は霧なれど上空は満月の浮かぶリアル晴天の霹靂。焼け焦げた周辺の壁のあちこちから煙が上がり鉄柵には火花が散る。あまりの突然な出来事に一同は方々の体で体勢を立て直すが、黒ジェズだけは一人だけ全く動じず直立したままだった。手を緩めると哀れな敗者が灰色の長い髪を振り乱し足下に崩れ落ちる、掲げていた腕をゆっくり下ろして横を睨み付けた。
「やっと出て来たか────────────」
視線の先、出入口の直上でもうもうと上がる煙の中に厳つい巨影が聳え立っていた。一歩踏み出るだけで古代叙事詩の巨人が脚を下ろしたかのような威圧感。月光をギラギラと反射する鉄色のアフロ、褐色の厳つい面、おもむろに開いた分厚い唇の隙間から蒸気が吹き上がる。見開かれた暗く青い眼がこの場に居る者全てを見下ろし如何なる主張も許さない。
大仰な漆黒のマントを纏う燈王の覇者然とした姿がそこにあった。銅鑼のような声を上げる。
「はしゃぐなフォース!!雑兵を引き連れ胆を大したかっ、」
「尻尾を巻いて逃げたのかと思ったぞセカンド。自分の家臣が傷め付けられる気分はどうだ、」
「↑グハハハ!意趣返しのつもりか?其奴らは自らの生命に替えてこの俺に忠義を尽くしたのだ!
俺 は 誇 ら し い !
誇らしいぞっ、実になああ!!☆グッハハハハハハハハハハ!!」
勿論誇らしいのは家臣達にそうさせた自身のカリスマである。家臣達の忠義ではない。
「何を笑ってる、陣は破れたぞ。この騒ぎの中お前は今まで何をしていた、」
「待っていたのだっ、ただ貴様らが俺の下に姿を現すのをなあ!餌まで用意してやったと言うのに、折角誘き寄せられた所で下の者が追い返してしまった事もあったな。~いい加減待ち草臥れたのだ俺はっ、待つのは性に合わぬ。」
ジェズが勉強漬けに遭っていた頃の話である。結果、彼は多額の負債を負わされ頭痛が痛くなった。
「一人で勝手に焦れて我をいぶり出そうとした結果があれか×!虹族のイザコザに関係無い人々をよくも巻き込んでくれたな!~見えない場所から姑息な嫌がらせを…、↑これが王のやる事か!!」
「↑↑吠えるな死に損ないっ!!これは全て貴様が招いた結果だ!!掟通り貴様が素直に最初から死んでおればこんな事にはならなかったのだっ。~それをのうのう生き長らえた上、剰え緑の王として君臨しようだと?!×この 空 け が っ !!」
「~~↑ちょっとそこの筋肉男!好き勝手やりたい放題してくれちゃっていい加減にしなさいよっ!あたし達が一体あんたに何したって言うのよ?!」
「↑↑しゃしゃるな小娘っ!!貴様らが死王など擁護せねば面倒にはならなかったのだっ。哀れなヴィリジアンに憐憫を催すシルキッシュの戯れ事か?王族の能力を利用出来ると踏んだか?目玉の利きだけは誉めてやる、~卑しい脆灰風情が。唾棄にも価わぬわっ!」
「王とかどーとか暗礁密林の事情なんてどぉぉぉぉおでもいーぃのよっ。@何でそんなモノにあたし達が興味あるなんて思うの?おー馬ー鹿ーなーの??」
「──」
(★何煽ってんのお嬢おおおおおおっ×?!)(流っ石お嬢だわー、あの肝の座り方っ×。)
「ジェズはあたし達の所で働くって意志を見せた!だから雇い入れた、ただそれだけの事よ。この国で普通に暮らしたいだけなのっ、解かる?──ここは暗礁密林じゃない!王様ごっこがしたいならあんた達の田舎でやんなさい!!」
「───フンっ、子供の相手はしておれぬな。」
「お子様なのは現実の見えてないあんたの方よ、→野郎共のおじさま方!」
よく分からない展開に唖然としていたガノエミーの助っ人達が慌ててライフルの銃口を筋肉マントへ向ける。ハイもうお仕舞い、ミーシャは口にした台詞の通り野蛮な掟になど微塵も興味が無い。
「メリーベルに手を出したら痛い目見るって、──思い知りなさい。」
↑↑↑ゴラオオオオオオオオオオンンッッ!!!!
強烈な閃光と爆発がまた襲いミーシャらは再び倒れ込んだ。経験は皆無だが雷の直撃したようなこれは一体何なのか。両手を付いて上を見上げると、筋肉男が蒸気をもうもうと上げる腕をこちらへ翳していた。ミーシャはジェズに抱えられて空を飛んだ時の事を思い出す。飛び終えた後の彼の身体からも大量に蒸気が立ち上っていた。
まさかとは思うが、あの男は身体から「雷」などを発するのか。
「←ガノエミーの遣いよ!ここは手を引いてくれまいかっ、」
落雷に動じる事なく燈王が声を張り上げる。信じ難いが雷はあの男の範疇にあるようだ。
「商い上の付き合いは未だ無いが、ガノエミー一家とは是非とも『良い関係』でありたいっ。俺は一家との争いを望まぬ!
此度の騒ぎ、『俺が敗北した』。もうメリーベルには一切の手出しをせぬと約束しようっ。」
「何よ@命乞い?もう遅」
「~黙れ。貴様など相手にしておらぬわっ。
──ただそこに居る『兄弟』と一対一で勝負をさせて貰いたい!其れさえ叶えば『取引に応じる』事も吝かではないのだが。如何かなものかっ?」
話をすり替えたいだけの詭弁にも聞こえるがそうではない。ただ邪魔をするなと言っているのだ、ここに居る全ての者の生殺与奪権を握っているのはこの俺だと。
どんなカラクリかは分からねどあんな雷を目の当たりにしては、助っ人達は顔を見合わせてからゆるゆるとライフルを下ろし出す。
「!─────…契約違反よ、」
「~一家に死ねってのか、×嬢ちゃんも丸焦げだぞ?!」
「プロのヤクザ屋さんなんでしょ!それならちゃんと仕事してよっ!」
「この戦争、俺達が勝った。仕事は終いだ。───ただの兄弟喧嘩にヤクザ者が出る幕なんざ無ぇ。→」
「★×ちょっと!!」
「──────フフフフ、───☆↑グーーッハッハッハッハーッ!!孤立無援だフォース!!貴様の勝ち目は万に一つも無くなったぞっ!よもや『夜魔の爪』でこの俺を倒せるなどとは思っておるまい!?貴様の其れは所詮紛い物のよっ!」
「──────────────────────────────」
(…そうだ。セカンドに夜魔の爪は通じなかった……あの時は本調子じゃなかったけど、結局奴に「裁断」は届かないんだ××。攻撃は身体に直接触れなきゃならないが、ちょっとでも触れたらたったそれだけでこっちの身体が痺れてしまうっ。~一瞬でも触れれば最期、後は殴り潰されるまで卍卍………瞬発力ではセカンドに敵わない。
他の王のヤドリならセカンドの身体に触れず攻撃も出来るけど、それは本当に奥の手。僕が7つのヤドリを使える事は今知られちゃ不味いっ。…と言っても、ブラック・ドゥーの夜魔の爪を使ったら攻撃に使えそうなヤドリは使えなくなるんだ××。
銃の援護があれば勝てるなんて思ってたけど、よくよく考えたら例え弾が急所に当ったとしてもセカンドのあの図体じゃ簡単にヘコたれないだろうし@。風を起こしても飛びそうにないなぁ…、屋上から吹き飛ばす前に僕の方がへばっちゃうよ↓↓。そもそも最初っから僕に勝ち目は無かったって事なのか@?
~~どうすればいい×?………)
「☆★?!」
懊悩する緑の王の前に左右から忠臣が割って入った。フードを捲り素顔を露にする。
「~~~~、」「~~~~、」
「二人とも下がれ、お前達の能力じゃセカンドに敵わない。」
「××御身の危険に家臣が引き下がる訳には行かないのですっ!」「★×殿下が死んだら私達の頑張りが水の泡でしょーが×!」
「ザクレア・ナスカ!ユーディー・ナスカ!下がるが良い、これは王の戦いだ。」
「「×~~~~~~~~~」」
「それとも今ここで──────『俺への忠心』を見せてくれるかっ?」
「「★★っ×!?」」
「貴様達にならその死に損ないを亡き者とさせてやっても良いぞ!俺が手を下せばフォースは間違い無く息絶えるまで藻掻き苦しむ事になる、ならばいっそ貴様達の手で楽に死なせてやれ。せめてもの情けよ。」
「「卍!卍!卍!卍!~~~~~~~……」」
「───ザクレア…ユーディー?」
「…………」「…………」
魔が差す。二人は幽鬼のように後ろへ振り返った。
(殿下が死んだら今までのナスカの犠牲が無駄になる。)
(でも私達が生命を投げ出した所でセカンドに敵いっこない、殿下だって助からない×。)
((どの道「殿下は助からない」。))
(それなら、私達の手で…殿下を……)
(そうしたら、殿下の血は全部…私達のモノ……)
死が避けられないなら燈王の軍門に下り死王の血を最期の晩餐として与るか。極限のデッドロック状態に降って来た悪魔のような甘言、理性が徐々に失われ獣の如き本能が心を支配し始めた。腹の底から湧き上がる血を飲みたい衝動に喉が鳴り欲望は爛々と瞳に宿る。あの官能的な恭悦を心行くまで飲み干せたらどんなに快感だろう、絶頂のあまり自分達も死んでしまうかも知れない、妄想しただけで下が緩みそうになった。
でもそれは少し魔が差しただけ、自らの死を覚悟したからこそ顕れる心の戯れ。
「…情けとあらば、第四王子に『呪珠』を御返し下さい!」「一対一と仰せられましたっ、←あくまで対等の御立場でならせめて呪珠の御使用を御止め下さい!」
「~↑↑ 対 等 な ど で は な い わ あ あ あ あっっ!
そう扱われたいのであれば即刻死ぬが良い!←今直ぐ!!←この場で!!!死んでいてこその王っ、それが『死王』なのだからなあああああっ!!」
「「←←私達のこの身と引き替えに!何卒御願い致します!!」」
「☆グーッハハハハハーーッ!何を言っている?!貴様達はもう俺の物だーっ!!俺は『燈王』!!蹂躙し剥奪する!その王ぞおおおおおおっ!俺は死王を屠り力尽くで貴様達をモノにする!!モノにするのだっ!力尽くが大好きでなああああああっ!!!」
「★そんなっ!」「酷いっっ×!」
「↑↑☆☆グーーーッハッハッハッハッハーーーーッ!!」
「@へー、そーなんだーぁ。呪珠をジェズに渡すと勝てないんだー。」
その場が一瞬で凍り付く。驚異の瞬間冷凍能力、黒ミーシャ。
「自分が負けるかも知れないから渡したくないんでしょ。大きな事言っといて肝っ玉小っちゃいのね、お・お・さ・ま@。本当はジェズの呪珠なんて持ってないんじゃないの?
──無いならジェズは王様を名乗れないんでしょ?それならここでギャーギャー言ってても仕方ないじゃない@、あの筋肉男が私達にちょっかい出さないならそれでいいわ、…本当はまだ気が済まないんだけど×。明日も普通に酒蔵の仕事があるんだから、もう帰って寝るよー、」
「…死王の呪珠を出さぬのは保険だ、死王を逃がさぬためのなぁ。保管庫の鍵は───これよ。」
懐から取り出した真新しい真鍮製の鍵を見せ付けると、もったいぶってからまた懐へ収めた。
「数珠が欲しくば俺を倒してみるが良い、この燈王ををををっ!!」
両腕を前へ開きバサリとマントを広げる。霧の寒い夜だと言うのに上半身は裸で、先ほど見せびらかした鍵は数本掛けられたネックレスの内の一本に架かっていた。そして隆々とした筋肉を一回り大きい骨格のような物が覆っている。そんな代物を露出されても反応に困る、新手の変態か。
「──Tee knoy noorn ioi edre orsuo, Cehk io ynoorn ioiedreo rsuoKu...」
眼を閉じた燈王が難しい表情で奇妙な言葉を口にする。
「Ubboi yw oow muisstee nm uakha igbauy sa ukmuog weinhrc en iert...」
呪言。そうかジェズと同じ、ミーシャは戦慄した。大気中の何かがざわめくこの感じ。
「Aentu inawsoo hwaui ssteiih.」
燈王の身体に橙色をした矩形模様がくっきり浮かび上がる。
体表が陽炎のように揺らめくと骨格が鈍く光りを放ち始め、所々に細かい電光を走らせた。
これが雷の正体。ジェズは勿論知っている、セカンドがあの能力を使う限り攻撃は非常に困難。
「↑↑☆さあ来るが良い死王っ!我が【首無竜】のヤドリで貴様を持て成してやろう!!
橙の呪珠【厳霊の肋】の力、骨の髄まで思う存っ分っ味わわせてやるっ!!
そして 死 ね え え え え え え え え え え え え え い っ!!!」
本当に書き出したいのは次からのシーンなんだよね。この書き出したい勢いでとっとと筆を走らせたいわ!主人公が、大変なコトになります………あああああ全裸を出してえええええええっっ!!




