4月13日
曇り、中域。
顎もチェック、問題無し。
今日は最終工程のヘルシンキへ向かう。
メンツは昨日と変わらず、トールもそのまま同行する事に。
ただ今回は朝食にも昼食にも仙薬が添えられる様になった。
容量拡張の武者修行の様に、全ての雑草の汁と苦虫が合体した様な液体を飲み干す。
「いよいよ甘さも0ですか」
《甘味が揃っているのだから丁度良いだろう?》
「えぐみと苦味がお茶の度を超してます」
《良薬は口に苦しだ、仕方無い》
「知ってても慣れるもんじゃ無いんですからね」
《慣れられては困る、より苦くしなくてはいけなくなるからね》
「せめてエグミだけでも」
《そこが大事なんだから、ほら、後半分だ》
ミカちゃんですら顔をしかめて美味しいとは言わない味、何かの罰かと疑うレベル。
毎食はちょっとしんどい。
「はい、御馳走様でした」
《はい、お粗末様でした。もう少しだ、頑張ろう》
髪はハーフアップ、着物はいつもの。
どうしても、何をしても一定数の反対派が出てしまう。
スクナさん曰く、もうコレは自然の摂理らしい。
国の半分を治療し終えた段階で、遂に反対派は団結し、結託し、治療行脚反対デモへと発展したそうだ。
そしてその先導者の中に関係者を見いだしたミカちゃんは、その団体との禅問答を開始していたらしいが。
ヘルシンキで合流されてしまった、と。
それでもコチラは変わらず治療を行う。
そうした中で、デモへのデモ隊が到着したらしく、遠く離れた広場へと移動して行った。
対照的に、コチラに対して心配してくれる者や気遣ってくれる者が増えたが。
嬉しいが、迂闊に喜んで良いものか悩む。
「全部、マーリンの思惑通りなんですかね」
《ふふ、どうだろうね》
治療はそのまま続行へ。
そしてデモ隊VSデモデモ隊がどう終わったのか分からぬまま、大使館へと戻る時間に。
軽食にはネギ味噌焼おにぎり。
お風呂の後、夜食は大人のお子様ランチが姿を現した。
甘味にはカラメルがタップリ掛かったプリン、そして小壺に入った仙薬。
上げて上げて落とされた気分、嬉しいけれど献立でココまで気分を操作されるとは。
「起伏の激しい献立ですな」
「ですよね、仙薬が常食に加えられましたし」
「ココはグッと堪えて、いただきます」
小さな壺を掴み、ただ喉へと流し込む。
トロミ有るぅ。
不味くても死なない、寧ろ飲まないと死ぬんだと自分に言い聞かせ、飲み干す。
例え鼻から抜ける臭いに顔を歪めようとも、苦味とえぐみで頭が一杯になろうとも、コレが終わるまで地獄を抜け出せないのだから。
壺の中身が尽きたのを確認し、プリンを何口か食べ、一息吐いてから容量を計測。
中域、マジで壊れて無いよな。
【はい】
少しばかり夜食に手を付けた頃、スクナさんが訪ねて来た。
《まだ足りないとは》
「溢れても困るんですけどね、けど漏れてる節も無いし」
《ふむ、追加だ》
「溢れても困るんですが」
《マーリンが吸い上げるのだろう?》
「まぁ」
《アレも疲弊しているらしい、マーリンの為と思って飲んでやって欲しい》
「分かりました」
《うん、宜しく頼むよ》
お子様ランチを食べ終え、追加の壺も飲み終えた頃マーリンが帰って来た。
もう憎らしい。
「お帰り、君用に仙薬追加された」
『その割に溢れて無いね?』
「問題、そこ、違う」
『ごめんごめん、でも君の事を心配しての追加でも有ると思うから、我慢して』
「もう飲み終えた」
『まだ足りないの?』
「それか遅く出るのか」
『楽しみ』
残していたプリンを食べ終え、心を落ち着けてから計測。
高値。
「ギリ」
『ギリギリかぁ、残念』
「やったぜ、ざまぁ」
『もう、じゃあ魔石使ってよ』
「島に帰れば良いじゃない」
『君のお守りでもあるんだから、離れるのはちょっと』
「だからって溢れさすかね」
『誰も来ないんだし、良いじゃない』
「変な挙動が出たら中止するからな」
『やった』
美味しいティターニアのエリクサーを飲み、久し振りに溢れさせる。
眼鏡を掛け改めて集中したからか、体から魔素が溢れ出る感覚が分かった。
少し暑くなったかと思うと、急に涼しくなり。
そして少しだけ体が軽くなると、ゆっくりじんわり魔素が溢れ出て来た。
伸びをした様な心地好い感覚と、程よい脱力感。
「何か、出てる感覚がある」
『良かったね、そしたら少しは制御出来るかもよ?』
「それもこれもあれも、全部君の計画か」
『どうだろう、でも買い被って貰えるのは嬉しい』
「恐い、恐いと引っ込んじゃうかも」
『ダメダメ、折角馴染んで来たのに』
「どんな感覚?」
『最初は熱いサウナとかお風呂に入る感じ、それでほーっとする』
「良いなぁ、誰か出せる人居ない?」
『エルフに居るけど、人間嫌いだからなぁ』
「あー、無理かぁ」
『御使いは好きなんだけどねぇ』
「最低だな君は」
『あー、良く言われてたー』
マーリンがモゾモゾと布団の中に潜り込み、暫くして寝息を立て始めた。
凄い寝付き、羨ましい。
後から自分も入り込み、目を閉じた。
《スクナさん》「日本大使館員」『マーリン』




