4.ホカホカのたい焼きを食べながら。
次回、円の家庭事情かな。
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「どう、美味しいでしょ?」
「は……はい!」
たい焼きを一口食べた円。
そんな彼女の頬がほころぶのを見て、ボクはとても嬉しくなった。
なんでも食べるのが初めてだと言っていたから、口に合うか不安だったけれど。どうやら杞憂だったらしい。円はその小さな口で、黙々とたい焼きを食べていた。
そして、こちらを見て微笑む。
「ほんとに、おいしいですっ!」
感動を隠しきれない、そんな表情だった。
普段はどのようなものを食べているのだろうか。もしかしたら、あの会食に出てきたような豪華なものだけ、かもしれない。そうだとしたら、こんな庶民的な食べ物が初めてだと、そう言っていたのも頷けた。
「あ、ちょっと動かないでね」
「え……ん!」
そこでふと、ボクは円の口元に餡子がついているのに気付く。
ティッシュを取り出して拭ってあげると、少女は少しだけ身を固くした。目を瞑ったから、しばしの間は何をされたか理解できていない様子。
でも、ボクの手を見てなにをされたか気付いたらしい。
「あ、う……!」
恥ずかしそうに、真っ赤になってうつむいてしまった。
潤んだ瞳をチラチラと、こちらに向けてくる。なにかを訴えようとしているようだが、どうにも上手くいかないようだった。
ボクはそんな彼女に、気にしない素振りでこう訊ねる。
「円の家は、門限ってあるの?」
「も、門限……ですか?」
「そそ」
すると円はやや挙動不審に視線を泳がせ、こう答えるのだった。
「その、リュウヤさんが一緒なら大丈夫、って……」
「ボクが一緒なら? 何時でも、ってこと?」
「は、はい」
それを聞いて、思わず首を傾げてしまう。
あの一回だけの会食でどこまで信用してくれたか知らないが、源三郎さんは不用心ではないか、と。こんなに可愛い娘さんを男と、何時まででも一緒にいていいなんて。放任主義なのだとしても、少しばかり行き過ぎているように思えた。
「うーん……」
しかしながら、せっかくだし彼女に笑ってほしいのも事実。
ここはちょっとばかり、彼の思惑に乗ってもいいかもしれなかった。
「うん、それじゃ――」
だから、ボクは円の手を取ってエスコートするように立ち上がる。
きょとんとした少女は、こちらの顔をジッと見つめた。
「今日はもっと、いっぱい遊ぼうか!」
その目を真っすぐに見つめ返し。
ボクは、はっきりとそう告げるのだった。
少しでもいい。
円の不安な心が安らげばいい、そう思って。




