2.いつもと違う昼休み。
ちょこっとコメディという名の日常。
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――午前の授業が終わり、昼休みになった。
この時間は基本的にボクと田中、そして明日葉の三人で机を寄せ合っての食事タイム。この面子は入学以来、変わっていなかった。
各々に弁当を持ち寄って、欲しいものがあればトレード交渉。
それが終われば、適当な話題でバカ騒ぎをするのだ。
「…………」
「…………」
「…………」
今日もそのはずだった。
彼女が、やってくるまでは……。
「ね、ねぇ? ――円?」
「…………は、はいっ」
「キミって一年生だよね。どうして、ここにいるの?」
篠宮円――つまるところ、ボクの許嫁が加わっていた。
苦笑いしつつ訊ねると、彼女はなぜか赤面してうつむいてしまう。そうしていると、当然ながら悪友コンビが詰め寄ってくるわけで。
「おい、九条」
「ちょっとツラ貸しなよ、リュウヤ」
「……はい」
ボクは二人に連れられ、教室の隅へと移動した。
そして両サイドから肩に腕を回され、密着することで逃げ道を封じられる。というわけで、異端審問の開廷であった。
「九条。俺たち入学式で誓ったよな? 卒業まで、彼女は作らないって」
「そ、そうだっけ? えっと――」
「ほほー? リュウヤ、彼女ってところは否定しないんだ」
「あ、いや。ちが……くもないのか?」
「どっちだよ、おい」
「…………」
なにやら、二人とも声色が怖い。
鬼気迫るというのは、こういうことを言うのだろうか。
ボクは頬を伝う冷や汗を感じながら、とりあえず深呼吸をした。昨日の出来事を二人に説明するのは、少しばかりハードルが高いように思われる。
だから、どうにかして誤魔化さないといけない。
そこまで考えて、ボクは――。
「えっと、その。円は……」
とっさに思いついた言葉を口にした。
「遠い親戚なんだ」――と。
◆
「そういうことなら、早く説明しろよな! びっくりしたぜ!!」
「そうだよ、リュウヤ。とりあえず、誤解でよかった!」
「………………」
――この二人、馬鹿でよかった!
ボクは内心で胸を撫でおろしながら、そう思う。
とかく二人には、円がボクの遠い親戚だ、という嘘を信じ込ませた。旦那様と呼ばれたのは、昔のままごとの癖で間違えたのだ、という苦しい言い訳で。
しかしながら、やはりボクの悪友二人は単純だった。
いや、ボクに嘘をつかれるとは思っていないのかもしれない。
それはそれで、信頼だから良心が痛むけど。
「アタシは明日葉。よろしくね、円ちゃん!」
「…………!」
さて、そう考えていると。
明日葉がさっそく、その近い距離間で円に詰め寄った。
あまりの早業に、彼女はあからさまに動揺する。そして、視線を泳がせて――。
「は……はぃ」
相も変わらず、消え入りそうな声でそう言った。
すると、次は田中の順番だったわけだが――。
「俺は田中浩二! 気軽に、コウちゃん、って呼んで――」
「あぅ!?」
「え、ちょ――!?」
どういうわけか、円は俺の後ろに隠れてしまった。
思いっきり警戒した様子。というか、めっちゃ怖がっている。
そんな少女を見て、田中は硬直した後に――。
「う、うぅ……!」
「なんで泣くんだよ」
号泣していた。
田中は、美少女に拒絶されたことで泣いていた。
ボクはそんな友人の姿を見て苦笑い。
そんな感じで。
イレギュラーな昼休みは、過ぎていくのだった。




