6.少女の負った、心の傷。
これで、第1章終了ですかね。
もしよろしければ、あとがきを参照ください<(_ _)>
――それは、円が五歳の頃の話。
「ママ、どうして寝てるの……?」
円の母親である六花が亡くなった。
幼い少女には、まだそれが理解できていない。ただ漠然と、もう大好きな母親とはお話しできないのだと、それだけは分かっていた。
だから、自然と涙がこぼれ落ちる。
多くの人に愛された女性の死は、その後に影を落とすこととなった。
◆
「継母からの、イジメ……?」
「うむ……」
ボクが訊き返すと、源三郎さんは神妙な面持ちで頷いた。
彼の話を聞くところによると、円の母親――六花さんが亡くなった数年後、源三郎さんは新しい妻を迎え入れたらしい。その人というのは、兼ねてより使用人を務めていた女性だ。しかし彼女は、先ほど述べたように円にきつく当たったらしい。
その人の所業が発覚して、最終的には離婚に至った。
しかし、円の心には深い傷が残ったという。
「当時の私は、いま以上に仕事に追われていてな。家に戻る機会がなかったのだ。だから娘の変化に気付くのが遅れてしまった……」
「源三郎さん……」
「ふ……。まさに父親失格、というやつだな」
「そんなことは――」
「なに、良いんだ。これは間違いなく、私の責任だからな」
「………………」
ボクの言葉に、首を左右に振った源三郎さん。
その真剣な横顔を見ていると、とても気休めの言葉なんて続けられなかった。重くなる空気をどうにかしようとしたのか、彼はふっと口元に笑みを浮かべる。
そして、こちらに向かってこう訊いてきた。
「キミと円の婚姻の話を持ち掛けたのは、あの子の傍に優しい誰かを置いておきたかったからだ。巻き込んでしまって、申し訳ない。もし嫌なら、今からでも――」
――この話は、なかったことにしても良い。
そう言って、ちらりとボクを見る源三郎さん。
無理強いはしない。それは、今までの日常が返ってくる証明だった。
でもこの時のボクには、選択肢は一つしかなかったのだ。
「いえ、大丈夫です。これは家のこととか、そういうのではなくて――」
ボクは立ち上がって、彼の前に立ち、深々と頭を下げる。
そして、こう伝えるのだった。
「娘さんの心を癒すお手伝い、ボクにやらせてください」――と。
円という、大切な友達のために。
ボクは一つの決意を固めた。
もしかしたら、この時すでにボクの心は彼女に向かっていたのかもしれない。
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