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4月12日

 今日は晴れ。

 容量は中域、陽射しが暖かい。


 着物は水色から紺への振袖。


 今日は少しメンバーを変え、黒い妖精付きとなった爺やとマーリンが北進しつつ治療、レーヴィはラウラと家に居る事になっている。

 そしてコチラはルミ先生にスクナさんと、真の姿になったミカちゃんと共に教会へ向かった。


 だがココは都市部。

 襲撃事件の事も広まっている為、ミカちゃんへの悪感情はかなり強烈。


 患者やその家族達、そして関係者までもが、表には出さないが批判的な視線で天使を見ている。

 そう見える気がする。


《まぁ、耐えるしか無いよ》

「どんまい」

《あぁ、分かっている》


「にしても、あからさまで可哀想に思ってしまう。こんな立派な羽根の天使さんなのに」

《だからなのだろう、羽根を持つのは御使いだと言う思いが強いらしい、特にこの地は》


「なのに出しちゃうのか」

《示すしか無いん、我々が協力関係にあると言う事を》

《腐敗とまでは言わないが、それを払拭出来る迄だよ》


「でもねぇ、皆に声を届けるとか出来ないのかね。テレパシーとかでさ、バーンと」

《ラッパの音しか届けられないが》


「やめて、本気で止めて」

《冗談だ。声は届けてはいるが、主の声では無い事、以前と違う声である事が引っ掛かっているらしい。変化を受け入れるには時間が掛かるのだろう、人間と言う生き物は》


「まぁ、変化への対応は千差万別なんで。どんまい」

《あぁ》


《宜しいでしょうか?》

「えぇ、宜しくお願い致します」


《はい、では診療を開始致します》




 昼の休憩までに判明した事が1つ。

 ルミ先生が苦手なのはミカちゃんだと言う事、分かったのは良いが、原因が分らない。


 特段関りも無く、避ける要素は厳つい顔だけなのだが。


「ルミ先生、ミカ、天使さんの何が苦手で?」

《あ、いや、苦手と言うか……その、羽根の接合部分が気になって、その下心を見抜かれたら怒られてしまうかもと思うと、どうにも遠巻きになってしまって。あの、何か言ってらっしゃいました?》


「いえ何も、少し見せて頂けないか聞いてきましょうね」

《あ、ちょ、そ》


「ミカちゃん、羽根の接合部を見せて貰えませんかね」

《別に構わないが》


「構わないそうですが」

《あ、すみません。スケッチは?》

《あぁ、食事を終えてからなら構わない》


「ですね、お食事に行かれて下さいな」

《あ、はい、失礼します》


《そんな事も一々橋渡しをするのか、御使いは》

「人として余計な溝を埋めたいだけです」


《だが今の溝は、お前が埋めなくとも問題は出ないだろう》

「費用対効果を考えて、お手軽なのは埋めるタイプなんです」


《余り細事を気にしては、大局を見誤らないだろうか》

「細かくて神経質で悪うござんしたね」

《全てを見通せては人では無くなってしまうよ。それに捉え方次第ではね、細やかな気配りと言うんだよ天使さん》


 見た目に反しスクナさんの方が大人。

 天使さんは世間知らずというか何と申しますか、人間界ほやほやだし、仕方無いよな。


 コチラが差し入れで昼食を終えた頃、ルミ先生が新品のスケッチブックに鉛筆を手に帰って来た。

 ワクワクと畏怖で少し変な感じになっているが、嬉しそうではある。


 教会の中庭で其々に日光浴をしながらの休憩、向こうではスケッチ。

 遠くに居るシモンらしき気配は、少しピリピリしている。


「中に戻った方が良いですかね」

《日光浴は大切だと聞いているんだ、少しは文化に馴染まなくてはね》


「護衛がピリピリしとるんですよ」

《ふふふ、仕事を全うしてくれているんだ、そこは気にしないであげるのも、守られる側の仕事だよ》


「度胸が凄いと言うか、胆力が違うと言うか」

《あぁ、見習っておくれね》


 見習い方が分らないが、努力はしてみよう。


 ほんの十数分ではあるが、遠くから見守る護衛には何時間にも感じただろう。

 その僅かな休憩を経て、治療が再開された。


 だが、その治療が外で行われるとは親衛隊も知らされて居なかったらしく、かなりピリピリが広がった。


「挑発し過ぎでは?」

《文化交流も大事な目的の1つでもあるから。大丈夫、信じてくれ》




 確かに問題は無かったが。

 オヤツの時間の頃、後方のグループが騒がしくなった。


 原因はトール。

 ミカちゃんの前まで進み出て、握手を交わしている。

 衆人環視の元、仲良くしてますよとのアピールが目的らしいが。


 内情を知っていると、大袈裟に思えてしまう。


「ワザとらしく見えます」

《周りはそうでも無いよ、よく見てみると良い》


 確かに、嬉しそうにする教会関係者や、ホッとした様子の患者やその家族。

 そして少しピリピリの収まった親衛隊達、ただ変わらず解せぬと言った雰囲気の輩も居る空気。


「解せぬって人も居ますが」

《それは後で天使さんが話をしてくれるそうだから、そこも大丈夫》


「その為の、ですか」

《見てなお納得しない者と、より良く話し合いたいそうだ》


「こわっ」

《ふふふ、昔の荒ぶる神々達を思い出すよ、懐かしいねぇ》


 浸る所がソコなのが凄いなと思いました。




 そして夜、騒動も特になく大使館へと帰る。


 軽食はお茶漬け、あの即席のお茶漬け。

 美味しい飲み物の1つ。


 風呂に入り、良く顎を治してから夜食。

 なんと海鮮餡掛けご飯、フカのヒレなんぞ入っていて超豪華。


 甘味は栗ぜんざい。

 そして仙薬。


「食事のバランスは良いんですか、コレで」

「えぇ、顎の調子が悪いとスクナヒコナ様からお伺いしてますので、先ずは栄養を付けて頂くのが先だと」


「バレてましたか、ありがとうございます」

「いえいえ、では、失礼いたします」


 どうにも緊張すると歯を食いしばる癖と、睡眠中に歯軋りしているのか顎が痛かった。

 途中で何回か適当に治していたのを気付かれたらしい、面目ない。


 今日はちゃんと治してから寝よう。

《スクナさん》《ミカちゃん》《ルミ先生》「日本大使館員」

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